何故かフェストゥムになったけど今日も元気です 作:zelga
では、どうぞ
・・・あーあ、やっちまった。
油断はしていなかったのだが、思っていたよりも彼女が強かったのだ。まさか触れた場所を抉り取るとは、あの闇はなかなか厄介な性質をお持ちのようだ。
まぁ、何にせよこうなったのは俺の失態だろう。少なくとも俺は
さーて、頑張って耐えてくれよルーミア?
ーーーオレが満足する前にいなくならないようにな。
「・・・いなくなっちゃった、か」
そう呟きながら私は眼前の闇を開放し、自分の影に戻す。そこにはさっきまで一人の人間がいたのだが、今ではもういない。
「やっぱり気の迷いだったのかしらね・・・」
やっぱり、その言葉が頭の中で繰り返される。
やっぱり、あの人はいなくなった。
やっぱり、私の闇はすべてを消した。
やっぱり、私の周りからは誰もいなくなった。
やっぱり、やっぱり、やっぱり・・・・・・
やっぱり私なんか、いなくなった方がーーーーーー
「どこ見てやがんだ?勝負はまだついてねぇぞ」
その声が聞こえた瞬間、私の視界はブレた。
「ガハッ・・・!?」
木々をいくつもなぎ倒したところで、吹き飛んだ体はようやく止まる。殴られた腹部の損傷はひどくはないものの、決して軽くもなかった。
だが、それよりも、そんなことよりも、私は目の前の光景が信じれなかった。
「そらそら、どうした?まさかこの程度で終わりなわけねえよなぁ?」
ーーーさっき消してしまったと思っていた人間が、そこにいた。
先ほどまでの雰囲気は消え失せ、好戦的な目は私を捉えて離さない。
「・・・なんで?」
「あぁ?」
気づけば、私はそう口にしていた。けれど実際のところ私は気になっていた。
今まで私の闇に触れて無事に済んだ存在はいなかった。人間はもちろんのこと、妖怪だっていなくなった。神と呼ばれている存在ならば大丈夫かもと思ったが、まずそれらに近づくことができなかった。近づいたら即敵対されてしまうので、話をする事も出来なかった。ただ、以前反撃した時に少なくとも腕を消してしまってはいたが。
だが、目の前の存在はそのどれにも当てはまらなかった。私の闇に触れたのに、確かにそこにいたのだ。なくなったはずの腕や武器なども元に戻った状態で。
「私の闇は、すべてを消すの。それに触れたら最後、何もいなくなってしまう。なのに、なんであなたはそこにいるの?」
「・・・ハッ」
私の質問に対し男の返答はなく、私を馬鹿にしたかのように鼻で笑った。それを見て少しムカッとしたが、私が何か言う前に男が口を開いた。
「まぁ雑魚共なら消えちまうだろうな。だが、オレを消すにはいささか威力不足ってことだ。その程度じゃオレはいなくならん」
「・・・フフッ」
その言葉を聞き、意味を完全に理解した時、私は笑っていた。一度表れた笑みは崩れることなく、むしろどんどんその笑みは深くなっていく。
「嬉しそうだな?」
「えぇ、そうよ。私は今、とっても嬉しいの」
私はそう答えて、再び闇を自身の周りにまとわせる。すでに妖力で傷の治療は終わらせてある。これなら全力で動かしても問題ないだろう。
「やっとよ、私はやっと出会ったの。私の闇に触れてもいなくならない存在に!」
「あぁ、そうかい」
その様子を見て彼も構える。修復された獲物を捨て、拳で戦うつもりのようだ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。それよりも、もっと彼と触れ合いたい。
「ねえ、あなたはなんでそこにいてくれるの?」
「知るか。オレは俺であるからここにいる、ただそれだけだ」
「あらそう、そっけないわね。私はあなたのことをもっと知りたいの。もっと
その言葉を交わした後、私は闇の腕を作り出し彼にぶつけた。さて、さっきまでと同じならこれを防ぐのが精いっぱいのはずなのだが・・・。
「おらぁ!」
ーーーどうやら、手を抜いていたのは私だけではなかったらしい。一つだけだが手加減なしで放った私の腕を、彼は素手だけで打ち払ったのだ。
「今度はこっちから行くぞ、気張れよ?」
「なにを・・・っ!」
言い返そうとしたが、その言葉は最後まで言うことはできなかった。少なくとも十数歩以上はあった私たちの間の距離、それを彼は一瞬で詰めてきたのだから。
それを捉えた瞬間、私は地面から闇を吹き出す。それは槍状に変形し、彼に襲い掛かる。これなら倒せずとも、この間に距離を・・・!
「おせぇ!!」
一撃。彼が振るったその一撃で、私は闇ごと殴り飛ばされた。触れれるだけでも驚きだというのに、まさか闇ごと殴ってくるとは。
「面白い、面白いよ!!」
吹き飛ばされながらも私は体制を直して、右手を突き出す。そこに闇が球体として出現し、それを握りつぶす。するとその闇は形状を変え、十字剣のように変化した。
「ハ、腕の次は剣か?いいぜ、こいよ!」
「言われなくても!」
そう言い返して、私は彼に切りかかる。ただ剣状になっているだけでこれも私が作りだした闇だ。これに触れた存在はすべて消え去るのだが・・・。
「驚かねえんだな?」
「ええ、そうでなくては困るもの」
彼は剣を受け止めていた。彼の手は、何事もないように私の剣をつかんでいた。かなりの力を込めているのだが、私の剣はピクリとも動かない。
「で、これでもう終わりか?」
「まさか!」
そう言って私は彼の頭上に剣状の闇を大量に展開する。それらすべての切っ先は彼に向けられ、打ち出された。
次々に彼の身体に剣が突き刺さっていく。何本かは外れて地面に刺さり、土煙が私たちの周囲を覆っていく。そしてお互いの姿が見えなくなった瞬間私は剣を手放して一歩後ろに下がり、両手で闇を形成する。それを握りつぶし、それを鎌のような形状に変化させた。
そこから地面に広げていた闇にもぐり、彼の背後に移動する。そこから腕を思い切り振りかぶり、全力を持ってふり抜く!
(とった!)
「闇の形状変化、中距離での生成、闇を媒介とした瞬間移動。おもしれぇ業だ」
ーーーで、それだけか?
その声が聞こえた瞬間、私の身体は地面に倒れていた。
別にたたきつけられたわけではない。私はただ押しつぶされたのだ。
彼が放つ、その圧倒的な妖力に。
「やりあうぞ、これからが戦いだ」
その言葉を聞き終える前に、私は吹き飛ばされた。ほぼ反射で闇による防御幕のようなのを張っていたが、彼の一撃の前では塵も同然だった。
重い。今までの攻撃とは格が違う。吹き飛ばされながら私はそんなことを考えていた。
まさか彼が妖怪だったとは思わなかった。妖力を隠すこと自体はおかしなことではない。事実私は彼に話しかけるまで隠していたのだから。しかし、妖力を隠すと妖怪は本来の実力を発揮できないのだ。
つまり、先ほどまで彼は実力の半分も出していなかったということになる。
「どうしたルーミア、常闇の妖怪がその程度か!?」
吹き飛んでいる私の背後から声が聞こえた。それに対し私は何も考えずその声が聞こえた方向に全力で闇を放つ。
が、その攻撃は悪あがきに終わってしまう。
「ガッ・・・!」
私は頭上から振り下ろされた二本の腕に叩き落とされる。あまりの衝撃に、地面にぶつかったのち少し浮き上がる。その体をつかまれ、そこで私はうっすらと目を開ける。
そこには、巨大な腕が両肩から突き出た状態の彼が私を見下ろしていた。おそらくその腕が私をつかんでいるのだろう。
「もう、防ぐことはできねえぞ」
「ッ!!」
ほぼ無意識だった。最初あった余裕は消え失せ、今の私はただ全力で彼を消そうとしていた。
最初は嬉しかった。私の闇に触れてもいなくならない存在に出会えたのだから。
次に楽しかった。自身の全てをぶつけても彼はいなくならなかったから。
だけど、今私が持つ感情はーーー
「アアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!!」
ーーー恐怖だった。
木々が生い茂っていたとある山中。しかしそれを見る影もなかった。まるでその場所だけを何かが抉り取ったかのように地面が半球状に凹んでいた。
そしてその中心、そこにいる存在は一つだけだった。
そこにいる少女はボロボロになっており、満身創痍だった。そして両手を広げ、あおむけに倒れていて、夜空を見上げていた。
「・・・痛い」
ポツリと、少女が口を開いた。その言葉に、少女自身も驚いていた。
「・・・痛い?」
なぜ?その感情が彼女に渦巻いていた。
「なんで・・・今まで痛いなんてこと思わなかったのに」
「それはお前がそこにいるからだ」
「ッ!」
誰もいないはずの空間に、男の声が響く。そして彼女の前方に翡翠色の結晶が現れ、それが増殖しつつ人の形へ形成されていく。
そしてある程度まで増えた時、その結晶は砕け散る。そしてその中から男性と思われる存在が一つ出てきた。
それを見て、彼女の身体は強張った。明らかにその存在に対して怯えていた。
「・・・来ないで」
「なぜ?」
「私は、あなたが怖いの」
「どうして?」
彼女が話すたび、彼は淡々と問いかける。まるで何かを確認するかのように。
「痛いのよ」
「痛い?」
「ええ、私は今まで痛いなんて思ったことはなかった」
どんなに傷つけられてもね、と彼女は彼の方を見ずに言う。それに対し、彼は何も話さない。
「腕をちぎられても、腹を貫かれても、痛いとは感じなかった。だから、私はそういう存在だと思っていた」
「そうか」
「でもあなたと戦って、すごく痛かったの。やっと私の近くにいてもいなくならない存在と出会えたのに、嬉しさよりも先に痛みへの恐怖が私を包む」
そう言って彼女は広げた両手で自身の身体を抱きしめる。まるで自身の存在を確かめるかのように。
「ねぇ、どうして?どうしてなの?なんで私は、あなたが怖いの?」
「・・・・・・」
「私は貴方を知りたい。けれど、痛いのはいやなの。ねぇ、なんで私は痛いのよ?」
そう言ってそこで初めて彼女は彼を見る。彼の表情はどこか無機質で、何の感情も得ることができなかった。
「・・・存在が消えることへの恐怖」
「?」
「それが、痛みの根幹らしい」
「・・・・・・」
「君はおそらく、今まで自分と言う存在を認めなかったのだろう。すべてを消す虚無の能力。その力で周りを消し続けた結果、君は自分がいなくなった方がいいとでも考えていたんじゃないか?」
その言葉は彼女の中にストンと落ちた。まさしくその通りだったから。
「だが、君の力じゃいなくならない俺という存在が現れた。そしてどんなに力をふるっても俺はいなくならなかった。だからなのだろう、君は無意識のうちに、自分と言う存在を認め始めたんだ」
「・・・その結果、私は痛みを?」
「恐らくだがな。自分という存在を形成したはいいが、それを消そうとするオレがいた。今回は
その言葉を聞いて、彼女はあの時の映像を思い起こす。
圧倒的な妖力、一切容赦のない力、微動だにしない耐久、ためらいのない攻撃。
それらすべてが、今目の前にいる存在がやっていたとは到底考えられない。そう思ってしまうほど、目の前の彼は静かだった。今の彼を静水とするなら、戦っていた時の彼は暴風と言う言葉が似合っていた。
「間に合った、て?」
「簡単にいえば、一種の暴走状態だったってこと」
まぁそんなことはどうでもいい、と彼は話を戻そうとする。そして彼は今までの話わかるか、と彼女に問いた。
「・・・つまり、私は自分と言う存在を認めたからこそ痛みを感じるようになったのね?」
そう答えた時、彼女は彼に対して恐怖を抱くことはなくなっていた。なぜ彼といると痛いのか、その理由が分かったのだから。
「ああ、そうだ。・・・実感わかないか?」
「ええ、まだよくわからないわ」
けれど、そう言って彼女は再び空を見上げる。今まで何度も見たことある空だったが、なんだか今日のは少し違う色に見えていた。
「私は、ここにいていいの?」
「ああ、君はそこにいる」
そう、と彼からの答えに返事した彼女の頬からは一筋の涙が流れ落ちていた。
ふにさん、可愛い=世界さん、感想ありがとうございました。
読んでくれてありがとうございます。
もうコイツ(主人公)わけわかんないな()。
ルーミアがキャラ崩壊すると前話で言っていたら、それ以上にぶっ壊れやがったよこいつ。一応こうなったのにはちゃんと理由がありますので・・・ホントデスヨ?
ではまた、次話でお会いしましょうノシ