「ミミ~、ミ~?」
「ん、俺んちに帰ってんのさ」
研究所での胸糞悪い一件から少し過ぎ去り。
俺とミニギラティナは研究所から自分の家への帰路へと着いていた。
「しかしなぁ、うーん」
「ミィー」
流れで俺が親になってしまったってのはいいが……
残念なことに俺は未だに人に養ってもらっている身である。
現代でも、捨てられてる子犬や子猫を拾って家に持って帰り
母親、父親からイカヅチが落ちたってトラウマが有るヤツもそう珍しくはあるまい。
養ってもらっている……そんな立場の子供がさらに養うものを増やせば
当然の如く家計を圧迫していくわけで……世の中『命』ですら金勘定なのである。
例を言えば馬だ、馬は金が回らないと生きて行けない生物へと進化してしまった。
馬は走らなければ『価値』が無い。価値が付けられなければ生きている価値も無い。
故に、価値が付かない遅い馬は即座に『処分』されるのが馬の世界だ。
運が良いのは乗馬等で生き残れるが狭い門でしかない。
『命』は、人間と一緒に暮らす上では金勘定が全てなのだ。
このポケモンが居る世界では、人のパートナーとなっている為に
そこら辺も現代よりはシビアではないが……大か小かの問題でしかない。
実際うちの家計はどこからお金が補充されているのかわかったモンじゃないし。
「っと、着いた。ここが俺の家だ」
「ミィ~……」
研究所ほどではないが、普通の一軒家並に大きい我が家だ。
まあ頭の上に乗ってるミニギラティナからすれば
研究所=でっけぇー 俺んち=でっけぇー で、感想はそう変わらんようである。
「で、これからはお前の家に」
「ミィ~♪」
「ならないかもしれない」
「ピッ!?」
可哀想な話だが、俺がいくら親になったのだとしても
事情を説明したところでそれが受け入れられるかは
もし勝手にポケモンを持ってきて自分の初めての相棒にしても良いというのなら
多分灰皿とかそこら辺の鈍器持ってコラッタ狩りする子供で溢れ返っているはずだ。
そういう光景が無いって事は、そこら辺の事が暗黙の了解で禁止されているという事。
故に、勝手に持って帰ってきた形になっている俺のミニギラティナは
母親の同意が得られなければ、あのunkな研究所に戻さなくてはならないわけである。
そんなことするなら隠れて飼うがね。
「残念だけど、俺も自活してるわけじゃねーからなぁ……
さすがにコレばっかりは、一家の主の母さんの判断次第なんだわ」
「ピィ、ピィ~……」
「これこれ、涙目になるでない。
大丈夫だって、無理じゃない程度にちゃんと説得はしてやるから」
そういうと、暗い表情になりかけていたミニギラティナは途端に笑顔になり
ミィミィ言いながら俺の胸に顔をぐりぐりと押し付けてきた。
なんか子猫みたいだなコイツ。
「さて、まぁ母さんと話し合ってからだな……家に入ろうか」
「ミ~~♪」
ミニギラティナを頭に乗っけたまま、俺は玄関の戸をくぐり家の中へ入っていった。
サカキさんまだ居るんかなー。
◇
「や~んもうなにこれ、なにこれ♡ ちっちゃくてとっても可愛いわぁー♡」
「ミィ~、ミィ~」
「あぁん、甘噛みしちゃだめぇん♪ 悪い子はおしりぺんぺんよー♡」
「ミィ~ミィ~♪」
母さんは言うが早いが、ぺちぺちと触るようにミニギラティナのおケツを叩く。
目の前の光景が異次元過ぎて俺はもう駄目かもしれない。
こんなところでギラティナ本来の特性(異次元な辺り)を発揮しないで欲しいもんである。
なお、どうやらサカキさんは早めに帰ったようである。
「で、えーとですね、お母さん……」
「ん、なーにー?」
「この子の親になってしまったようでしてね……うちで保護したいんですが……」
「あーらもう全然構わないわよー♪ この子ちっちゃくて可愛いわねぇ♡」
「ミィッ!」
六本あるうちの前足を元気良く「ハイッ!」と上に挙げるミニギラティナ。
其の様子に母さんはまたメロメロになってしまっている。なんだろうこのちょろい人。
「あぁ、そう……じゃあミニギラよ、適当に遊んだら上においで……」
「ミ~~」
横で母さんがミニギラティナの顔にぐりぐりしてるところで疲れが出てきたので
俺はソファーから立ち上がり、自分の部屋へと帰っていく。
◇
そして階段を上がっている最中に不意に ヴォンッ と不吉な音がした。
「……!?」
なんだろうと思い即座に首を回して風景を確認してみると
横の壁に縦一本の亀裂が走っていた。 ま さ か 。
スパカーッと訳のわからん効果音と共に現れたのはやっぱりギラさんでした。
裂け目から首だけニュッと出して、まるで鹿の壁掛け剥製である。
どうやら今回は急いでいるというわけでもなく、落ち着いた状態らしい。
「ギラー」
「あぁ、どうも……さっきは何してたのか気にしないようにしてたけど
とりあえずは落ち着いたのか?」
「ギラァー」
何やらお礼を言われてしまった。
なんか大胆にも捕獲しようとしたヤツが現れたらしく
そいつが持っていた緑色の長いのにかなり追い詰められてしまい
大事にしていた自分の子供まで危ない状態だったとの事。
「ギーラー」
そして偶然俺がその次元に干渉してしまい、あのきずぐすり。
効果は本気で微々たるモノだったのだが、其の僅かの差で危機を脱したらしい。
事実、ギラティナの体は未だにボロボロだった。
「んーすまんな……俺もお前がどーいう存在か理解してるし
回復自体はポケモンセンターやら研究所行けば出来るけど……
人って油断ならねーからさぁ」
「(うんうん)」
俺の発言にギラティナはえらく納得した様子を見せる。
まあわざわざ次元世界に入ってまで捕獲しようとするアホと戦ってた位だしなぁ。
見下してたかも知れん人間の評価も改めるよな。
「まぁ、こんなトコでの話もアレだろ。
とりあえず庭に行くべ、庭。お前もそこのが姿も出せるだろ」
其の提案にギラティナはコクリとうなずき、ちょっと頭をフニフニと振り始める。
恐らくは改めて庭に裂け目を出そうとしたのだろうか?
しかしわざわざ傷付いているやつに力を使わせるのもどうかと思ったので
俺はその次元の裂け目を引っ掴み、ギラの首が出たそれをズルズル引きずって庭へ向かった。
◇
現在俺んちの庭。
俺自体は庭と家を繋げているベランダ窓の足場に腰をかけて座り
ギラティナは裂け目から出てきて、其の4.5mの巨体を遺憾なく庭に発揮している。
「で、お前あの子どうすんだよ。孵っちゃったぞ?」
「ギ、ギ、ラ……?」
「……なに? 【お前何モンだ……?】だと? ただの子供だろ」
「ギラァァー! ギーラァーッ!」
そして会話を始めようとしたら突然変な質問を浴び去られ、
それに答えたら【違う! それだけは絶対に違うッ!】と凄まじい否定を見せるギラティナ様。
なんだよ、俺が何をしたというんだ。
「話進まないから俺の事は飛ばすぞ、今の問題は孵化したあのちっこいのだろ。
一応俺の親にはあいつの保護の事は説明してあるけど
やっぱり本当の親と一緒に暮らした方がいいんじゃねえの?」
「…………。」
俺は親元に帰す提案をしてみるのだが、どうやら想いは芳しくないようだ。
可愛くないというのなら、そもそも守ろうとしないはずだし……と、なると?
「傷が酷くて面倒見切れないかもしれないってところか。
また襲撃があるかもしれないって考えると、確かに得策じゃないな」
「ギラァ……」
やはり自分の子は可愛いらしく、俺の話は図星だったようだ。
どう考えてもこいつは瀕死一歩手前である、文字通り「なんとか逃げ切った」だけだ。
下手したらこの裂け目もPP残り2とか1の状態で作り出してるのかもな。
「……やれやれ、仕方が無い。当初の予定通りアイツの面倒は俺が見てやる。
でもちゃんと可愛いと思ってるなら、力が戻り次第たまに顔見せてあげてくれよ?」
「…………。」
【すまぬ、手間をかけさせる】とでも言う感じに、ギラティナはペコリと頭を下げる。
何気に伝説に残る立場のポケモンに頭下げられた俺ってどういう存在なんだ。
「まぁ、人間には『困った時はお互い様』って言葉もあってな。
自分が信頼出来ると思ったヤツに一時的に頼むってのも悪くはないだろ」
「ギラァ」
人間の間では、都合の良い言葉が沢山あるが
たまにまともな使い方をしてもバチは当たるまい。
「とりあえずあの子の事は心配するな。俺も一応親になっちまったしな……
しっかり面倒見ておいてやるから、お前はシンオウでゆっくり療養してろ」
「ラァー」
ギラティナは、対話でも全く臆することなく平常運転な俺を気に入ってくれたのか
凄まじい巨体についている顔を俺の方へ寄せて、頬にスリスリしてきた。
ちょっとコツコツして痛いが、まあ騒ぐのも野暮だろうか……なんか嬉しいし。
まあ、なんかそんなわけで
歴史的に存在が抹消されてはいるものの
伝説的なポケモンさんと関わりを持ってしまった俺。
少し疲れる日々になりそうだが……こういうのもまぁ有りではなかろうか。
ちなみにミニギラティナのLvは1です。
親はPt順処で47です。
ミニギラはコラッタ1匹にも勝てません。