PERSONA~Stand By Me   作:伊弉諾

6 / 9
スタンド:トモエ
本体:里中千枝
【破壊力 - B / スピード - C / 射程距離 - C / 持続力 - C / 精密動作性 - B / 成長性 - D】

解説:里中千枝が自らのシャドウを認め、発現させたペルソナ。薙刀のような得物を持ち、黄色の躯体のいかにも『カンフー』といった見た目をしている。ペルソナの特徴である属性攻撃や回復魔法は持たないが、その分打撃に特化した攻撃方法を多く持つ。『ゴッドハンド』や『アグネヤストラ』といった一撃が強力な打撃魔法を持ち、ペルソナ自体のスペックも高い。また、『チャージ』という打撃魔法による攻撃を一度だけ強化する魔法も使え、里中千枝はこれを自身に掛ける事によって最大4段階まで自身を強化して戦う。アルカナは『戦車』。

※スペックについてはあくまで作者の「こんな感じだろう」という想像です。


VS『女を捨てた肉食獣』里中千枝③

「な、何言ってんの……? まさかまだおかしくなってるんじゃ……」

 

 

「そんな訳ないだろうが」

 

 

良い加減千枝との天然自然のコントにも飽きて来ていたところだった。

無意味な争いまともな人ならば拒む。俺自身もまともな人間だと信じたいが、俺には俺なりの理由がある。

当然ながら千枝は俺の突拍子のない発言に、声を荒げながら反論をぶつける。

 

 

「じゃあどうして⁉ これ以上戦う必要なんてないでしょ!」

 

 

「さっきは俺にとって初めての戦闘みたいなもんだ。これからどんなやつが襲ってくるかわからん以上スタンドの使い方には慣れておいた方が良いだろう。当然手加減など無しでな」

 

 

「でも……」

 

 

「渋るなよ、千枝。何も殺し合いをしようと言ってるんじゃあない。俺自身の成長の為にも必要なことであり、試練だ」

 

 

未曾有のこの事態の収拾へ努めるのならば戦力は出来るだけ強化しておいた方がいい。それが俺の考えだ。千枝もそのことは分かっている筈である。

しかし千枝は渋る。

そんな千枝の考えも俺は見通していた。

 

 

「……お前は優し過ぎる。何度も仲間が傷付くのを見て来たからが故に今もこうして争いを恐れている。だがそんなものではやがて命を落とすことになるだけだ」

 

 

「そんなの当たり前でしょ! どうしてみんなが傷付かないといけないのさ⁉」

 

 

「違うな、そうじゃあないんだ」

 

 

「何が違うの? 戦う事になんて意味ないよ! ……⁉」

 

 

千枝は尚も声を荒げるが、そこでようやくこちらの言いたい事に気付いたようだ。

 

 

「誰かを守る為には戦わなければならない。強くならなければいけないんだ。それにこれは戦いではなくどちらかと言えば特訓。……全力本気、完全出力で戦う必要まではない」

 

 

この言葉に千枝は一度は目を伏せるが、やがてその言葉の意味の重要さに気付き目付きを変え、顔を上げた。その目には先ほどのような迷いはなく、一つの意志のようなものが見受けられる。

 

 

「わかった、そうだよね、そうしなくちゃならないのが今、この時!」

 

 

「ああ、その通りだ」

 

 

「よーっし! だったらやってやろうじゃん! ……ただし、さっき月夜城君が言った通り、手加減は無しだからね!」

 

 

千枝は開脚しながら脚を落とし、左右へと脚を伸ばす。やる気は充分といった様子である。

 

 

「その意気だぜ。試練は強敵であるほどいいッ!」

 

 

いつでもスタンドを出せるように攻撃の体制へと移る。

 

 

「里中千枝……。本調子では無いだろうが、お前の力を見せてもうおう」

 

 

「さあ、いつでもいいよ!」

 

 

「どれ……手合わせ願おうかッ!」

 

 

アイアン・セイヴァーを発現させその拳を千枝目掛け振るう。

 

 

「来た! トモエ!」

 

 

千枝は素早くカードを叩き割り自らのペルソナを発現させると容易くその拳を受け止めた。ガードはされたものの、セイヴァーの攻撃力の高さにノックバックによる後退りが生じる。

 

 

「やっぱり一撃は重いね」

 

 

「当たり前だ。俺のスタンドは近距離パワー型。この一撃は岩すらも乾いた泥ダンゴを手で握り潰すようにバラバラに砕くッ!」

 

 

互いに一度距離を置き睨み合う。

一呼吸置き、攻撃を繰り出す。

先に動いたのは千枝だった。

 

 

「だったら攻撃させるスキを与えさせない!」

 

 

再びペルソナを呼び出し、こちら目掛けて突進させる。

 

 

「またその手か! 俺には効かんッ!」

 

 

セイヴァーの空間隔離能力を発動させ、あの時のようにペルソナを包むように空間を隔離させる。

ペルソナとスタンドは根本的なものが同じものだとすれば、スタンドのルールに則りこれで千枝もろとも行動不能になる。先刻の戦いのように。

 

 

「手加減はしない!」

 

 

そして千枝に向けて走る。本体での一対一に持ち込むしかないというのが少し厄介だが、戦い方はこれで安定するだろう。

……と思っていた。

 

 

「動かせない……けど!」

 

 

「何ッ⁉」

 

 

「それこそが君の弱点でもある!」

 

 

何と千枝もこちらへ向けて走り出したのだ。唐突な出来事によりたじろぎを見せてしまう。その一瞬の隙を肉食獣の眼光は見逃さなかった。

 

 

「な、何ィィ⁉」

 

 

千枝はこちらへと全速力で駆けて来る。

訳がわからない。

完全に予想外だ。確かにさっきの戦闘では動けなかったはず。

動揺により判断が揺らいでいるその間にも千枝はもう目の前まで攻めて来ていた。

 

 

「やあぁぁ‼」

 

 

獲物を捉えた獣の強烈な足技が襲い掛かる。

 

 

「ぬぐっ……」

 

 

それをギリギリで受け止める。

この力はかなりのものでガードが解けそうになってしまう。すんでのところで持ち堪えるのがやっとな程だ。

とても一女子高生の力だとは思えない。肉食獣の名は伊達じゃあないと言ったところか。

 

 

「肉食獣って言うなぁ!」

 

 

「口に出ていたか」

 

 

余裕な口振りをしてみるも実際はそんな余裕はなく、この作戦が崩れた以上別の方法を試さなくてはならなくなってしまった。戦法が決まってない以上今はその模索をしなくてはならない。

何故さっきは効いた攻撃が効かなくなってしまったのか、それも考えなくてはならない。

……考えるのは後だ。まずはこれから予想されるであろうペルソナ使いとの戦闘に慣れることを第一に考えなくてはならない。

 

 

「さて、どうしたものか……」

 

 

「どんどん行くよー!」

 

 

絶え間なく千枝のラッシュは続く。

 

 

「クッ、オオオオオ!」

 

 

このままではスタンドの能力を解除するしかない。いや、いっそ解除したほうがいい。今の状態は好ましくはない。本体が動けるというのが分かったのならばこのままペルソナを隔離しておく必要など皆無だ。

 

 

「オラッ!」

 

 

「うわわっ!」

 

 

千枝を蹴り飛ばし距離を離す。さすが戦闘慣れしているだけあって上手くガードはされたがそんなことはどうでもいい。今はとにかく反撃の芽を生み出す。

それを摘み取る為の布石を生み出さなければ。

 

 

「お前もまだまだ余裕みたいだな」

 

 

「そうでもないよ••••••。ペルソナを隔離されるとどれだけ疲れるか••••••」

 

 

「む••••••? そうか」

 

 

疲れるか。これからの戦いには参考になりそうな意外な弱点を聞いた。しかし今のこの場ではあまり関係のない話であろう。そもそも極度の披露までに消耗させる為にはこちらも何度もスタンドの能力を発動させなければならない。スタンドは本体の精神力が強ければ強い程その存在を維持出来る。そしてその精神力はスタンドに負荷を掛ければ掛ける程消費されて行く。そう何度も連発出来るものではない。

戦闘に勝利するのは己の頭脳に任せるしかない。その為にはいかに相手を知り、地形を知り、状況を知るかだ。

この状況ならばどうするか。その判断をして行くしかないようだ。

 

 

「限界か。能力解除」

 

 

「ふー、やっぱり月夜城君は強いね」

 

 

「お褒めにあずかり光栄だ」

 

 

このままでは埒が空かない。ペルソナを封じても本体は動ける。オマケに本体は肉弾戦のプロ。はっきり言ってかなりの強敵だ。本物の肉食獣だ。この女相手では俺はライオンに追っかけられるシマウマに過ぎない。

そこで俺は考える。どうすればシマウマでもでもライオンに勝てるか。どのような方法を取ればライオンの牙をへし折る事が出来るか。

 

 

「! よし、千枝、俺は負けんぞ」

 

 

「あたしもまだまだ! 負けないよ!」

 

 

閃いた。この方法ならば千枝を超える事が出来る。

猛獣の眼光を欺く事が出来る••••••!

 

 

「アイアン・セイヴァー! オラァ!」

 

 

「何のぉぉぉ!! トモエェェ!」

 

 

来た!

アイアン・セイヴァーの攻撃をトモエがガードする。

これは読み通り。ガードをさせる為に敢えてガラ空きの千枝のボディ目掛けて突きを放った。

そして今ペルソナ意識を集中させている今、この時がチャンス!

 

 

「足元がお留守だぞッ!」

 

 

「ッ!」

 

 

素早く千枝の懐へ回り足払いを掛ける。

当然千枝にはそれを阻止出来る程の余裕は無く、足元を掬われ背中から地へと体を預ける。

 

 

「次だッ!」

 

 

隙だらけになった千枝のボディへと渾身の力を込めたラッシュを叩き込む。完璧な作戦だ。

 

 

「終わらせてやる!」

 

 

「うぅっ••••••!!!」

 

 

「オオオオオオ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァ!!!!!」

 

 

辺りには砂埃が立ち込める。

"やった"のならばこの目線の下にはダウンしている千枝の姿が在るはず。だがそれは確かめるまでもない。

何しろ、手応えが全く無かったのだから。

 

 

「ハァーッ••••••ハァーッ••••••。し、死ぬかと思った••••••」

 

 

俺がラッシュをかました地点から少し離れた場所に千枝は立っていた。

肩で息をしている。その場に相応しい緊張感が漂っていた。

 

 

「••••••躱したのか」

 

 

「危なかったんだからね! 本気で来過ぎ!」

 

 

「••••••あの状態でラッシュを躱すとはな」

 

 

俺はセイヴァーのラッシュにより深く抉れた地面を触る。物凄い抉れようだ。タイミングを読んだつもりだったが••••••。

 

 

「"始めから当たるなどとは思ってなかった"」

 

 

「••••••え?」

 

 

即座に地面の砂を一握りし、千枝の顔目掛け放る。

 

 

「くっ••••••」

 

 

砂粒は見事千枝の目に入ったようだ。今、全く前が見えていない。この隙に一つ仕込んでおくか。

 

 

「••••••これでいい。次こそ仕留めるぜ!」

 

 

仕込みは完了だ。

このまま一気に攻め立てる。

 

 

「オラオラオラオラァ!」

 

 

「くっ••••••トモエッ••••••!」

 

 

またしても千枝は攻撃を防ぐ。

 

 

「ほほう••••••」

 

 

まだ完全に目は開けていない。それにもかかわらずセイヴァーの放つ二発の拳を流して見せた。改めて千枝の強さには感心する。

しかしこれもまた『当たるとは思ってなかった』というやつだ。

 

 

「改めてお前の動きには惚れるものがあると思ったよ」

 

 

「••••••!」

 

 

「だが! お前がどれだけ動けようと関係のない攻撃方法を思いついた!」

 

 

「!」

 

 

俺は体を横へずらし、その後ろにあるものを晒した。

 

 

「食らえィッ! 石ころの弾丸をッ!」

 

 

「ヒイイ! や、やり過ぎだってばー!」

 

 

「••••••あっ」

 

 

俺とした事が、完全にハイになっていた。最高に『ハイ』ってやつに。

このままではマズイ。何十秒かはわからないが間違いなく20秒以上は隔離していたはずだ。ただ軽く放った石ころを隔離していたから早さは拳銃から放たれる弾丸並みにはなっている。当たればただではすまない••••••!

 

 

「マズイ! 避けろ! 千枝」

 

 

「む、無理だよーーーー!!!」

 

 

「うおおおお! セイヴァーッ! 石を止めろォォォォ!!!」

 

 

この距離では、間に合わない。

••••••。

 

千枝は死を覚悟しただろう。俺だってそうだ。

どうやっても間に合わないし避けられない。

諦めるしかないのか••••••。

そう考えた時だった。

 

 

「ガンズ・アンド・ローゼス!」

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