突然のにぼし襲来。
何ヶ月ぶりだろう、そして中身はただの日常。ストーリー性なんて皆無。
「……1/2と1/3を合わせて……5/6と」
現在、自室で勉強中in俺。
いや、中身が仮にも大学生だからこんな小学3年レベルの問題は流石にアレなのだが
世の中には世間体というものがあって、あまりに突出し過ぎると非常に目立ってしまう。
故に勉強の内容も完璧に、迅速にとやりすぎてしまうと
明らかに年齢相応じゃない知恵を持っている事がバレて碌な事にならない筈なのだ。
「ふー」
なので、スクールにも通っていない俺は、母さんが作った問題集を埋めている。
ところどころ、テキトーに計算を間違う事も忘れない。
さて、にぼしは先程から随分と大人しいが……俺を待ってくれてるのだろうか?
うぬぼれかもしれないが、チラリとにぼしが居るベッドへと目を向けてみる。
「くぴ~……くぴ~……」
寝てやがりますよこのミニマムは。
でもまあ、それも仕方なし……勉強を始める際に、にぼしには今遊ぶ事が出来ない理由を説明して
勉強がテキトーに終わるまで待ってもらっていたのだ。
無視して遊べばいいんじゃね、と思うかもしれないのだが
いかんせんうちの母親はなにか人間として規格外なもので
下手に変な音を立ててるとちゃんとサボってる事がバレて明日の朝飯が抜かれたりするのだ。
よって、にぼしがゆっくりした結果はこれだよ。すまぬ……すまぬ……。
「……やれやれ」
でもまあ、せっかく気持ちよく寝ているようだし、俺も勉強が完全に片付いた訳でもない。
ここはにぼしが安眠出来るように掛け布団を掛けてやろう。
また明日になったら遊んでやるからな。
そうして俺のベッドの掛け布団をにぼしに掛けたのだが……
「くぴ~……くぴ~……」
随分気持ち良さそうに寝ているのである。
「…………。」
興味本位で、寝ているにぼしの鼻の先を、そーっとちょこんと触ってみた。
「くみゅ~~~…………」
俺の指が触れた瞬間に、これ以上触られるのを嫌がるかのように
俺の掛けた布団の中に、前足で顔を隠しながらすぼまって行ってしまった。
やだなにこれかわいい。
ちょっとほんわかしたところで、再び俺は自室の机へと向かう。
和むのも良いが、やる事はきっちりとやらないといけませんな。
そうでなければにぼしの親代わりなんぞも堂々と出来ん。
適度に間違えた答えを仕込みつつ、親自作の学習ドリルをゆっくりと埋めていくのだった。
◇
チュ…チュン、チュン……
「…………んぉ」
オニスズメの鳴き声……?
っと、どうやら小さい子供である事の体力の限界と
あまりにも面倒臭い勉強方法に疲れきって机に突っ伏して寝てしまっていたらしい。
少しぼーっとしながら頭を軽くあげようとすると、目の前に何かが居た。
「…………ミッ」
にぼしである。なんか俺の顔の正面に居る。
「ミッ、ミッミッ、ミッ」
「……んーー?」
まだちょっと寝ぼけている俺なのだが、にぼしはその小さい顔で
俺のほっぺにぐいぐいと頭を押し付けている、俺を起こそうとしているんだろうか?
「だいじょーぶだよー、起きたよー」
「! ミッ、ミィ、ミィ~」
どうやら本当にそうだったようで、俺が声を掛けるとにぼしは笑顔で鼻先に抱きついてきた。
朝っぱらから可愛さ全開なのは困ったものである。
左手を机の腕に持ってきて、にぼしの頭を指先でクリクリと撫でてやった。
「よしよし、そいじゃぁリビングまで行くかぁ」
「ミッ!」
そう言って、俺はのっそりと椅子から立ち上がり、扉へと向かおうとした。
すると後ろから「ぼよん、べてっ」という音が聞こえてきた。
後ろを振り返ってみると……
「ピ~~~……!」
にぼしがなにやら椅子の足元で、涙目で鼻を擦っている。
どうも想像するからに、机の上に居たにぼしは、俺が立ち上がった椅子へと全体重を掛けて降りて
そんなに重いわけでも無いにぼしは、どうやらトランポリン効果の様に椅子から弾き出された様だ。
そのまま体重移動もままならず、カーペットの上に墜落したらしい。
「何やってるんだお前は……ほれ、さすってやるからおいで」
「ピ~……」
鼻柱を抑えながら、前足2つを除いた四つ足でこちらにぽてぽてと歩いてくるにぼし。
相変わらずの涙目なにぼしを腕で抱えて抱き寄せ、顔を撫でてやる。
「ミィ」
「よしよし」
途端に悲しげな声から満足する声に早変わりするにぼし。あらやだこの子世渡り上手だわ。
さて、今日も1日頑張りますか。今日の朝飯はなんだろうなーっと。