零の飛空士   作:葛葉

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ガダルカナルの戦い 総攻撃

 

 

――空襲後

 

飛行場に、何とか着陸した、才人は出撃準備を進めて行ったが、一式陸攻は、攻撃及び空襲により、稼動機は6機まで減少した。

 

更に、対艦攻撃に有効な魚雷は使い果たし、80番の大型爆弾はわずか1発のみとなり、

後は、50番や25番、6番の混載となり、ある1機は6番のみしか積めなかった。

 

 

 

才人たちの零戦も26機残存していたが、とあるSBDが投下した爆弾が弾薬庫を直撃させ、弾薬不足だった。

 

 

 

 

 

 

「すみません。機銃の弾が通常の6割しか積めませんでした」

才人の前に顔を青ざめながら、申告する整備士。

 

 

どの機も弾薬が何割しかつめず、中には1割も切る機もあった。その機体は別のものを積んだが。

 

 

 

「仕方がない。あれだけの空襲だ。自分の機体に6割も積めれただけでも御の字だ。整備ありがとうな」

「いえ、これが自分の仕事です」

敬礼し、駆け出す。

 

 

 

 

 

 

出撃時間はまだ先だ。

 

 

才人は、何ともなしにぶらぶらと歩くと、向こうから坂井がやってくるのが見えた。

 

 

「おう、坂井!生きとったか。死んだかと思ったぞ」

「あ、そりゃひでぇな。この野郎」

 

軽口を叩き合いながら、近づき、冗談を言い合うがやがて、無言となる。

 

 

 

長い沈黙の末に出た言葉は、

 

 

「ひどい戦いだったな」

「ああ。今まで、陸攻が何機か落ちるのを見たことがあるが、今日はひどすぎる」

くそっとばかりに足を蹴る。土ぼこりがむなしく舞う。

 

 

 

「今日だけでも、何人が戦死したことか」

「ならば、これ以上死なせないためにも、俺たちががんばろうぜ」

とニカッと笑う。

 

 

坂井はしばし見て、フッと笑う。

 

「ああ、その通りだな。無力な陸攻を守るのは俺たちだもんな」

拳を作り、拳を付き合う。

 

 

 

 

やがて、出撃時間となり、彼らは大空へと旅立った。

 

 

 

 

 

大空はどこまでも青かった。この地域で戦闘が起きているとは思えないほど青かった。

 

 

 

才人は、零戦を操りながら陸攻を見る。

 

陸攻は、どの機も穴だらけで、無事な機体は1機も無く、中には風防ガラスが割れたままのもあった。

 

 

それでも、エンジンが回り続け、飛び続けれるなら、どこまでも戦い続けるという無言の迫力があった。

 

 

それを見て才人は、心の中でつぶやく。

――俺たちが絶対守りますから。

 

 

 

 

 

 

やがて、敵機動部隊に達した。午前中に見たときと同じように艦艇が多くあった。

 

 

 

F4Fが襲い掛かってきたがその数は少なかった。

 

 

零戦が多く叩き落したからだ。

 

 

 

 

 

と、零戦部隊の一部が分離し、F4Fに向かわず、まっしぐらに急降下する。

 

 

その様子を見ていた、アメリカ海軍の将兵は疑問を浮かべていたが、

敵の狙いに気づいたときには、すでに投下した後だった。

 

 

その零戦隊は6番爆弾を抱えていた。

 

 

さすがに、本職の艦爆よりも命中精度は劣るもの、数撃ちゃあたる理論で

いくつか命中していく。

 

 

次々と爆発する艦艇。だが、船体には被害はなかった。しかし、彼らの狙いは

撃沈では無く、船上に展開する対空兵器が狙いだった。

 

 

両用砲に直撃すれば沈黙し、爆風は機銃員をなぎ払う。

 

 

 

更に彼らの攻撃はまだ終わらず、何度も反転しながら機銃を乱射していく。機銃は将兵を死傷させ、機銃を破壊していく。零戦達は敵艦隊の上空を舞う。

 

 

もちろん、艦艇の対空員も黙ってみている筈も無く、撃墜させようと機銃・両用砲が集中する。

 

 

 

 

とある零戦の機首が砕け、機体がバラバラになりながら堕ちていく。

 

 

 

 

別の零戦は片翼をもぎ取られ、グルグルと横転しながら海面へ突入する。

 

 

 

 

 

ある零戦は、翼内燃料を打ち抜かれ、炎を身にまとう。それを見ていた駆逐艦の機銃員は汚い言葉を発しながら歓喜を上げるものの、表情が凍りついた。

 

 

零戦が、小さく宙返りをうつと同時に、こちらに向かって突入してくるのが見えた。

 

 

「退避――!退避――!」

声を張り上げるものの一足遅く、彼らは炎を身に纏った零戦と爆炎に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

このように、大空を散華する零戦も多かった。

 

 

しかし、彼らの捨て身の攻撃により、陸攻を1機も撃墜されずに攻撃を行えた。

 

 

陸攻の水平爆撃は、80番は残念ながら外してしまったが、小型爆弾は山ほど積んでいる。

 

 

戦後、アメリカ海軍の調査によれば、少なくとも18発以上は命中しているのではないかと推測された。

 

それほどの数だった。空母の飛行甲板が次々と炸裂していくのが、上空からでもわかった。

 

 

しかし、小型爆弾や陸用爆弾が中心だったため、船体へのダメージは少なかった。

 

だが、飛行甲板は完全に破壊することに成功し、迅速に離着陸ができるほどの応急修理は不可能な状態となった。

 

攻撃隊は、目標を果たした。すなわちガダルカナル攻撃阻止という目標を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

才人も、上空でその様子を一部始終見ていた。飛行甲板が破壊されていく様を。

 

 

F4Fは襲い掛かってきたが、その数は少なく、撃退をすることはできた。

 

 

 

高速で退避していく陸攻を尻目に、周囲を見る。一部の零戦は陸攻に着いていったが、多くは、いまだに空戦中であった。

 

 

ふと、近くにSBDが編隊飛行するのが見え、爆撃機も直掩しなければならないほど、敵も苦しいんだなと思ったら、1機の零戦が見えてきた。

 

 

その零戦はあろうことか、対爆撃機ではやってはいけない真後ろ上空から接近しているではないか。

 

 

 

才人は、慌ててその零戦の前に、バッと踊り出て翼を振る。

 

 

零戦は、その姿を認め、離脱してくれた。

 

 

 

才人は、ホッとしながらその零戦の横に着く。

 

 

 

 

 

その零戦に乗っていたのは坂井だった。

 

 

坂井は怒ったように、手を振りながら「ナニシヤガル」と手信号を出した。

 

 

才人もその怒りは当然だと思いながら「バカ ヨクミロ」と返し指を指す。

 

 

坂井はその返事に先ほどの機体を見て、サッと青ざめるのが見えた。

もし、あのまま突っ込んだらどうなるかが分かったからだ。

 

 

才人は、その様子を見て、横から突っ込むぞと合図し、坂井も追随する。

 

 

哀れ。SBD8機はそれぞれ半分ずつ落とされた。

 

 

 

 

 

 

こうして、ガダルカナルの戦いは集結した。

 

 

 

空母が撃沈大破による航空戦力の喪失により、目標を達することは困難と見て、中止が出され、撤退した。

 

 

この輸送部隊に、海軍の追撃は出せなかった。攻撃機が全機修理を必要とし、弾薬・燃料も不足だった。

 

とある歴史家は言う。もしも、この輸送部隊を攻撃し、壊滅させることができたら、

ソロモンしいては、太平洋戦争は日本の勝利に終わっただろうと主張する

 

 

 

 

アメリカ海軍の失敗はこの状態を知らずに撤退したことであった。指揮官はこの日の被害に有力な航空戦力があると誤認したからだ。

 

もしも知っていて、強行上陸していたらガダルカナル島はアメリカのものだっただろう。

 

 

 

 

 

このソロモンの海はまだ血に染め続けるだろう。

 

 

 

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