PERSONA~Stand By Me   作:伊弉諾

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スタンド名:アイアン・セイヴァー(鉄の救世主)
本体:月夜城由鶴
【破壊力 - A / スピード - A / 射程距離 - C / 持続力 - C / 精密動作性 - B / 成長性 - A】


物体から離れている物ならば命を持つ物以外ならどんな物体でさえも空間から隔離出来る能力。
スタンドそのものの射程距離はせいぜい二メートルと短いが、能力自体は本体である月夜城由鶴が位置を把握していればどれだけ距離があろうと隔離出来る。更に命以外とあるが、浮いている物体に生命体が付着している場合のみ例外で、問題なく隔離することが可能。ただし欠点として、アイアン・セイヴァーの隔離能力発動中はアイアン・セイヴァーを動かす事が出来ず、攻撃は全て本体で行わなければならないうえ、隔離していられる時間も物体の大きさ次第で数秒〜数分になる。
隔離した物体が動体であった場合、隔離していた時間に比例して解除した時の動体の速度を上昇させる事が出来る。なお、隔離中の動体は隔離空間の中で動きが止まる。
スタンド自体は生まれつき持っていたが、今までほとんど使用して来なかった為、これからどんどん成長していく可能性がある。

※スタンド名の由来はドイツのヘヴィメタルバンド「Iron Savior」です。本来の読みは「アイアン・セイヴィアー」ですが、日本人の発音に合わせて敢えてセイヴァーと読ませています。


VS『女を捨てた肉食獣』里中千枝②

「やれやれだな。こいつには色々と聞かなきゃあならない事がある。起きろ」

 

 

戦いが終わり意識を失った里中千枝を抱きかかえ体を揺する。

 

 

「うっ……んっ」

 

 

ボロボロの身体を少し動かし里中千枝は目を開けた。

しばらく無言で見つめ合う形となったが、数秒後自分が今どういった状況にあるかを理解する為かゆっくりとその口を動かした。

 

 

「あれ……? あたし、生きてる……? それに、君は……」

 

 

先ほどとは打って変わって落ち着いた口調。あの戦いが嘘だったかのように静かで弱々しい。

 

 

「もう戦う気力が無いようだな。立て。俺も満身創痍だがもしまた攻撃してくるようなら今度こそ容赦はしない」

 

 

「ど、どういう事……?」

 

 

困惑する里中千枝に無理矢理手を掴みその場に立たせる。

 

 

「フー、またぶちのめされたいのか? とぼけるんじゃあないぞ。初対面の俺をいきなり背後から奇襲してきたのは何故だ?」

 

 

「な、なんのこと? あたしはまたテレビの中に人がいるし、何か知ってるかと思ったから話しかけようとしただけだよ! そしたらいきなり攻撃しようとしてきたんじゃん!」

 

 

「何……?」

 

 

おかしい。互いの話がまるで合わない。

里中千枝曰く攻撃を仕掛けてきたのはこっち。だがこちらからすると先に仕掛けてきたのは里中千枝。

どういう事なのだろうか。頭がどうにかなりそうだ。

 

 

「と、取り敢えず一旦情報を整理しよ!」

 

 

「……」

 

 

------------------

 

 

「つまりはここは"特別捜査隊"が2ヶ月前に解決したはずのテレビの世界の中で、お前たちは"鳴上悠"が帰って来た事を機に、また特別捜査隊を結成した。そしてマヨナカテレビが放送している理由や、消えた仲間の調査及び解決に向け動いているという事か」

 

 

「うん。それで四人で来たんだけどみんなバラバラのところに落ちちゃったみたいで、探してたら月夜城君と出会ってさぁ。何か知ってるかもって思って声を掛けようとしたら戦う事になっちゃったんだよね……」

 

 

イタタ、と態とらしく顔を歪ませながらこっちを見る。

実質始めてスタンドを使った為加減が効かなかったが、これ程までに自分のスタンドが強いとは思わなかった。互いにこんなになるとは、戦いは正に死闘と言えただろう。

 

 

「ふむ。ここまでするつもりもなかったんだがな。すまなかった。謝ろう。"千枝"」

 

 

「う、うん。別に仕方なかった事だし……ってええ!?」

 

 

「? ……どうした?」

 

 

急に大きな声を上げ驚愕する千枝。何をそんなに驚く事があるのか理解が出来ない。

 

 

「ど、どうしたって……。まともに自己紹介すらしてないのにいきなり名前で呼ぶなんて……!」

 

 

「なんだ、そんな事か。名前で呼ばれるのに抵抗があるのか?」

 

 

千枝は若干顔を赤らめながら「別に……」と呟くと口を噤む。

やはり女はよくわからない。この程度で動揺するなど遥では考えられないことだ。逆に遥にはもう少しこう言った女らしさというものを身につけて欲しい物ではあるが。

 

 

「ただ、男子から名前で呼ばれた事なんてほとんどないからビックリしただけだよ!」

 

 

「そうか。……ん?」

 

 

何かが頭の中をよぎる。しかしそれが何かは分からない。

 

 

「ん?どしたの?」

 

 

「いや、何か大切な事を忘れていた気がしてな……。思い出せん」

 

 

「大切な事?」

 

 

何かを忘れている。それだけははっきりとわかる。だが何を忘れているのかがわからない

頭の中にポッカリと空いた虚無感。それが自身の身体を震えさせる。

 

 

「顔色が悪いけど、大丈夫?」

 

 

「あ、ああ。さっきの戦いで血を失いすぎて貧血気味なのかもな」

 

 

実際はそうでない事はわかっている。

目の前にそびえる八高の校舎。そこから邪悪な何かを感じる。この震えの正体はきっとこの校舎に足を踏み入れた時にわかるだろう。

 

 

「さて、まだまだお前とは話す事がたくさんある」

 

 

「うん、あたしも」

 

 

本当にたくさんありすぎて何から話せば良いかわからない程に。だがまず聞いておくのはこれだろう。

 

 

「よし、では訊くがその前にまずはこいつを見ろ」

 

 

言って、スタンドを背後に立たせる。

 

 

「驚いたよ! まさか月夜城君もペルソナを使えるなんて……」

 

 

「ペルソナか。はっきり言おう、俺にはお前の言うペルソナというものがなんなのかわからない」

 

 

「え……?」

 

 

ペルソナ。ラテン語で「人格」や「仮面」という意味。スタンドが「傍に立つ者」や「立ち向かう者」という意味合いなのに対し、千枝の言うペルソナの意味合いは恐らく「もう一人の自分」や「仮面を外した姿」とか、そういった意味合いだろう。しかし、だからなんだというのだ、と言いたい。平たく言えばスタンドとペルソナはどこが違うのか、という事が疑問なのだ。

 

 

「お前の言っているペルソナを俺たちスタンド使いは『スタンド』と呼んでいる。だが俺からしてみれば違いはそれだけのように思えるのだ。一体どこが違うのか。お前はわかるか?」

 

 

「違い……? うーん、なんだろ……」

 

 

難しい顔をしながら俯く。

やがて閃き、顔を上げる。

 

 

「召喚方法とかかな?」

 

 

「召喚方法?」

 

 

「そ。スタンドとペルソナの最大の違いだと思うよ」

 

 

そう言って千枝はその違いについて説明を始める。

 

 

「まず月夜城君がさっき出してたペル……スタンドは、スタンドを出すための条件とかはこれと言ってないよね?」

 

 

「そうだな。スタンドによっては能力を発動させるための条件……例えば『何かに火を灯す』だとか『能力の対象にしたい相手に指を差す』だとか、そういったものはあるがスタンドそのものを出すための条件は基本的にはないだろうな」

 

 

もしかしたら本体が死ぬ事で現れるスタンドとかもあるかも知れないが。

 

 

「一方でペルソナはまず目の前にカードを出すイメージをさせなきゃいけないの」

 

 

「ああ、さっきのアレか」

 

 

「そして次はそれを壊すイメージ。その二つがあって初めてペルソナを"安定して"出す事が出来るんだよ」

 

 

「"安定して"? それなしでも呼び出す事は可能なのか?」

 

 

俺の問いに「一応ね」と返事をする。その後「だけど」と続けた。

 

 

「その状態だと最高の力は発揮出来ない」

 

 

「と、いうと?」

 

 

「月夜城君もスタンドを出す時は名前を言ってから呼び出す時と、そのまま呼び出す時があるでしょ? それって『漫画やアニメで必殺技を出す時にその技の名前を叫びながら出す』っていうのと同じだと思うんだよね」

 

 

「……なるほど、要するに俺がスタンドの名を呼ぶ時とお前らペルソナ使いがカードを出し、そして破壊するイメージはある種の精神的なトリガーって訳か。どことなく言霊ってやつに似たもんだな」

 

 

ペルソナはもう一人の自分の姿。カードという仮面を打ち破ることで真の、もう一人の自分の姿を晒すことが出来るというわけか。

尤も、俺の場合はどちらかと言えば『他人を呼ぶ際に「おい!」って呼ぶか名前で呼ぶかの違い』くらいにしか感じていないのだが。

ペルソナにはますます興味が湧いた。

 

 

「だがな、千枝よ」

 

 

「ん?」

 

 

「ペルソナとスタンドの違いは出し方の違いだけなのか?」

 

 

「あ……」

 

 

「……まあ、これ以上分からないならいい。出し方の違いを聞けただけでも良しとしよう」

 

 

やはりこの問題は詳しく研究している機関などでないとわからないのだろうか。もっともそんな機関が存在していればの話だが。

自分にわからない事が同じ年の少女に分かるわけなどない。質問する相手を間違えた。

 

 

「さて、では次の質問に移るが」

 

 

「う、うん」

 

 

「このテレビの中の世界はどうなっている? 何故八高があるんだ?」

 

 

この質問こそが最も重要であろう。

そもそもテレビの中に入り込むということ自体がおかしな話なのだが、それ以上に現実にあるはずの八十稲葉高校が今まさに目の前に建っているということが物凄く奇妙なのだ。もしかしたら世界のどこかに「物体を移動させる能力」を持つスタンド使いが存在するかも知れないが、少なくとも今この場にいるということは無いだろう。その証拠にあれだけの激闘が有ったにも関わらずその姿を少したりとも見ていないからだ。となればここではないどこかに、例えばテレビの外にそのスタンド使いがいるということになる。そうだとすればそのスタンドは遠隔操作型のスタンド。遠隔操作型のスタンドは近距離型のスタンドに比べスタンドパワーが弱い。これだけの大きさのものをテレビの外というかなりの距離が離れた場所から移動させるなど最早不可能に近いというわけである。無論ペルソナの中にもスタンドと同様にこういった芸当が出来るものもあるのかも知れないが、それはまた今は別である。

 

 

「簡単に説明すると、実はテレビの中にはシャドウっていう、その人が認めたくないもう一人の自分がいて、それが見せるのがマヨナカテレビなの。つまり今回もマヨナカテレビが映ったってことはここには既に誰かのシャドウがいるってこと」

 

 

「そのシャドウがこの学校を何日も掛けて建造したとか言うんじゃあないだろうな?」

 

 

「違う! 人の話は最後まで聞いてよ」

 

 

「あ、ああ、すまん。続けてくれ」

 

 

「……それで、そのシャドウは認めたくない部分に関係のある場所とかをテレビの中に存在させるんだ」

 

 

そう言って千枝は少し表情を曇らせた。何か後ろ暗い過去でもあるのだろうか。

 

 

「なるほど、ということはこのテレビの中にいるシャドウの元になった人間は八高に関係のあるやつの可能性があるということか……」

 

 

ペルソナ使いといい、シャドウといい、八高にはトンデモ集団が集まるある種の養成機関でもあるのだろうか。

 

 

「全く、本当にやれやれだ」

 

 

制服のポケットを漁りあるものを取り出す。

 

 

「!」

 

 

口に加えたそれにライターで火を付け、煙を吸い込む。千枝は普段見かけないものに呆気に取られているのか驚いた顔をするばかりだ。

 

 

「フゥー。ちょいと休憩だ」

 

 

煙が肺を燻る。疲れた後や考え事をしている時はやはり煙草に限る。

 

 

「『BEASE』。21ミリだ。お前も吸うか?」

 

 

「いらないよ!」

 

 

横であーだこーだと文句を言う千枝を無視し、至福のひと時を楽しむ。

煙草を吸い落ち着いたところでこれからについて考える。

とんだ災難の渦中に巻き込まれたものである。スタンドが使える以外のただの人間には少々危険な世界だ。ここに留まるにはまだ色々と知識や経験が足りない。それにGW明けに備え通学の準備もせねばならない。となると、早い所ここからは立ち去った方が無難ではある。

 

 

「さて、このテレビの世界についてだが」

 

 

「……」

 

 

考えが纏まり、話を切り出すとつい先程まで煙草について文句を言っていた千枝もこれから話す事の先が気になるのかその口を閉じた。

 

 

「この世界についてお前の知っている事を教えて欲しい」

 

 

「?」

 

 

「言い方を変えよう。俺もお前達の調べ物に協力したい。俺もこうなっては無関係とは言えんのでな」

 

 

「!」

 

 

人間は好奇心という物には勝てないのである。そう、時として好奇心は猫をも殺す程に。

千枝の表情が変わった。勿論、俺は自らの命を掛けてまで危険な物事に協力するという気は全くない。だがこうも言っておかなければ上手く話を聞き出せない上、八高に転校する関係上なるべく親しくなっておくに越した事はないのだ。その方がこの先安定した学校生活が送れるというものである。

 

 

「それは助かるけど、もともと月夜城君は関係ない立場なんだし、あたしたちの事情に巻き込むわけには……」

 

 

中々に予想通りの反応である。やはりこちらの考えがあたった時というのは気持ちがいい物だ。

 

 

「言っただろう? 俺ももはや関係がないとは言えん。それに少々引っ掛かる事があってな……」

 

 

千枝は少しばかり困ったような顔を見せる。当然と言えば当然の反応だろう。

 

 

「……俺たち、スタンド使いにはルールというものがあってな」

 

 

「? ルール……?」

 

 

「『スタンド使い同士は引かれ合う』」

 

 

「! そ、それって……!」

 

 

「ああ、このテレビの中に俺が落ちたのは結して偶然なんかじゃあない……」

 

 

そう、決して偶然なんかではない。

 

 

「このテレビの中には俺以外にもスタンド使いが潜んでいるかもしれないってことだ……ッ!」

 

 

バアァーーz_ン!

 

 

「ス、スタンド使いがここに!?」

 

 

「少なくとも可能性はあるということだ」

 

 

千枝は「今までそんなこと無かったのに……」と呟いた。

俺自身も他のスタンド使いなど見たことはない。俺からしてみても十分なイレギュラーになることは間違いないだろう。

それにしても、さっきからなんだか違和感がある。

雰囲気だとかそういうものではなく、なんというか、首の辺りがざわつく感じである。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「ん? なんだ?」

 

 

「さっきから首の後ろばっかり触ってるけど……」

 

 

俺が違和感を感じていることに千枝は気付く。どうやら無意識的に首筋を触っていたようだ。

 

 

「……やはりこの世界には何かがある」

 

 

校舎から感じる蠢くような邪悪な気配。本当にこの世界にいるのは人間とシャドウだけなのだろうか。先刻の戦闘での千枝の豹変ぶりは一体なんなのだろうか?

疑問は尽きない。

 

 

「さて……と」

 

 

「おっ、先に進む?」

 

 

「ああ。だがまずその前にだな」

 

 

俺は掌を千枝に突き出し、言う。

 

 

「もう一度俺と戦え」

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