D.C.Ⅲ.C.E. ~ダ・カーポⅢ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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生徒会の仕事、孤高のカトレアとしての依頼、そして個人の研究。
その合間にできた、ちょっとした憩の時間。
そこでの2人は、先輩後輩の関係にしては、あまりにも仲が良過ぎたようだ。


研究と息抜きと

先に明言しておこう。

学生寮では、原則、異性の寮の部屋に入ることは禁止されている。

そして、本科1年A組、リッカ・グリーンウッドは、予科1年A組のクラスマスターであり、生徒会役員の1人である。

彼女の部屋は、床には物が散らばり、足場がないというほどでもないが、物が散乱していて、女性の部屋とは思えないような雰囲気を醸し出している。

それだけなら個人の問題であるため別に特筆すべきことでもないのだが。

その部屋には、いてはいけない人間がいた。

 

――上代龍輝。

 

男である。

リッカに対して、異性に当たる人物である。

リッカは自分の机で、簡易型実験装置を使いながら自分の研究に励んでいる最中である。

研究テーマは、花を1年中枯れないようにする魔法。

風見鶏には、たくさんの桜が1年中咲いている。

これらは全てリッカの研究の副産物であり、それぞれが違う方法で1年中同じ姿を維持している。

同じ結果をもたらす魔法といえど、その種類は多数に及ぶと言うことだ。

しかし、リッカが目標としているのはそうではない。

風見鶏にはもともと空気中に魔力が蔓延しているため、それを使って桜が枯れないようにしているだけだ。

リッカが目指しているのは、外部からの支援を受けず、単独で満開状態を維持できる桜を作ることだ。

そして、その手掛かりは今のところ1つ。

11月1日、リッカたちが地上に出た時に保護した記憶喪失の少女――さくらが当時持っていた不思議な桜の枝だけである。

その枝は、何の干渉も受けずに、ひとりでに桜の花びらを枝につけていた。

しかし今はそれは手元にはなく、風見鶏が預かっている形となっているため、リッカは持ってはいない。

さて、何故この部屋に龍輝がいるのかというと、だ。

クリスマスパーティー、すなわちクリスマスイブの夜に、龍輝とリッカはお互いの気持ちを確かめ合った。

そして付き合い始めたはいいものの、リッカには孤高のカトレア、カテゴリー5という立場があった。

そのために、個人での任務の出動、生徒会の仕事、個人の研究などで、リッカはあまり龍輝を相手にしていなかった。

そこで、せめて風見鶏にいる時くらいは同じ空間にいるという幸せを共有したいということで、お互いに望んで、リッカの研究中も龍輝がリッカの部屋に留まり、その様子

 

を部屋のソファに座って眺めているのだ。

何もしていないにしても、龍輝はこの時間がお気に入りらしい。

 

「もう終わりそうか?」

 

「うーん、あと少し……」

 

リッカも満更ではないようで、龍輝と一緒にいられるこの時間がお気に入りなようだ。

常に後ろから見守られてる、振り返る心配をしなくていい、ということで安心できるのだとか。

しばらくして、リッカが作業の手を止めて座ったまま背伸びをする。

 

「んっ、んん~……」

 

「お疲れさん」

 

窓から陽光が差し込む。

空を舞う桜の花びらが影を作り、実に温かい演出を作り出す。

外出するには――リッカとどこかデートするには、絶好の天候だった。

 

「しっかり晴れてるな。どっか出かけるか?」

 

「いえ、いいわ。今日はここにいたい気分……」

 

「そうか」

 

「だから、もっといちゃいちゃしていましょ」

 

恥ずかしげもなくそんなことを口にするのかと思いきや、リッカの頬は紅潮していて、そんなリッカの様子を見て、ますます龍輝は彼女のことが愛しいと思ってしまうので

 

あった。

リッカは龍輝の隣に腰をかけ、こてんとその頭を龍輝の肩に乗せる。

そして龍輝はそれに応えるようにリッカの頭を優しく撫で、このゆったりとした時間を楽しむ。

リッカも始めはいちいちちょっとしたことですぐに恥ずかしがるほど初心だったが、すぐに慣れてしまったようで、今では積極的に甘えるようになってしまった。

 

「お前も、大胆になってきたよな」

 

「後輩が先輩に甘えるシチュエーション、って、結構楽しいわよ?こうして自分より上の立場の男性に甘えられるって、なんだか守られてるみたいで幸せだもの」

 

「そうかよ。でも残念ながら俺は先輩だから、お前の感じていることは分からない」

 

「それは残念」

 

といった会話をしているものの、2人の表情は決して残念そうではなかった。

むしろこれ以上にない幸せを堪能している時の表情である。

ちなみに、龍輝とリッカが結ばれたことで、生徒会などの仕事に支障が出るのではと懸念されたが、その心配も無用だったようで、どうやらその一件以降、リッカの集中力

 

というか、やる気が以前と比べて倍増しになっており、生徒会長のシャルル・マロース曰く、リッカと龍輝のおかげで大分仕事も捗っている、らしい。

なんともまあ彼氏彼女様々である。

そして今では、このような面白いことも起こったりするようである。

 

「ちょっと、龍輝!?返しなさいよ、お願い、返して!」

 

「何を言っている。これは俺がリッカのことをより深く知るための重要資料だ。俺はリッカの彼氏なんだから、読む権利くらいはあっていいだろう」

 

龍輝がリッカの拘束魔法を回避しながら死守しているのはリッカの日記帳みたいなものだ。

彼女の性格からして、毎日書いているわけでもないようだが、何か重要なことがあった日や、特別楽しかったことや嬉しかったことがあった時に執筆しているらしい。そし

 

てリッカはその内容を知られたくないのか、必死になって取り返そうとしている。

部屋の中で恋人相手に魔法を使ってでも。

乙女心とは、異性に察して欲しいものなのかそうでなのかよく分からないものだ。

 

「あんたがどうしても返さないって言うのなら、こっちだって本気で行くわよ」

 

「ほう、さて次はどんな手を使って俺を捕まえてくれるのか楽しみだ。その時は俺を好きにしていいぞ」

 

「なっ!?ちょ、龍輝、何言って……!?ってそうじゃなくって!ああもう、どうなっても知らないわよ!」

 

リッカがワンドを振る。

龍輝はリッカの新しい拘束魔法を警戒して、回避の準備をする。

そしてリッカが動き出した――龍輝に向かってまっすぐに。

リッカは拘束魔法を行使するのではなく、自分の動作を速める魔法を発動したのだ。

≪加速運動(アクセラレート)≫を使用している龍輝とはいえ、予想していた動作と別のことをされては――そもそも相手は魔法のエキスパートであるリッカである。

そう簡単には反応させてくれなかった。

リッカは龍輝を捕らえ、ベッドに組み伏せる。

 

「く……。やるな」

 

「さぁ、私の勝ちね。返してもらうわよ」

 

「本当にそうだといいんだがな」

 

そういうと龍輝は最大の力で≪加速運動(アクセラレート)≫を発動し、柔軟に拘束から抜け出してリッカと立場を逆にする。

今度はリッカが龍輝に組み敷かれる形だ。

だがしかし、ここで問題が起こった。

龍輝がリッカのマウントポジションから脱出する際、少し大きく動かしすぎたせいか、リッカの服が若干はだけ、それに押し倒される形となっているので、なんとも色っぽ

 

くみえてしまう。

 

「あーっと……」

 

「え……?」

 

リッカが状況を理解し、顔を赤らめる。

龍輝も理解したことには理解したのだが、まだ混乱しているらしく、どうにも動くことができないでいる。

勿論そんな龍輝に拘束されているリッカは動くことができない。

そしてこういうタイミングで面白いことが起こるもので。

 

「リッカ、失礼するぞ。ちょっと生徒会の仕事の件なん……もっと重要な案件をシャルルに報告せねばな。悪い、この話はまた今度で許してくれ」

 

巴がノックもなしに入室してきたと思ったが、リッカたちの状況を見て反転、すぐに部屋を去ってしまった。

リッカの思考が追い付いて、なんとか巴に話しかけようとするが。

 

「ちょ、巴、ちがっ、違うの!」

 

間に合わなかったようだ。

困惑半羞恥半分の表情で龍輝を見、怒っていることをアピールしようと頬を膨らます。

 

「あんたのせいで勘違いされたじゃない……」

 

「ま、いいだろ。そのうち本当になるんだからさ」

 

なんて遠い未来の話を急に肯定しだすものだから、リッカは更に恥ずかしくなって龍輝から目を逸らす。

そしてなんとなく気の抜けた龍輝は、リッカの横に倒れこむ。

 

「なんか、幸せだよなぁ……」

 

「当り前よ。この私が彼女なんだもの。初めての恋愛とはいえ、退屈なんてさせないわよ」

 

「そいつは頼もしい」

 

龍輝とリッカは見つめあい、微笑み合った。

実はこの2人、生徒会の役員に付き合い始めたことを報告した時、普通の恋人同士なら『お似合いだ』と祝福するところを、『お似合いだとは言えない』と言われたそうだ。

確かに片やカテゴリー5で孤高のカトレア、片や体術強化しか使えない魔法使い。

なのにリッカが龍輝に守ってもらっている形となっている。

男女の関係からしたらこうなるのだろうが、リッカが最強であるというイメージはどうしても拭えないようで、このような感想になったのだとか。

とはいえ、やはり祝福されたのは確かである。

シャルルも巴も、はたまたエリザベスにも、友をよろしく、とリッカに任されたのだ。

何が何でも、この幸せを守っていきたい、と、龍輝は思ったのだった。

ちなみに、スライが尾ひれのついた噂を聞いて血涙を流して龍輝に迫っていたというのはまた別の話。




何もかもが終焉を宣言し、物語の本当の悲劇が、幕を上げる。
終わるはずの『実験』が、彼に苦痛を与える。
その苦痛は、どこまで彼を苛ませ続けるのだろう。

次回『『実験』の終わり』
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