何故かフェストゥムになったけど今日も元気です   作:zelga

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ホントありがとうございます。これからもエタらないよう、不定期ながらも頑張っていきます(`・ω・´)

では、どうぞ。


第27話 八雲~りそう

「・・・」

 

 

 

ある日の昼下がり。とある森の中で俺は大木の木陰に佇んでいた。

 

 

 

「・・・」

 

 

 

別に休憩をしているわけではない。俺は眼前にいる存在ーーーその大木の幹に身を預け、眠っている女性を観察していたのだ。

 

 

 

「・・・限界、か」

 

 

 

よく見ると目の前の女性は眠っているのではない。そう見えるほど衰弱していたのだ。その様子を感じ取り、俺は女性と視線を合わせるように膝を曲げ、声をかける。

 

 

 

「なにか、言い残したいことはあるか?」

 

 

 

その声に反応したのか、女性はうっすらと目を開ける。紫色の瞳はおぼろげに揺れるが、俺という存在を捉えるとその輝きが少し強まる。

 

 

 

「・・・ええ、そうね。それじゃ、一言お願いしようかしら」

「・・・」

 

 

 

その儚げな声を聴き、俺は真剣な表情で女性の声に耳を傾ける。それを確認した女性は口を開き、言葉を紡いだーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが短時間であっちこっち行くからついていくのに精いっぱいでおなかがすいたわ。食べ物くれない?」

「この状況でそれを言うかこのストーカー妖怪」

 

 

 

・・・さて、なぜこうなったのかを説明せねばなるまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは3ヶ月ほど前からだろうか。

 

いつものように守矢神社に顔を出し、守矢勢にルーミアを加えてのんびりとした日常を過ごす。そんな日々を1週間ほど過ごした後、俺は再び旅に出た。

 

 

 

で、おそらくそこから俺は視線を感じるようになった。

 

町の中を歩いている時も、小道を歩いている時も、森の中を歩いている時も。はてには食事時にもその視線を感じていた。

 

一体誰が、なぜ俺を見ているのかはわからない。正体を探ろうと人がいないところで読心能力の範囲を最大限まで広げてみるも、それらしい存在は見受けられなかった。かと言って俺に危害を加える様子はなく、ただ単に俺を観察しているようだった。

 

と言うわけで最初の方こそ無視していたのだが、2ヶ月ほどたってもその視線が途絶えることはなかったのだ。最初の方はこのまま無視し続けてるつもりだったのだが、この時点で俺は俺を観察し続ける存在に少しばかり興味が沸いた。

 

俺の読心能力の範囲外から観察できる方法を俺は知らない。だからこそ、俺は知りたくなった。

 

 

観察できる範囲に限りはあるのか? その方法はいったい何なのか? それは能力なのか、それとも技術なのか?

 

 

それらを知るために俺はこの一ヶ月、様々な方法での移動を行ってみた。

 

 

時には身体能力を駆使して音を超える速度で跳び。

 

時には人や獣、空気や水などに変化して移動し。

 

時にはワームスフィアーによる瞬間移動を使ってそこから遠く離れた場所に転位しまくった。

 

 

そしてここ1週間はこれらを組み合わせつつ移動し、相手に休憩する暇をあげないようにしてみた。

 

 

 

その結果今から20分ほど前、視線を唐突に感じなくなったのだ。

 

最初は気のせいかと思い、次に見失ったかと考えた。そこで暫く待ってみたのだが視線を再び感じることはない。

 

 

・・・諦めたか。ま、いい暇つぶしにはなったな。

 

 

そう考え俺は再び歩き始めたのだが、そのすぐ後に俺は今まで感じたことのない存在を感じ取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれを頼りに移動してみた結果、この大木の幹に女性・・・俺を観察していた存在を見つけたってわけだ。

 

 

「さて、お前はなぜ俺を観察していた?」

 

 

そう言いながら俺は前に立ち寄った町で買った携帯食を女性に渡す。

 

 

「あら、やっぱり気づいていたのね。ずっと無視し続けるからもしかして気づいていないのかと思っていたわ」

 

 

そう答えつつ携帯食を食べる女性。『ずっと』と言うのは多分最初の2ヶ月のことだろうが、まさかそんな風に見られていたとはな。

 

 

「まぁ、気にする必要がなかったからな。正直なところこのまま無視し続けようかとも考えていた」

「じゃあなぜ?」

「簡単な事さ、君に興味を抱いたからだ」

 

 

女性からの問いに俺はそう答える。すると女性はキョトンとして、その後顔を赤らめながら目をソワソワさせる。おい、さっきまでの妖しい雰囲気どこ行った。

 

 

「きょ、興味だなんて・・・。私もあなたに興味があるから観察していたわけだけど、そんな直球に言われると少し恥ずかしいものがあるわ」

「何を言ってる? 俺は別にお前自身に興味はない」

「え?」

「俺はお前の能力に興味を持っている、ということだ」

 

 

やっぱり勘違いしているようなのですぐさま訂正する。するとどこか納得したようだが、その表情からはあまりいい感情を感じ取れなくなった。つまりは少し拗ねているように見えた。

 

 

「あなた、女心が分かってないって言われたことない?」

「それも理解したいのだがな・・・どうにも時間がかかりそうだ」

 

 

実際その通りである。守矢神社にいた時もそれ関連でやらかしてしまい、その度にもうすこし女心を勉強しろと怒られた。理解するために時々女性になってみたりはしているのだが、女心というのはまだ理解できそうにない。

 

前世の頃は理解していたとは言えないが、人並みに感づくことくらいはできたんだがな・・・この身体(フェストゥム)になってから完全にわからなくなってしまった。

 

・・・と、話がそれたか。

 

 

「本題に戻ろう、俺に何のようだ?」

「それは私が君に興味を持ったからよ」

「嘘・・・いや、それもあるのか。だが、それだけではないはずだ」

 

 

即座に言い返すと彼女は少し驚いた表情を見せ、最初に話した時のような微笑を浮かべる。

 

 

「読心能力・・・あなたはさとり妖怪なの?」

「さとりほど細かには読み取れんよ。俺は感情を理解できるが、心はまだ理解できていないからな」

 

 

それで? と俺は目で女性に再び問いかける。それに対し、女性はどこからか扇子のようなものを取り出して口元に当てる。

 

 

 

・・・いや、もういい加減彼女を女性と言うのはやめよう。

 

なぜなら、俺は彼女を知っているのだから。

 

 

 

 

 

「三度問おう。俺になぜ近づく? 俺をどう捉える? 俺に何を求める? 」

 

 

ーーーなぁ、八雲紫?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉は、私を驚愕させるのには十分だった。

 

会話したのはこれが初めて。そして彼、竜宮凌平が私を捉えたことはないという確証がある。

 

それなのに、彼は私の名前を知っていた。

 

 

「・・・私の名を知っているのね。あなたとは初対面のはずなのだけれど?」

「その通りだな。俺が君と会うのは初めてだし、結局俺を観察していた君を見つけることもできなかった。風のうわさでも聞いた事がない。俺は間違いなく、この世界にいる八雲紫と言う存在を知らなかった。だが、俺は八雲紫を知っている」

 

 

私の問いに対し彼は答える。知らないけど知ってる、なんともチグハグで矛盾した内容なのだが、私にはそれが嘘であるように感じられなかった。

 

 

彼は・・・いや、この存在は一体?

 

 

彼が人間でないことは容易に判断できる。妖力を隠しているので妖怪かと思っていたけれど・・・これは違う。かと言って神や仙人などとはとても思えない。

 

 

「どれでもない、俺は俺だ」

「っ、また心を」

「さっきも言ったが俺が理解できるのは感情だけだ。今お前から感じ取れるのは困惑と混乱、そこから単に推測しただけのことだよ」

 

 

・・・これは、変に誤魔化したりしない方がよさそうね。

 

 

「そうね、質問にすべて答えましょう」

 

 

私はそう言って、彼を真正面から見る。下手なことをしても疑われそうだし、この方が私にとっても彼にとっても手っ取り早いだろう。

 

 

「まず1つ目、なぜ私があなたに近づくか。それは先ほども言ったようにあなたに興味があったからよ」

「さきほども言ったがそれだけではないはずだ」

「えぇ、これは途中からついてきた新たな理由。本来の目的は・・・協力者になりえるかどうか判断するため」

「協力者・・・だと?」

「それは後の理由にもつながるから後で説明するわ」

 

「次に2つ目、あなたをどう捉えるか。これは正直なところ分からないというのが本音ね。あなたの様な存在を私は見たことも聞いたこともない。最早種族としてまとめていいのかすら怪しいわ」

「ほぅ、そこまで見抜いたか。大概の存在は俺を人か妖怪と判断するのだがな」

 

 

2つ目の問いに答えた時、彼はそう言って薄く笑った。正直そう判断するのが当たり前だと私も思っている。

 

彼はただ見ただけでは人間としか思えないほど何も感じない。そこで疑いを持った者も、彼が妖力を発すれば妖怪と信じて疑わなくなってしまうだろう。一度疑いが晴れてしまえばそこで思考を止めてしまうのはどの種族でもよくあることだ。

 

だが、私の中のナニカが彼はそれらには当てはまらないという確信を得ている。それがある限り、もう私は彼を見誤ることはないはずだ。

 

 

「そうね。私もこうしてあなたに直接会って話をしなかったら、その大概の存在に括られていたでしょう」

「だがお前は気づいた。お前の中にある言葉は信じていいモノだぞ」

「あら、それは嬉しいわね。・・・で、最後の質問だけど」

 

 

さて、今までのもそうだったがこの3つ目こそが私が彼を観察しようと思った理由の本命だ。そしてこの質問の答えによって、私は彼を理解できるかもしれない。

 

 

「あなたに何を求めるか・・・それは、私に力を貸してほしいのよ。あらゆる種族が共に生きることのできる、そんな理想郷を創るためにね」

 

 

さぁ、竜宮凌平。あなたはこれにどうこたえるのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・どう言ってくるかと思ったが、まさか理想郷とはな。

 

おそらくだが、それは未来で言う幻想郷のことだろう。彼女はそれを実行するために俺を協力者として引き込もうとしている、といった所か。

 

 

「理想郷、ね。この世界でも様々な種族が共に暮らしているが?」

「共に、とは言えないでしょ。妖怪は人を襲い、人は妖怪を恐れて神を信仰し、神は信仰を得るために人を守って妖怪を殺す。それはこの世界という同じ器にただ存在しているだけよ」

「ならばお前の望みは妖怪が人を襲わず、人が妖怪を恐れず、神が妖怪を消さずとも存在を維持できるような世界とでも言うのか?」

 

 

その問いに対し、紫は真剣な表情でうなづく。感じ取れる感情にも嘘をついているような類のものはなかった。それを確認した後、俺は思わずため息をついた。

 

 

・・・わかってはいたが、どうしても理想論にしか聞こえないな。

 

ここに生まれてから千年以上たったが、俺は奴らが争っているのをずっと見てきた。神はどこまでも傲慢で、妖怪はどこまでも自分勝手で、人間はどこまでも欲深い存在。長年様々な存在を見続けた俺の中で出た結論がこれだった。

 

 

だが俺はそれを悪いとは決して思わない。

 

永琳のように、限りのない欲をうまくコントロールしきる人間がいる。

ルーミアや土蜘蛛のように、自分勝手だからこそ嘘偽りなくいっそ清々しい妖怪がいる。

天照や神奈子のように、人の上に立つからこそ威厳と言う形で示す神がいる。

 

そしてもちろん若菜や目の前の紫、そして諏訪子のように俺の型に当てはまらない存在もいる。

 

 

 

だが、紫の言う理想郷に住む存在の大半はそれには当てはまらないだろう。

 

いくら原作に存在していたとはいえ、もうこの世界は俺がいる時点で正史とは違う流れをたどっている。本当に幻想郷ができるかもわからないだろう。そこに俺が協力したところで何が起きるかなんて俺にもわからない、完全に未知の領域だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・あぁ、そうだ。

 

 

だからこそ、面白い・・・!

 

 

「ハ・・・!」

「・・・?」

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!!」

 

 

今の俺は嗤っている。頭の中で確信することができるほど気分が高揚していた。

 

こんな存在になった時点で会ったらどうなるか薄々感づいてはいたが、直接話を聞いてしまった今ではもう止まれそうにない。

 

 

「共に生きる世界と来たか! 互いの存在を嫌い、見下し、否定し合う者たちが隣に立って生きる世界! それができると、お前は本気で思っているのか!!」

「えぇそうよ。それが私の理想であり、希望なの」

「・・・次は希望、か。あぁ、本当にお前は面白い!」

 

 

ひとしきり嗤った後、俺は立って紫の正面に立つ。もとよりそのつもりではあったが、こうしてしっかりと俺の言葉を伝えた方がいいだろう。

 

 

「わかった、おまえに協力しよう。お前の理想の行く末を見守らせてもらうぞ、八雲紫」

 

 

そう言って右手を差し出す。それを見て紫はその手を取り、立ち上がって俺に言葉を返した。

 

 

「まかせておきなさい。あなたが見たことない世界を私が創りあげて見せましょう、竜宮凌平」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして俺たちは出会い、同じ道を歩むことを決めた。

 

たとえ歩く理由が違っていても。その先にどんな困難が待ち受けているかわかっていても。

 

俺たちは決して歩みを止めることはないだろう。

 

 

「ところでこれおいしいわね。まだ持ってない?」

「生憎だがそれ以上はやれん。これは土産も兼ねているのだからな」

「あら、それは残念」

「そう言いつつ俺の荷物に能力で何を伸ばしているんだ? ていうか結局紫の能力を俺は知らないのだが、そこら辺まとめて説明してもらおうか。これから協力者として、互いの能力は知っておいた方がいいだろう?」

「協力者だからこそこの先何度でも見ることになるんだし、互いの能力を推察するのも面白くないかしら?」

「それは面白そうだ。では、先に推察できた方の勝ちってことで勝負でもしてみるか?」

「いいわね。敗者は・・・勝者の言うことを一つ聞くとかでどう?」

「ほぉ、大きく出たな? それほど自分の知力に自身があると見える。いいだろう、乗った!」

 

 

 

その先に、希望があると信じている限り。

 

 

 

 

 

 




なおこの勝負、凌平の勝利が確定である()。



稀神翔平さん、ガンバスターさん、感想ありがとうございました。
読んでくれてありがとうございます。

ようやく書きたいところがかけた・・・ていう回です。前々から紫さんと会わせたかったのですが、どうにもタイミングが見つからずこの無理やりな感じ。もうちょっと伏線とか貼ってからやればよかったのですが、そこは作者の力不足っす(´・ω・`)

次からは再び守矢でのお話になる予定です。生きていく上での明確な目的を見つけた凌平がどうなるか、お楽しみに(?)。

ではまた、次話でお会いしましょうノシ
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