零の飛空士   作:葛葉

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大空の零

 

横浜基地で新開設された部隊があった。

 

それが、零戦を主力とする部隊であった。

 

期待の最新鋭機ということで、部隊員も腕がキラ星のごとくの人も

かき集められていた。

 

 

だが、訓練はそうそう上手くは行かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「零戦は必要ない!格闘戦でやるなら、96式艦上戦闘機で十分だ!」

「いや、零戦は必要だ!96式艦上戦闘機には無い、足の長い航続距離があるじゃないか!

攻撃隊の護衛には持っていこいじゃないか!」

その日の食堂は、喧騒に満ちていた。

 

設計段階から、意図的に外された格闘戦寄りにしないという

不満がここに爆発したのである。

 

 

戦闘機の搭乗員というものは、勇敢でありながら臆病者である。

その最たる例が操縦感覚で、古参なものほど、新しい操縦感覚を嫌ったのである

 

 

零戦は、96式艦上戦闘機よりも大型化した分、どこか物足りない感覚

となっていたのである。

 

 

 

「てめえに!零戦の何が分かる!」

「何だと!てめえこそ格闘戦に何が分かる!」

一触即発な事態になった時に

 

「バカバカしい」

声が響き渡った。

 

その方を見ていれば、才人が椅子に座りながらタバコを吸っていた。

 

「「何だと!もういっぺん言ってみろや!」」

声を荒げる搭乗員に才人はため息をつきながら言う

 

「バカバカしいと言ったんですよ。新しい機体がでてくれば、前の機体とは

別の機体になるのは、当たり前の事じゃないですか。あたえられた機体で

敵に勝つ方法を考えるのが我々の仕事じゃないですか。

 

それに」

 

 

才人は一端言葉を切り、続けて言う。

 

 

「あなたは、格闘戦では96式艦上戦闘機には絶対勝てないとおっしゃいましたね。

本当にそうなのか、私と戦ってみませんか?」

そう言われて、格闘戦に拘った搭乗員は頭に血が上り続けたまま「おもしれえ!」

と言いながらずかずかと出て行った。

 

 

「おい、平賀。あんなこと言って大丈夫なのか?」

心配になった坂井・佐々木が近寄ってくる

 

「ふっ。大丈夫だ」

 

 

 

 

 

――――数十分後

 

 

飛行場上空に、零戦と96式艦上戦闘機があった。

これから、模擬空戦が行われるからである

 

 

スタートの合図は指揮所から、信号弾が打ち上げられ、それから開始となっている。

 

 

轟音が響きわたる、操縦席の中で才人は思う。

 

 

――――帰ってきた

之が才人の偽らざる心境だった。

 

今まで乗った練習機は、エンジン音や振動などが物足りなく

96式艦上戦闘機は軽すぎた。

 

あの大空で才人と共に駆け上った、零戦が才人が一番あっていたのである。

 

――――零戦があれば誰にも負けない!

 

指揮所から、信号弾が打ち上げられ、2機は猛然と突っ込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もらった!」

照準器の中に入りこむ零戦の姿を見て俺は叫んだ。

 

 

ここに来てからは、男は色々と不満だった。華のある実戦部隊ではないし、

零戦は物足りないし、何よりもあの平賀が気に入らなかった。

 

どこか達観していて、まるで死んだかのように生きている気もしなかった。

男は、言葉にはできなかったが、平賀が嫌いだった。

 

だから、この模擬空戦を行ったのは嬉しいし、自分の瘤殷がくだせれるし。

 

 

 

この時の勝利方法はガンカメラに撮影する事だった。

 

 

 

もう少しと言う時に目の前にあった、零戦は姿を消してしまった。

 

 

「なっ!どこだ!」

 

男は、慌てるものの、長年の経験から、後ろにいると直感に基づき旋回しながら

後ろを見る。

 

はせるかな、やはり零戦があった。

 

 

だが、男は慌てなかった。

「馬鹿め。旋回能力に96式艦上戦闘機に勝てると思ったか?」

 

 

そういって、ぐるぐると回り始めた。

 

 

しかし、旋回を始めた2機だが、引き離されるどころか、零戦はますます距離を

縮め始めた事に、男は恐怖を覚えた。

 

 

「馬鹿な!零戦があんなに小さく回れるなんて!」

男は、恐怖で操縦棹を止めてしまう。

 

そして、その隙を見逃さなかった零戦が、一気に詰めより

上昇したことで、男は敗北を悟ったのである

 

 

――――ああ・・・・俺の負けか。

 

男が零戦と並行する時、操縦席を見ていたが、平賀は興味が無いというように

前を見続けていた。

 

男は苦笑しながら思う

――――やはり、平賀は嫌いだ

 

 

 

この後、才人がのる零戦と模擬空戦を他の搭乗員が代わる代わる

行ったが、結果は全て才人の勝利に終わった。

 

 

こうして、零戦に不満をいう古参搭乗員はいなくなったのである。

 




にじファンにも投稿されなかった新話です。

大空のサムライを読むと、坂井達は最初零戦を嫌っていたようで、このエピソードを元にしました。
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