うちの伝説ポケモンがなんか小さいんだが   作:右肘に違和感

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6話       激から

 

───チ、チチッ、チュチュン……

 

 

地球が再び一回りし、世界はいつも通りの平凡な朝を迎える。

 

そして、『にぼし』と名付けられた小さいギラティナにとっては

生まれて初めて迎える事が出来た朝である。

 

 

昨日の夜、寝る前に『こいつの寝床どうしたらええのん』という疑問に彼の主が辿り付き

とりあえずリビングにあった柔らかめのクッションを部屋に持ち込み

そこににぼしを乗せて見たところ、色々あって疲れていたにぼしは

穏やかにスリーピングタイムに入って行き、そのまま寝入っていた。

 

それを見届けた後、タツヤも普通にベッドに入り熟睡───現在に至る。

 

 

「……ミ?」

 

 

オニスズメの声をきっかけとして、にぼしの意識が覚醒していく。

なにやら自分は柔らかいところに居るようだ、と確認をして……周りをキョロキョロ。

そして自分の目線よりやや上の台座に位置する生き物を確認した。

 

昨日出会った、自分のために色々としてくれた愛しい主様である。

 

寝起きなのに子供特有のテンションの高さを維持しつつ、クッションから下りて

主様が寝ているにも拘らず、彼に抱きつこうと喜びの声を上げながら突撃し始めた。

 

飛び跳ねるために、にぼしは勢い良くジャンプをした!

 

 

 

ばよんっ

 

 

 

「ミッ!?」

 

 

 

ガッツ が たりない!

 

 

誠に残念な事に、例え伝説のポケモンといえど生まれたてのにぼしは跳躍力が足りず

主様にではなく、主が寝ているベッドのマットの真横に顔面から突っ込む事になった。

 

自分の跳躍力が足りない事に気付かず動揺し、主様の下へと行きたい欲求と

それが叶う事が無い自身の身体能力の差にこんらんしてしまい

 

 

 

わけもわからずじぶんをこうげきした。

 

 

 

そして一人で悲鳴を上げているところで、にぼしの主であるタツヤは

特段それに反応する事も無く、自分がいつも起きているタイミングで普通に起きた。

 

部屋の真ん中を見てみれば、何故かボロボロなにぼしが転がっている。

 

「え、ちょ、なにこれ、何事ッ!?」

 

 

そんなマサラタウンの日常が、今日も始まる。

 

 

 

◇

 

 

「と、いうわけでやってまいりました2番道路」

「ミィッ!」

 

にぼしを頭に載せて、一緒にリビングへと降りて行き

母親が用意してくれた朝食を2人と1匹で食しながら、本日の行動をどうするか考えた。

 

一応研究所の情けないおっさん・オーキド曰く

『ポケモンは戦ってなんぼの生物じゃ』という事であり

実際のところ彼が知っているゲームでも、生まれたてのLv1の子を

即座に戦いへ繰り出すという、現実では考えられない暴挙が罷(まか)り通っていた。

 

なので、にぼしも実は戦いたいのかも? という結論に達して

近所のポッコラ製造所とでもいうべき、初心者バッチコイな2番道路へやってきたのだ。

 

「さっきも確認したけど……にぼし、お前ちゃんとやる気はあるんだよな?」

「ミーィッ!!」

「うむ、よし。ならとりあえず問題は無いな。

 なんか倫理的にすっげー引っ掛かるような気はするけど

 とりあえず本人にやる気があるし良いか」

 

タツヤの問いかけに対し、ミニギラは6本あるうちの右前足を

体をやや傾けながら上に挙げて、賛同の意を示す。

 

研究所のおっさん、実は有能なのである。

 

 

◇

 

 

「よし、それじゃあ適当に相手探して戦ってみるといい。

 負けるんじゃないぞ、にぼし」

「ミィー!」

 

可愛い鳴き声で気合を入れて、小さい体ながらなかなかの勢いで草むらを駆け始めるにぼし。

 

 

───そして、彼は運命の出会いをそこで果たす。

 

 

あ! やせいの コラッタが くさむらから とびだしてきた!

 

 

「───ミッ!?」

「───ッチュ!?」

 

互いに子供でありながら、ポケモンの本能を完全に理解し

にぼしとコラッタは、各々のバトルフェイズへと意識を切り替えて行く。

 

 

| にょき

 

 

「ん、おぉ……ギラティナか」

|< ギラァー

「ほれ、見てみろ……自分の子供が初めてのバトルだぞ」

「───……」

 

先に動いたのは……コラッタだッ!

 

「チュチュゥーー!!」

「ミッ!?」

 

そして華麗ににぼしへ激突していく……が、ダメッ……!

にぼしのタイプはドラゴンとゴースト……それにノーマルタイプの技は……!

圧倒的に、ダメッ……!

 

「んーやっぱりタイプ的にここいらじゃ無双になりそうかなぁ、にぼし」

「ギラ。」

|< ───ラティナァーーーッッ! 今日こそ、今日こそお前を捕まえてみせる!

「ギラッ?!」

「あら、お前まだ追っかけられてんのか……傷も完全に癒えてないのに大変そうだなぁ」

 

先手を取られ、若干動揺したものの……にぼしにダメージはゼロッ……!

痛みも衝撃も無い攻撃の動揺から立ち直り、お返しとばかりににぼしは

小さい体をふんばりながら、シャドーボールを練り上げていく。

 

「……ッ!」 カプッ

「え、ちょ、おまっ……何してんすかギラさん。

 なんで? なに? 何故にあなたは俺の服の襟首を咥えてますか?」

「ギラァ!」

「いや手伝えってお前! 自分で何とかしろよ!

 俺だってお前の子供と同じでそこら辺のなんも知らんガキだっつーの!

 おい、離せッ! 離せぇーッ! うおぉぉぉぉーーーーーーーーーーーー……>|

 

そのシャドーボールにコラッタは驚いてしまい、回避を忘れてしまった。

他のポケモンのシャドーボールと比べると、本気で小さい球状だが……

紛れも無く、それはシャドーボールッ……!

 

かなりの速さでコラッタへと差し迫り、コラッタに直撃ッ!

 

が、ダメッ……! 圧倒的、無傷ッ……! お話にならないッ……!

コラッタのタイプはノーマル……それにゴーストタイプの技は……!

圧倒的に、ダメッ……!

 

 

|< な、なんだ君はッ?!

   うるせー知るかァッッ!! あんたが不敬な事してるせいで巻き込まれてんだよッ!

   ギラァーッ!

   ふ、ふふん……たとえ伝説ポケモンにトレーナーが付いたからといって

   子供に負けるようなボクではないッ!

   トレーナーじゃねえよっ! 巻き込まれたっつってんだろーが!

   ギラァァァーーーッッ!!

   ちょ、お前も気合入れて突撃してんじゃねえってうわぁーーーーー!!!

 

自分にダメージが無い事に驚くコラッタ、そして同時に全く堪えてない事に驚くにぼし。

 

 

 

小さいながらも、両者はついに気付く───

 

 

こいつが、コイツこそがッ、自分の前に立ちはだかる、越え難き壁ッ……!

 

 

その事実を両者がやんわりと認識し出して……彼らの技の応酬が始まる!

 

 

|< い、いてぇ……なんで俺がこんな目に……

   クソッ、やるじゃないか……ボクのラティオスを倒しきるなんて……

   けど万全には万全を期してよかった……ボクの切り札は、ラティオスだけじゃない。

   さぁ、行け! レック───

   ッ# ギラティナッッ! 俺をアイツに投げ飛ばせッッ!!

   !? ギ、ギラッ!

   ───なッ!

 

 

が……変わらずッ……! 結果は、変わらずッ……!

お互いに無効化する技を応酬したところで、ダメージは0のままッ……!

ゼロにでかい数字をいくら掛けても、ゼロはゼロのままッ……!

 

 

|<  ……捕まえたぜぇ。よーくもやってくれやがりましたねオニイサマ……♡

    ちょ、コラッ! ボクのモンスターボールを返せッ!

    ギラティナッ! これちょっと持ってろ!

    ギラッ!

    あぁっ! ラ、ラティオスー!

    とりあえず膝カックン! そしてそのままホールド!

    うおっ!? な、こらっ、何をするッ!

    そして電気アンマじゃぁぁぁぁぁーーーーーッッ!!

    うわあぁぁああぁあぁぁぁああぁぁあぁーーーーっっっ!?!?

 

無限の間とも思える彼らの応酬……しかし、終わりというものは必ずやって来る。

 

「……ミ、ミィ……!」

「……チュ、チュゥ……!」

 

互いに疲れきって、息を切らせながらにらみ合いを続ける。

 

───このままでは、埒が明かない。

 

最初の時点で気付きなさいと言いたくなる事実に、ついに彼等は気付き……

 

互いの体を跳躍させるッ……!

そしてお互いが繰り出す技は……わるあがきッ!!

 

「ピッ、ピィッ!?」

「ヂュ、ヂュゥッ!?」

 

両者、初めてのダメージにどちらも一緒にびっくりしてしまい

そしてその反動も、小さい体にダイレクトに響く。

 

一度怯んだ後に、再度彼等はにらみ合う。

小さいとはいえその闘志は、一切の揺るぎも無く本物ッ……!

 

 

|< ギラティナッ! もう面倒だ、適当な空間開け!

   ギ、ギラァ……

   あ、あぁああぁぁああ……

   この赤いマントで茶巾寿司にして……

   んでもってズボン脱がせてパンツ一丁で……

   ほーれ現実に帰れくそったれー。ざまーみろー。

   あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁーーーーーーー…………… >|

 

 

そして、両者に待ち受けていた結果は……

 

「ミ、ミ……ィ……」

「チュ……ゥー……」

 

どさり、と両者が崩れ落ちる……勝者の居ない、戦いとなった。

 

 

◇

 

 

にぼしがふと意識を取り戻すと、いつの間にやら自分の主様の膝の上だった。

どうやら疲れ果てた後に気絶し、主の膝の上で介抱されているようだ。

 

何故か主様もボロボロなのがにぼしは気になったが

頭を撫でられる気持ちよさを前にしては、そのような小さい事も吹っ飛んでしまう。

 

「お疲れ様、初バトルはどうだった?」

「ミ、ミィ……ミィ~」

「ん、そうか……頑張ったか。よしよし」

「ミィ~~~♪」

 

全てが全て、初めてだった野良ポケモンとのバトル。

そして始めに出会った相手は、終生におけるであろうライバル。

子供心ながら、生まれたことに、そしてココに連れてきてくれた主様に

深い感謝を覚えるにぼしだった。

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、ハクタイシティで

パンツ一丁と顔面茶巾寿司状態でビクンビクンしている変態が発見され

町の小さな事件として、人々の記憶に残るのだった。

 

なお謎な事にその変態は、パンツの中にモンスターボールを入れており

そこから出てきたラティオスは本気で自分の主を心配していた、とは警察の談である。

 

 

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