東方太陽史   作:ほくまる

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回顧

 「何か」を乗せている、というが見た時から分かっていた。あれはおそらく妖怪だろう。もっとも、霊夢に退治されたせいで分からなくなっているが。

 

 それを乗せた荷車は、相当重く見えるが、霊夢は重そうな様子も見せないでどんどん歩いて行った。それによって道には大量の血痕が残っていた。

 

 村の人はほとんどが家の中に閉じこもってしまい、閑散としてしまった。それが当然なのだろうと思うと、あまり動じずに霊夢に近づこうとする自分はいったい何なんだろうと心の中で自嘲した。

 

 僕は彼女に追いつき、彼女と並んで歩いた。それでも彼女は気にも留めない。僕は口を開いた。

 

「僕のこと、覚えてますか?」

 

 霊夢は振り向きもしない。何も聞いていなかったかのようにどんどん足を進めていく。

 

 それでも僕は彼女から返事を聞きたいためにもう一度質問しようとした。しかし質問する前に彼女は言った。

 

「私に近づくな」

 

 その瞬間、自分は見えない壁にぶつかったように後ろに倒れた。自分でも何が何だか分からなかった。

 

 霊夢はその場で起きたことが全く理解ができない自分を置いてすたすたと歩いて行ってしまった。彼女が見えなくなるまで自分は固まっていた。

 

そこに通りすがりの男性が近寄ってきた。

 

「君は馬鹿だなあ、今の博麗の巫女に近づこうとしたら何をされるか分からないぞ」

 

 そう言って手を差し伸べてくれた。僕はその手を取って立ち上がった。

 

「どういうことですか?」

 

 その男性は、新しい博麗の巫女が誕生したというので興味本位で博麗神社と言う場所に向かったらしい。

 

 博麗の巫女と言う人間はこの幻想郷に異変が起きるたびに動き、そして解決するという。これまでにもこの里を何度も救い、人々を守ったというのだ。

 

 その男は興味があることには積極的に顔を突っ込みたいという性格だと自分で言っていた。なので今回もその思いで博麗の巫女がいる博麗神社に向かったのだ。

 

「そして俺は生い茂る獣道を抜けてそこに辿り着いたんだ。 途中人喰いの妖怪に追いかけまわされて大変だったが、なんとか助かった。だが俺がそこで見たものは……」

 

 彼はそこで自分の身長の三倍もの妖怪を博麗の巫女が退治しているのを目の当たりにしたという。ただ退治しているだけならまだましだっただろう。

 

 博麗の巫女は一方的にその妖怪を嬲っていたのだ。札のようなものをその妖怪に張り付けては妖術か、あるいは呪術のようなもので妖怪を攻撃し続けていた。

 

 その術によって閃光が迸り、それと同時に妖怪から血が噴き出す。全身に鳥肌が立つような妖怪の叫び声が山中に響き渡る。妖怪の身体の肉が焼ける臭いなのか、酷く焦げ臭く感じた。吐き気とその光景に対する混乱とで、訳が分からなくなりその場で立ち尽くした。

 

 少しすると博麗の巫女が自分の方を見た。表情一つ変えず、先ほど見た彼女の顔と同じだった。

 

「そして彼女は俺の方を指さしたんだ。こう、何回も」

 

 そう言って男性は僕の方を指さして、さした方向を強調するかのように、手を上下に振った。

 

 その場面を今の霊夢で想像すると、自分でも背筋が凍りそうな感覚に陥った。

 

「そしてその時、憑き物が取れたかのように体が動くようになって俺は彼女から背を向けるようにして飛ぶように走って逃げたんだ。あの時、今まで生きた中で一番早く走ったんじゃないかな……」

 

 僕は男性をよそに彼女のことを考えていた。やはりあの彼女が、そんな冷徹な行いをするはずがないだろう。あの母親を亡くした兎を抱きかかえた時の光景を覚えているからこそ、今の残忍な行動は信じられなかった。

 

「あの、話してくださってありがとうございました。それとよければ、その神社の場所を教えていただけますか」

 

 その質問をすると男性は呆れたようにこう返した。

 

「おいおい、懲りない奴だな……自分の身に何が起こっても知らねえぞ?」

 

「いいんです。別に何か起こっても、僕を心配する人なんていませんから」

 

 そう言いつつ慧音先生のことを思うと胸が痛くなるように感じた。

 

 男性は溜息をついて言った。

 

「そこまで言うなら教えてやる……と言いたいところだが、俺もどうやって行ったのか分からん。夢中だったんだ。逃げるのに」

 

「逃げるって?何からですか?」

 

 そう僕は質問したら男性は突然思い出したように話し出した。

 

「そう、俺は追われていたんだ、妖怪に。行ったんじゃない。神社には『偶然』辿り着いたんだ」 

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