「まったく。雄二も、もうすこしかんがえてから声をかけなよ」
まだ、口を真一文字に結んでいる、つぐみではなく、明久が答える。
「てめえにだけは言われたくねえぞ? 明久。このウジ虫やろう」
その言葉をキッカケに二人はメンチを切り始める。
「おはようなのじゃ、みあ」
「あ、おはようございます。 秀吉くん」
秀吉と呼ばれた外見美少女の男子生徒が近寄り、挨拶をする。
みあは笑顔で挨拶を返す。
「…………」
「康太、ヤキモチ焼かない焼かない」
不機嫌そうな康太に気づいて明久は近寄り、宥める。
彰仁は明久もよくヤキモチやいてなかったかと思っていたがスルーすることにした。
「みあがここにいるということはFクラスなのじゃな。 検査で遅くなったのかの?」
「はい、そのせいで康太くんまで巻き添えにしてしまいまして」
秀吉はみあからの言葉を聞いてほほうと笑うと康太を見る。
康太は秀吉の視線に気づいて慌てて視線をそらしている。
「? 秀吉くん?」
「いやいや、気にするでない」
小首をかしげるみあに秀吉はかっかっかっと笑っていた。
「あ、みんな。 先生が来たみたいだよ」
つぐみに言われてそれぞれの席へとつくことになった。
明久が座るとその前につぐみが座る。
明久の左にはみあが車椅子を置いて、康太に支えてもらいながらちゃぶ台のある場所に座る。松葉杖的なものを使って歩くことをしているのだが、それでも歩き方はぎこちない。
「……バリアフリーが足らん」
「まあまあ」
憤慨そうな感じで言う康太をみあはなだめていた。
そしてそのままみあの隣に着席する。
「2年Fクラス担任の……福原 慎です。どうぞ、よろしく」
黒板に文字を書こうとしたが、チョークがなくてやめて振り返ったようだ。
「ねえ、アキくん」
「あ、つぐみも思った?」
「気づいたから、実はなチョークのくずしかなかったんだよ」
つぐみと明久のやりとりに気づいて雄二が言うとうわぁという顔を浮かべる二人。
まさに似たもの夫婦だといえるだろう。
「先生、チョークで書かないんですか?」
「書こうとしましたがなかったので後で新しいチョークを申請しておきます」
生徒の一人が手を挙げて聞くと福原教諭はそれだけを言った。
「そういえば、自己紹介がまだだったな」
「あ、みあちゃんから聞かされていたのではじめって感じがないですね」
雄二がそう言うとつぐみは困ったように笑う。
「ん、そうか。 どんな紹介したのやら」
「変わっていて面白い人だそうですよ?」
雄二はみあの方を見ていうとつぐみはくすり、と笑いながら答えた。
「でも、そっちだけが知っているのもなぁ。 まあ、一応だ坂本雄二だ。そこのバカどもとは去年からの知り合いだ」
「あたしは雨宮つぐみです。 アキくん達とは幼い頃からのというか、産まれた頃からの付き合いです」
雄二は改めて自己紹介をして、つぐみも自己紹介をする。
「産まれた頃から?」
「はい、同じ病院で同じ日に生まれて家もお隣同士なんですよ」
雄二に問われてつぐみは笑みを絶やさずに答える。
「それにしては見かけなかったが」
「当然ですよ、つぐ姉様は別のクラスでしたし」
雄二が考える仕草をするとみあが会話に割り込んでいた。
「じゃあ、噂も色々聞いていたんだな」
「あはは、そうですね。 どんな内容かはノーコメントで」
雄二の言葉につぐみは苦笑を浮かべて言った。