D.C.Ⅲ.C.E. ~ダ・カーポⅢ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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何も見えない。
何も聞こえない。
ただ俺に話しかける男の声が、“感じられた”。


刻み始める運命の針
龍の眼を持つ青年


おかえりなさい、未来の俺。

さぁ、命が尽きるその時まで、超高速で過去を思い起こしてもらおう。

 

――自分の善行を。

 

――自分の愚行を。

 

手に入れたもの。捨てたもの。

何を思って生きていた?

何を望んで生を終えた?

そう、これは、幸せを踏みにじられ、悲しみと、苦しみを、繰り返し与えられ続けた、

 

――そう、それはちょうど、ダ・カーポのように繰り返された、

 

1人の青年と。

 

1人の少女へ。

 

2つの絶望へ向けられた、終焉への鎮魂歌(レクイエム)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

暇をもてあます青年は、暇をもてあましてぶらぶらと人気のない学園の廊下を歩く。

それは別に何の意味もない行為で。

目的を探すという目的で。

ただ、ぶらぶらと歩いていた。

 

――一方。

 

同じく廊下を歩いていて、角を曲がった瞬間、屈強そうな男子生徒に拘束、拉致される少女がいた。

叫ぼうとした――口をふさがれ声を出せなかった。

脱出しようともがいた――男女の力の差では叶うはずもなく。

何も出来ぬまま、薄暗く、5人が入ってもまだスペースがあるくらいのそこそこ広い、何も物が置かれていない、コンクリートの物置のような部屋に監禁される。

 

「さて、どうしてやっかな……」

 

「や、やめてください!」

 

開放された口で叫ぶ。しかし、その声も恐怖で震えてしまう。

 

「うるせぇなぁ、没落貴族の末裔なんざ誰も期待してねぇよ。そんなお前に俺たちが存在意義を与えてやろうとしてんだ。感謝しろよ?」

 

冗談じゃない、そう思ったが、口に出すことは彼らを煽ることになるのでこらえる。

 

「まぁ、あれだよな。俺たちのアレを気持ちよくしてくれるだけでいいんだよ、お前は」

 

何をされるのか、具体的に頭に思い浮かんだわけではないが、それでも、自分の血族を馬鹿にされた挙句、このままこの男たちに辱めを受けるのは辛かった。

助けを求める、が、誰も来るはずがない。

使い慣れない魔法を行使してみる。

だが、恐らく魔封じの魔法陣を張っているのか、全く反応しない。

 

「ダメだぜ、嬢ちゃん。この結界は、出力される魔力を外部から消去する効果があるんだよ。何したって無駄さ」

 

その言葉が引き金となったのか、4人の男が歩み寄ってくる。

 

「いや、いや!」

 

そう悲鳴を上げる。その時。

 

――がちゃん。

 

扉が開いた。

 

「誰だよ」

 

恐らく、少女を含めたこの5人以外の人間がここに立ち入ることは想定外だったらしい。

助けにきたのか、と、そう思ったのだが。

 

「あら、何やら面白そうな魔力を感じたからなんとなく立ち寄ってみたんだが、悪趣味なことしてんな、お前ら」

 

突然現れた青年はたまたま通りかかった、と、そういっている。

そして、どことなく面倒くさそうである。

 

「見られちまったモンはしょうがねぇ、さっさと片付けるぞ」

 

「「「おう」」」

 

その掛け声と同時に、4人の男はワンドを構える。攻撃魔法を行使するらしい。

しかし、青年も怯んだ様子はなく、そんなモン取り出しちゃっていいのか?と挑発する。

 

「くたばれ!」

 

そう叫ぶ。同時に。

 

「≪加速運動(アクセラレート)≫」

 

青年の体が一瞬薄く発光する。

そして、男の光弾が青年に当たると思ったが、そこに青年の姿はなかった。

先制攻撃を行った男の懐にもぐりこみ。

強烈なアッパーカットを炸裂させた。

その一瞬の出来事にびびった残りの男を次々を黙らせる。

青年は、無傷で少女に背中を見せていた。

 

――誰だろう。

 

少女はそう思った。

自分を助けてくれた(?)男性。生真面目な彼女はお返しをしたいと考える。

青年が振り返る。

印象に残ったのは、薄暗闇の中でもはっきりと見えた、龍のような目。

いや、実際に龍を見たことは無いのだが、そう思えた。

 

「お疲れさん」

 

大丈夫か?でもなく、もう大丈夫だ、でもなく、青年はそう言った。

その言い草は、まるで、無傷で助けられることが確定していた、とでも言ったようだった。

 

「さてと、ここで縄を解くのは面倒くさい。よってこのまま連れ出す」

 

そういうと、悪戯を終えた少年のような笑顔を浮かべ、青年は少女が縛り付けられている椅子ごと持ち上げて部屋を後にした。

そして、少女は、何人かの好奇の目に晒されて、別室で縄を解かれたとき、青年に訊ねた。

貴方の名前は?と。

 

青年は答える。

 

「俺の名前?そうだな……答えるほどのものじゃないけど」

 

少し考えたのか、数秒の沈黙の後。

 

「俺は、上代龍輝」

 

青年は、多分日本人だった。




いつも多忙な生徒会は、1人の青年の来訪で活気を取り戻す。
彼はその中で、『日常』を夢見ていたのかもしれない。

次回『風見鶏生徒会と青年』
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