「いいからチ○コ見せればいいじゃん、確実でしょ?何で夕張怒られるの。着替え中の事故ってことにすればセクハラにもならないし」みたいなこと言う人がいるんですが。
戦場に立てるとはいえ、精神年齢だいたい思春期位の女の子に猥褻なもの見せて心に傷を負わせる危険性とか、もうちょっと考えが及ばないのだろうか………。
なんてシリアスに考えなくても、ギャグで流せればそれが一番だけどね!
提督。
艦娘を従え、指揮し、共に歩む存在。
ある特殊な資質が必要とされる為、その需要に反して絶対数は少ない。
“この世界”において一般に認知されている定義としてはこんなところだろう。
ではもう少し突きつめて言い表すとどうなるのか、というと。
ある者は楔(くさび)、と苦々しさを抑えない渋面で答え。
ある者は縁(よすが)、と華やかな喜色を浮かべて微笑み。
ある者は軛(くびき)、とただ鉄の様な無表情で言い切り。
ある者は拠代(よりしろ)、と軽く淡々と話を流していく。
どれも正しい。
艦娘が“正体不明”である以上、その必要性から生まれた提督という存在もまた、確と断言できる形容も存在し得ない。
ただ言えるのは、艦娘にとって提督の存在が必要不可欠であるということ。
艦娘がいなければ提督という肩書に何の意味も無いが、艦娘とて提督がいなければ存在することが出来ないということだ。
が、何事も数が増えれば例外は出てくるもので。
彼にとってある意味不幸だったのは、そんな提督がいなくても動ける“はぐれ”の艦娘ばかりが集められた鎮守府に配属されたこと。
彼にとってある種滑稽だったのは、そんな“はぐれ”の鎮守府でも提督が居るに越したことはないと、稀少だがその稀少性に意味は欠片もない艦娘達ばかりで周りを固められたこと。
稀少故に面子が偏りがちになってしまう苦労は勿論、そも普通の艦娘であれば主張するまでもなく『鳳翔』は提督であると納得した筈なのだ。
艦娘という“正体不明”を現実に形として繋ぎ留めるのが提督で、無くては自分達が自分達で居られないような命綱なのだから、嫌でも意識せざるを得なかった筈だった。
そして、艦娘という“女”を繋ぎ留めるなら“男”ということなのだろう―――提督は男しかいないのだから、提督であると納得させれば性別もまた正しく認識させることができる。
だが、これまで『鳳翔』の周りにはその特殊性からどれだけ言っても納得する艦娘は居なかった。
――――だから、発想を逆転させる。
いないなら、増やせばいい。
認識とはしっかりしているようでも所詮は集団の総意に容易く惑わされる。
逆に、その集団の総意とやらも、発言力の高い者が先頭に立って証言すれば、その通りに動いて行くことだって多々あるのだ。
故に“建造”する。
新しい普通の艦娘を。
『鳳翔』を提督としてしか認識し得ない、状況を動かしてくれる仲間を。
それが戦艦や正規空母なら、実力もあるし精神年齢も一部ドイツ製を除き高めの為、なおのことよし。
ヒエラルキー、というほどかっちりしたものではないが、立場と発言力が自然と高まる存在であれば。
そこを起点として、あるべき認識をしっかりと広めていく。
それが今回の『鳳翔』の作戦だった。
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。唱えるつどに五度、ただ満たされる刻を破却する………」
(ええと、これ本当に言わないといけないのでしょうか………?)
その為に深夜の工廠で一人意味不明な呪文を唱える姿は、もはや始まる前から不安要素だらけだったが。
当然ながら本人に自覚は無いが、例の友人に「成功すれば最強の英霊を呼べる」などと吹き込まれてこのように詠唱などしてしまう天然さが誤解が解けない要因の一つである。
まあ今回も嘘は言っていない………艦娘も英霊と言えば英霊と言えなくもないし、正しく最強の存在を呼べれば成功も成功なのだから因果関係が逆とはいえ間違いでもない。
更に弁護をしてしまえば、『鳳翔』はこのたった一度の“建造”と呼ばれる行為を、失敗する訳にはいかなかった。
鋼材(のようなもの)、弾薬(のようなもの)、燃料(のようなもの)、ボーキサイト(のようなもの)、全部まとめて資材(のようなもの)。
人類が鉱山や油田から掘り出して精製するものではない。
それ役の妖精がどこからか持って来るもので、艦娘の活動に必須であり、また纏まった量を妖精に預ければ艦娘を“建造”することも出来る。
そして、戦艦など元の艦種のサイズが大きく打撃力の高い艦娘を“建造”しようと思えばそれだけ多くの資材を使うらしい。
この鎮守府では運用も考えると増やすのは一隻分が限度、それが工廠どころか鎮守府の宿舎以外に人の気配がなくなるこんな時間までやりくりに忙殺されていた『鳳翔』の判断だった。
そこに建造に際して狙った艦娘どころか艦種すら必ず出てくるとは限らないと来れば、魚の頭に対してでも祈りたくもなるだろう。
「汝三大の言霊を纏いし七天………」
それにしたって詠唱はないが、まあ少し恥ずかしさで顔を赤らめていながらも辞められない『鳳翔』がなんだか微笑ましいのと、それに合わせて資源を謎な状態にこねくり回す作業をしている妖精がBGVのおかげでちょっと楽しそうなので問題は無いのかもしれない。
そして、妖精が溶鉱炉(のようなもの)に加工した資源を投げ入れる………曖昧な表現が多いが、実際そうとしか言いようがないので仕方ない。
『鳳翔』提督のはじめての建造、故に今まで腐らせていた溶鉱炉の出力を上げて建造に掛かる時間を爆発的に短縮するバーナー(のような……って、そろそろいいか)を妖精がセットした、それにより。
「抑止の輪より来たれ、天秤の護り手よ――――!」
詠唱が終わると同時に、暖かい光を纏いながら和装の少女が『鳳翔』の眼前に降り立つ。
………ここで突然一航戦か五航戦あたりが現れ「サーヴァント“アーチャー”、召喚に従い参上した」とか言い出したらこの話はいい感じにカオスになって収集がつかなくなるのだが、幸いそんなことはなく。
現れたのは。
「扶桑型戦艦姉妹、妹のほう、山城です。
あの、扶桑姉さま、見ませんでした?」
サブタイで判りきっていたとは思うが、この子だった。
…………。
第一声がアレだったものの、この鎮守府に扶桑という戦艦をピンポイントで呼び込んで運用するのは難しいと告げると、山城は残念そうな顔をしながらも納得してみせた。
家族が恋しいのだろうに、健気な子だ…………なんて少し大げさとも言える評価を『鳳翔』がしたのは、山城がちゃんと自分を提督だと認識してくれた感慨深さと、あとは記念すべき初めて自分で建造した艦娘という欲目があるか。
要するに、『鳳翔』の琴線に触れたということ―――――。
今後の待遇は、お察しである。
宿舎に割り当てられた山城の個室に、いやまあ時間帯的に仕方ないのだが『鳳翔』自ら案内したり。
「こちらが山城さんのお部屋になります。他の場所の案内は夜遅いのでまた明日ですね、その時に皆さんとの顔合わせになります。足りないものがあればなんでも言ってください」
「(ちゃんと綺麗に掃除してくれてる………)くす。ご丁寧に、ありがとうございます」
翌朝、朝食の用意以外の全ての予定を後回しにして午前中いっぱい山城を勝手知ったる鎮守府の隅々まで案内し、他の艦娘達に紹介したり。
「不知火(しらぬい)さん、こちら“俺が建造した”山城さんです。少し引っ込み事案な娘みたいなので、仲良くしてくださいね?」
「はい。不知火です、よろしくお願いします。それはいいのですが……建造?転任の間違いでは?」
「??よろしくお願いします。確かに私はこの方に建造された山城ですけれど、あの、何か?」
「……ああ、“提督ごっこ(いつもの)”ですか。いくら新人とはいえ、口裏合わせてまで付き合いを良くする必要も無いのですよ?」
「………??」
「ふ、うふふ。こんなリアクションももう終わりかと思うと、不思議と寂しいくらいですね……っ」
(不知火知っています。そういうのを“落ち度(フラグ)”と言うのだと)
山城の初陣に付いてわざわざ出撃し、しっかりフォローしたり。
「戦闘終了。頑張りましたね、山城さん」
「はぁっ、はぁっ……………ぁ、終わった?
―――――その、ありがとうございました。ちゃんと戦えるか不安でしたけど、わざわざ戦場にまで付いてきていただいて、気合が入りました」
「それはよかった。もっと俺に頼ってくれてもいいんですよ?」
「鳳翔さん、それ私のセリフ………」
「しかし、ごめんなさい差し出がましいかも知れませんけれど、余所でも指揮官がこんな風にわざわざ前線に?危険では?」
「敵戦力の見極めは済んでいましたから。指揮する側もたまには肌で戦闘の空気を感じていないとダメですし、何より山城さんの初陣ですしね。
確かにちょっと無茶ですけど、頑張っちゃいました」
「……っ、ありがとう、ございます!」
他にも、鎮守府総出で開いた歓迎会の他に、個別で初陣お疲れ様な労いのお茶会を二人でやったり。
掃除中にひっくり返したバケツの水を被ってしまったのを丁寧に拭いてあげたり。
「どうせ私なんか他の戦艦が来たら……」と窓から物憂げに青空を見上げ、謎のネガティブになっているのを真剣に悩み相談したり。
やはりお腹を痛めて産んだ子は可愛い………では絶対にないが、とにかくそんな勢いでいつも以上に世話を焼くというか目を掛けていた。もちろん、贔屓などとは言われない程度にだが。
その甲斐あってか『鳳翔』は山城と良好な関係を築くことはできた。
とても懐かれたのか、いつしか特別な呼び方をされる間柄になっていた。
「母さま」
「――――――」
良好な関係を築くこと“は”できた。
“特別な呼び方”をされる間柄になっていた。
「山城さん……?俺、提督で、つまり男ですよ?」
「?はい、私の母さまです」
一体どんな科学反応を起こしたのか。
明らかに使う言葉を間違えているのに、逆にこちらの認識が不安になるほど晴れやかな笑顔で山城は首を傾げる。
私なにかおかしいですか?なんて煽り目的ではなく素で言いそうな、純真な笑顔にしか見えなかった。
「その呼び方は、ちょっと」
「そんなっ!?私にとって、母さまは母さまで、………呼んでは、いけませんか?」
「ああっ、いいです大丈夫ですそんな風に想っていただけて嬉しいですっ!だから泣かないでください!!」
そして、妙に泣き顔が映えるというか罪悪感を掻き立てるというか、そんな影のある少女の顔が歪むのは演技に見えなかったし、一度は求めた訂正をそこに押し通すこともできず。
結局『鳳翔』は山城に奇天烈な呼び方を続行されることになってしまう。
当然ながらこんな山城に、鎮守府の他の面々に『鳳翔』が男であることを認識させる仕事など期待出来る筈も無く。
(どうしてこうなった………)
今回も『鳳翔』の思惑は、いつも通りというかお察しの通りの失敗に終わったのだった。
ある意味、この妙な天然具合は親が子に似たのだろうか。
山城側はともかく、『鳳翔』は認めないかもしれないが。
落ち込みながら、執務室の机でここ暫く山城に構い続けたことで溜まっている書類仕事に現実逃避することにする。
「あの、母さま。お傍に行っていいですか?」
「いいですよー……」
「母さま、うなじも綺麗。髪、触っても?」
「ご自由にどうぞー………」
「や、やった……!」
半ばやけになって作業を続け、後ろから甘えてくる山城は自由にさせるままの『鳳翔』。
故に気付かない。
「ああ、本当に素敵。私の“創造主(かあ)さま”―――――――――」
長い睫毛が水気を帯びた、山城の眼から輝く妖しい光。
陶酔するままに、紅く笑み緩んだ頬。
気付く訳が無かった。
今回はきれいなサッ(ry