零の飛空士   作:葛葉

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前触れ

 

――昭和17年10月 ガダルカナル基地

 

 

才人が、悪夢を見てから翌日、才人の顔色は悪かった。

 

 

実は、才人は数日前から体調を崩しており、今も微熱が続いていて体がふらついていた。

 

 

 

「平賀大丈夫か?」

「平賀さん、ご加減はどうですか?」

鈴木中尉や北条3飛曹が心配かけてくる。

 

 

「ああ、大丈夫だ。俺よりも体調の悪い奴が空に上がっているんだ。俺も泣き言入れてる場合じゃないしな」

才人は強がって言う。

 

 

 

「そうか・・・・。空戦には気をつけろよ。お前は俺の大事な部下だ。俺を置いて先に逝くのは許さん!まだまだ教えてもらうことはあるからな!いいな!」

「はい!」

こういうやり取りがあった後に指揮所に行く。

 

 

 

 

指揮所で司令官が上り、声を張り上げる

 

 

「先日、エスピリットサントから出撃する機動部隊をわが潜水艦が発見した。

敵機動部隊はガダルカナル基地を攻撃しに来ると思われる。」

 

 

その声を聞いた後に隊員たちは思わず交し合った。

 

「またかよ」

「アメさんも性も懲りないな」

「いい加減あきらめたらどうなんだろうな」

 

空襲し慣れた隊員であった。

 

 

 

 

 

 

 

8月のガダルカナルの防衛戦の結果、太平洋戦域におけるアメリカ海軍の稼動する空母はワスプただ一隻だけとなった。

 

残るホーネットとエンタープライズは修理中、レンジャーは大西洋で活動中であった。

 

 

 

ワスプは、護衛空母ロングアイランドやエスピリットサントから艦載機を補充しながら度々ガダルカナルへとゲリラ的に空襲を繰り返していったが、9月の終わりごろに木梨艦長が指揮する伊―19の雷撃により撃沈してしまう。

 

 

これにて終わりだと思われたが、丁度修理が完了したエンタープライズとホーネットが南太平洋に到着しており日本海軍に安寧の時を与えてくれなかった。

 

 

 

 

連合艦隊司令部も直接的な脅威を排除すべく、エスピリットサント攻略を持ちかけるも陸軍や軍令部がミッドウェー海戦前後の強引さや戦訓から、猛反対し攻略作戦は行われなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、落ち着け。今回は我々だけでなく機動部隊も応援にやってきた」

 

その言葉に隊員たちの間にざわめきが出てくる。

 

 

「ホントかよ」

「こんどこそ宛てになるんやろな」

「臆病者の連中だぞ。相手にすんな。頼るだけ無駄だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜなら以前、敵機動部隊が襲撃してきた時に、慌てて駆け付けるも結局空振りに終わり、数日間張り付くも燃料が問題となって、ずごずごと引き返す他なかった。

 

 

そして、燃料やメンテナス問題もあり、出撃することはなく、トラックにずっと引きこもってしまう。

 

 

また、」ガダルカナルへと航空機輸送中だった龍驤がアメリカ潜水艦によって撃沈されてからは、ますます消極的となってしまう。

 

 

 

しかし、今回は早く発見できたため、機動部隊も重い腰を上げて出撃と相成った。

 

 

 

 

「そこで、われわれの任務は敵艦隊上空の制空確保である。後からやってくる我が機動部隊の攻撃隊の安全を確保するために、戦闘機を撃滅してほしい。以上、解散!」

 

 

 

 

隊員たちは、口々に不満を言いながら自分の搭載機へと向かう。

 

 

このころのガダルカナル基地の搭載機は陸攻や艦爆などの攻撃機は少数であり

零戦が大半を占めていた。

 

 

また、零戦も大半が21型・21型甲であるが、新型機の22型も見られた。

 

 

22型は栄エンジンを12型から21型へと換装したうえで、機体の燃料などに簡易防弾タンクが施されており、速度はさしたる変化は無いものの総合的に見ればより強くなったといえるだろう。

 

 

 

しかし、才人はその新型機には乗らずに、未だに蒼龍時代から乗り続けてきた21型を

使用していた。

 

他の隊員たちの零戦が被弾・故障などで搭載機が交換されるのが多い中で

才人の機体は一切そういうことがなく乗り続けており

ほかの隊員たちからも珍しがられていた。

 

 

 

 

「おはようございます、平賀1飛曹」

「ああ、おはよう。俺の零戦に異常はないか?」

才人は整備士に挨拶しながら尋ねる。

 

 

「はい、異常はありません。むしろ今までよりも快調です。

今日の戦果報告楽しみしています」

「そりゃ良かった。期待して待っててくれ」

 

ポンと肩をたたくとそのまま乗り組む。

 

 

 

いつもと変わらない座席の光景。計器がたくさんあり、上に照準器のパネルがある。

その向こうには整備士が忙しく駆け回っていた。

 

 

 

しかし、その光景がいつもと違うようにも見えた。言葉にはっきりと表せないが何かが違っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

それはまるで

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が本当にここにいてもいいだろうかという違和感が・・・・・

 

 

 

 

――――っ!何を考えている

頭をぶんぶんと振る才人

 

 

 

 

 

――――朝のことは夢だ!ルイズはあんな簡単にくたばるはずがない。それに

才人は、左手の甲をなでる。今は手袋がかぶさって見えないが、そこにはガンダルーヴのルーンが輝いているはずだ。

 

 

 

 

 

――――このルーンが輝き続ける限り、俺は帰ってくると誓ったんだ。

 

 

 

才人は、そう喝を入れて不安を取り払う。

 

 

 

 

しかし、その時に感じた小さな不安が大きな失敗になるとは

神ならぬ才人には知らなかった。

 

 

 

 

 

やがて、彼らは大空へと出撃していった。

 

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