うちの伝説ポケモンがなんか小さいんだが   作:右肘に違和感

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1話 異次元からこんにちわ

 

 

─────チュチュン……、チュン、チュン……。

 

 

 

 

今日の朝もいつもと変わらず、オニスズメの朝のさえずりが響く。

 

あぁ……うるさい……もうちょい寝かせてくれ……。

 

ピョンピョンと動いているのか、屋根の上からはさえずりだけでなく

トントンと、オニスズメが歩を進める振動も響く。

 

あいつらは地味にでかい。

あくまでも「スズメ」を見慣れていた俺からしたらだが……。

それだけの大きさで動けば、そりゃ屋根も揺れる。

眠いながら振動を感じる限り、ニ匹か三匹が屋根に居るようだ。

 

 

……ッチ、こんなうるさいんじゃもう寝られんな……

 

 

少しばかりの眠気を引きずり、俺はとっととベッドから降りる。

今日も今日とて、いつも通りの何も変わらない日々が始まる。

 

 

チュン、チュン……、チュンッ!?

─────ギャァ!!ギャァギャァ!!ギョァー!!

 

 

何やらニ匹居る所に三匹目が現れ、縄張り争いに発展したらしい。

「カラス」や「すずめ」が朝っぱらに鳴いたり囀ったりしているのは

野生生物としてとても重要な縄張りの主張を示しているものなのだそうな。

 

それがうるさくなったという事は、それに関わる事なのだろう。

しかし既にベッドから出てパジャマを着替えた俺にはもう関係の無い事だ。

せいぜい、家の屋根が破壊されない程度であれば全てが許容される。

 

ここは、そんな世界だ。

 

 

 

 

───改めて自己紹介しよう。

俺の名前は『旧姓:田島 直哉』、『現:タツヤ』。

 

一応肉体年齢は8歳らしい、この世界で意識が覚醒したのが赤ん坊でもないから

自分の体が子供という事実と、兄と母が俺に伝えた年齢からして8歳らしいという事だけだ。

 

この世界だのそんな世界だの、と言っている所で判って貰えたと思うが……

まぁ、なんという事は無い。世間にありふれて存在している言葉の

「転生」やら「憑依」だかってやつだ。

 

気付いた時には多少浮かれた、知っている世界だったから。

気付いた時には既に遅かった、空気が違う子供だったから。

 

子供の体に大人の精神、周りから見てどれだけ奇異に映るのか……俺は考えてなかった。

知っているが故に挙げる内容も子供の戯言と捉えられ、何一つ信じてもらえない。

 

そんな極普通の、つまらない世界だったのだ……この「ポケモン」がいる世界は。

あれだけ夢に溢れていた意識覚醒当初が酷く懐かしく思える。

 

今では、殆どの事象が色褪せて見えるだけで……

ポケモンが居るのにポケモンと殆ど関わらない子供になってしまった。

 

母親の人脈と過去の経歴が異常なため、原作で見た事があるような面子が

たまに家に来て母と雑談していったり、指南してもらったりといった感じだが

 

ただの子供の俺に、それがわかったところで何が出来るというのか。

せいぜい、愛想笑い程度しかやる事が無い。

 

客人にポケモンの事を教えてもらったところで、殆どが知っている内容。

どうでも良いとしか思えない事しか、聴いた事が無い。

 

それならまだ部屋でクソゲーをしていた方がマシである。

この世界、何故かドラゴンズレアがあるし。

 

 

二階から一階へ向かう階段を下りた辺りで、上のやかましい声は聞こえなくなる。

この世界のポケモンは、種族によってはそのまま害獣となっているため

一軒家とか各施設、設備などの耐久度がえらい高いのだ。

さすがに真上であのように暴れられたら、防音もクソもあったものではないが。

 

「おはよう、母さん」

「あら、おはようタツヤ。今日は少し起きてくるのが早いわね?」

「……まぁ、そうだね」

 

時計を見ればいつも起きる時刻より20分ほど早い。

まあ、理由を述べる事は無いがね。下手したらあのオニスズメ達が母さんに殺される。

 

別にこちらもグロテスクな朝を迎えたいわけではない。

普通に食卓テーブルの椅子に着席するだけである。

 

「今日はちょっと私のお客さんで、サカキ君ってのが来るんだけど……

 タツヤも逢ってみる? 一応ポケモンリーグの中でも上位の人間だし」

「いや、母さんとその人の会話の邪魔するのも気が引けるしね。

 俺は素直に部屋で勉強でもしてるか、オーキド博士弄りに行くよ」

「……そう。それじゃ、もしオーキドさんの研究所に行くんだったら

 玄関に大根の箱置いてるから、そこから二本位持ってってもらえるかしら?」

「お裾分け? まあ、良いよ。それなら今日はオーキド博士んトコに居るよ」

「ん、わかったわー」

 

とまあ、こんな感じである。

母、何故か普通にサカキと知り合い。

おかしいなぁ、俺の記憶ってーよりポケモンの常識じゃ

ロケット団を取り仕切ってるボスなんだが、何故かうちの母親と面識がある。

 

一応の弟子らしいんだが、一体どうなってるんだ。

まあ、オーキド博士に大根をお裾分けする時点でなんともはやという感じではあるが。

 

ちょろりと話をした限りじゃ、母は転生者でもなんでもない。

あまり他の街に出歩いた事とかはないが、この世界じゃコレぐらいが普通なのだろう。

 

 

 

 

「じゃ、行ってくるわ」

「うん、いってらっしゃ───って、あら?」

「……おや?」

「ん」

 

玄関で大根を袋に入れ、見送られながら研究所へ向かおうとした所で

何やらどこかで見た気がする黒スーツのダンディと家の前で遭遇した。

 

「いらっしゃい、サカキ君」

「ええ、おはようございます。レンカ師匠」

 

ああ、やっぱサカキ……さん、だったか。

ゲームでは呼び捨てが常だったが、目の前に居るのは俺の生きる現実の人間だ。

頭の中で呼び捨てにしていては、名前を呼ぶ時にまで呼び捨てにしかねない。

きちんと「さん」を付けろよデコ助野郎……じゃねえや。「さん」付けで呼ぼう。

 

「あぁ、顔を合わせるのは初めてだったわね。

 タツヤ、この人が朝言ってたお客さんのサカキ君。

 サカキ君、この子がうちの次男のタツヤね~」

「……初めまして。君のお母さんの弟子をやらせてもらっているサカキという者だ」

「こんにちわ……それじゃ、今日は母の世話をよろしくお願いします」

「い、いや、世話って君ね……」

「何変な事言ってんのよ、も~。タツヤってば///」

 

ふむ、適当に場を濁すジョークとして発言したのだが……

父親という存在を一切見た事が無いこの家庭を取り仕切っている母なだけあって

あの反応からするとやはり男日照りなのだろうか。

頬に両手を当ててなにやらぐにぐにと不思議な踊りを踊っている。

 

ともあれ、俺は大根二本と短い旅路を共にするため

オーキド博士の研究所に歩いていくのだった。

 

 

 

 

「んじゃぁ、わしゃちょっと進めとる研究があるんでな。

 何かわしらに声を掛ける必要がありそうな事があったら言いに来てくれい」

「はい、いつも色々変な質問ばっかしててすみません」

「いや、いいんじゃよ。君の質問はこちらも考えさせられるものがあるからのぉ」

 

そんな風に述べて、オーキド博士は研究所の客室から出て行った。

 

この世界でもオーキド博士は、ポケモン界において絶対なる権威だ。

しかしマサラタウンに住んでいた幸運があって、小さい頃から見ていて気付いたのだが

性格も、生態も、ポケモンが関わっていなければただのそこらのオッサンだった。

 

故に、ゲームとこの世界で色々と感じ方が違う点や

逆にこちらが一方的に知っている点をぼかして説明してみると

やはり研究者魂がくすぐられるのか、大変興味を持たれるに至る事が出来た。

 

この世界の人間からしたら、あまりにもオーバースペックな場所だが

俺はココでこの世界の基本的な常識を吸収していたのである。

 

その中で色々と一人でしか試せない内容もあり

いくつかの『バグ』は、その存在を確認している。

 

まあバグと言っていいのやらよくわからんが、まず土手は自力で上がれる。

これも某バグTAS動画だと4分でゲームクリアって内容に使われたりしている。

 

でもここはポケモンの世界だが俺にとっての現実。

これ自体がバグを引き起こす事は無い。むしろ出来て当然の現象だった。

 

そして、この世界に居たところで全然ポケモンと関わりが出来ておらず

毎日暇をしている俺は、常日頃から暇潰しとして色々と試行錯誤していたのだ。

 

今日は新たに、タマムシデパートで行う事が出来る

『エレベーターバグ』とでも言うべき現象に挑戦するつもりだった。

 

ゲームでは小さい平屋なのだが(主人公の家ですら二階建なのに

この世界でのオーキド博士の研究所は、結構でかいのである。

なんと四階建だ、さすがポケモン界の権威である。

 

「日頃はただのおっさんなのになぁ」

 

そんな風に呟きながら、客室に色々と置いてあるものを一旦失敬していく。

互いにコーヒーを飲むためのマグカップやら、ボールペンやら、

灰皿なんかも失敬して、大根を持ってきた袋にぽいっと入れる。

 

まあ、土手の方もやったところでバグらなかったし

こっちの方もそんなに大事にはならないだろう、きっと。

 

「えーと、まあ適当でいいか、うん」

 

エレベーターの中に一人で入り、扉を閉める前にボタンの前で

持ってきた袋の中をごそごそといじくりまわす。

 

イメージとしては、ゲーム上でアイテムをセレクトボタンで入れ替える感じで。

 

んで、一旦の締めとして袋の口をギュッと掴み……アイテム整理終了。

しかし、ちらりと周りを見渡してみても何も起こらない。

 

「……ふぅ、やっぱそんな都合良く面白い事は起こらない───って、あら?」

 

あれ、なんだろう。どうしたことか。

 

エレベーターの扉が、いくら開くを押しても開いてくれない。

 

それどころか、気のせいでなければ……景色が歪んできている。

 

 

ベキッ、ベキョッ、ぐにゃぁ~~~~~

 

 

「あららら……なんだ、この世界でもやっぱり一部のバグは有効なのか……」

 

そんな風に多少達観しながら、景色が壊れていく様子を見る。

既に生きる事に多少疲れている感じがするため、そこまで感慨深い物も浮かばない。

 

このまま、この変な現象に巻き込まれて死ぬのかな。

まあ、死んだら死んだで……いっか。母さんは悲しむだろうけど。

 

そして……風景に黒い裂け目が無尽蔵に現れた辺りで、その変化は現れた。

 

 

ゴォォォォォォ……

 

 

何やら、飛行音がするのだ。

しかも、音の気配からしてどんどんとこちらに近づいてきている。

世界が歪んでいるせいで、錯覚している音だろうか?

 

ォォォォォォォオオオオオオオ……

 

と、思いきやそんなわけでも無いようである。

その音は、本当にどんどん近づいてきていたのだ。

別段何も思わず、適当に腰かけてそれが来るのを待っていたところ。

 

裂け目からにょきっと何かが出てきた。

 

「ギ、ギラッ!?」

「ん、ここどこだってか? オーキド博士の研究所に有るエレベーターだよ」

「ッ!? ギラッ?!?!」

「あぁ、えーと……地名わかる? カントー地方ってのに属してるトコだよ」

 

にょきっと出てきた何か───なんか伝説くせぇポケモンは

何を思ってこちらに顔を出したのか知らないが、ここがどこだと聞いてきた。

一応普通に答えておいたが……よく見たらこいつなんか怪我してんな。

 

「おい、お前怪我してっけど大丈夫か?

 逃げてんのなら(かくま)うけど、誰かとバトってんなら戻った方がいいんじゃね」

「 ! ギ、ギラァッ!?」

 

一応は出てきたそいつ、なんだっけか、キューレム? を案じてみたのだが

匿う、という単語にやたら反応してきた。

 

そしてそいつは俺の目の前で、何かの力を渦巻かせ始めた。

 

「おいおい、お前何しようとしてんだよ……。

 俺なんてただのガキなんだから、お前の攻撃喰らったら跡形もなく吹っ飛ぶぞ」

 

ここじゃ’R’押しても復活出来ないんだから、力押しはご勘弁願いたいものだ。

表情を確認する限りかなり必死であり、俺の問いには首を横に振って否定をした。

 

じゃあこいつ何やってんだ? と思ったところで……

その渦巻いていた力が霧散すると、そこにはふたつの物体が出来ていた。

 

「……おい、ちょっと、おい。これ、お前……」

「ギラッ! ギラァッ!!」

「いやお前、頼むとかそーいう問題じゃねえだろッ!

 自分で持ってって自分で育てろよ! 道端であった小僧に任せんなッ!!」

 

【すまないッ! あとは頼むッ!】とか言い捨てて

キューレムは黒い裂け目の中に飛び出していった。

どうしようもないのでそこに出てきた物体を裂け目に投げ入れようと

黒い裂け目に身を乗り出したところ……何やら別のポケモンに追われていた。

 

あぁ、もしかしてこれ、伝説幻ポケモンのガチバトルの最中に

俺がバグらせて変な逃げ道作っちゃったって事か?

 

そう考えてみると、裂け目の先にある空間なんか見覚えあんぞ。

DPtのプラチナで、ギラティナと戦うために入った空間……

 

「って、あいつギラティナか。キューレムって別のだっけ」

 

そうだった。あのなんか黒くて銀で金の肋骨的な虫っぽいポケモンは

プラチナの看板ポケモンであるギラティナだ。

 

よくよく見てみればほうほうの体で、ギラティナは上下左右に飛び回っている。

一体追い回している相手方が何を考えてんのか知らんが、追い詰めてるなこれは。

 

「おーい、ギラティナー。お前もっかいこっち来いー」

「アァッ!?」

「じゃなきゃこれ壊すわよー」

「アァァァァーーーーーッッ!?!?」

 

【それは困るッ!】とこっちに目線を送りながら

何とか攻撃をかわしつつ急旋回をして、こちらの裂け目まで再び飛んできた。

辿り着いたと同時に【わちきも忙しいんだ。下らん事なら殺すぞ!】と睨んでくる。

 

「大した事じゃないさ、ほらよ」

 

そして俺は大根入ってた袋の中にひとつ存在していたきずぐすりの蓋を開けて

傷だらけになっているギラティナにぶちまけてやった。

 

本当に、ほんのちょびっとだけだが、ギラティナの傷が塞がる。

 

「!?」

「ンじゃ、頑張れよ。もう俺に出来る事なんもねーし。

 でもいつか迎えに来てやれよ? これ」

「ッ! ギラッ!」

 

【感謝するッ!】と鳴き声を挙げて、また再び変な時空へと飛び去っていくギラさん。

そのやり取りが起こした回復現象のせいで、追っているヤツがこっちに気付く。

すぐさま俺を潰すために飛んできたのだが……

 

俺はなんかもうめんどくさくなってその入り口を両手でばちっと閉じた。

 

何やら色々とおかしい気がするが、「いいや。」って思ったら、なんか出来た。

 

なんか閉じた裂け目の向こう側からすっごい激突音が聞こえた気がしないでもないが

そこは、俺の関係ない世界の話である。勝手にやっててくれ。

 

そんな事よりあのギラティナが残してったコレの方が問題だろ今は。

 

「やーれやれ……あいつ自身もコレも危なかったから

 出会い頭でしかない俺のがマシと思って預けてったんかねぇ……」

 

俺が裂け目を閉じた事で、一連の歪みに決着でもついたのか

エレベーターの内部は極普通のエレベーターに戻っていた。

 

そして今の現象が夢でも幻でもなかった証明として

 

「まぁ、しゃあねぇか。ゴミ捨て場に持ってくのも気が引けるし」

 

俺の目の前には、養育費としてなのか「はっきんだま」と

 

 

 

 

『タマゴ』がそこに存在していた。

 

 

 

 






適当に作っていく予定です。
気が向いたときに作るだけなので不定期更新。

既に投稿している話のスタートから2年前に遡る完全なifです。
故に、この世界ではあの世界のスタート軸から決まっていた全てが何も起きてません。
草姫さんは生まれてすら居ません。そして登場もしません。
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