零の飛空士   作:葛葉

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内地

 

―――昭和17年

 

ソロモン海戦で不覚にも負傷した才人は、かろうじてガダルカナルへと

帰還することができた。

 

 

しかし、左腕が骨折・裂傷、頭部や顔面に破片を受けるなど重傷であった。

 

 

すぐさま、ラバウルへ送り出され、そこで破片を摘出し、処置を施した後に

内地に送り返された。

 

 

 

本格的な治療を行うと同時に、上層部が才人に用事があったためであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――1ヶ月以上が過ぎた

 

 

 

年の瀬が近づき、年末の準備でみんなが忙しい横須賀病院に才人の姿があった。

 

 

 

頭の包帯は取れたが、頬に傷跡がつき、左手にも付いていた。左腕のギプスは取れたが

まだ満足にも動けなかった。

 

 

 

だが、立って歩き回ることはできたので、ぶらぶらと歩き回りながら

屋上でタバコを吸っていた。

 

 

 

―――内地は平和でいい・・・。

 

タバコを吸いながらそう思う。服装も質素な服に変えられて皆忙しそうだったが

生き生きとしていた。

 

戦地では、今もどこかで命が散っていくのに、ここは嘘のように平和であった。

 

 

 

―――――その平和も後数年で終わってしまう・・・・。

 

才人は表情を暗くした。

 

 

この平和でのどかな日本が、空襲によって焼け野原にされ、原爆なども併せて多くの命が奪われていくことを知っているからだ・・・。

 

 

 

ぶんぶんと頭を振る才人

 

 

――――何を思っているんだ。この世界でもそうなるとは限らないだろ。

 

 

 

そして、空を見上げる。空は雲ひとつもなく、ただ青空が広がるばかりであった。

 

 

――――ルイズと約束したんじゃないか。この悲劇を少なくする!変えて見せると!

 

ルイズの前に改めて誓う才人であった。

 

 

 

 

 

取り留めなく、時間が過ぎたある日、海軍上層部に呼び出され、指定された場所に行くと勲章をぶら下げた、お偉いさん方がたくさん並んでいた。

 

 

聞けば、東京防空戦やミッドウェー海戦で多くの敵機を落とし、防衛できたことに対する感状及び勲章の授与であった。

 

 

 

それを聞いた才人は、内心呆れていた。すでに戦況は厳しいものと聞いている。

それなのにお偉いさん方は、過去の栄光を引っ張り出してまでも

国民に真実を伝える気がないということがよく分かったからだ。

 

 

しかも、ご丁寧に新聞屋も呼び出されており、隠しだす気満々であった。

 

 

才人は色々と思う所があったが、顔には出さず、もらえるものは貰い

新聞のインタビューは適当に済ました。

 

 

 

 

恩賜の日本刀と金なんちゃらの勲章を貰ったが、空戦には役立たないので

微妙に扱いに困るものだった。

 

 

また、功績によって、少尉に(昭和17年11月から階級が改定されて特務が取り除けられた)2階級特進した。

 

 

元々、飛曹長の昇進が予定されていたため、1階級進級を早めるのは何も問題なかった。

 

 

 

こうして、お偉いさん方に適当にご機嫌取りを行い、さっさと帰ることにした。

 

 

才人は、タバコをくゆらせながら、内心

 

 

――――これじゃ、日本が負けたり、戦後に軍隊嫌いにもなるのは当然だな。

 

 

暗くなった夜道に、タバコの白煙が白く立ち昇る。

 

 

 

――――本当に、日本を守れるのだろうか・・・・。

 

 

 

空を仰ぎ見る。

 

 

 

現代の都会では考えられないほど、夜空には星がたくさん瞬いていて、儚く消えてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、また数日が過ぎた。

 

 

新聞でまたもや大々的に報道されたため、ますます外出がやりづらくなった。

 

 

 

しかし、この日は違った。

 

 

 

才人より先に退院した、佐々木から来いという連絡があったためである。

 

 

 

才人も会いたかったので、サングラスを懸け、帽子を深心にかぶって町を歩く。

 

 

 

今のところ、ばれてはいないようだ。

 

 

 

とある、うなぎ屋に到着し、入る。

 

 

 

 

そこには、佐々木がいた。

 

 

 

「おう、こっちだ!!早く来いよ!」

 

 

才人も向い側に座り、帽子とサングラスを外す。

 

 

「やれやれ、窮屈でかなわん」

「似合ってるぜ、その顔」

「やめてくれよ。その冗談は」

 

 

ははははっと和気あいと話し合う。

 

 

 

しばらくすると、声がかかった。

 

「才人さん、お久しぶりです」

 

 

その声を見れば、佐々木の妹である紫苑だった。

 

 

 

数か月ぶりであったが、変わらぬ姿で安心だった。しかし、なぜかおめかしをしていた。

 

 

 

 

「久しぶりだね。しかし、なぜ紫苑がここにいるんだ?」

 

 

タバコに火をつけながら尋ねる才人。

 

 

「おう、それはだな・・・・・」

 

 

タバコの煙が肺に来たところで衝撃発言が来た。

 

 

「お前とお見合いするためだ」

 

 

 

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