何故かフェストゥムになったけど今日も元気です 作:zelga
なぜかあまり話が進まなかった・・・。
最近のシリアス気味で疲れたので今回は箸休めです。
では、どうぞ。
「・・・てことがあってな、結局そいつらとはそこから会うことはなかった」
「む、そうなのか? お前のことだ、こっそり見守るくらいはしそうだと思ったが」
ここはとある広場。運動にはちょうど良いほどの広さがあるこの場所で、一組の男女が組み手を行っていた。
「んなこと言ったってな・・・どんな顔して会えってんだよ。片方からは死んだと思われ、もう片方からは多少変わるきっかけを与えたとはいえ絶対妖怪滅するウーマンだぞ?」
女性からの言葉にそう返答しつつ、男性は蹴りを放つ。本人にとってみればかなり手加減をしているのだが、一般人からしてみれば目で追うのが限界だといえるほどその蹴りは鋭い。
「うーまん?・・・そう言いつつ、可能性を持つ者を見捨てぬのが竜宮凌平と言う存在だ。何かしら手を打ってるのだろう?」
「・・・神奈子も俺の在り方が分かっているようで」
その蹴りを躱し、女性ーー神奈子は男性ーー凌平にこぶしを繰り出す。顔面に迫るそれを、凌平は首をそらすことでぎりぎり交わした。
「まぁな、かれこれ数百年の付き合いだ。この程度ならわかるさ」
「そいつはどうも。と言っても保険程度だし俺から手を出すつもりはないんだがな」
「あくまでその布都と言う少女が決めたことを尊重する、ということか」
「ザッツライト。布都がどのような決断をしようとも、俺はそれを祝福するさ」
「・・・凌平はよくわからぬ言葉を時々使うな、先ほどの『うーまん』といい、なんだその『ざっつらいと』というのは?」
「まあ気にすんな。ちなみに前者は『女性』、後者は『その通り』って意味だ」
「・・・不思議な言葉だな、異国の言語と言うのは」
「だろ? 俺も最初聞いた時まるで意味がわからんかった」
会話を続ける二人。だがその途中にも組手は続けられていた。時間が経つに連れお互いの攻防は徐々に激しさを増していき、逆に口数は減っていく。その速度はもはや人の眼では二人の攻防が目にも映らないほどまで加速していた。
「「っ!!」」
カウンターが決まり神奈子の拳が凌平の目の前まで迫った瞬間、二人の動きがピタッと止まる。そしてその拳を放し、お互いから闘気が薄れていく。どうやらもう組手は終了のようだ。
「もう夕方だ、そろそろ戻るぞ」
「おう。にしてもやっぱ格闘戦だけじゃこんなもんか・・・」
「まあ、凌平は身体能力に任せきっただけで戦い方は単純だからな。多少の心得がある私の方が一枚上手だ」
と言っても最近じゃそうもいかないが、と神奈子は首をすくめる。
この組手を始めたのは凌平が神奈子を誘ったことがきっかけだった。凌平が持つ能力、『飢えるほど強くなる程度の能力』の副作用である飢えによる暴走。これがそろそろ誤魔化しが効かなくなり始めていたのだ。
特に戦いへの飢え、これが顕著だった。今までは訓練や妖怪退治などで解消していたが、それは微々たるもの。少しでも強者と戦うとそのたびに今までの飢えがあふれ出し、暴走になり易くなっていた。
かと言って食欲や睡眠欲を満たしたところで抑えることも出来ず、そこで思いついたのが事情を知っている神奈子に協力してもらい、定期的に組手を行うことだった。実は最初こそ模擬戦だったのだが、二人とも熱中してしまい途中からお互いに神力&妖力を開放しかけたのだ。それは模擬戦を見学していた二人によって鎮圧され、今ではそれより軽い組手に落ち着いている。
また意外なことにこの組手、序盤は神奈子が優勢だった。
それもそのはず、凌平は今まで格闘戦の心得がまるでなかったのだ。今まで勝てていたのは自身の圧倒的な身体スペックと能力の恩恵があったからこそなのだろう。
と言っても本人に才能があるからか、通算5回目となる今回では神奈子相手にほぼ互角の戦いをすることができていた。
「まぁ、やられっぱなしってのは俺の性に合わないしな。次は勝つ」
「何度でも来い、何度でも負かしてやろう」
神社までの帰り道を飛びながら二人は話す。ここから神社までは少々距離があるので、歩くよりは飛んだ方が早いのだ。
「今日の夕飯はなんだっけか?」
「冷麦だ。楓が大層気に入ったみたいでな、私自身もこの時期はあれぐらいがちょうどいい」
「お、いいね。そりゃ海を越えて持ってきた甲斐があったってもんだ」
「うむ、酒にも合う」
「お前は変わらんな・・・あまり飲みすぎるなよ?」
「わかっている、嗜む程度に抑えておくさ」
「この間そう言って保管してた酒をすべて飲みほしたことを俺は忘れない」
なんてことない内容を話しているうち、二人は守矢神社に着く。境内に着地し縁側に近づくと、そこでは二人の少女が会話をしていた。
一人はどちらかと言うと可愛いらしさが勝る容姿をしている。肩まで伸びた金髪は太陽の光の様に眩しく、その笑顔は幼い容姿からは考えられない程の気品を感じた。
もう一人はどちらかと言うと美しさが勝る容姿をしている。腰まで伸びた金髪は月の光のように淡く、その笑顔はまるで幼い少女のように純粋だった。
そんなある意味で対称的な二人を前にして、凌平と神奈子は片手を上げて声をかける。
「ただいま、諏訪子。また来たのか、ルーミア?」
「諏訪子、今戻った。ルーミア、よく来たな」
「二人ともおかえりー」
「こんにちは、また来ちゃったわ」
「・・・割と慣れるものだな、この状況も」
「妖怪に祟り神に軍神に謎の生物?が神社にそろう。こんな状況大和に知れたらどうなるんだろうな?」
「やめろ、これ以上天照様の頭痛の種を増やすんじゃない」
凌平が何の気なしに言った言葉に対し、神奈子は首を振りながら返答する。
その様子を見つつ凌平はまさかこんなことになるとはなぁ、と過去に意識を向けていた。
布都と決別のようなものをした後、俺は旅を再開した。
日本を知り尽くすにはまだまだ情報が足りない。今までの旅でようやく半分ほど回ったと言っていいくらいだろう。そう思い、俺は今度は行き先を一方向に定めて旅をすることにしてみたのだ。
だが今までとは違う出来事が一つ。それは、俺の旅に時々ついてくる存在がいることだ。まぁ考えるまでもなく、それはルーミアである。
どうやら懐かれてしまったらしく、彼女は俺の前に姿を現した。だが自由人気質であることは変わらないらしく、旅の途中でフラッと消え、またしばらくしたらフラッと現れると言った感じだった。それの期間も不安定なので、いつ来るかは俺にも把握しきれなかった。
そう、この把握しきれなかったのがあの事件の原因の一つだったのだ。
その事件が起きたのは今から1年前。ルーミアが数日前現れ、昨日どこかへ行ったのをちょうどいい機会と判断し、俺は守矢神社に行くことにしたのだ。
そしてワームスフィアーを利用した瞬間移動で守矢神社に行き、ちょうどそこにいた諏訪子と神奈子と世間話をしていた時、突然神社の入り口に黒い球体が発生した。
「こんにちは、凌平。退屈だからまた来ちゃったわ」
そう、ルーミアが現れたのだ。大和陣営であり、諏訪子たち二柱の本拠地ともいえるこの洩矢神社に。妖怪である彼女が。
いやもう、そこからは大変だった。
妖怪と判断した途端御柱を展開する神奈子。それを必死に止めて状況を説明し、何とか神奈子を抑えようとする俺。その様子がなぜ起きているのかわからないのか、首をかしげて見ているルーミア。知識から彼女のことを知っているとはいえ、このタイミングで会うとは思わなかったのか口をポカンと開けて呆けている諏訪子。
特にそういった気持ちはなかったのかルーミアがそこまで妖力を発していなかったことと、家にいた楓がすぐさま力を遮断する結界を張ってくれたこと。これらのおかげで街の人々にはルーミアの存在を知られることはなく、なんとかその場は事なきを得た。
そしてその後まずやったのは俺からの細かい説明タイム。その結果諏訪子は面白いからと大体納得してくれたが、神奈子はそうもいかなかった。敵意がないとはいえ、純粋な妖怪がこの場にいるのはさすがにまずいというのが彼女の言い分だ。まあその通りである。
そして次はルーミアへの質問。まず最初の黒い球体についてだが、あれはどうやらルーミアが俺の真似をするうちにできた移動方法らしい。なんでも俺のことを考えて使えば俺の近くに転移するとのことだ、闇の応用能力すげえな。
だからと言って神の本拠地に来ることはないだろう、と俺が言った時、ルーミアは不思議そうな顔でとんでもないことを口にした。
「神って? 存在は知ってるけど会ったことないのよね、もしかしてあなたが神なの?」
ここで一言追加、この時点で神奈子はまだルーミアのことを警戒しているからか、神力を放出している。その威圧感は洩矢大戦の頃からさらに強く、鋭くなっていた。
そしてこのルーミア、全くそれを感じ取っていなかったのだ。さすがにこれには俺も天を仰いだ。隣では神奈子が気が抜けた表情をしており、後ろからは諏訪子の笑い声が聞こえる。
数分後、何とか再起動した俺はルーミアに事情を説明した。内容としては単純に妖怪は人間を襲うので、人間が信仰している神は人間から妖怪を守っているということだ。
途中でルーミアからなぜ俺はここにいれるのか聞かれたので、俺は純粋な妖怪じゃないし妖力を完全に制御できるから、と答えた。すると彼女はにっこり笑い、こう言った。
「じゃあ妖力がなくなればいいのね?」
そこで彼女を拘束した俺を誰かほめてほしい。
フェストゥムである俺と違い、妖怪はすべからく妖力を持っている。それは人が霊力を持っているのとは違い、それがなければ存在を維持できないのだ。
そしてルーミアがそれを知っているとは思えないような台詞。それとともにルーミアの身体を覆い始める闇。この時点で大体察した俺は速攻でルーミアを抑えた。
なにするの? と抑えられた状態で聞いてくるルーミアに、俺は先程の内容を説明する。すると彼女はそれじゃどうしましょうか、とのんきに考え事をし始めた。
知らなかったとはいえ危うく自殺しかけたのにこいつは・・・。と俺が頭を抱えていると、そこで先ほどまで何か考えていた神奈子が口を開く。
「よしわかった。ルーミアと言ったか、私と戦え」
もうなんなのこいつら、楓に羽交い絞めされていなかったら俺は恐らく神奈子をしばいていただろう。
「とりあえず凌平の言い分はわかった。だが今あったお前がここにいることを認めるわけにはいかん。相手のことを知るには戦ってみるのが一番だろう」
もっとも今回は模擬戦にしておくが、と神奈子は補足しつつ説明する。言い返そうとするも特にこれより良い案はその時点で思いつかなかったので、どこかへ飛んでいく二人を見送ることしかできなかった。
ちなみに楓は結界を張りに、諏訪子は暇つぶしに見に行ったのだが、俺は神社に残った。なぜかと言うと理由は単純、あの二人の戦いを見て抑えきれる自信がなかったからである。
そしてここからは諏訪子から聞いた話になる。
組手をした広場につき、楓が再び結界を張り終えた後、二人の模擬戦は始まった。
御柱と闇が互いを打ち消し合い、その度に弾かれた力が周囲を削る。下手をすれば大怪我間違いなしの戦いだったのだが、終始ルーミアは笑顔だったそうだ。
「すごい、すごいわ! ここにも私の闇を受けても消えない存在が凌平以外にいるなんて!!」
神奈子が闇を打ち消すたびに、ルーミアは楽しそうに笑っていたという。
そして1時間ばかし戦った後、どこか納得したらしく神奈子が模擬戦を中断し、たまの来訪なら凌平付きで許可するということを戻ってきて俺に話した。
それを了承した俺は次にルーミアが楽しそうにしていたので、何故か聞いてみた。すると彼女は嬉しそうに、こういったのだ。
「これが神なのね、すごいわ! ずっと私の近くにいたのにいなくならないなんて、人間があなたたちを信じるのも納得がいくわね」
私も信仰してみようかしら? とルンルン気分で話しているルーミアの後ろでは、二人がとても複雑そうな表情をしていた。
後に聞いてみた所、あれから少しの間、本当にルーミアから信仰を感じていたらしい。
「さすがの私も、あんなにねじ曲がった信仰は勘弁かなー・・・」
そう言ったのは諏訪子だったけか。まぁ当たり前だが妖怪から信仰を受けるのは初めてだったらしく、神奈子もどう対応すればいいかわからなかったらしい。いろいろな意味であいつすげえわ。
まあそんなこともあり今では俺が守矢神社に帰ってきている間、ルーミアは姿を現しているってわけだ。
「最初こそギクシャクしてたのにな。今ではみんな慣れたもんだ」
「普通なら私だってここまで対応できていないよ。凌平っていうイレギュラーの塊がいたから私も神奈子も何とか対応できたってだけさ」
「そいつはどうも」
俺がそうこぼすと、諏訪子が反応する。それに適当に返し、俺も縁側に座りこんだ。
「調子はどう?」
「ぼちぼちだな、神奈子との組手のおかげで抑えきれてる。が、ずっとやってれば慣れてしまうだろう」
「飢えってのは厄介なものだね。限界はある癖に上限がない。満足すればするほど飢えるのが早くなってしまうものさ」
「だな」
諏訪子から渡された茶を啜りつつ話す。その横では神奈子とルーミアが何か話していた。最初こそ一番ギクシャクしていたが、1年もたてばルーミアの扱いが分かってきたようで、あまり違和感なく話すことができていた。
「皆さん、夕飯ができましたよー」
「ふむ、ちょうどいい時に戻れたみたいだな」
「あぁ。ほらルーミア行くぞ」
「今日は凌平が持ってきたものを食べるのよね? 冷麦って何かしら?」
「ボリュームこそあまりないがさっぱりした食い物だ。味とかは食ってみりゃわかる」
「酒にも合うからな」
「お前はそればっかりか」
「まあこれでこそ神奈子だけどね。とは言え、なんで人前とプライベートでこんなに態度が変わっちゃったんだか」
「ナンデデショウネー」
そう言いながら、俺たち4人は神社の中に入っていった。
「妖怪と神が同じ空間にいる・・・え、ちょっと待って? うそ?」
そんな俺たちの様子を、遠く離れた場所にいる一つの存在が混乱しながら見ていたということは露知らずに。
読んでくれてありがとうございます。
そんなわけで久々の守矢勢の登場。ここから数話洩矢でのお話を書いたら、輝夜編に移る予定です。
にしても最近暑いですね・・・最近食欲が落ち気味で作者は蕎麦かうどんしか食べてません。素麺もそのうち食べたいなー(´・ω・`)
ではまた、次話でお会いしましょうノシ