さつばつぐらし!   作:備品猫

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こうさ……周りの人の作品見てるとさ……こう、何かが湧いてくる訳だよ。
俺としてはそうゆうのを大事にしたいんだよね……うん。
注意
今回の話は本編と関係ありません。ただの一発ネタであり、今後続ける気もありません。
オリメカ注意です。
あと作中の怪物のセリフに深い意味はありません。ただの文字の連なりです。


ネタ編
『機動兵器太郎丸』


「……」

 悠里は深呼吸をしながら作戦内容を頭の中で見直す。何度も念入りに話し合い、問題発生に対しても幾通りもの対処法を用意している。

 しかし、正直作戦と呼ぶには危なっかしい賭けの様なものだ。求められるのは柔軟な思考と冷静は判断、そして迅速な行動力。

 悠里は首元の通信機を起動。胡桃と美紀の両機へと繋げる。

「……胡桃、行ける?」

『ああ。レーダーによると大きいのは一体だけだ』

 通信回線から胡桃の返事を聞いた悠里は、一瞬の思考の後返事をする。

「後々の為にも倒しておきたいわね」

『最初からそのつもりだよ。殲滅、だろ?』

 笑いながら返事を返す胡桃の声に、悠里は自身の気が楽になるのを感じた。

 いつも通りだ。あの日から彼女は悠里達を、ただ一人で守ってくれていたのだ。今更彼女を信頼しないというのは可笑しな話しだろう。

「ええ、そうだったわね。……美紀さんは?」

『大丈夫です。いつでも行けます』

 こちらもいつも通り。途中から学園生活部に入部した彼女も、今ではすっかり大事な部員だ。

「由紀ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫だよ! ……って、りーさんこれ3回目だよ?」

 悠里の横で眩しい笑顔を見せる由紀も、いつもと変わらない。佐倉慈の死を受け入れた後の彼女は、相変わらず部に光を齎してくれている。

 悠里は覚悟を決める。

 誰一人欠ける事は許されない。全員でこの巡ヶ丘学院高等学校からーー今日、卒業する。

「……見守っててね。……めぐねえ」

 小さな由紀の呟きを聞きながら、悠里は深く息を吐く。

 全員が悠里の合図を待つ。

「……作戦開始!」

 瞬間――校舎の壁が爆発した。

 校舎の壁、元は玄関だったその周りを纏めて破壊しながら、胡桃が搭乗している太郎丸が校庭に飛び出す。

 初速の勢いを殺さずに突撃。胡桃は機体の両腕に取り付けられた超震動ナイフで群がる彼等を切り倒し、血路を開いていく。

 そして校庭の端、校門から離れた場所に着くと胡桃は機体を方向転換。自らが開いた道を埋める彼等を見据える。

『さぁ! かかって来いっ!』

 壊れかけの超震動ナイフを機体の腕からパージし、両腕に内蔵された連装機関銃を構えながら吠える胡桃。

 対するは、人間の形を逸脱した彼等の群れ。

 *

 人間をゾンビへと変えてしまう事件の後しばらくは、生きた生物を襲う彼等には何も変化も無かった。

 だが、彼等は突然にその人間の形を変えた。

 あるモノは二足歩行から四足歩行へと、人間とはかけ離れた、まるで猫科動物のような骨格を持つ姿へと形を変えた。またあるモノは下半身をそのままに、上半身のその腕を何倍にも大きくさせた姿を持った。その変形は千差万別で、同じ姿は無いとさえ悠里は称した。

 ただ、どんなに人間の形から逸脱しようと、彼等はその顔だけは悪趣味のように何も変えずに備えていた。そして変わらずに脳を持っているその部分が、彼等の弱点でもあった。

 悠里達は彼等の変化が、慈が持っていた緊急避難マニュアルに書かれていたΩ系列の細菌兵器によるものなのか、それともその兵器の突然変異によるものなのか判断しかねていた。

 だが悠里達が地下二階で見つけた物は、それが最初から仕組まれていた事だと証明するものだった。

汎用兵器T R M C(タクティカルライディング・マルチクラフト)

 その見た目は、人の胸部をひたすらに大きくした外見。火器と車輪を備えた腕を左右に付け、柔軟性を考慮した逆関節の車輪付きの足を持っている。その大きな胸部に操縦士がバイクの様に乗り込む有人兵器だ。

 進化した彼等に対する、個人で持てるように開発された兵器。それがTRMCなのである。

 地下二階に用意されていた一機を胡桃が、そしてもう一機を美紀が操縦する事となった。

 そして悠里達はその頭文字に因んで、かつての部員から名前を取り、「太郎丸」と呼んだ。

 *

『りーさん! 今だ!』

 校庭に群れる彼等が自分に向かっているのを確認すると、胡桃は悠里に向けて合図を送る。

「由紀ちゃん! しっかり捕まっててね!」

「了解! うぉっと」

 悠里の乗る側車付き自動二輪(サイドカー)は高々と力強い排気音を響かせながら発進。取り付けられた側車に乗った由紀は慣性によってシートに押し付けられる。

『続きます!』

 後ろで待機していた美紀の搭乗する太郎丸が悠里達を追従する。戦闘時は二本の足で立ち上がるが、移動時の太郎丸は車輪の付いた四肢で伏せたような体勢で走行する。

「まだまだ行くわよぉ!」

「り、りいいいさああああん!」

 叫ぶ由紀の声を無視しつつ悠里はアクセルを捻り、更に加速。

 勢いを付けたバイクは正面玄関の瓦礫によって大きく跳びながらも着地、校庭を疾走していった。

 *

「全く……人気者は辛いな」

 予備の超震動ナイフは早々に自壊し、機体の腕に内蔵されている連装機関銃の残弾数も残り僅かを示していた。

 そして、弱点である頭を潰された怪物達は、胡桃の周りに屍の山を築いていた。彼等の数は大きく減り、残るは一体。

「やっぱり、こっちじゃないとな」

 言いながら胡桃は腕を機体の後ろへ持っていく。

 彼等の中から、太郎丸と同じかそれ以上の、一際大きな体格の怪物が前に出てくる。

 人型ではあるのだが、その手先は長く大きな鎌の様になっている。

「くうううううるうううううみちゃあああああん!」

 意味不明な叫び声をあげながら突撃してくる怪物に、胡桃も突撃。怪物の振り上げたその腕を、胡桃は機体背面から引き抜いた装備で受け止めた。

「かわいっ!?」

 驚いたような声をあげる怪物。

 怪物の腕を止めたのは、特大のシャベル。それは頑強さを追求した無骨な合金の塊。

 両腕で持っているそれは、武器と呼ぶには躊躇われる代物である。

 だが――

「さぁ! お前にシャベルの素晴らしさを教えてやるよ!」

「みいいいいいいずぎいいいいいいいい! かあああああわいかったんじゃあああああああああ!」

 胡桃が彼等を引きつけているお陰で、悠里達はすぐに校門を抜け、町の中を颯爽と走っていた。

『前方に注意! います!』

 太郎丸のレーダーの捉えた情報を、美紀が通信で伝える。

 道の先の角から、それは姿を現わした。住宅と同じ高さの、手足を細く長くしたキリンのような怪物。まだ遠い距離だが、今のスピードではすぐに会敵してしまうだろう。

『悠里先輩!』

 避けるか立ち向かうか、作戦の頭である悠里に美紀は判断を求める。太郎丸に乗っているのであれば彼等と戦うことも出来るがバイク、それも側車付きでは彼等相手に十分な立ち回りは出来ないだろう。悠里は護身用に大口径の回転弾倉式拳銃(リボルバー)を所持しているが、一般的なサイズーー形を変えていない彼等には使えても住宅程の大きさの怪物を相手には出来ない。

しかし――

「突っ切るわ!」

「ええっ!? りーさん!?」

『わ、わかりました!』

 悠里の即決に由紀と美紀は驚くが、美紀はすぐさま了解する。悠里が何も考えずに指示することは無いと信じているからだ。

「美紀さん! 私の合図で牽制を!」

『はい!』

 美紀の太郎丸は走りながら機体を戦闘モードへと移行させ、両腕に内蔵された機関銃の照準を怪物へと定める。

 怪物との距離が縮まっていく。

 悠里は改造されたハンドルを操作。取り付けられているボタンに指を添える。

「にいいいきにきにきにきにきにき!」

「あわわわわわわ! りーさん!?」

 由紀が引き攣った顔で悲鳴を上げる。怪物がバイクを押しつぶそうと、その長い足を持ち上げたからだ。

「今よ!」

 悠里の合図と共に太郎丸の機関銃が連射モードで咆える。5.7ミリ弾は雨のように怪物へと降り注いだ。

「きゃきゃきゃ! きゃらそんよかったよおおおおおおお!?」

 身体中を襲う銃弾に悲鳴のようなものを上げる怪物。その射撃によって注意は完全に足元のバイクから美紀に移った。

 だが、持ち上げられたその長い足は、狙いすましたかのように悠里の運転するバイクへ向かってくる。

「きゃああああああ!」

 由紀の悲鳴が合図とばかりに、悠里は指を添えていたボタンを強く押し込む。

 エンジンが咆哮を上げると同時に、バイクが加速。

 

 二人の視界が、ぐんと狭くなる。

 悠里と由紀はまるで突き飛ばされたような感覚と、視界に写っていた物が後方へと飛んで行くような錯覚を覚えた。

 一瞬の後、二人が居た空間に怪物の足が振り下ろされる。まるで空間をぶち抜く弾丸のように、二人の乗るバイクは怪物の足の間を一瞬で走破したのだ。

 

 亜酸化窒素供給装置(ニトロ・チャージャー)

 通常の空気よりも多くの酸素を手に入れたエンジンはガソリンを激しく燃焼させ、その馬力を一気に上昇させたのだ。

「きゃああああああああああああああ!」

「きゃああああああああああああああ!」

 心底楽しそうな顔の悠里と目頭に涙を浮溜めた由紀を乗せたバイクは、怪物からあっという間に離れて行った。

「みいいいいんくんにののしられたああああああああああああい!」

 怪物はその長い手足を振り回す。細長い見た目に対してその一撃は、家の塀を吹き飛ばす程の威力を持っていた。

 太郎丸は機動力に重きを置いた設計になっており、装甲や防御の面では薄い鉄板と大差はない。怪物の一撃だけでも、太郎丸は潰されてしまうだろう。

「本当に、ノロマですね」

振り回される手足の間を潜り抜け、すれすれで避けながらながら、美紀は呟く。

 どんなに破壊力を持った一撃でも、その遅さは昔の彼等とさほど変わらない。高速演算を備え、操縦者である美紀の意思に反しない程度の動きを自動でする太郎丸に簡単には当たらない。

「みいいいいいくんにふまれたああああああああい!」

 当たらない攻撃に痺れを切らした怪物は、両腕だった足を揃って美紀の太郎丸目掛けて叩きつけた。

 だが、そこにはもう美紀の乗る太郎丸の姿は無かった。

 身軽さと機動力を生かした大きな跳躍。美紀の機体は怪物の高さを軽々と越える。

「みえみえーーないいっ!?

 怪物の上が一瞬陰ったかと思うと、次の瞬間には、太郎丸はその背に乗っていた。

「ありがとうございますっ!?」

 突然の重みに怪物は混乱し、振り落とそうと暴れる。だが美紀は、片腕に装備した超震動ナイフを怪物の背中に突き刺し機体を固定。

「全く……滑稽ですね」

 背中にある小さな物体。あの日から何も変わらない人間の顔がそこにはあった。生首を載っけただけのような、全体として見れば余りにアンバランスな部分。

 美紀は怪物の弱点であるその顔に機体の腕を押して付け、射撃。ゼロ距離で弾丸を浴びた顔が赤い霧となって消えた。

 弱点である中枢を無くした怪物の身体が力を失う。美紀は素早くその背中から飛び退き道路に着地。巨大な遺体は道路を塞ぐように倒れた。

『みーくんっ!? 大丈夫!?』

「はい! 今行きます!」

 由紀からの通信に美紀は返事を送り、機体を走行状態に戻す。甲高い音を住宅街に響かせながら車輪の跡を残して発進。悠里達の元へと急行した。

 *

「ゆううううりちゃんもおおおおおお!いいっ!」

「くっ」

 胡桃は右からくる横薙ぎの攻撃を後ろへ跳んで避ける。怪物の体格は胡桃の乗る太郎丸よりもひと回り大きい為、単純な腕力勝負では胡桃に勝ち目は無いだろう。

 だが、筋肉は付けすぎると速度と柔軟性を損なう様に、彼等の遅く単調な攻撃速度は簡単に見切れる。

「めぐめぐめぐめぐねえもいいいいいいい!」

 叫びながら胡桃に突撃してくる怪物。それを見ながら構える胡桃。大きく振るわれた怪物の鎌が太郎丸の操縦席へと吸い込まれていく。

「ーー陸上部の力、見せてやるよ!」

 だが、胡桃を捉える事無く、怪物の腕は空を切った。怪物はそこにいた筈の胡桃を見失い、一瞬だけ混乱する。

「こっちだぞ!」

 怪物は声のした方へと腕を振るうが、その時にはもう胡桃は居ない。

 胡桃は怪物を中心に弧を描く様に走り回る。突然の太郎丸の機動力に翻弄される怪物。その目は胡桃に追い付いていない。

「ほらほらこっちだ!」

「みみみみみみいいいいいいくんんんん!」

 だが、速い動きも慣れれば捉えやすくなる。予測を付けた怪物は胡桃が通るであろう所にその鎌を振るう。

「遅いっ!」

 だが、それを躱す様に太郎丸は跳躍。

 高く跳んだ機体は校舎の屋上へと登り、もう一度屋上から跳躍。空中で機体を捻り姿勢制御し、シャベルの先を怪物へと向ける。機体はそのまま怪物へと落下していく。

「ゆきちゃあああああんもいいいいいいいい!」

 怪物が構える。落下してきた所を打ち倒そうとしているのだろう。

 太郎丸は空中で移動する事は出来ない。四肢を振って体勢を変える事は出来るが、ブースターの類いは装備されていないのである。

「甘いな!」

 シャベルを構えながらも胡桃は片腕を怪物へ向ける。機関銃の照準を怪物の肩へと定め、連射モードで射撃。

 背中へと腕を回して構えていた肩が撃ち抜かれ、怪物はその動きを止める。

 シャベルを向けたまま太郎丸は怪物に衝突。重力加速によってその一撃は、怪物の体を貫通。怪物は校庭へと縫い止められた。

「でもでもでもぉおおお!?」

「チェックメイトだ」

 胡桃は腕を怪物の頭、血を吐きながら叫び回る頭に押し付ける。

「くる」

 射撃。

 今際の言葉を残せずに、頭を無くした怪物は動かなくなった。

「……やべっ」

 太郎丸が機体内の胡桃に警告。レーダーが捉えた情報が表示される。学校外にいた彼等が校庭へと大量に侵入していたからだ。

 胡桃はシャベルを引き抜くと、機体を走行状態にして発進。校門付近で滑りながら方向転換。両肩に装備された射出機の照準を合わせる。

「汚物は消毒だ!……ってな」

 射出された焼夷榴弾が、放物線を描いて群がる彼等の中に落ちる。

 一瞬の後、轟音と共に激しい発光が校庭を包んだ。爆風によって彼等は吹き飛ばされ、広がった燃焼剤が校庭を火の海へと変える。

「……バイバイ。めぐねえ」

 胡桃は呟くと機体を街へと向ける。炎に焼かれ苦しみもがく彼等と燃え上がる巡ヶ丘学院の校舎を背に、胡桃は悠里達と約束した合流場所へと機体を走らせた。

 胡桃を最後に、学園生活部の面々は無事に卒業した。

 進路を大学進学とし、聖イシドロス大学へと向かう。

 ただ――彼らの顧問は慈愛に満ちた表情を浮かべていた。




作中でりーさんとゆきちゃんの乗るサイドカーはネイキッドをイメージしております。戦争映画なんかでよく観るあれです。まぁサイドカーならネイキッド、みたいなもんだと作者は思ってるんですけどね。
今回の話は様々な元ネタを踏襲しております。
話すと長くなるのでここらで云々。
どうしても気になるようでしたら、感想にてどうぞ。
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