零の飛空士   作:葛葉

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次期作戦へ

昭和17年5月上旬

 

 

才人は空母から双発機を発艦させ帝都空襲を目論んだドーリットル空襲を阻止する事ができ、才人は防空の英雄として、新聞で大いに騒がせ、ここ数日は落ち着かない日々だったが、5月に入ると下火になり、猛訓練に励んでいた。

 

6空の隊員も才人に負けてなるものかと、一層訓練に熱が入るようになった。また、才人が爆撃機撃墜の貢献させた、21型甲は試作機である事と弾薬の補給を考慮した事から、今は横須賀空に渡され、21型となった。

 

 

才人たちは猛訓練の傍ら、着艦訓練が重視されるようになった。これには隊員誰もが困惑した。なぜなら、基地航空隊には狭い基地こそ有るものの基本的には空母が無いため空母には着艦する必要が無いのだ。

 

むしろ、着艦訓練をする時間があるならば、戦闘訓練を行った方が効率的である。その事についての上司の答えは、空母の積み込みの時間の短縮としか聞いていなかった。隊員たちは釈然としない気持ちを抱えながらも訓練に励んだ。

 

だが、この時の隊員誰もが、太平洋戦争の転換となった作戦に参加するなどとは一人も予想していなかった。

 

 

 

あくる日、才人は上陸日として街に繰り出していた。才人の親友である佐々木は上陸日ではなく、他に知り合いもいないため、一人で街にぶらぶらとしていた。

 

 

――さて、どうしようか?

才人は煙草を咥えながら思案していると後ろから声がかけられた。

 

「才人さん?才人さんじゃないですか?」

「はい?」

その声に後ろを振り返ってみれば

 

「ああ、やっぱり才人さんでした。お久しぶりです。」

「ああ・・・。久しぶりだね、紫苑さん。」

そこに居たのは佐々木の妹、紫苑だった。

 

 

 

立ち話はどうかということで、近くの喫茶店で話すこととなった。

 

 

「才人さん、新聞を見ましたよ。帝都に空襲をもたらそうとした敵を落としたんですって!」

「ああ、そうだよ。哨戒飛行して、たまたま遭遇できたからね。それに俺だけでなく他の皆もいたからだよ。」

「それでも、6機も落とすなんてすごいです。」

と紫苑は輝いた瞳で才人を憧れの人であるかのように見つめるから才人は苦笑するほかなかった。

 

 

それから取りとめのない会話が続いた時、紫苑が質問してきた。

 

「才人さん、質問があるのですが。」

「うん?何か?軍機にかかわらない範囲だったら答えれるけど。」

と前置きし、コーヒー飲みながら紫苑の質問を待つ。

 

 

すると紫苑から衝撃的な質問が来た。

 

 

「才人さん、今度の作戦はミッドウェーに行くんですって。」

「ぶっ、ごほごほ・・・。」

才人は衝撃のあまり飲んでいたコーヒーが肺に入ってむせてしまった。

 

「ごほっごほっ・・・・。紫苑さん、それをどうして知っているのですか?」

「どうしてって、町中が噂になっていますよ。海軍がミッドウェーをやるって、才人さんもミッドウェーに行かれるのですか?」

町中が作戦の事で噂になっているとは、さしものの才人もうっすらと背筋が冷える思いだった。もし、作戦が本当にミッドウェーだったらアメリカ軍は察している事となる。

 

 

だけど

 

 

「残念だけど、俺達の部隊は南方に行く予定なんだよ。だからミッドウェーは行かないと思うよ。」

そう、才人の上司からそう聞いている。だが、あくまで予定であって、突然、内容が変わることもあり得るのである。

 

 

「そうなんですか。残念です、才人さんの雄姿が見たかったのですが。」

紫苑は残念そうにつぶやく。

 

 

時間が来たことで、二人は別れ、才人も真っ直ぐ基地に帰り休暇を終えた。

 

 

 

 

18日となり先遣部隊が移動し、1日遅れて才人たち本隊は一端、岩国基地に落ち着いたのち、23日に積み込みが始まった。積み込む空母は当時、世界最強の機動部隊と謳われていた第1艦隊こと南雲機動部隊であった。

 

南雲機動部隊は先月の珊瑚海海戦により、翔鶴・瑞鶴が抜けたがそれでも最強の部隊に変わりはなかった。

 

才人たちは岩国基地で、次期作戦内容の詳細を知った。ハワイ攻略作戦の一環として、ミッドウェー攻略すると同時に、救援に向かう敵機動隊の撃滅である事を知った。

 

才人たち6空はミッドウェー占領後に防空隊として任務に着くが、それまでに南雲機動部隊の一員として、空母の上空直掩として参加することとなった。

 

才人は蒼龍に積み込む事が決まった。佐々木は赤城であった。

 

 

技量が覚束ない者は直接乗りこんだが、技量がある才人たちは直接空母に着艦した。

 

 

最初は疑似着艦し、有る程度慣れてきた頃に着艦を開始した。

 

 

才人はハルケギニアの世界で竜母艦という空母に似たような艦に着艦した事があるが

ハルケギニアのはロープを何本も横に伸ばしただけのものという原始的なものであった。

誘導等も何一つもなかった。そのような経験がある才人にとっては今回の着艦は易しかった。

 

 

才人は座イスを最大に上げ、風防を開け、赤青の指導橙を横目に見ながら

機首を艦尾に持ってくる。

 

だんだん大きくなる艦体を見ながら

「ちょい左・・・ちょい右・・・・」

微修正する。

 

艦尾を超えた瞬間、機首を起こして三点姿勢に持ってきて、ワイヤーを引っかけた。

ワイヤーは理想的な着艦点といわれる3番に止まった。

 

機体を艦前部に持ってきてエンジンを切る。才人が艦に降り立って艦橋に行き

後続の搭乗員を待って、蒼龍艦長柳本柳作大佐に着任報告する。

 

 

着任報告を終え、柳本大佐は艦橋に消え、やがて指示が出されたのか艦は大きく右に傾いた。

 

艦が傾く様子を体感で感じながら才人は思った。

 

――ミッドウェーか。紫苑の時は何一つも感じていなかったが、今改めてこの場にいると、とんでもないこととなったな。

 

才人は苦笑と共に艦内に入ろうとしたが、ここで凄まじい悪寒を感じた。

 

――っ!この先で何か良くない事でも起きるのか?この作戦は何事もなければいいのだが。

だが、才人の予感は悪い方向に当たってしまった。

 

 

 

蒼龍は日が暮れる夕日に赤く輝いていた。その夕日は凋落か英光を意味しているのか誰にも分らなかった。

 

 

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