零の飛空士   作:葛葉

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少しさかのぼります


外伝 爆龍隊始動

――――昭和17年8月

 

 

改装空母隼鷹で艦爆の乗組員をやっていた俺は、隼鷹から退艦の上で横須賀航空隊へ

転属を命ぜられた。

 

 

俺は疑問に思いながらも、命令どおり、退艦した上で、横須賀へと移動したら

そこで懐かしい人物に出会った。

 

 

 

「おう、矢野久しぶりだな」

 

俺が、蒼龍の乗組員時代に勤務した時の艦爆隊長の江草隆繁少佐であった。

開戦時の真珠湾奇襲攻撃も一緒に出撃した。

 

 

その後、インド洋までは、一緒であったが4月に隼鷹の乗組員に命ぜられてそれっきりだった。

 

 

「はい、隊長も変わらないようで、ご安心しました。ところでなぜ、私が呼ばれたのでしょうか?」

 

 

俺は、疑問に思っていたことを尋ねる。転属理由も説明されていなかったからである。

 

 

 

「うむ、その疑問はあるだろうが、説明するよりも実物を見たほうが早いだろう。俺に着いて来い」

 

 

 

俺は、江草少佐に着いて行き、とある格納庫に到着し、機体が現れた。

 

 

「これは・・・」

 

 

それは、液冷エンジンを積んだ流麗な機体で、冷却器がP-40と同じように発動機の下に取り付けられながらもP-40よりも美しかった。

 

 

「隊長、これは・・・。ドイツ機なんでしょうか?」

 

 

日本機にはなじみのない液冷エンジンが積んでいるのだ。ドイツ機からの輸入機だろう。

 

 

しかし、それは江草少佐が否定した。

 

 

「違うな。エンジンこそドイツ製だが、機体の設計は日本独自のものだぞ。

これは、まだ未採用だが、13試艦爆と呼ばれる機体だ」

 

 

 

江草少佐の言葉に改めてみれば、確かに日本機らしい丸みなどがあった。

 

 

 

「隊長、私の任務はこれの試験なのでしょうか?自慢ではありませんが、丁寧に飛ばし、他の人に伝えれるほど頭はよくありません」

 

 

 

この仕事は、俺には絶対不向きだと自覚している。

 

 

 

江草少佐は笑いながら言う。

 

 

 

「わははははは。そうだな、お前さんはテストパイロットにゃ向いとらん」

 

 

しかし、そこで改めてこっちを見る

 

 

「だが、ある意味試験だな。それも飛行試験ではなく、実戦テストだな。この試作機の

実戦テストは済ましたが、艦爆としての実戦は済ましとらん。そこで」

 

 

江草少佐がギロッと睨む。

 

 

「貴様を呼んだ。急降下に関しては、俺よりも貴様のほうがうまい。だから、この艦爆に乗って実戦をやってほしい。やれるか、矢野!」

 

 

 

俺は、いろいろと聞きたいことがあったが、新鋭機の実戦テストという心弾む任務や江草少佐が俺を頼りにしていることから、一二もなく引き受けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日から、座学を受け、ある程度、完熟したところで、飛ぶこととなった。

 

 

その時に驚いたのは、水平速度が時速500kmを超えたことで、この速度は今まで急降下時しか体験したことなかった。

 

当然、急降下速度は速くなり、600kmを超える速度を出すことができた。

 

また、99式艦爆よりも小型にまとめられているから、運動性能もよかった。それでいて、爆弾も前機の倍である500kgを積むことができた。

 

 

 

しかし、その高速性を代償するかのように着陸性能は悪かった。

 

着陸時の140m以上を超えており、零戦や99式艦爆の100km未満と比べると一段と速くなっていた。

 

また、液冷エンジンが前方を見えにくくする原因となった。液冷エンジンは後に故障が多発するがこの試作機は1基1基丁寧な造りとなっていたため、故障は起きなかった。

 

 

 

 

また、隊員も矢野だけでなく、他の隊員も集められており、江草少佐や矢野も入れてペアは12組で、この当時、最強の艦爆隊と期待されていた。

 

 

後席に付く俺のペアは、大野泰三3飛曹長で、南方作戦に参加したことがあるそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

訓練が進み、機材の数が増えると、いよいよ母艦へと移動することとなった。

 

 

母艦は、工廠が不断の努力で修理を完了させた、蒼龍であった。

 

 

なぜ、蒼龍が選ばれたかというと、ミッドウェー海戦前まで13試艦爆の偵察型の

運用テストを行っており、整備士も何たるものかが分かっているものと判断したからだ。

 

 

 

 

矢野にとって、数か月ぶりの母艦への里帰りである。江草少佐が何も問題なく、着艦を

決めており、よし俺もという気持ちとなった。

 

 

 

第2、第3旋回を終え、そして最後の旋回である第4旋回を終え、徐々に大きくなる、母艦の艦尾を睨みながら、艦の横に設置されている、赤と青の着艦指導灯を合わせながら、フライパスする。

 

 

艦尾を超えた瞬間、後席に座っていた大野が「艦尾、かわった」と大声が聞こえた瞬間にスロットルを絞り、操縦桿をグイっと上げ、機尾に付いている着艦フックで、着艦ワイヤーを捉える。

 

 

ドンっと衝撃はあったものの、何も問題はなく、前部エレベータのところへ運ぶとスイッチを切り、降りる。

 

 

蒼龍は、ミッドウェー海戦で被弾したと聞いていたが、何も変わった様子もなく、ホッと安心したような、つまらなさそうな複雑な感情があった。

 

 

 

と、相棒である大野が話しかけてきた。

「矢野さん、これからどうするのですか?」

 

 

大野は南方での経験はあるものの、母艦に乗り組むのは初めてだという。

 

 

「ん?まあ、色々とあるが、まずは、他の奴らの着艦を見学しようぜ」

 

 

 

こうして、他の隊員が着艦をしてきたが、前機よりも着艦速度は速くなっているものの、腕の1流のある彼らが集まった部隊であるから、1機も事故なく着艦できた。

 

 

 

 

 

こうして、蒼龍は零戦や他の機材を受け入れ、一路トラックへと目指した。

 

 

 

また、13試作艦上爆撃機の名前はこの当時はなく、後に「彗星」と名付けられるが

この時に集められた艦爆のパイロットからは、爆龍と名づけられており、このことから

彼らは非公式に爆龍隊と名乗るようになった。

 

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