あいとゆうきのがっこうぐらし!   作:南斗

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長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません。


「ぶかつ」

『おとぎばなし』を話したと言っても、オルタネイティヴ計画に関してなどの機密に該当する部分はかなりぼかした。真実を全て話したわけではないが、大筋は話したしウソはついていない。最も、かなり限定した話しかしていないわけだが。

全てを話し終え、武はジッと反応を待つ。これが夕呼ならば因果律量子論で、悠陽ならば幾つかの機密で説得出来る。しかしここに居る人々にそれは通じない。

 

「――それは、本気で言ってるのね?」

 

佐倉先生はいつになく真剣に聞いてくる。その目には、侮蔑や憐憫の感情(いろ)はない。

 

「はい。信じてもらえるかはわかりません。でもこれが、俺の生きてきた『世界』なんです」

 

再び訪れる沈黙。その沈黙を破ったのは、やはり佐倉先生だ。

 

「――私は信じます。勿論、さっきの話全部を信じるのは無理だけど……。でも、彼のお陰でここまで来れたのよ? 何より、ここでこんな嘘を吐く必要もないし、今までの行動について納得は出来るわ」

 

「こんな突拍子も何もない話をか⁉︎ めぐねえ、そりゃいくら何でもないだろ‼︎」

 

胡桃がくってかかるが、悠里がそれを制して発言する。

 

「私も……全部は、無理ですけど。白銀さんのお陰で生きてこれたのは間違いないですから。それに、今ここで白銀さんを追い出すわけにはいかないんです」

 

胡桃は優秀だが、武と比較してしまうのは酷というものだろう。なにせ、現役の軍人と一高校生だ。軍人に軍配が上がらねば、世の中成り立たない。まして、武はあの悍ましい地球外起源種(BETA)と死闘を繰り広げてきているのだから。

 

「俺も、100%信用してもらおうとは思ってません。とにかく、今の話を念頭に置いてその上でここに置いて頂ければ十分です」

 

彼自身、信じ切ってもらえない事に不満はない。かつて通った道でもあり、現在はそれ以上に突拍子もない話になっているのである。その状況で、追い出されないだけマシだと思ってさえいた。

実のところ、別に武が無理をして『前の世界』について話す必要はない。誤魔化す手段などいくらでもある。しかし、この世界には武の知り合いは1人として居ないのである。ということは必然的に、この話をしたところで変わってしまう未来はないのだ。ならば、ここで彼女達に秘密を打ち明けてしまうメリットの方が大きい。失敗しようと被る損害は武の信用くらいのものであるし、その信用は実績で稼げる。一方で、成功して得られるメリットとしては武の今後の行動の自由、発言力と比較的大きいものだ。賭けてみる価値はある。

 

「……りーさんとめぐねえがそこまで言うなら私もいい。けど、何か変な動きしたら承知しねえからな」

 

「そんなの絶対しねえって。俺はダイヤモンドをも超越する鉄壁のメンタルの持ち主なんだぜ? 何せ異世界にループしても生きていけてるからな‼︎」

 

チラリと辺りを見渡すが誰1人として反応しない。実際にはこれにどう反応すればいいのかわからず固まってしまったのであるが、武はスベったと解釈し急に焦りだす。

 

「……ゴホン‼︎ まぁほら、彼奴らみたいなSFチックなのが蔓延ってんだ。俺みたいのが居る確率だって0じゃないだろ?」

 

適当な言葉を発してこの気まずい空気から脱出を図る。幸い、今回は支援砲撃要請が通ったようだ。

 

「そ、そうよね。こんな事が現実で起きてるんだもの。白銀君みたいなのが居ても真っ向から否定は出来ないわ」

 

佐倉先生の優しさに涙しそうになる武であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜、焦ったぁ……」

 

寝室は別にすべきという意見の元わざわざ別室を掃除し一息つこうとしたそのとき、不意に先ほどの光景を思い出し嫌な汗をかいていた。

最も、この汗は命のやり取りではなくある種の恥ずかしさからくるものであり、それが唯一救いである。

 

「さて。さっきは信じるって言ってたけど、実際のとこはどうなるのやら」

 

武とて、向こうが全てを信じてくれるなどと考えてはいない。果たしてどれほど自分を信用してくれているかは未知数だ。だが、今は彼女達が信じてくれていると信じて行動するしかない。

 

「やっぱ、あいつは見逃せないよな……」

 

武の頭にあるのは由紀の事だ。先ほどの会議にも参加させなかった事からわかる通り、由紀の精神状態は非常に危うい。戦闘中は気にかけていられなかったが、自分を卑下する発言もあったと聞く。となると、あまりのんびりもしていられないだろう。

もう一度声をかけようかと部屋を出たところで、悠里と鉢合わせる。

 

「うぉ⁉︎ あ、若狭さんか。どうした?」

 

「あ、ごめんなさい。驚かせてしまったかしら?」

 

「あぁ、別に大丈夫だけど。んで、何かあったか?」

 

武が間借りしている場所は生徒会室の横にある生徒指導室だ。中々に広々としており、1人で使うのは勿体無いかなとさえ思い始めていた。この部屋の前に居たということは何らかの用事があったのだろう。でなければこんな鉢合わせ方はしないハズだ。

 

「由紀ちゃんの事も含めて私とめぐねえで話し合ったんだけど……」

 

「あぁ、それは俺も気になってた。だから今様子見に行こうかと――」

 

「部活を、やろうと思うの」

 

たっぷり10秒ほどフリーズした後、再度聞き返す。

 

「……え、部活?」

 

「そう、部活。学園生活部って名前になると思うわ。ただここで暮らすより、部活の方がハリが出ると思うの」

 

あらましを聞き、思案する。一見トンデモ発言ではあるが、考えるだけタダなのでひとまず考察してみる。

 

(悪くはない、か? 由紀辺りはこういう行事は好きそうだし、状況が状況なだけに日常を送るってのはいい気晴らしになるか。しっかりメリハリつければ、有事の時も余裕持って対処出来るだろうし。となると……問題無しだな)

 

そう結論付け、悠里にも話す。

 

「良いんじゃないか? いい気晴らしになるだろうし」

 

「そう言ってもらえると助かるわ。由紀ちゃん、こういうの好きみたいだから……。それに、お互いのことを知るいい機会になると思うの」

 

「確かに、親睦を深めるにはもってこいか」

 

武も自身の出自の怪しさは理解している。それでも信頼してもらうとすれば、それは自分の行動で示すしかない。ただ単に強い軍人程度では、彼女達から信用はされても信頼はされない。それに武自身も、何故かやってきた異世界で1人で生きるより、仲間と一緒に過ごすに越したことはないと思っている。

 

「それじゃあ、改めてよろしくね。あ、一応白銀君も部員になるけど、大丈夫よね?」

 

「おう、もち大丈夫だ。ちなみに部長って?」

 

「私だけど……不満?」

 

「いやいや。1番向いてると思うぜ」

 

というより、由紀の状況からして部長候補は悠里と胡桃の2人だけだ。どちらかを選べと言われたら、悠里の方が向いているだろう。

 

「ありがとね。じゃあ、胡桃達にも話してくるから……」

 

「了解。俺は部屋に居るから、何かあったら声かけてくれ」

 

悠里と別れ、再び部屋で1人になる。直後、本来の用事を思い出し慌てて外に出て声をかける。

 

「ちょっと待ったぁぁ‼︎」

 

「え、え⁉︎ な、何?」

 

「いや、さっきの話でさ。由紀についても話したつってたけど」

 

武の本来の用事は、由紀のメンタルケアなのだ。本職ではないが何かしら出来ないかと思案していたにも関わらず、あっさりと忘れてしまっていた。

 

「あ、その話ね。部活の話が通ったから知ってるのかと……」

 

「へ? 知ってるって?」

 

自分が室内を掃除している間に何かあったのだろうか。話しぶりからして良からぬことではなさそうだが、自分にとっては不都合なことかもしれないと構えてしまう。

 

「由紀ちゃんはもう大丈夫よ。勿論、本調子じゃないのだろうけど……。昨日みたいに、落ち込んではいないわ」

 

「え、いつの間に?」

 

「めぐねえに感謝しなきゃね」

 

それだけで何となくだが察する事は出来た。恐らくだが、佐倉先生が由紀のメンタルケアをしてくれたのだろう。彼女がどれほど生徒想いかは今までの行動を見ていると何となくわかる。自身も彼女によく似た人を知っているだけに。

 

(まりもちゃんも、あんな感じだよなぁ。生徒に親身になろうとして、なりすぎて舐められて、でも皆に好かれてて。生徒のためなら無茶しそうなとこもそっくりだ)

 

ここまで考えて、ふとある懸念が頭をよぎる。今までは悠里や胡桃、由紀と言った生徒側の負担についてばかり考えていたが、この状況で不安になるのは何も彼女達だけではない。佐倉先生もまた言い知れぬ不安に駆られているだろう。まして、武という懸念事項が増えたのなら尚のこと精神を擦り減らしているハズだ。

 

「ん、わかった。それじゃ、頑張ってくれよ、部長殿」

 

「ええ、頑張らさせてもらうわ」

 

挨拶を済ませ悠里と別れると、佐倉先生について改めて考える。

 

(『前の世界』の人間みたいに絶望的な状況に慣れてるってわけじゃないだろうし、無理してる可能性はあるな。そもそもまともな感覚を持つ一般人ならテンパって然るべきレベルの災害だ。こんな時に気丈に振る舞ってる人なんて無理してるかよっぽど頭がオカシイか、こういった事態に何らかの事情で慣れてる人くらいのもんだろう。後ろ2つの可能性よりは最初の可能性の方が高そうだし、注意しとくか)

 

加えて別の考えも浮かぶ。今でこそ彼女を中心にまとまってはいるが、もし彼女が彼奴らの仲間入りをしたのなら、恐らくかなりの不和を招く事になる。由紀は言わずもがな、悠里や胡桃にかかる負担もかなりのものになるだろう。

 

(佐倉先生は由紀達にとっての扇の要だ。居なくなると、バラバラになっちまう気がしてならないな)

 

流石に居なくなってすぐに不和になるとも思えないが、そう遠くないウチに溜め込んだものが噴出するだろう。そう結論付け、彼女については殊更気をつける事にした。何より――

 

(恩師を喪うなんて経験するのは、俺だけで充分だ)

 

かつて恩師を殺して(・・・)しまった身として、そのような想いを皆にさせたくはなかった。そう感じずにはいられなかった。




かなりのスローペースになりますが、今後も投稿していこうと思っています。このような拙い小説ですが、今後とも宜しくお願いします。

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