D.C.Ⅲ.C.E. ~ダ・カーポⅢ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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彼は言った。
自分には魔法使いとして常識外れの魔力量がある、と。
彼は言った。
その力が、今後の魔法使いの名誉に大いに役に立つ、と。
誰かのためになる、それだけで、生きていけるような気がした。
誰かのためになるのなら、この身を売っても構わない、と。


ツナガリ

五条院巴、シャルル・マロース、リッカ・グリーンウッドの3人は、生徒会でもかなり大きな力を持っていた。

というのも、卓越した機動力を持つ巴、天才的な知識量と頭脳を持つシャルル、極めつけはカテゴリー5の魔法使いであるリッカである。能力的に見ても、彼女たちは

 

現生徒会でも頂上のレベルにあった。

 

その3人が生徒会室に戻ってきた時、1つの椅子に少年が1人座っていた。

彼は俯いていて、元気がなさそうで、まるで“生かされている”人間にも見えた。

 

「お帰りなさい、リッカさん、シャルルさん、巴さん」

 

「ただいまー、エリザベス」

 

リッカとエリザベスは昔からの旧友で、生徒と校長という関係抜きで、親しそうに挨拶を交わす。

 

「そこの子は?」

 

「ああ、こちらは今日から風見鶏の生徒としてこちらで生活していただく、上代龍輝くんです」

 

エリザベスが龍輝に手を向けて紹介するのだが、龍輝は一切反応しなかった。

疲れていて聞こえていなかったのか、それとも端から眼中になく、挨拶するまでもないと思ったのか、詳しいことは分からないのだが。

いずれにせよ、リッカたちは龍輝に無視される形になる。

 

「この子、しゃべれないのかな?」

 

「それはないと思います。先程は私にも挨拶してくださいましたから」

 

「そうですか」

 

「となると、人見知り、か?」

 

「そうかもしれませんね……」

 

本人の前でここまで言うのもどうかと思うが、龍輝は何の反応も示さなかった。

相変わらず黙って俯いていた。

 

「それから、この子は学年的にあなたたちよりも先輩になります。本科1年ですからね」

 

「ふーん」

 

リッカはとてとてと龍輝に歩み寄り、目線を合わせるためにしゃがみこむ。

 

「ねぇ、龍輝」

 

初対面で事実上先輩であるというのに、何故か呼び捨てで話しかける。

これが距離を測らないリッカの気さくさなのだろうか。

 

「……」

 

しかし龍輝は返事をしない。

リッカは自分の下唇に人差し指を当てて、考えるような仕草をする。

しかし相手は無口無反応な男。どう会話を弾ませるか以前に、どう口を開かせるかをなんとかしないといけない。

しかし、そこで思いのほか役に立ったのは巴の強引さであった。

 

「龍輝と言ったか、お前は話しかけられても言葉を喋ることもできない赤ちゃんなのか。……まぁ、それが悪いとは、一言も言わんが」

 

リッカは、この軽い挑発に男が乗るはずもないと思ったのだが――。

 

「ッ!!」

 

龍輝は急に立ち上がる。

それにびっくりしたリッカは尻餅をつく。

龍輝は体を一瞬発光させ、驚異的なスピードで巴に肉薄した。

その拳が巴に直撃しようとした瞬間。

 

「あ――」

 

急に体から力が抜け、巴に力なく倒れこんだ。

 

「おっと。……それにしても、恐ろしいスピードだ。構えてなかったとはいえ、私ですら反応できなかったぞ」

 

「今のが龍輝くんの能力なのかな……?」

 

まだ不慣れな≪加速運動(アクセラレート)≫を唐突に使用したのが体に急な負担をかけ、すぐに意識を失ったのだ。

 

「とにかく、この子は私が運んどくから、そっちは仕事始めてて頂戴」

 

「間違いは……起こすなよ?リッカ」

 

「そんな訳ないでしょ……」

 

リッカは龍輝を抱えて、距離のある男子寮まで運んでいった。

夏季休暇中で生徒が少なかったため、他の男子生徒に見られることはなかった。

別に、生徒会の人間であるため、見つかってはいけないという訳ではないが、それでもそれなりに学校での人気を誇る女生徒である故、その辺の気遣いは忘れることはないようだ。

 

龍輝の部屋に入って、その体をベッドに寝かせ、その枕元に椅子を置いて腰かける。

安らかに眠る彼は、どこか子供のような印象を与えられた。

以前に聞かされていたのが、彼が『研究施設』における関係者であることくらい。

もう少し機知に富んだ人間なのかと思ったが、人見知りで、巴の挑発に簡単に乗ってしまうくらい直情的であった。

リッカはふと思う。

男の寝顔をまじまじと見るのは、かなり久しぶり――というか、初めてではなかろうか、と。

その瞳を開いていれば、そこには龍のような鋭さ、力強さを感じさせる顔立ちだったが、目を瞑っていれば、あどけない子供の印象が残っている、ごく普通の少年だった。

この男をもっと知りたい――リッカはそう思った。

しばらくして、精神力の回復した龍輝が目を覚ます。

 

「……」

 

「おはよ」

 

リッカは顔を覗かせ、龍輝の表情が分かるように正面に回り込んだ。

その状況に、龍輝は戸惑いを隠せなくなる。

 

「まったく、ここまで運ぶの、ホントかったるかったんだから、感謝してよね」

 

リッカの苦笑しての言葉に、龍輝は何があったのかを思い出し、無言ながら申し訳なさそうに俯いた。

 

「まぁ、いいわ。運んだ代わりに名前を教えて頂戴。私はリッカ・グリーンウッド。あなたは?」

 

「……」

 

まぁ、そう簡単に口を割らないだろう。リッカは諦め半分で、彼自身が口を開くのを根気よく待とうと思った。

 

「あなたはきっと今まで誰とも付き合いがなかった。それはきっとあなたが『研究施設』の関係者だったから。だから人が怖くて、疑り深い。その気持ちも分からないではないわ。でも、私たちはいつでもあなたの味方だから、それだけは忘れないで頂戴。何があっても、相談くらいは乗ってあげるから」

 

それだけ言って、リッカは生徒会の仕事があることを言い残し、龍輝の部屋を去った。

龍輝は、そんなリッカの後姿を見て、なんだか不思議な気持ちになっていたのだった。




人の温もり。
開かれる心。
伝えたいことは、少しずつ増えていく。

次回『名前と名前』



長くなった割には短くてスンマセン。

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