さつばつぐらし!   作:備品猫

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今回も血が足りません。すいません(禁断症状)
最近がっこうぐらし!とBloodborneのクロスオーバーネタがポコポコでるけどストーリー性が無くて辛い。
あと読みにくかったら言って下さいね。改行等で対応致します。


第6話

 彼等に元の人間の意識、または記憶のようなものが有るのか。

 何度か考えようと、知識が足りない足立には分からなかった。

 傷口から腐敗していく体を動かし、ひたすらに食物を求める姿は獣かそれ以下の知能しか持ち合わせていないように見える。

 だが、外側だけでは内側を判断できないように。彼等の意識と記憶の有無は判断出来ない。

 分かっているのは、彼等が人間を襲い、仲間を増やしていくだけ。

 最終的に、他人に意識があるのか分からないなら彼等に意識があっても自分には分からない、と足立は自身を無理やり納得させた。それよりも自分が生き残る事を優先したからだ。

 

 屋上と三階を繋ぐ階段の踊り場。

 そこから足立と胡桃は身を隠すように三階を観察していた。

 異臭のする空気と闇の充満する廊下。そこに蠢めく影の数を見て、足立も胡桃も呆れるしかなかった。

 てっきり諦めて彼等の持ち場に戻っていると思っていた。動きもゆっくりで彼等自身に縄張りのような物も無いが、三階の階段近くに群がっている様はあまりに窮屈そうではあった。

 彼等はそこにいる目的はない。彼等は生きている人間に反応して襲うことしかしない。どんなに密集した場所でも関係無いのだろう。

 

「沢山いるなぁ……」

「あの時に騒ぎを聞き付けて集まって来たんだろうな。……多分そのまま動いてない」

 

 足立が溜息をつくように言う。

 あの時、足立と胡桃達が合流して購買部から屋上に帰る途中の彼等の襲撃。二階からも登って来ていたものもいた為、三階の数は前より増えているのかもしれない。

 

「流石にあの数を無双するのは無理だぞ」

「俺は二体いても無理だ」

「情けないなぁ。あんな奴らズパッとやればイチコロだろ」

「そんなゲームみたいにいくかよ……」

 

 胡桃の言葉に足立は苦笑するしかった。

 胡桃の運動能力は今の状況では大切なものだ。彼等の制圧力では足立よりも断然胡桃の方が高いのだから。

 足立は手に持ったシャベルの重さを改めて確認する。振れない事はないのだが、やはり足立には少々扱いにくい。

 

(筋トレするか……)

 

 慈と胡桃だけに無理をさせないと約束したなら、足立が胡桃の足手纏いになるのは避けないといけない。

 長い時間をかけるだろうが、胡桃の負担を少しは肩代わり出来るはずだ。

 

(女子に守られるって言うのも、情けないしな)

 

 そう思う足立の後ろで胡桃がポケットから何かを取り出す。

 

「……石って、それじゃあ倒せないぞ?」

 

 足立の言葉に、胡桃は得意げな表情で答えた。

 

「これで誘き出すんだよ。壁にでもぶつけて気を逸らせようぜ」

 

 なるほど、と足立は感心する。古典的な方法であるが、やはり彼等には効果が見込める方法だろう。

 

「じゃあ。……よっと」

 

 胡桃が下の階に向けて石を投げる。

 コツンと二階近くの階段から音が響くが、二、三体が顔を向けて興味を示す程度で動こうとはしなかった。

 

「……」

「反応が薄いな。もっと大きい音がいいかも……」

「ちょっと何か見繕ってくるか」

「じゃあここで見張っとくよ」

「ああ、すぐ戻ってくる」

「いってらっしゃい」

 *

「りーさんから防犯ブザー貰った。これでいけるだろ」

「防犯ブザーって……まだあるんだな」

「今は大人の女性でも持ってるんだぜ」

 

 特に動きのない彼等を足立が見飽き始めた頃、胡桃が防犯ブザーを指先で振り回しながら戻って来た。

 

「いくぞ……」

 

 胡桃が階段の手摺から下に向けて紐を引っ張ったブザーを落す。それは騒がしい電子音を鳴らしながらは二階に落ちていく。

 

「……」

「……」

 

 まるで誘蛾灯だった。

 彼等は緩慢な動きでブザーに向かっていく。

 蠢めく黒い影は、まるで川のようになって流れていく。

 足立はそれを見ながら、ふと思い出す。

 太陽が西に落ちる時間帯。

 彼等が下校するかのように学校から出て行く姿。その姿を見た時足立は、彼等が生前の習慣を倣っているのかと思っていた。

 だが違う。彼等は結局、沈む夕日のその光に向かっていただけなのだ。

 彼等には音が鳴っているという感覚しかないのだろう。

 その音が何の意味を持っていたのか、もはや彼等には記憶がないだろう。

 ただ刺激に反応するだけの原始的な生物。人間だった頃の名残はその見た目だけだったのだ。

 

「……」

「……」

 

 最後の一体が三階から居なくなるまで、胡桃と足立は黙って見ていた。

 *

 胡桃と足立が三階を見回り、彼等が居なくなったことを確認すると、残り三人がバリケード作りを開始した。

 彼等が来る道は二階から三階へ登る階段と、階段から左右に続いていく廊下がある。そこで、まずは二階への階段をバリケードで封鎖し始めた。左右の廊下には簡易的に机を並べて、彼等が向かってきても物音が鳴るようにしている。

 胡桃と足立はその間、彼等を警戒して階段の踊り場から二階を見張っていた。近くで作業している為、物音に気付いた彼等が階段を上がってくるかもしれないからだ。

 

「足立は部活とかクラブしてなかったのか?」

「うん? ああ、部活はしてなかったよ。週二回くらい夜に小学生の剣道クラブを手伝いに行ってたくらい」

 

 長く変化の無い彼等をみて集中力も切れ始めた頃。胡桃が暇だとばかりに足立に話し始めた。

 

「何で剣道部に入らなかったんだよ」

「ん〜、何て言うかな。……元々剣道は好きじゃなかったんだ。暑いし臭いし」

 

 足立はゆっくりと言葉を選びながら話した。

 

「やっぱり人間性が出ちゃうのかな。皆俺の練習姿を見て、形が綺麗とか体幹がしっかりしてるとか言ってくれるんだけど。……試合になったら途端に動きが悪くなるんだ」

 

 それから足立は他人事のような口ぶりで話し出す。

 

「相手をあんまり考えれないんだ。相手ありきの作戦とか立てれない。相手がこう来るから、こう反応しようとか。相手のここを狙おうとか」

「……我儘みたいな言い方だけど、相手を考えないで好きにやればいいんじゃないのか?」

 

 記録を出す陸上部であった胡桃には全てが理解できる訳では無かったが、試合でもあまり違いがあるようには思えなかった。

 そんな胡桃の言葉に苦笑しながら足立は答えた。

 

「先生にも言われたよ、それ。自分を相手に押し付けて圧倒しろとか云々。……でも、それじゃあ何か格好悪かったんだ」

 

 相手を考えずにした試合を記録した映像を見て足立は自分の動きに嫌悪感を覚えた。

相手の技に反応しない、ひたすらに自分の技を相手に押し付ける。まるで小学生だった。

 

「形を真似することは出来るけど、相手が勝手に動き出したら混乱して何も出来ない。まぁ反射神経とか経験とかもあるけど」

 

 外側しか取り繕えない。内面まで考える事が出来ない。

 剣道をしていて足立は、自分の情けなさを実感したのだ。

 

「だから高校からは剣道部には入ってないんだ。形が綺麗だから見本みたいな感じで小学校に呼ばれて教えてるけど」

「ふうん……」

 

 よく分からないといった風の胡桃の顔を見て足立はそれでいい思う。つい語ってしまったが、結局自分は情けない男だと告白したようなものだったからだ。

 

「でも、日常生活じゃ何も問題無いんじゃないか? まだ少しの付き合いだけど、足立は周りによく気を使ってると思うし」

 

 胡桃はそう言いながらシャベルを担ぐ。

 

「内面なんて誰も分からないだろ? 勿論大切だとは思うけど。でも、やっぱり行動で人は判断するし」

 

 他人と自らの認識は情報量の差や個人の価値観などで変わる。

 情報とは言葉や行動と言った相手の外に出ているものだ。どの言動がどんなに内面と繋がっていようと、二つは同じとは言いきれない。

 

「相手と読み合う試合がしたかったんだろ? それは相手を大事に思ってるからじゃないか? ……うまく言えないけど」

「……何か恥ずかしいけど、ありがとう」

「ごめんな、私もあんまり分からないや」

 

 照れたような表情で頬を掻きながら胡桃は言った。

 剣道で人間性が駄目だろうと、それは日常生活の中の自分とは必ずしも同じではない。

 足立も薄々考えることはあったが、結局割り切れずにいたのだ。だが高校になってからは、その事もあまり考えなくなった。

 自分には結局対人戦は合わなかったと言う事だろう。

 

「……俺も陸上部に入るかねぇ」

「ええ〜……」

「……そんなに嫌か」

 

 そう言いながらバリケードの進行度を見る。まだ重ねた机を有刺鉄線で縛っている所だった。

 

「やっぱ力仕事だし人手いるかな」

「そうだな。じゃあ俺が手伝いに行くよ」

「いや。私が行くよ。あいつら動き無いし、体を動かせないで鈍っちまうよ」

 

 そう言いながら胡桃はバリケード作りに参加し始めた。胡桃が参加すると驚くべき速さでバリケードが組み上がっていく。

 その涼しい顔で机を二個持ちながら往復する姿を見て、胡桃の力が有り余っている事を四人は怖れと供に実感した。




『学園生活部の奮闘』では由紀、胡桃、悠里、慈、オリ主の足立意外出す予定はありません。
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