D.C.Ⅲ.C.E. ~ダ・カーポⅢ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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いつからだろうか、この光景を夢見ていたのは。
みんなが集まり、楽しそうに笑って、とりとめのないことを語り合う。
ありふれた日常。
近そうで、遠かった日常。
今ではもう、それすらが間違っていたのかもしれないと、思ってしまっていた。


手に入れたもの

例の事件の日から、何日か経った。

その事件の真相は、結局何も分からないまま、闇に葬られて迷宮入りしてしまったようだ。

そして、これを期に様子がおかしくなったのがいる。

あの黒龍を体内に寄生させた龍輝である。

特に体調が悪いとか、魔力や精神に異常をきたしているとか、そういった不具合ではないようだ。

というのも、リッカたちが魔法の話になると、何かを思い出すように考え込んでしまい、次の瞬間には傍を離れていることが多くなったのだ。

そしてリッカたちが訊いても何も話してはくれず、しばらくよく分からないまま放置していた。

そして、場所は生徒会室、今回もまた、である。

 

「龍輝?」

 

「あ、いや、その……」

 

「最近いつもそうじゃない?何かあったの?」

 

「……」

 

リッカが多少強めに問い質すのだが、それでも龍輝は質問に応じようとはしなかった。

 

「事件の真相、『研究施設』について、何か思い出しそう?」

 

「いや、そうじゃないんだが……そうだな、話すしかないか」

 

龍輝が椅子からおもむろに立ち上がり、俯き加減に説明し始めた。

 

「なんか、最近俺、魔法に関する情報を見聞きした時、それに関する知識が明確に脳内再生されるんだ」

 

龍輝が言うには、他人の話や書物などで魔法に関する情報がインプットされた時、まるで一度覚えて忘れてしまったことを、再び同じことを聞いて『そういえばそんなものがあった』と思い出すかのような、そんな感覚が表れるようだ。

そしてその知識は全て、正しいものであるという。

試しにいくつか実験してみたのだが、それら全てが成功したのだとか。

 

「それってもしかして、魔法に関する知識全てに及ぶかどうかは分からないとして、とにかく見聞きした魔法全般を理解・行使できるってことでいいかしら?」

 

「そんな感じだ……。俺自身、なんでそうなるのかよく分からないんだが……」

 

恐らくあの黒龍だろう、と後から付け加える。

そして自分の体内を見ようとする仕草をする。

 

「後半は、龍輝が傾きのない、純粋で膨大な魔力があるから、得意不得意なく行使できるっていうので筋は通るわ。でも、前半の知識の増強については、どうにもね……」

 

「寄生した龍に知識が蓄えられていた、とか?」

 

シャルルが考えを挙げる。

 

「それはないだろう。もしあれが強力な魔法使いの抑制のために発明されたものだとしたら、何故そのようなものを取り込んでおく必要がある?それに、魔法知識のほぼ全般を網羅するとしたら、それこそ時間と魔力を多大に必要とする。だが、仮にそれが成功したとして、この間の黒龍は、様々な系統の魔法の対策をとる、というほどの術は使っていなかったように思えるが……」

 

「よねぇ……」

 

となると、全く分からない。

龍輝が、黒龍が寄生した後の情報を提供してくれたのは、何かしらの手掛かりにはなるだろうが、現時点では疑問点を増やしただけだった。

とにかく、この件は国の魔法協会も介入して捜査をしてもらっている。

今はそれに全てを託すしかないだろう。

それより、この時学園長室にエリザベスとスライが入ってきた。

タイミング的に、先程すぐそこで会ったようだ。

 

「あら皆さん、ごきげんよう」

 

「ああ、エリザベス、こんにちは」

 

今の挨拶の交わし方からも察することが出来ると思うが、リッカとエリザベスは旧友同士である。

エリザベスは、この王立魔法学校の学園長で、その美貌とおっとりした性格が特徴的で、生徒からの人気も高い。

魔法学校の責任者ということもあって、魔法に関しては一流である。

そんなエリザベスから、ある情報が飛び込んできた。

 

「龍輝くんもいましたか。なら話は早いです。先程、『研究機関』の責任者であるシグナス・ルーンから連絡があって、昨日の事故の責任を取り、この魔法学校を去ることを報告しました」

 

「そうか……。あいつも悪い奴じゃないんだけどな……」

 

「ああ……」

 

シグナスとの関わりがある2人にとって、この報告は落胆すべきものだった。

しかし、次の報告で、龍輝を始めその場全員が喜んだ。

 

「その際に、彼は、龍輝くんの『実験』の課程を全て終えることを宣言し、新たにこの学園での教育を受けることを許可しました」

 

「それってつまり……」

 

「そーゆーこと、だよな……?」

 

そして、次の報告は、2人のカテゴリー5の予想通りになった。

 

「龍輝くんは、リッカさんのコネもあって、予科1年A組との関わりが深いようなので、そこの生徒として学園生活を送ってもらいます」

 

つまり、龍輝は、『自由』を手にしたのだ。

彼が今まで理想、幻想として追い求めていたもの。

それが、今この瞬間、現実になったのだ。

 

「龍輝……おめでとう……!」

 

「うんうん」

 

「よかったねっ……!」

 

突然の出来事に、リッカとシャルルは感極まった。

彼女たちにとって、龍輝は最初から仲間だったのだ。

その『孤独』だった友人は、いつまでも『研究材料』として自由を奪われ続け、誰とも深い関わりを持つことなく、独りみんなの前で強がって、独りで苦しんでいた。

誰もが思った。

その変化は。

彼が1人の人間として生を渇望したのは。

リッカをはじめとする、生徒会の3人との邂逅がきっかけではなかろうか。

彼女たちと出会ってから、龍輝はほんの少しだが、楽しげに過ごすようになった。

意識せずとも、特にリッカは龍輝の生き甲斐となっていたのかもしれない。

そして、やはりこの報告を一番喜んだのは、誰でもない、リッカだった。

あまりの嬉しさに、龍輝に飛びついて抱きついたくらいだ。

龍輝も、やれやれ顔で抱きとめたが、その表情はやはり嬉しそうだった。

そんなリッカを見て、巴とシャルルは微笑んでいた。

 

「俺は、自由になれたんだな……」

 

エリザベスは龍輝の傍に寄り、柔らかく微笑んだ。

人の上に立つ者の、全てを抱擁するような、温かな眼差し。

 

「龍輝くんには、予科1年A組で特別にリッカさんのサポーターとして副担任、いうなればサブマスターという形でクラスメイトの皆さんと交流を深めるのはどうでしょうか?」

 

「えっ、それって、本当にいいの?」

 

「間違っても、クラスの公衆の面前で熱いトコロを見せ付けたりするなよ?まぁ、Aクラスの評判が下がろうが、うちのクラスには関係ないが……」

 

「そんなわけあるか……、ったく……。ま、これからもよろしくな、リッカ」

 

「足は引っ張らないでよ?」

 

「善処する」

 

そして、場が落ち着いてきたところで、スライがとある提案をした。

 

「そんじゃ、これからパーッとパーティーでもしようぜ!」

 

唐突の提案に、周囲の人間が困惑する。

 

「何を祝うんだよ……?」

 

「決まってんだろ。お前が新しいクラスに配属されたことだよ」

 

「別にそんなに祝うことでもなくないか?」

 

だが、最後まで反対しているのは、残念ながら龍輝だけだった。

みんなも、その意見に次々と賛成する。

 

「スライくん、いいアイデアだよー!」

 

「くぴ~!」

 

「場所はどうする?」

 

「フラワーズに行きましょう。あそこなら、葵ちゃんもいることだし、龍輝くんのこと知ったら祝ってくれるんじゃないかな?貸し切って準備を手伝ったりして」

 

「そうね。せっかくだし、このまま参加させてもらおうかしら」

 

「そういうことなら、私も参加させてもらいます」

 

「学園長も参加ですか。なかなかない経験ですね」

 

「そうよ。ありがたく思いなさい」

 

その謎の勢いで、全員でフラワーズに移動、そこで盛大なパーティーが開催されたのであった。




大切な妹に待ち構える、残酷な未来。
その運命を変えたいと願い、奔走する兄。
その想いですら、強迫観念へと変貌を遂げてしまう。

次回『異変、混乱』
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