黒ウサギとヴァンパイアも異世界から来るそうですよ? 作:天・プラ子
「あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況に、違いないのデス」
「いいからさっさと進めろ」
あまりの理不尽に黒ウサギもすでに半泣きであるが、なんとか気を取り直し咳払いをすると、両手を広げ話し始めた
「それではいいですか、皆様。定例文で言いますよ?言いますよ?さあ、言います!ようこそ、“箱庭の世界”へ!我々は皆様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」
「なんかあれみたいだな。100万円贈呈しますとか言ってくる詐欺メール」
「違います!」
と、大兎のセリフにすぐに突っ込む黒ウサギ
「ギフトゲーム?」
「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、皆様は普通の人間ではございません!」
『普通の人間』と言う言葉に大兎が反応する
「普通の人間。俺って今何者なんだろうな。やっぱ化け物?」
その言葉にヒメアは優しい笑顔を見せると
「……大兎は、大兎だよ」
なんて言ってくる。それに大兎は笑顔を返し
「ありがとな、ヒメア」
そんな会話をしている時にも話は進む
「そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」
「貴女の言う“我々”とは貴女を含めた誰かなの?」
「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある“コミュニティ”に必ず属していただきます♪」
「嫌だね」
「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの“主催者《ホスト》”が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」
「………“主催者”って誰?」
「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが“主催者”が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。“主催者”次第ですが、新たな“恩恵《ギフト》”を手にすることも夢ではありません。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべて“主催者”のコミュニティに寄贈されるシステムです」
「チップには何を?」
「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間………そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然───ご自身の才能も失われるのであしからず」
黒ウサギの愛嬌たっぷりの笑顔に挑発の色が出始める。それに飛鳥が挑発的な声音で問う
「そう。なら最後にもう一つだけ質問させてもらってもいいかしら?」
「どうぞどうぞ♪」
「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」
「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれ期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」
「……つまり『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」
飛鳥の発言に、お? と驚く黒ウサギ
「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰します───が、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全く逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にする事も可能だということですね」
「そう。中々野蛮ね」
「ごもっとも。しかし、“主催者”は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でごさいます」
一通り話し終えた黒ウサギが一息つきまた話し始めた
「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話しさせていただきたいのですが……………よろしいです?」
「いや、俺らは遠慮しとく」
「へ?」
断りをいれた大兎に驚きの声を出してしまう黒ウサギ
「俺とヒメアはもうそろそろ帰るから」
「ええっ!」
まさかの発言にさらに驚く黒ウサギ
「ヒメア出来た?」
「うん。できてるよ」
「じゃあ俺らは帰ろっか」
そう言ってどうやって帰るかわからないが、帰ろうとする大兎達を止めようする黒ウサギ
「ちょ、ちょっとまってくださいな!え?帰るってどうやって帰るんですか!?」
「どうやってって、ヒメアに転移魔法を構築してもらって帰るだけだけど」
「転移魔法って、そんな高度は魔法をつかえるんですか!?って違います。で、でも、う、う〜…。本当に帰ってしまうんですか?」
「ん?帰ったらマズイのか?」
今黒ウサギのコミュニティの状況を考えると1人でも多く戦力が欲しい。さらに転移魔法と言う高度な魔法を使えるのだ。なんとしても自分のコミュニティに入って欲しい。が、箱庭で暮らすのは強制ではない。なので無理に止めるのもおかしい。色々と黒ウサギが葛藤していると今まで黙っていた十六夜が口を挟んだ
「まぁまぁ、ちょっと帰るのは待とうぜ。黒ウサギも全部話したわけじゃなさそうだしな」
その言葉に飛鳥が反応する
「それはどう言う事なの」
「それは黒ウサギに聞こうぜ。なぜ俺たちを呼んだのか、とか」
少し悩んだ黒ウサギは話し始めた
「………わかりました。全て話します。大兎さんとヒメアさんも聞いていただけませんか?」
「俺は別にいいよ。ヒメアはどうする?」
「大兎がいいのなら私はいいよ」
「って事で俺たちもいいよ」
「ありがとうございます。まず十六夜さんの言う、何故皆様を呼んだかですが、数年前まで私たち、黒ウサギが所属しているコミュニティは東区画最大手でした。しかしある時、この世界の最悪の天災と呼ばれる“魔王”によって“名”それに“旗印”さらには中核を成す“仲間”を奪われました」
「魔王!?なんだよそれ、魔王って超カッコイイじゃねぇか!箱庭には魔王なんて素敵ネーミングで呼ばれる奴がいるのか!?」
「え、ええまあ。けど十六夜さんが思い描いている魔王とは差異があると………」
「そうなのか?けど魔王なんて名乗るんだから強大で凶悪で、全力で叩き潰しても誰からも咎められることの無いような素敵に不敵にゲスい奴なんだろ?」
「ま、まあ………倒したら多方面から感謝される可能性はございます。倒せば条件次第で隷属させることも可能ですし」
「へえ?」
「魔王は“主催者権限《ホストマスター》”という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、彼らにギフトゲームを挑まれたが最後、誰も断ることはできません。私達は“主催者権限”を持つ魔王のゲームに強制参加させられ、コミュニティは………コミュニティとして活動していく為に必要な全てを奪われてしまいました」
黒ウサギの話しに飛鳥が確認する
「なるほどね。だいたい理解したわ。つまり“魔王”というのはこの世界で特権階級を振り回す神様etc.を指し、黒ウサギのコミュニティは彼らの玩具として潰された。そういうこと?」
「そうでございます」
「新しくコミュニティってのを作るのはダメなのか?」
と大兎が聞くと黒ウサギの顔が悲しげに歪んだ
「不可能ではありません………。しかし!改名はコミュニティの完全解散を意味します。しかしそれではダメなのです!私達は何よりも………仲間達が帰ってくる場所を守りたいのですから………」
『仲間達が帰ってくる場所を守りたい』それは黒ウサギの掛け替えの無い本心からの言葉だった。
「ヒメア。月光達には悪いけど、ちょっとだけここに残るわ」
「そっか…。やっぱり大兎は優しいね」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「あ、俺とヒメアはいいけど他の3人は知らないぞ?」
「そ、そうですよね。あの皆様、どうか私共のコミュニティに入っていただけないでしょうか。お願いいたします!」
「俺はいいぞ。面白そうだしな。魔王に奪われたものを取り戻すなんて滅多に出来るもんじゃないしな」
「私も構わないわ」
「……私も。もともと友達を作りに来ただけだから」
「あら、そうなの?じゃあ私が立候補していいかしら」
「うん。飛鳥は他の人とは違う気がするから多分大丈夫」
「皆様!ありがとうございます!では早速私たちのコミュニティに案内するので付いてきてください!」
ご機嫌そうな黒ウサギがそう言うと歩き出した
♪♪♪
「ジン坊ちゃーん!新しい方を連れてきましたよー!」
「おかえり黒ウサギ。そちらの4人が?」
「はいな、こちらの5名様が─────」
後ろを振り返り固まる黒ウサギ
「………え、あれ?もう一人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児!”ってオーラを放っている殿方が」
「ああ、十六夜君のこと?彼なら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」
飛鳥が指さしたのは、上空4000mから見えた断崖絶壁だった
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「“止めてくれるなよ”と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「“黒ウサギには言うなよ”と言われたから」
「嘘です、絶対嘘です!実は面倒くさかっただけでしょう御二人さん!」
「「うん」」
「大兎さんとヒメアさんはなんで止めてくれなかったんですか!」
「いや、止める前に跳んでったし」
「私は興味ないし」
ガクリ、と項垂れる黒ウサギ
そんな黒ウサギとは対照的に、ジンと呼ばれた少年は蒼白になって叫んだ。
「た、大変です!“世界の果て”にはギフトゲームのために野放しにされている幻獣が」
「幻獣?」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に“世界の果て”付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」
「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?………斬新?」
「冗談を言ってる場合じゃありません!」
「一刻程で戻って来ます。ジン坊ちゃんは四人様のご案内をよろしくお願いします」
そう言うと黒ウザギの髪が緋色に染まり、物凄いスピードで跳躍した。
「箱庭のウサギは随分高く跳べるのね。素直に感心するわ。で、エスコートはあなたがしてくれるのかしら?」
「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齡十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします」
「そう。ではジンくん、箱庭を案内をお願いしてもよろしいかしら?」
「はい!」
そう言って飛鳥はジンの手を取り歩いて行った。その後ろを大兎達は付いていくのであった
大分待たせてすいませんでした!