何故かフェストゥムになったけど今日も元気です 作:zelga
ハイ、ほんとすみません。作者です。
書こう書こうと考えていたらもう一ヶ月たっちゃいました。言っておいてこの様である。
では、どうぞ。
「・・・ん、もう朝か」
朝日が目に染みる。そう思いつつ俺は体を起こし、半寝状態のまま洗面場に向かう。
昨日は諏訪子たちと遅くまで飲んだからなー。この体に二日酔いと言う概念はないので体調はすこぶる良好だが、なぜだか眠気はある。眠気は『飢え』としてカウントされているのだろうか?
そんなことを考えながら居間を通ると、そこには神奈子がいた。片手に盃を持って。
「おはよう、凌平」
「おはよう。・・・朝から酒か?」
「日の出を肴に飲むのもうまいものだぞ?」
お前も飲むか?と神奈子は盃をこちらに向けてくる。
ったく、この呑兵衛。まさかとは思うが俺たちが寝た後も飲んでいたのか?酒好きすぎるだろ・・・。
「いや、いい。今は酒よりも茶の気分だ」
「つれないな・・・」
「さすがに朝っぱらから飲む気にはなれんよ」
「そんなものか?」
「そんなものだ」
そこまで話したところで、俺はあることに気づく。そう言えば、いつもこの時間帯には彼女が朝食を作っているはずだ。が、今日はなぜか味噌汁のいい匂いがしてこない。
「なぁ神奈子」
「なんだ?」
「楓を知らないか?いつもより早いとはいえ、もう起きていると思っていたんだが・・・」
「・・・・・・」
オイコラ。なぜそこで目をそらす。
何かあると考え、俺は神奈子をジト目で見る。最初こそ知らぬふりをして酒を飲んでいたが、しばらくして俺からの視線に耐えきれなくなったのか神奈子がおずおずと口を開く。
「いや。その、な・・・」
「おう」
「先ほど楓も起きてきてな、顔を洗いに行ったんだ」
「そうか」
「そして楓が戻ってきたときに、私も顔を洗いに行ったんだ。いくらあいつが朝に弱いとはいえ、顔を洗ったんだから間違えて酒を飲むことなんぞないと考えて・・・」
なるほど、把握した。
まだ何か言っていたが俺はそこから離れ、部屋の中にある押入れに近づく。普段この中には座布団とかが入っている小さなものだ。そして俺はそこの襖を開いた。
「・・・んぇ?」
そこには顔を赤く染めた楓が、座布団を枕のようにして入っていた。
「・・・」
「ちょっと待て。酒はこの杯に入ってたんだ。いくら楓でも、湯呑と盃は間違えないだろうと思ったんだが・・・」
「あ、凌平さんだ~」
「・・・まぁ、それはいい。事故だししょうがないさ。それよりも、なんで楓はここに入ってるんだ?」
酔っぱらった楓に抱き着かれた状態で俺は神奈子の方を見る。
「いや、最初こそとりあえず私の横で寝かしておいたんだ」
「ほう」
「そしたら、物音が聞こえてな。時間帯からして、凌平が起きたんだと思った」
「それで?」
「それでふとこの状況を考えたら、私が楓に酒を飲ませたように見えるんじゃないかと思ったんだ」
「・・・で?」
「で、どうにか隠し通せないかと思って・・・」
「楓を押入れにいれた、と」
「あぁ、その通りだ」
「~~♪」
俺は頭を抱える。なんでだろう、二日酔いしてないのに頭痛を感じる。
とりあえず隠すって・・・神奈子の思考は小学生かよ?どうやら思っていたよりもだいぶ酔っているようだな。それにさっきから頭をこすりつけてくる楓はこの状態じゃ朝食は作れないだろうしなぁ・・・。
・・・はぁ、しょうがない。
「とりあえず一回酒抜いてこい。楓にも水を飲ませてやってくれ。朝食は俺が作る」
そう言いながら俺は楓を引っ剥がす。意地でも張り付こうと抵抗してくるがそこはやはり身体能力の差。あっさりとはがすことに成功し、神奈子に押し付ける。
「う、すまんな」
「反省するのなら朝酒はやめてくれ。今回が初めてじゃないんだし」
「・・・そうだな。楓たちが起きる前に酒を飲むのはやめることにするよ」
起きた後は飲むつもりなんすね。と思ったが口に出すのはやめる。まず俺は洗面所で顔を洗い、台所に向かう。頻繁ではないからいいものを、このような事件(?)が時々起こるのは勘弁してほしい。楓の次に家事ができるのは俺なので、大抵俺が尻拭いするハメになるからだ。
「ん~~、おはよー・・・。今日は何ー?」
「ご飯に味噌汁に焼き魚、シンプルだが構わんか?」
「大丈夫~・・・て、凌平じゃん。なんで凌平が作ってんの?」
「酒」
「オッケー、把握した」
「今から作るから少し時間がかかる。それまでに顔洗って、楓の介抱頼んだ」
「ほーい。にしても、ずいぶんと手つきいいね。だいぶ料理上手になったんだ」
「と言われても簡単なものしかできんぞ。・・・まぁ、さすがに長いことやってるしな。ただの居候ってのは俺の性に合わん」
「律儀だね~」
「うっせ。さっさと顔洗って来い」
「はいはーい」
適当な返事をしながら、諏訪子は台所から出ていく。それに目を向け、行ったのを確認してから俺は朝食づくりの続きを再開した。
・・・そうか、今思うともう結構長いことやっているんだな。
俺が洩矢神社改め守矢神社に戻ってきてから、8年が過ぎようとしていた。
「もう8年か・・・」
あの後神奈子と楓は復活し、4人で朝食を食べた。そして片付けも終わり、やることがなくなった俺は神社の屋根に上ってボーっと景色を見ながらつぶやいた。
8年。これ自体は今の俺の生涯に比べりゃちっぽけだが、とても濃密な8年だった。諏訪子に言われて気づくまでたかだか3年くらいのものだと思っていたほどに。
この8年の間で色々なことがあった。けれど別に戦争や争いといった物騒なことはなく、単に平和な日常。けれど、そこであった出来事は俺の中にしっかりと覚えている。とても楽しく、とても満たされた日々だった。
「だからなんだろうなぁ・・・」
「へー、なにが?」
「うぉっ!?」
突然後方から諏訪子の声が聞こえ、思わず俺は声を出す。急いで後ろを見ようとするが、背中に少し負担がかかる。どうやら俺の背中を背もたれ代わりにしているらしい。
「ビックリした・・・なんでここに?」
「どうもこうも、ここは私の特等席さ。ここから街の様子を見るのが好きでね」
「・・・そうか」
そう返しつつ、俺は街の様子を見る。初めに来たころに比べて、ずいぶんと発展したものだ。さすがにあの都市に比べたらアレだが、活気は負けていない。いや、むしろ勝っているだろう。ここからでも街のにぎやかな声が聞こえてきそうなほどだ。
「ずいぶんと賑やかになったもんだ」
「そうだね。街も神社も、よくもまぁ人数が増えたもんだよ」
「あぁ・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
静かに時間が流れていく。このままのんびり昼寝ができたら最高だろう。ま、今はそういう雰囲気ではないが。
何となくだが、俺は諏訪子が言いたいことがわかる。諏訪子もまた、同じだろう。だからこそ、俺たちの間に余計な前置きはいらなかった。
「・・・明日、行くのかい?」
「・・・あぁ、明日だ。下手に延ばしたら、決心が鈍りそうだしな」
「ん~、何となくわかっちゃいたけど、やっぱ行っちゃうか」
「まぁな。そもそも俺はそのために、あいつの誘いを断ってここにいるからな」
そう、俺はここから出ていくことを考えていた。言っておくが別に居心地が悪いとかそういった理由ではないぞ、断じて。ただ、ここらあたりのことは知り尽くしたのだ。諏訪子たち神を、街の人々を、楓のような半神を、おれは理解した。
だからだろうか、未知への欲求が俺を強く揺さぶっていた。
もっと色々なことを知り、理解する。そのために俺はこの地球に残り、旅をしていたのだから。
「そっか。・・・ま、たまには顔見せにおいで」
「・・・いいのか?」
「凌平は居候居候言ってたけどさ、私たちにとっちゃ間違いなく凌平は大切な日常の一つなんだ。もう戻らないなんて言われたら、楓が大泣きしちゃうよ?神奈子だって表面にゃ出さないだろうけど寂しいはずさ」
「そいつは困る。ちゃんと顔見せなきゃ後で痛い目に会いそうだ」
「そうだよ。だから、ちゃんと戻ってきて」
背中越しなので諏訪子の表情はわからないが、何となく彼女の表情は想像できた。きっと、いつも通りの笑顔を浮かべているつもりなのだろう。相変わらず感情を隠すのが上手いみたいだな。まぁ、一度記憶を共有した俺にはほぼ無意味なわけだが。
まぁ、それを掘り返すのも無粋なので、今回は何もせずそのまま話を続ける。俺たちはまた会えるんだ。なら別に暗い雰囲気にならなくてもいい。
俺たちは、あくまでいつも通りであればいい。
「ああ、わかってる。年に一回くらいは顔見せにくる。そん時はうまい飯と酒でも堪能させてもらうさ」
「じゃあ私たちは酒の肴として旅の話でも聞かせてもらおうか。立派なのを期待してるよ?」
「はいはい、わかったよ」
そして、その翌日。俺はいつもの格好で外に出ていた。手には楓特製の弁当付きだ。
「ずいぶんと早いんだな。朝食くらい食っていったらどうだ」
「思い立ったが吉日ってな。まぁ次の日と言うわけでいいとこ小吉レベルだろうが・・・決めたんなら早くいこうと思っただけだ」
「目的地とか決めてるの?」
「なにも。とりあえずは気の向くまま、のんびり旅をしてみるよ」
「適当なんだな・・・まぁいい。旅の話、楽しみにしている」
「おぅ、まかせとけ。とびっきりの奴を用意しておこう」
「なんか美味しいものあったら持ってきてねー」
「はいはい、わかったよ」
そう俺は神奈子と諏訪子と軽く話をする。そして一区切りしたところで、俺は二人の後ろにいた楓の方へ近づく。普段と違い、楓はムスーッといった表情になっている。まぁ、昨日の夜突然旅に出るといった俺が十中八九原因なんだけど。なんだかんだで最後まで反対してたのは彼女だったしな。そう言いながらも、こうして弁当は用意してくれてるわけだが。
「・・・・・・」
「楓、弁当ありがとうな」
「・・・本当に、帰ってくるんですよね?」
「ああ」
「嘘をついたら、怒りますよ?」
「わかってる」
「絶対、絶対ですよ?」
「もちろん」
「・・・わかりました。いってらっしゃい」
「ああ。行ってきます」
そう言いながら俺は楓の頭をなでる。そしてこっそり能力を使うと彼女から寂しいという感情が流れ込んできた。いくら大人びた雰囲気と容姿とはいえ、彼女はまだ生まれて9年しかたってない。ある意味俺のことを父親のように慕ってくれていた。その俺が突然いなくなるんだ、やっぱり不安がらせてしまったか。
しばらく撫で続け、楓から流れてくる感情が落ち着いてきたところで俺は手を放す。そして振り返ると二人がニヤニヤとこちらを見ていた。
「・・・なんだ」
「いやー、なんだかんだで凌平も立派に父親やってるんだなーと思って」
「やかましい。そう言うなら母親としてちゃんと世話してやれってんだ。・・・んじゃ、そろそろ行く」
「ああ。・・・それにしても、否定はしないんだな」
「うっせ」
そう返して、俺は階段の近くで行く。そして階段を降りる前に振り返り、三人に向かって手を挙げ、口を開いた。
「行ってきます」
それを見て三人は一瞬ポカンとしていたが、すぐに笑顔になり言葉を返す。
「「「いってらっしゃい」」」
それを聞き、俺は今度こそ階段を降り始めた。
さーて、まずはどこから行こうか。そんなことを考えつつ。
「・・・行ったな」
「・・・行きましたね」
「行っちゃったねー」
凌平の姿が完全に見えなくなった。あいつは約束は守る奴だし、ちゃんと顔を見せに戻ってくるだろう。それでもいつもに比べて周りが寂しく感じるのは、それだけ凌平の影響はでかかったというべきか。
「それでは、朝食にしようか。楓、準備を頼んだ」
「はい、わかりました」
神奈子がそう言い、楓が返事をして台所へ向かっていく。そして見えなくなったところで、神奈子が再び口を開いた。
「それにしても、あれだな。高々一人分少なくなっただけだというのに、存外寂しくなるものだ」
「そうだね。ま、あいつが戻ってきた時にそれまで溜まった分をぶちまけさせてもらうさ」
「そうだな、それがいい」
そう言って神奈子は居間に向かう。けどその途中で歩みを止め、再び私を見る。まだ何かあるのかと思う私に対して、神奈子は口を開いた。
「そう言えばよかったじゃないか、凌平が楓の面倒を見てくれて。やはり実感がなくても、わかってしまうものだろうな」
「・・・ありゃ~、やっぱ気づいてた?」
「まぁな。しかし、凌平の奴は気づいてなかったみたいだぞ」
言わなくてよかったのか?と神奈子は私に言外に問いかける。
「いいんだよ。こういったことは、あいつが気づいた時の反応を見るのが楽しいんだから」
「同感だ。あいつは見ていて面白い」
「そんじゃ行こうか。今日は楓を甘やかしてやらなきゃね」
「あの子は少し引きずるだろうからな。そうしてやってくれ」
そう話しながら、私たちは楓が作った朝食のある台所へ向かっていった。
読んでくれてありがとうございます。
とりあえずこの話で洩矢編は終了です。次は間に何か挟んでから、ぐーや編になると思います。
ではまた次話でお会いしましょう。
次回こそは(ry