魔術士フランは暇な400歳児   作:ろんりーすとーん

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馬鹿は一人でたくさんです・・・

 

 

 かっ ころん、乾いた音をたてて、黒のナイトが、白のポーンを討ち取った。

 

 頭を目一杯傾けて見ても、尚もてっぺんの見えないほどの大きな本棚が、奇妙な威圧感を感じる程の大伽藍を形作る———ここは『魔法大図書館』。そのとある一角で、ボードを挟んで軍遊を打つ、2人の少女がいた・・・。

 

 

「フランが爆走していったのって、そういう理由だったのね」

 

「ええ、どうしたものかなぁ?・・・・・ああ、こっちもどうしたものかな」

 

「詰みね、まだやる?レミィ」

 

紫色の少女・・・パチュリー・ノーレッジの問いかけに、レミィと呼ばれた、この屋敷の現当主は首を横に振った。

 

「やめよ、負けたわ・・・ああ小悪魔、お茶を」

 

「イエス・マイ・ロード」

 

 レミリアから指示をうけ、赤毛の小悪魔は紅茶を淹れに奥へ引っ込んで行った。この小悪魔以外にも、あちこちで多くの小悪魔達が本の整理を行っている。ここ、パチュリー・ノーレッジの住まう魔法図書館には、日々多くの本が流れ着く、そのため、パチュリーの使い魔たる彼女らは毎日大忙しだ。

 

「それとパチェ、うちのフランが、貴女のところの小悪魔を一匹持って行ってしまったようね。すまなかったわ」

 

「別に構わないわよ、使い魔は30からはいるし、一匹減った所で作業に支障はないわ・・・けほっ」

 

 手元に置いていた大きな魔道書を広げて、パチュリーは一つ咳き込んだ。生来、酷い喘息持ちである彼女は、この埃っぽい図書館内も環境もあいまって、たった今の言葉を紡ぐだけでも一苦労を労した。

 

「はぁーあ・・・今頃どこで遊んでいる事やら・・・」

 

レミリアは椅子に深く腰を預けると、深々と息を吐き、重々しく独り言ちた。

 

 

 

第二話 〜馬鹿は一人でたくさんです・・・〜

 

 

 

 

 白い濃霧が視界を埋める森の狭間、春の空気は澄みきって、小悪魔の肌を冷たく撫でた。

 ———ああ、司書服って以外に薄かったんだなぁ・・・・いや、春先だし、寒いのは当然かもしれないけどさ。白い吐息をはき、両手で自分の身体を抱え込む銀髪の小悪魔・・・・メインキャラではあるが特に名前は無く、ただただ彼女は小悪魔でしか無かった。哀れ弱小魔族。

 

「いや、別に名無しだからって、不便に感じた事はありませんけどね・・・」

 

 誰に語りかけるでもなく、寒空に独り言ちた彼女の、その尖った耳には、つんざくような魔力の変性音が遠く聞こえてきていた。

 ぎゅばっ きゅいんっ・・・・あえて文字にするならこんな風であろう音は、彼女の主の友人の妹が、とある妖精とのじゃれあいで立てている音だった。否、すでにじゃれ合いの域を越えてはいるが、幻想郷故、致し方ないのであろう。そう諦めをつけた小悪魔は、再びその光景へと、視線を戻した・・・。

 

 

「サイキョーの妖精に、アタイはなるッッ!!」

 

「チルノちゃん!もうやめよーよぉ、吸血鬼相手じゃ、どうやっても勝ち目ないよぉ」

 

「いいから見てて!あんなチビ、アタイがすぐに————」

 

 

—ドムンッ

 

 

「ぐふぅっ!?腹パンはヒドス!!」

 

 

「あはははははは!!何処見てるの?もう一回いくよ!」

 

 青い髪、青い瞳を持つ少女の姿をした妖精・・・・通称『チルノ』は、下腹部に叩き込まれた一撃に耐えきれずに、地面へと落下した。そこへ追撃をかけるように、悪魔の妹、フランドール・スカーレットの声が、寸分の容赦も無く降り注ぐ。

 

 

「我は放つ光の白刃!!」

 

 

 ぎゅばっ!————

 白い閃光が降り注ぎ、チルノの小さな身体を飲み込む。じゅう!、という音がして、チルノがいた場所から水蒸気が立ちのぼった。

 音声魔術・・・・とあるライトノベルの影響で、フランが作り出した魔の業の一種。声にのせて世界に魔力を放ち、『理想の世界』を作り出し、『本来の世界』との入れ替えを行う事によって、あたかも物理現象が起こっているかの様に世界に錯覚させる事により、その効果を発揮する術。これを編み出す事により、フランは一時的にだが、自身の固有能力を制御する事にも成功している。

 

閑話休題。

 

 

「ち、チルノちゃんが・・・・跡形も無くっ」

 

 悲痛な叫びをあげたのは、緑髪の少女だった。彼女は名を『大妖精』といい、通称大ちゃんと呼ばれる上位妖精の一種だ。そんな彼女の友人、氷精のチルノが、たった今フランが放った魔術により、跡形も無く消え去った。否、正しくは蒸発した。

 妖精は自然の化身、媒介とする自然環境があれば、一定のクールタイムを置く事で復活が可能ではあるものの、流石にこの仕打ちは酷いと言えよう。『鬼畜無双』の名で通る当代の巫女とて、ここまでの事はしない。だが、フランの能力が制御されている事を考えれば、これでもまだマシとも言えるのが悲しい実状だ。

 

「あーあ・・・可哀想に。まあ、妖精にしては随分と耐えましたがね」

 

 そんな光景を、遠巻きに見ていた小悪魔の呟きをゴングに、殺戮劇的なじゃれ合いは終了した。最も、小悪魔の目にはじゃれ合いなどでは無く、死にかけのネズミをいたぶってから殺す野獣が一匹見えただけであったが。

 

「全く・・・・妹様?いつまでこの湖にいるんですかぁー?」

 

「雲が切れて、日が出て来たら次にいくわ、それまでは水蒸気でも作って遊んでるわよ」

 

 いや、いくらなんでもその言い方は酷過ぎやしないか・・・完全に畜生の言い分だなぁ。などど軽く哀悼の意を示しつつも、寒さに震えて祈り手を作る事は断念した小悪魔であった。そもそも、小悪魔は悪魔故、祈りとは無縁である。

 紅魔館を飛び出してかれこれ半日以上、湖に着いた途端に始まった闘劇は、とりあえず暫くの休憩に入った。小悪魔は長い銀髪を、マフラー代わりとばかりに首に巻き付け、吐息とともに、やけくそ気味の一言を吐き出した。

 

 

「お馬鹿は一人で十分なのになぁ・・・・疲れるって、もうっ」

 

 

苦労人小悪魔の、苦労の絶えない苦悩の旅路は、まだ・・・・始まったばかりである。

 

 

 

 

少女蒸発中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本作のフランちゃんは狂ってません(壊れてはいますが)、レミリアお姉ちゃんは妹に優しいし、優しくしてあげられる状況にありまする。ビバ!優しい世界!

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