何故かフェストゥムになったけど今日も元気です   作:zelga

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とりあえずこれで、諏訪大戦はひと段落(?)です。




第13話 決着~にくしみ

 

「はー、はー、はー……」

 

 

今にも倒れそうだ。神力は尽きかけてるし、体力もほとんど残ってない。

 

疲労困憊、満身創痍。それが今の私たちの状況を表すのに最も的確な言葉だろう。

 

 

『「アナタハ、ソコニイマスカ?」』

 

 

そう、いまだに私たちはあのナニカを倒すことができていない。

 

最初に仲間を奪われてから、どれほどの時間がたったのだろうか。もしかすると一時間、下手したら30分もたっていないのかもしれない。

 

しかし、私たちは数日間ぶっ通しで戦い続けたかのような疲労度に襲われている。

 

原因はナニカの存在だけではない。周りの状況は更に私たちの心を侵食していく。

 

100を優に超える軍勢。それが今やたったの10人程度にまで減っていた。しかし周りを見ても、倒れたであろう仲間たちの姿はどこにもない。

 

全員、いなくなったのだ。ナニカの手によって。

 

 

 

 

 

ある者は黒い球体に包まれて、いなくなった。

 

ある者は結晶に全身を覆われ、いなくなった。

 

ある者はナニカに支配され、周りの仲間たちを巻き込んで、いなくなった。

 

 

 

正直、今にも倒れそうだ。天照様も限界に近い。仲間たちの中にはフラついているものもいる。

 

 

『「アナタハ、ソコニイマスカ?」』

 

 

だというのに、ナニカは最初から今まで一切その状態から変わらない。もしかしたら奴に『疲労』なんて概念はないのかもしれないな。この化け物が……!

 

 

「……みなさん、私から策が一つあるのですが」

 

 

不意に、天照様が口を開く。何か言おうとしているみたいだが、私たちにはその内容がなんとなくわかっていた。

 

 

「ハッキリ言います。私たちでは、アレに勝つことはできません。皆さんは撤退してください」

「……天照様はどうするので?」

「無論、足止めを。少なくともアレは問いに答えたものを優先して狙うようです。ですので、私がアレをひきつけます。その間に、あなたたちは大和へ帰還してください」

「馬鹿な、先ほどアレに勝てないと言ったのは天照様でしょう!? ここに残ったらアレに殺されてしまいます!!」

 

 

仲間のうち一人が声を荒げる。それもそうだろう。天照様は私たちにとってとても重要な存在。そのお方をここにおいて行くというのは、彼女を見殺しにすることと同意義なのだから。

 

 

「なら、他に案があるのですか?」

「それは……しかし!」

「ないのなら従いなさい。今、あれに対抗することができるのは私だけ。今私たちが選択できるのは、私以外が生き残るか、全滅するかです」

「……っ!」

 

 

仲間が言い返そうとするが、何も言わずに歯を食いしばる。彼もわかっているのだろう、天照様の言ってることが正しいと。

 

 

「今考えられる最悪の事態は、私たちが全滅しアレが大和に向かうことです。そうならないためにもあなたたちはすぐに大和に行き、このことを伝えなさい!」

「わかりました。……いくぞ!」

 

 

そう言って私たちはナニカとは反対に全力で進む。それを見てナニカが動き出そうとするが、天照様が何度も光線を打ち込むことで動かせないようにする。

 

 

『「アナタハ、ソコニイマスカ?」』

「ええ、わたしはここにいますよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局のところ、私たちはこうすることしかできなかった。

 

何が最強の軍勢だ、何が軍神だ……!

 

 

「……やっぱり駄目だ、俺は戻るぞ!」

 

 

飛んでいる仲間の一人がそう言い、向きを反転しようとする。

 

それを見た私は彼の前に浮かび、向かおうとするのを妨害した。そして御柱を広げ、仲間が天照様へ向かえないようにする。

 

 

「駄目だ。私たちではナニカの足止めすらできないだろう。今は生き残ることを優先するんだ」

「しかし!」

「お前は、天照様の意志を無駄にする気か!」

「っ・・・クソ、クソクソクソ、クソォ!!」

 

 

彼は涙を流し、空に向かって叫んだ。そして、再び大和に向かって進もうと気持ちを切り替え飛び始めてーーーーー

 

 

「っ!? 坂、あぶない!!」

「ガッ!?……あ?」

 

 

 

ーーーーー次の瞬間、私の目の前に浮かんだ光景は、

 

 

 

 

 

ワタシを突き飛ばしたのであろう、右手を伸ばした仲間と、

 

 

 

 

 

その体に突き刺さる、一本の鋭い土柱だった。

 

 

「まさか、この力は……!」

 

 

そこまで考えた時、後ろから轟音を感じ振り返る。そこには空中に浮かぶ、大量の土柱があった。そしてその一部が、まさにこちら向かって飛んできている所だった。

 

 

「ハアアアアアアアア!!」

 

 

私はすぐさま御柱を展開し、土柱にぶつける。何とかすべてを相殺したものの、私の中では疑問が渦巻いていた。

 

なぜなら、この力を使用していた者と私は戦ったことがあるからだ。しかし、彼女はすでにここにはいないはず。

 

 

なのになぜ・・・?

 

そこまで考えて、一つの考えが浮かぶ。しかし、それは最も考えたくないことだった。

 

だが、一度思いついてしまったものは頭の中で響き続ける。

 

 

 

 

 

ーーー奴はあの結晶に包むことで、支配し操ることができていた。ーーー

 

 

ーーー洩矢は、あの男の力を同化と言っていた。一つになる力で、妖力があるのは昔妖怪を同化したからだと。ーーー

 

 

 

 

 

ーーーもし妖怪を同化することで妖力を得ることができたのなら、同化した存在の能力を得ることもできるのではないのか?---

 

 

 

『「アナタハ、ソコニイマスカ?」』

 

 

そして、その考えは現実になった。

 

私たちの正面の空中で球体が発生し、中からナニカが出てくる。その左手は上空に挙げられており、今まさに土柱を発射しようとしているかのようだった。

 

 

「…………さま」

 

 

だが、私にとってそんなことはどうでもよかった。それよりも、私には信じられなかった光景が飛び込んでいるのだから。

 

 

「…………きさま」

 

 

周りの仲間からも、ナニカに対して殺気や怒気が放たれる。先ほどまで満身創痍だったとは思わせないほど、私たちは怒り狂っていた。

 

 

「貴様……!」

 

 

ナニカの右手。奴は見たことのない素材で作られた槍のようなものを握っておりーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーその先端には、ボロボロになり、所々から結晶が生えている天照様が貫かれた状態で倒れていた。

 

 

「貴様ああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

その激情の赴くまま、私は御柱を奴にぶつけようと放つ。しかし、それは土柱が盾のような形に変形し受け止める。

 

間違いない、この能力は洩矢諏訪子の……!

 

 

「貴様は、やはり化け物だ。存在ごと我々を殺し、あまつさえ貴様の仲間である洩矢すらも飲み込む! のような存在、もはや妖怪でも人間でも、ましてや神でもない!!」

 

 

御柱を続けて撃ちながら、私は叫ぶ。その言葉がきっかけだったのかもしれないが、ナニカが初めて反応を見せた。

 

 

 

 

 

『「--------------!!!!」』

 

 

それは、声にならない叫びだった。自身の感情をすべて内包したかのような叫び。そこに含まれた感情は、大量の憎悪だった。

 

叫び終えた途端、勢いよくナニカがその挙げている右手を下す。そして、大量の土柱が私たちに牙をむいた。

 

 

「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

数えるのも馬鹿らしいほどの数の土柱を、私たちは迎撃した。私は避けられるものはすべて避け、避けきれないモノを御柱で迎撃していった。

 

仲間たちも各々土柱に対応した。神力で防御を固める、各々の武器で迎撃する、回避する。手段はあった。

 

 

 

 

 

しかし、そのどれもがナニカの前では無駄だった。

 

 

 

 

 

結界のように防御を展開していたものは、全方向から土柱が迫り防ぎきれず結界ごと貫かれた。

 

 

「くそ…………!」

 

 

武器で迎撃していたものは圧倒的な数の暴力を捌ききれず、次々と土柱が突き刺さっていった。

 

 

「くそっ…………!!」

 

 

回避に徹したものは、変形し球状になった土塊に閉じ込められ、圧縮されて潰された。

 

 

「くそぉ……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーそして、ここにいるのは私だけになった。

 

 

「くそおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

避けて、迎撃して、避けて、迎撃して、避けて…………!!

 

 

 

 

 

「…………あ」

 

 

そしてついに、捌ききれずに私に土柱が迫る。最早この距離では回避も間に合わない。

 

 

「すみません、天照様……約束、守れませんでした」

 

 

迫りくる土柱を見つめながら、私はそうつぶやく。

 

そしてそのまま、土柱は私の頭部に向かいーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ここは、いったい?

 

 

 

≪---------------!!!≫

 

 

 

……確か、あの野郎に背後から刺されたんだっけ。そして……?

 

 

 

≪--------------い!!!≫

 

 

 

……ああ、そういや凌平のあんな表情を見たのは初めてだったね……。

 

 

 

≪-------------くい!!!≫

 

 

 

で、ここはいったいどこなんだろ?周りは真っ暗だし、私はなんでか浮いてるし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪------------にくい!!!≫

 

 

 

……ああ、なるほど。ここは凌平の中か。あいつが言ってた同化とやらを私はされたようだね。

 

 

……で、あそこにあるのは凌平の心とでも言うのかな?同化能力を使う時に出してる結晶に似ているけど、ここにあるのはまさに核といった所か。

 

 

 

≪憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!≫

 

 

 

しっかし、なんだいこりゃ。多分これが今の凌平の気持ちなんだろうが、憎しみしかないじゃないか。

 

喜びも、悲しみも、嬉しさも、楽しさも。そういう感情が全くない。こんな状態で、凌平は平気なのかな?……そんなわけないよね。

 

 

 

≪憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ!!!≫

 

≪諏訪子を消した、神が憎い!!!≫

 

≪奴らを信仰する、人間が憎い!!!≫

 

≪たった一人すら守れない俺自身の力が、妖怪の力が、憎い!!!≫

 

 

 

 

 

≪この世のすべてが、憎いッッッッ!!!!!≫

 

 

 

 

 

……あぁ。凌平がこうなった原因は、私か。私がいなくなったと思ったから、凌平はこうなっちゃったのか。

 

 

 

 

 

なら、私が何とかしないとね。

 

 

 

 

 

「駄目だよ、凌平。憎しみだけになっちゃったら、君はどこにもいなくなってしまう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーその土柱は私のギリギリ間横を通り過ぎていった。

 

 

「…………?」

 

 

しばらくして私はようやく自分がまだここにいることを実感する。

 

そして周りを見るが土柱が次々に崩れてゆき、消滅し始めていた。

 

 

「なにが……?」

 

 

そしてハッとナニカを見る。

 

 

『「-------------!!??」』

 

 

奴は頭を抱えており、のたうち回っていた。動いてる間ずっと叫び続け、その様子はまるで子供の癇癪のようだった。

 

そして奴の右手にあった武器が消え、天照様が落ちていく。

 

 

「天照様!!」

 

 

なけなしの力を振り絞り、何とか地面に落ちる前に天照様を受け止めることができた。そのまま地面に降り立ち、天照様を横に倒して様子を見る。

 

 

体中はボロボロで、右腕は途中からなくなっていた。同化こそされていなかったものの、身体の所々からは結晶が生えていた。

 

けれど、生きていた。

 

生きて、ここにいた。

 

 

「かな……こ……?」

「天照様ぁ……!!」

 

 

うっすらと目を開け、天照様が話した。それだけで、私はもう限界だった。ほぼ動かない身体で、できる限り負担にならないように抱きかかえる。

 

 

「……いたい……ですよ」

「っく、ううっ……ひぐっ……」

「まったく……っ!」

 

 

突然天照様は起き上がり、空を睨む。それを追って私も視線を上げ…………!

 

 

 

 

 

目の前にナニカが降りてきていた。ゆっくりと、先ほどまでの行動が嘘だったかのように静かに、私たちの前に降り立った。

 

 

「「…………」」

『「……」』

 

 

静寂が続く。こちらはボロボロ、向こうは無傷。どちらが優位かなど見るよりも明らかだが、私たちは動かなかった。と言うよりも、動けなかった。

 

 

『「ニクイ…………」』

「なん……だと?」

 

 

ナニカから声が響く。しかしその声は今までの女性の声ではなく、男性の声だった。こいつがまだ人型だったときのあの声だった。

 

 

『「スワコをケシタオマエタチがニクい……!」』

「…………」

『「オマエタチさえコナケレば、スワコはイナクナラナカッたのに……!!」』

 

 

それは、慟哭だったのだろうか。心の底から、私たちを憎んでいる感情が含まれていた。それに対し、私たちは何も言い返せなかった。突然のこととはいえ、諏訪子に攻撃したのは間違いなく大和の神なのだから。

 

 

「あなたの怒りも……もっともです。あなたには……私たちを憎む権利が……ある」

「天照様……?」

『「…………」』

「ですが……部下の不始末は……私の責任でもあります。だからこそ……この子は関係ない……!」

「何を言って……!?」

「私を消すのは構いません。しかし、神奈子も消すと言うのなら……覚悟なさい」

 

 

そう言って天照はナニカをにらみつける。とても死にかけているとは思えないほど、その眼光は迫力と威厳に満ちていた。

 

 

『「…………」』

 

 

それをナニカは何も言わずジッと見ている。そして、おもむろに右手を天照様に向け、近づいてきた。

 

 

「っ!」

 

 

それを見た瞬間私は動こうとするが、身体が全く反応しなかった。もうとっくに限界が来ていたのだろう。むしろよく今まで動いていたくらいだ。

 

 

「やめろ、やめてくれ……!」

「…………」

『「…………」』

 

 

天照様は、静かに目をつぶる。ナニカの手が天照様の頭に触れた。そしてそこから、結晶が全身を覆いーーーーー

 

 

「やめてくれええええええええ!!!」

 

 

 

ーーーーーー砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

その言葉を言ったのは私だろうか。それとも、彼女なのだろうか。

 

 

「……なぜ、消さないのですか?」

 

 

彼女は、天照様は無事だった。ボロボロだった服は元に戻り、傷口からは結晶が生えて傷をふさいでいた。

 

それを確認したナニカは左手を私に向け、同じように結晶で傷をふさぐ。違和感こそ残るものの、痛みは完全に消え去っていた。

 

 

『「キズをドウカしてナオした。コレでイナクナリハしない」』

「…………」

『「オレはオマエタチがニクい。けド、ニクシミだけじゃナニもウマれない」』

「……そうですか」

 

 

そして彼は私たちから少し距離をとる。それを見て疑問に思ったが、彼の足元から結晶が生えているのが見えて目を見開いた。

 

 

「お前、まさか……!?」

『「コノママデハおれはイズレ憎しみにフタタびノマレる。ソノ前に、諏訪子ヲ連れ戻ス」』

「同化した存在を切り離すことができるのか!?」

『「フツウはムリだ。デキルノハ諏訪子ヲ含メテフタリダケ。そのナカに、オマエタチのナカマハいなイ」』

 

 

そう言いながら奴は全身に結晶を覆わせてゆく。そして首元まで覆われた時、不意に彼が話す。

 

 

『「メザメルまでニはスコシジカンがカカる。ソノ間に、イチド諏訪子のマチをミテほシイ」』

「……それは、なぜ?」

『「シッテほしイカラだ。オマエタチがシンリャクしようとシていタトコロハ、コンナニきれいナンダッテ」』

 

 

 

 

 

そして、彼の全身を翡翠色の結晶が覆った。そしてそれ以降、彼からの返事はなくなった。

 

 

 

 

 




jaranさん、感想ありがとうございました。
  
読んでくれてありがとうございます。


いやー、年内に更新できてよかったよかった。正直だいぶ危なかったです(´・ω・`)

いろいろ用事があるので次話更新は来年になると思います。ご了承を。


ではだいぶ早いですが、皆様良いお年を!!




あ、ファフナー?すごすぎてなんも言えないですよ。強いて言うのなら・・・暉、お前は立派だったよ。ほんと格好よかった・・・。


※12/19 あとがきにて今まで感想のくれた皆さまの名前を挙げていました。そこでは非ログインの方々をIDで紹介してたのですが、名前も書かれていることに先ほど気づきました。なので書き直しました。

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