やっとこさ本編が始まりました。
「ん、む。夜霧よ晩御飯もありがとう」
「タツヤ、なんで夜霧なの?」
「気にしなくて良いよ、飯が美味い事は生きる上での喜びというだけの話」
「今日も相変わらず訳がわからないわねぇ、タツヤは」
「ミィ」
ミニギラに、にぼしという懇名をつけた後は特にやることもなくリビングでのんびり。
にぼしを腹の上に乗っけて一緒にサーナイト主導の料理番組を見てた。
現実だと犬にこの手の何気ない行動をやると、自分の立場が上と勘違いする事があるらしいが
にぼしはただの伝説ポケモンの子供だし、そういう事も無かろうと思う。
で、時間が過ぎ去って晩御飯という感じでもしょもしょ喰ってるわけだ。
「にぼし、これ喰えるか?」
「ミ~~」
千切りキャベツを与えてみると、シャキシャキと良い音を立ててもしゃもしゃ食べる。
まずキャベツはOKらしい、うめぼしとかどうだろうか?
「ミ~……ミ、ミィッ?!」
「おぉ、後ずさった」
まだまだ生まれたてだからなのか、味覚や嗅覚を強めに刺激するものは駄目らしい。
「ん~~♪ 可愛いわぁ~」
「んだんだ、んじゃ切り干し大根をご飯に載せて……これは喰えるか?」
「(もしょもしょもしょもしょ)」
「問題は無し、と」
「ミィー!」
この調子だとうめぼしとかレモン、あとコーヒー辺りがまだ駄目というところか。
ぶっちゃけこれ人間と喰うもん大して変わらんな。
しかしどこでアレルギー反応やらが出るかもわからんし、油断は出来ないだろう。
現実世界で、親戚が猫にイカあげまくってたのは心底驚いた。
下手したら死ぬのに。無知って怖い。
◇
晩御飯も皆で食べ終え、ちらっとテレビを見た後に俺は風呂の準備をする。
湯舟にお湯が溜まった所で一度リビングへと戻り、にぼしを呼びに行く。
あかちゃんギラティナ、初お風呂。
「おーい、にぼしー。風呂入るからこっちこーい」
「ミ~?」
リビングに戻ってみたら、母さんがにぼしをテーブルの上に載せて
指でつんつくぷにぷにとやっていた。にぼしも構われるのが大好きな様である。
頭撫でたり喉くすぐったりしても全然嫌がらないもんな。
ていうかこれ完全に犬だろ、犬。
にぼしは母さんに見送られつつ俺の後ろをトテトテと着いてくる。
どうせ家の中なので急ぐ必要もなし、にぼしのペースにあわせて歩く。
そして浴室へと辿り着いたので、洗濯機前で服を脱ぎ湯気たっぷりの室内へと突撃した。
湯気が外に出まくって湿気が酷い事になる前に扉を閉めようとしたところで気付く。
にぼしが【何をやるの?】という感じの眼差しで、首を傾けて此方を見ていた。
「どうした? こっちこいにぼし」
「ミ、ミィ?」
ふむ……何やら湯気がもくもくしていてちょっと怖い様である。
「いいからいいから、ほれ行くぞ」
「ピッ!? ピィ~っ! ピィ~~っ!!」
「これこれ、暴れるなーにぼし」
にぼしの脇を抱え挙げ腹の横に持ってきて、風呂に入る備品のような扱いで一緒に浴室に入った。
パタリと扉を閉めたところで、にぼしがやや震えているのに気付いたのだが
俺が持ち上げているという安心感があるのか、とりあえずは暴れなくなった。
んーまずどこから風呂のよさを教えてやろうか。
季節柄、お湯の中に入って無くても寒くないし先に体を洗ってやるかな?
まずは風呂桶にお湯を汲み、にぼしの前においてやった。
おっかなびっくりながらも、風呂桶からほこほこと出てくる湯気には興味津々なようだ。
「いいかー? こっちに沢山入ってる水は暖かくてなぁ」
「ピ、ピィ……」
「この桶でお湯を汲んで、体を洗う。
ほれ、もうちょっとこっちに寄りなさいにぼし」
俺の股の隙間に震えるにぼしを固定して、驚かせないように手で少しお湯を掬って
にぼしにちょろちょろ掛かるように手のお湯を掛けていく。
「ミッ?! ……ミ、ミィ」
ちょっと驚いたようだが、その暖かさもあって驚くだけで済んだらしい。
俺は繰り返し繰り返し、にぼしにお湯を掬ってはかけ、掬ってはかけを繰り返す。
「にぼし、気持ち良いだろ?」
「ミィ~~~///」
なんともはや、慣れが早いぞコイツ。
桶一杯分のお湯を掛け終わったところで既にとろけた声を出し始めた。
もう一杯お湯を汲んで、今度はボディーシャンプーを手に掛け、しゃこしゃことあわ立てる。
そしてそのままぬるりとにぼしの体に触り始めた。
「ッ!? …………ミィ」
これも驚くだけで済んだようである。
こいつもしかして前世人間だったんじゃねぇの? 慣れが早すぎる気がする。
ごしごし、ごしごし、ごしごしごしーっと。
ぬるりと、さらりと、若干エロく、にぼしをボディーシャンプーで揉み解していく。
最後にお湯をツトトトトトと掛け始める辺りで、にぼしは完全に脱力していた。
足を全部折り畳んで、警戒心皆無な状態である。
「ミィ~~~~~~~」
「さいですか」
俺が上から見下ろす形で洗っているので、にぼしの意思はわからんが
声と様子からして、油断しまくってるみたいだし安心しているのは間違いない。
適当な生返事だが、返答としては間違って居ないと思う。
◇
さて、にぼしは洗い終わった……次は俺だな。
洗うからには泡も若干飛び散るし、お湯を体にぶっかける際には巻き添え食らいかねん。
湯舟に入れようと思ったが、20cm程度しかないにぼしを俺の補助無く入れたら確実に溺れる。
んー、しゃあないな。湯舟の淵に立たせておくか。
「にぼし、ちょっとここで待機しときなさい」
「ミ、ミィー」
全てが初めてだからおっかなびっくりは続いている。
が、完全に警戒心MAXでもないのか俺の言う事はちゃんと聴いてくれているな。
※※少年洗浄中※※
ぅぃ、サッパリした。
体を洗っている最中、にぼしがずーっとこっちを怯えながら見ていたのが気になったが
まあ、お湯をぶっ掛けてる様子とか頭から引っ被っている図が怖かったのだろうか?
俺等からすれば当たり前の事だが、にぼしと風呂桶の体積を比較したら殆ど同じ様な体積だからな。
俺も人間の身で自分と同じ体積の水量が毎度毎度押し寄せてきてたらそれは恐怖である。
さて、と……それじゃいよいよお湯に漬かるか。
しかし……にぼしのあの感じを見ると、このまま湯舟に入れると大騒ぎしそうだな……。
ふーむ、それじゃあ……風呂桶にお湯を汲んでそれに入ってもらうか。
「ほい、っと……それじゃぁにぼし。これの中に入りなさい」
「ピ、ピィ……?」
「そのままだとさすがに体冷えちゃうからな。
暖かいお湯の中に入って、体を温めるんだよ」
「…………ピ」
用意した風呂桶の前に、脇を抱えて降ろしてやるが
風呂桶のお湯をちょんちょんと突っつくだけで、一向に入ろうとしない。
風呂桶に波紋が出来るたび、びくっとして及び腰になっている。
湯船の中で暫くその光景を楽しんでいたのだが、このままだと一向に入ってくれない気がする。
仕方なしと思い、再度にぼしの左右を掴んで静かに静かにお湯の中に入れようとした。
「ピッ?! ピィッ、ピィ~~~~!!」
「お、ぬぁっ。コラコラコラコラ、暴れるな暴れるな!」
腕の中でもがき続けるにぼしを何とか押さえつけ、怯え続けているがそのままお湯に下ろした。
しばらくピィーピィーと泣き続けていたが
どうやらにぼしが想像していた状況とは全く違う気持ちよさが襲ってきて
お湯に下ろしてから30秒後にはもう暴れなくなった。
「うむ、それでいい。これがお風呂ってヤツだぞ、にぼし」
「………………」
暴れなくなってはいるが、まだまだその快楽に身を委ねられないらしく
俺を見たり、周りを見たりしてキョロキョロとしている。
もう心配する事も無かろうと思い、俺は湯舟で今日の疲れをじっくりと取っていった。
「気持ちいいだろ?」
「………………ミィ~~~」
そんなこんなで漸く一息。
初めてのお風呂はおっかなびっくりなにぼしだった。
「おい、にぼし。そろそろ出るぞ。桶から出なさい」
「…………ミッ」
気に入りすぎて桶から出てきやがらねぇ。
手で桶からにぼしを掬っても、風呂床に下ろしたら自分から桶に入っていきやがる。
「ミィ~~~~~~///」
「…………やれやれ」
気持ちよさそうに目を閉じおって……まぁ、いいか。
以後、ストーリーも何も無く進みます。