ソードアート・オンライン~黒の剣士と絶剣~ リメイク版   作:舞翼

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連投だぜ。
いやー、頑張った。


第26話≪S級食材の晩餐≫

 第74層迷宮区から出て、俺たちは帰路についていた。

 目の前には、うっそうと茂る暗い森を貫いて、一本の小路が伸びている。 背後を仰ぎみれば、先程出てきたばかりの迷宮区が、夕暮れに染まっている。

 

「ボス部屋まで辿り着けなかったね」

 

「俺が無理してマッピングしたのが中盤までとか、虐めかよ。って思ったしな」

 

 俺の言葉を聞いて、頬を膨らませるユウキ。

 てか、メッチャ可愛い。 ユウキはアインクラッドで、かなりの美少女に分類されている。 アスナとランも同様だけど。

 

「そんなことは、ボクがもうさせないからねっ。 攻略は、ボクと一緒にすること」

 

 俺は苦笑し、

 

「ああ、分かってるって。 心配するな」

 

 ユウキは俺の言葉を聞いて、満足そうに頷いた。

 そんなユウキを見て、俺は右手を伸ばし、ユウキの頭をくしゃくしゃと撫でた。

 

「な、なにするのさ、キリト」

 

「いや、いつもありがとうって思って。 その礼だと思ってくれ」

 

「んー、それだったら許す」

 

 そう話していると、俺は足を止めた。 索敵スキルに反応があったからだ。

 また、ユウキも足を止めている。 俺たちの索敵スキルのレベルは最大なのだ。……まあ、アスナとランも最大なんだけどさ。 俺が口を酸っぱくして上げろって言ったしなぁ。

 

 やがて、十メートル程離れた、大きな樹の枝の陰に隠れてるMobの姿が浮かび上がった。

 木の葉に紛れる灰緑色の毛皮と、長く伸びた耳。 視線を集中させると、そのMobの名前が浮かび上がる。

 それを見た途端、俺とユウキの息が詰まった。――《ラグー・ラビット》、超がつくレアモンスターだったのだ。

 俺は声を潜ませ、

 

「……ユウキ。 見えてるか?」

 

「……もちろんだよ。 今の感じなら、先制攻撃(ファーストアタック)のチャンスがあるかも」

 

「……ああ、分かってる。 俺に任せてくれ」

 

「……りょうかい」

 

 俺は腰のベルトから、投擲用の細いピックを抜き出した。 俺は右手にピックを構えると、投剣スキル基本技《シングルシュート》のモーションを起こし、ピックを投げた。

 鍛えた敏捷力パラメータによって、補正された俺の右手が稲妻のように閃き、放なたれたピックは梢の陰に吸い込まれていった。

 そして、《ラグー・ラビット》のHPバーがゼロになり、一際甲高い音が届く。

 即座に右手を振り、メニューウインドウを呼び出し、アイテム欄を開くと、その一番上にはその名前があった。 《ラグー・ラビットの肉》。――そう、S級食材だ。

 

「ど、どうだった」

 

 ユウキが緊張の面持ちで聞いてきた。

 俺は頷き、

 

「ああ。 S級食材ゲットしたぞ」

 

 ユウキは、左手をグッと握った。

 かなり嬉しいのだろう。

 

「で、どうする?」

 

「そりゃもちろん、姉ちゃんとアスナと食べようよ。 腕がなるなよ!」

 

 ちなみに三人とも、料理スキルは完全習得(コンプリート)済みだ。

 なんつーか、三人で料理を作っていたら、いつの間にか完全習得(コンプリート)してたとか。 所謂、女子会である。

 ちなみに、晩餐会が開かれるのは、ユウキのホームだ。 まあ、俺のホームには、必要最低限の物しかないし。

 

「ま、俺もそれに賛成だ。 その前に、集合場所を決めといた方がいいんじゃないか」

 

「それもそっか。 じゃあ、あそこにしよう」

 

「お、おう。 商売の邪魔にならないか?」

 

「……大丈夫なはず。 ぼ、ボクたちが揃うんだし、許してくれるよ」

 

 まあ確かに、アインクラッドの美少女が一箇所に集まる機会はボス攻略会議くらいだし。 これは滅多にない事だし大丈夫だろう。と俺は結論付けたのだった。

 ともあれ、俺とユウキは転移結晶をポーチから取り出し、ホームの層の名前を叫んだ。

 

「「転移! アルゲード!」」

 

 そう言うと、手の中で結晶が砕け散った。 俺たちは青い光に包まれ、光が消え去った時には転移完了していた。 先刻までの葉擦れのざわめきに代わって、甲高い鍛冶の槌音と賑やかな喧騒が響き渡る。

 俺たちが転移した先は、第50層《アルゲード》の転移門広場だ。 俺たちはある場所へ向かって歩き出したのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「よし決まった! 《ダスクリザードの革》二十枚で五百コル!」

 

 馴染みのある声を聞いて、俺とユウキは肩を落とした。 そして、内心で合掌する。

《ダスクリザードの革》は、高性能な防具の素材になる為、結構良い値で売却できる代物だ。 先程の五百コルは安すぎではないか?

 

「毎度! また頼むよ、兄ちゃん!」

 

 店主は槍使いの背中を、パシンと叩くと豪快に笑った。

 そして、慎み深く沈黙を守って、立ち去って行く槍使いを俺たちは見守ったのだった。 流石の商人魂だなぁ。と思いながら、俺たちは店内に足を踏み入れる。

 

「うっす。 相変わらず阿漕な商売をしてるな」

 

「さっきの槍使いのお兄さん。 ご愁傷さまとしか言えないかも」

 

 俺たちが背後から声をかけると、エギルは此方を振り向きニンマリと笑った。

 

「よォ、キリトにユウキちゃんか。 安く仕入れて安く提供するのが、ウチのモットーなんでね」

 

 悪びれもない様子で、そう呟くエギル。

 

「後半は疑わしいものだけどなぁ。 まあいいや、俺たちも買い取りを頼む」

 

「エギルさん。 此処をアレの(集合)場所にさせてね」

 

 エギルは目を丸くしたが、構わん構わんと言い、豪快に笑った。

 俺たちはトレードウインドウを表示させた。 ある一点を見て、エギルの両目が驚きに丸くなった。

 

「おいおい、S級アイテムじゃねぇか。 《ラグー・ラビットの肉》か。 オレも現物を見るのは初めてだぜ……」

 

「今日は晩餐会でもある」

 

 エギルは納得したように頷いた。

 

「な、なるほど。 そういう事だったのか……。 それにしても、お前らホント仲良いよなァ」

 

「まあな。 命を預ける事ができる奴らだし。 信用も信頼もしてるしな」

 

「お前ら、付き合いもかなり長いしな」

 

 そう、俺たちの付き合いは、SAO開始当初と言ってもいい。とすると、約二年弱位か。 いや、ユウキとランはもっと長いな。

 そんな時、背後から誰かにつつかれた。 どうやら、待ち合わせの人物たちが到着したらしい。

 

「お待たせ」

 

「お待たせしました」

 

 俺とユウキは振り向き、

 

「おう。 待ったぞ」

 

「いやいや、全然待ってないからね」

 

 言わずとも、血盟騎士団副団長とその補佐であり、俺の友人と幼馴染でもある。

 ちなみに、あの事件?の後、フレンド登録を再びしました。 俺の望みでもあったしね。

 つか、何。 後方の二人の護衛は。 彼女たちには護衛なんて必要ないと思うんだが。 アインクラッド頂点に立つ存在だし。 まあ、ギルドの方針じゃ仕方ないと思うけど。

 

「それで、さっきのメッセージ。 ホントなんだよね?」

 

 アスナにそう言われ、俺は嘆息する。

 S級食材なんて滅多に取れるもんじゃないし、そうなるのも無理もないが。

 

「おう、マジだ」

 

 俺はアスナとランを手招きし、アイテム欄を見せる。 可視モードにせずとも、俺たちの仲なら問題ないからだ。

 

「……ホントだったんですね」

 

「……ランもそう言うのかよ」

 

 ガクッ、と言う擬音が似合うように、肩を落とす俺。

 そんな俺を励ますように、ユウキが、ポンと俺の右肩に手を乗せてくれた。 ユウキの優しさが身に沁みます……。

 

「それで、ユウキのホームで開くんですよね?」

 

「そうだよ、姉ちゃん」

 

 ランと問いに、ユウキが同意する。

 だが、それに異を唱えたのは、後方で事の成り行きを見ていた、長髪男の護衛の一人だ。 SAOにもう少し表情再現機能があったら、額に青筋の一本や二本は立っているであろう剣幕だ。……俺から見ると、かなりヤバイ奴に見えるんだが……。

 

「あ……アスナ様、ら……ラン様。 《絶剣》様なら兎も角、男と、いや、鬼神の片割れと行動を共にするなど……と、とんでもないことです!」

 

 その言葉に、俺は内心辟易(へきえき)とさせられる。 《様》と来たか。 こいつは、アスナとランの崇拝者だ。 当人たちを見ると、うんざりした表情だ。……うん、心中お察しします。

 ユウキも二つ名とは言え、名前を出され顔を顰めていた。 かなり嫌だったんだと思われる。

 

「いえ、この人は私の友人です。 攻略組の誰より信用があります」

 

「なので、護衛はここまでで大丈夫です」

 

 アスナとランの言葉は、かなり業務的だ。

 

「な、何を……。 わ、私がこんな奴に劣ると言いたいのですか……!」

 

 男の半分裏返った声が路地裏に響き渡る。 三白眼ぎみの落ち窪んだ目で俺を憎々しげに睨んで、

 

「貴様の顔、下層で見たことがあると思ったが……手前、貴様、ビーt――」

 

 男の言葉が途中で止まったのは、この空間の温度が一気に下がった錯覚に襲われたからだ。

 そして、三人に殺気を向けられ硬直してる。

 

「……クラディール。 それ以上言ってみなさい。 《黒の剣士》様は、私の恩人なのよ」

 

「……それ以上言いますと、副団長補佐の権限を行使します」

 

「……ボクも、ただでは許さないかも」

 

 ユウキに限っては、剣の柄に手をかけていた。 軽くノックバックをさせようか。といった感じだ。

 そんな時、この空気に割り込んだのは、もう一人の護衛だ。

 

「クラディールさん。 今日は帰りましようか。 本来なら、副団長様たちには護衛なんて必要ないんですから。 副団長様たちが本気になると、オレたちはすぐに巻かれますから」

 

 まあ確かに、もう一人の護衛が言うように、アスナたちの敏捷力も索敵も、俺たちと同等なのだ。 実行するのは容易だろう。

 

「……ライト。 貴様、アスナ様とラン様の護衛をなんだと思ってる!」

 

 ライトと言われた護衛は思案顔をしてから、

 

「いや、単なる暇潰しかと」

 

 それを聞いたアスナとランは苦笑するだけだ。

 ライトと言われた護衛にアスナとランが、これからは護衛は結構です。と言えば、その指示に従うに違いないと思った俺だった。

 

「ら、ライト! き、貴様――ッ!」

 

 ライトは、はいはい。と宥めるだけだ。

 

「とにかく、今日は帰りますよ。 副団長様たちは、激怒ぷんぷん丸ですから」

 

 俺は笑うのを必死に堪えていた。――ライトと言われた護衛がかなり面白い事を言うからだ。

 だが、ここで笑ったら色々と台無しになってしまう。

 クラディールと呼ばれた護衛は、コート後ろのベルトを掴まれ、ライトに連行されて行った。 その間も、クラディールは文句を言ってたたが。 まあそこは気にしないでおこう。

 俺たちは振り返り、

 

「んじゃ、エギル。 またな」

 

 そう俺が言ってから、ユウキたちも別れの言葉を告げた。

 

「おう。 面倒事を持ってくるんじゃねェぞ」

 

 俺たちはエギルの店を出て、人混みの隙間を通りながら、ユウキのホームへ向かったのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ユウキのホームに到着した俺たちは、武装を解除した。

 ちなみに、女性陣は隣の部屋でだ。 間違っても、覗いたりしてない。……てか、覗いたら殺される。 これ、結構マジで。

 テーブルの上に乗る大き目の皿に、俺はメニューウインドウを開きアイテム欄から《ラグー・ラビットの肉》を実体化させた。

 

「どんな料理にする?」

 

「シェ、シェフのお任せで」

 

 ユウキにそう聞かれたが、料理を作る。という事は無知に近いので、こう答えるしかなかった。……何か申し訳ない。

 

「うーん。 じゃあ、≪ラグー(煮込み)≫なんだから、シチューにしようよ。 姉ちゃんもアスナもそれでいいかな?」

 

「いいわよ」

 

「私も賛成で」

 

 二人も賛同した所で、《ラグー・ラビットの肉》は、シチューという事になった。

 キッチンに入って行く三人を追いかけるように、俺もその後に続いて行く。 俺は料理をする事はできないが、料理を運ぶ。という事はできるからだ。

 ユウキたちは、無駄のない動きで料理を作っていく。 てか、三人の息はかなり合っている。

 

 そして、僅か三分で豪華な料理がキッチンテーブルの上にできあがった。

 目の前にの大皿には、湯気を上げるブラウンシチューがたっぷりと盛りつけられ、鼻腔を刺激する香りの蒸気が立ち上がっている。 照りのある濃密なソースに覆われた大ぶりの肉がゴロゴロ転がり、クリームの白い筋が描くマーブル模様が実に魅惑的だ。

 そして、シチューを凝視してる俺を見て、苦笑する声があった。

 

「リビングのテーブルの上に持って行ってからだよ」

 

「お、おう」

 

 ユウキにそう言われ、俺はコクコクと頷き、四人分の料理をリビングのテーブルの上に運んで行った。

 そして、俺とユウキが、アスナとランが向かい合わせになる形で着席した。

 それからユウキが、いただきます。と合掌し、俺たちはそれに続いた。

 スプーンを取ってから肉を頬張ると、口の中に充満する熱と香りが広がり、柔らかい肉に歯を立てると溢れるような肉汁が迸る。

 俺たちは一言も発さず、黙々とシチューを口に運んだ。

 綺麗に食べ終わると、アスナが長い息を吐いた。

 

「……今まで頑張って、生き残ってよかった……」

 

「ホントだね。 こんなにも美味しいものが食べられるなんて」

 

「現実での、高級店の料理と錯覚しましたよ。といっても、食べた事はないんですけどね」

 

 ランの呟きに、無いのかよ!という俺の突っ込みは置いといて、俺もまったくの同感だった。

 俺たちは、原始的欲求を心ゆくまで満たした充足感に浸りながら、不思議な香りのするお茶を啜った。

 そんな時、アスナがポツリと呟いた。

 

「不思議よね……。 なんだか、この世界で生まれて今まで暮らしてきたみたいな、そんな気がする」

 

「……俺もだけど。 だけどなあ、俺は現実に帰りたいと思ってるぞ。 てか、皆と現実世界で会いたいし」

 

 ランはコップを持ち、口許へ持っていってからお茶を啜った。

 

「私も想いは同じですが、その為の攻略ペースが落ちてますよね。 今最前線で戦ってるプレイヤーは、五百人いないんじゃないでしょうか?」

 

「うん。 攻略も危ないけど、みんな馴染んできてるんだよ。 この世界に……」

 

 ユウキがそう呟く。

 俺は右手に持ったコップを口許へ持っていき、お茶を全て飲んでから、

 

「俺もそう思う。 このゲームから脱出脱出と言って、血眼になる奴が居なくなったな……」

 

 僅かな沈黙の後、ランが両手をポンと打った。

 よし、明日の予定が決まりました。と言いたい表情である。

 

「明日はみんなで、74層の攻略に行きましょう!」

 

 この四人で攻略とか、チートだよね。 いや、マジで……。

 

「つってもな、護衛はどうすんだ?」

 

「それなら問題ないわ。 巻いて来るから」

 

 そう言ったのは、アスナだ。

 やっぱり巻いて来るのね。 うん、知ってた。

 

「俺はいいけど」

 

 そう言って俺は、ユウキを見る。

 

「OKだよ。 一緒に攻略しよう」

 

 命懸けの攻略なのに、コンビニ行こうぜ。的な乗りだ。 攻略中は緊張感を持ち合わせてるので、これといった危険はないが。

 

「それじゃあ、明日の九時。 74層の転移門前広場に集合でいいですか?」

 

「俺はいいけど」

 

 そう言ってから、ユウキとアスナと見る。

 

「ボクは、それでOKだよ」

 

「私も大丈夫です」

 

 ユウキとアスナも賛成だそうだ。 そういう事なので、俺たち四人の明日の予定が決定したのだった。

 食事を終えた俺たちは帰宅する準備を終え、ユウキに玄関で送られた。

 俺は明日、時間前に起きれるだろうか? 若干心配になり帰路に着くのだった――。




そろそろ青い悪魔ですね。
てか、クラディールの件は飛ばしそう……。アスナとランは、護衛を巻くことができますからね。
ちなみに、護衛がついたのは最近です。索敵もMAXなので、クラディールのストーキングは回避してますね。

アスナの時は、ランの家に。ランの時は、アスナの家にって感じにですね。

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