何故かフェストゥムになったけど今日も元気です 作:zelga
今回から輝夜編です。さーて、どうやってあれに介入させようか・・・。
では、どうぞ。
彼を言葉で表そうとするのはとても難しい。
『賢人』? 正直そうとは思えない。彼はたとえ最善の道を知っていたとしても、あえてそれを選ばないこともあるのだから。
『強者』? これも少し違う。出会った当初は私もそう思っていたが、最近ではあまりそうは思っていない。彼は未知の力を持っているが、種明かしをしてしまえばそのほとんどが対処可能であるからだ。
『自分勝手』? ある意味ではこれが一番近い。彼は常に自身の欲に従って行動している。その欲を制することこそあれど、封じることは決してない。
ーーーだがしかし、それも正解とは言い難い。
彼はとても不思議な存在だ。人間のように欲深く、妖怪のように自分勝手で、神の様に傲慢な存在。それでいながら、彼はそれらの器には収まらない。
彼は自身の種族をフェストゥムだと言っていた。この星、地球の外側からやってきた存在であると。
知識として宇宙というのは知っている。ここ以外にも知能生命体が存在している星があるだろうという推測もあった。だからこそ、彼が所謂地球外生命体であることにも合点はある。
そしてそれに対し「あなた以外には誰も地球には来なかったの? それになぜこの星に?」と聞いた時、彼は初めて表情を崩していた。
ーーそれがさっぱりだ。フェストゥムに関する知識はあるがそれ以外のことはてんでわからん。それに他の同類がいたらすぐにわかるーー
笑っているような、怒っているような、泣いているような。そんな感情を織り交ぜたようなあいまいな表情で、彼はそう言った。それに対し思ったことをそのまま言ったら、彼は苦笑していた。
ーーどんな表情だ、それ。……ま、間違っちゃいないなーー
ーーなぜ笑っている? そりゃ自分の実家の場所すらわからない自分の状態に呆れているだけだーー
ーーなぜ怒っている? それが自分の中での原初の未知なのに、いまだに明らかにできていないからな。怒りもするーー
ーーで、なぜ泣いているか、か。……きっと、同種の仲間がいないからだろうな。孤独はどんな存在にも起こりうる感情だーー
その言葉を聞いた時、私はこう思った。それが正しいのかどうかはわからないけど、確かにそう思ったのだ。
ーーあぁ、彼も私と同じ
「凌平さん、これいくらだい?」
「はいはい、これは……だね」
「おや、そんなに安いのかい? いいねぇ、ひとつおくれ」
「まいどありー」
商品を買って店から出ていった客を見送る。そして辺りを見渡し、客がいないこと、今の時間帯が正午付近であることを確認した俺は、店内に置いてある椅子に腰かけ、軽く息をついた。
うん、今日も割と売れた。他の店に比べりゃ少ないだろうが、あそこで器屋やって頃に比べれば上場だろう。
あの時は一日に一人くればいい方だったからなー、と当時を思い返しつつ昼食のおにぎりを食べる。うん、いい感じに塩気が効いていて美味い。
あっという間に一つ食べ終え、二つ目を手に取ったところで店の戸が開く。はて、一応この時間帯はやっていないはずだが……?
疑問に感じた俺は店の入り口を見て、そしてあぁと納得した。なるほど、あの娘ならしょうがない。彼女は少し特別な客で、他の客がいない時間帯に来るのを許しているのだから。
「こんにちはー……て、お食事中でしたか?」
「
手にあったおにぎりをすべて食べ、何もなかったかのように話そうとしたがダメでした。呆れたようにこちらを見ている彼女を尻目に、口の中のものを全て
そして再び彼女の方へ顔を向け、肘置きに腕を置いて話す。
「いらっしゃい、今日は何のご用かな?」
「取り繕っても、今のはなかったことにはなりませんよ?」
「やっぱ駄目かの?」
「はい」
そっか、そりゃ残念だ。
「んじゃ改めて。今日はどうしたんだい、お嬢ちゃん?」
「お嬢ちゃんと呼ばないでください。私にはちゃんと妹紅って名があります! ……あと、櫛を一つお願いします」
「はいはい、櫛ね。ちょっと待ってな、お嬢ちゃん」
「もう、怒りますよ!」
「カッカッカ!」
「笑ってごまかさないでくださいー!」
そうあしらいつつ、櫛などの類を置いてある棚へと向かう。彼女……妹紅は表面上は怒りつつも、俺の後をついてくる。これは俺と彼女とのいつものやり取りであり、いろんな意味で娯楽の少ないこの都にとっての俺の数少ない暇つぶしでもある。
「にしても櫛ね……一応うちにも置いとるが、どうせなら中心にある店の方が煌びやかな櫛を売っとるぞ?」
「いいんです。確かにここのは色合いは地味ですけど、私はとても気に入っているんですから。……妹たちにはあまり理解されませんが」
「まあの、自分で言うのもなんじゃが、ここにおいてある商品は大体がジジババ向けのもんだからの」
ちなみにさっき来た客も結構お年をめした婆さんである。個人的に気に入ったものを集めたり作ったりして売っているのだが、若者にはウケが悪く、おっさんおばさんから爺さん婆さん辺りに人気がある。どうにも俺の趣向は壮年向けになっているらしい。
……まあ、俺だって4桁軽くいってる爺さん(?)なんだし間違いではないのだが。
「……と、とれたとれた。ほれ嬢ちゃん、どっちがいい?」
「えっと、じゃあこっちで」
「ほいほい、こっちなら……このくらいじゃな」
「わかりました。はい……相変わらずものすごく安いですね」
「まいどあり。半分趣味でやっとるからの、それもわしが作った物じゃし」
「え、これ竜宮のお爺さんが作ったんですか!?」
よほど驚いたのか、まじまじと俺が手渡した櫛を見ている。それは俺の中でもトップ3に入るくらいの出来だったから、驚くのも当然だろうと内心ウンウンと頷いていると、それに気づいた妹紅は訝しげにこちらを見る。
「……何考えてるんですか?」
「いや、そう言って驚いてもらえるだけでも作った甲斐はあったのー、と満足しているだけだけじゃよ」
「っ!」
それを聞いて恥ずかしかったのか、赤面させて妹紅は俯く。あらら、少し弄りすぎたか。
「さて、どうするね? ちょうどいい時間じゃし、休憩しようと思っとる。そのついでに、話し相手がわしは欲しいのじゃが?」
「……おじゃまします」
「はいよ」
そう言って店内にある入り口とは別の扉を開け、お茶の間に妹紅を誘導する。そして別の部屋からお茶を淹れ、茶菓子と共にお盆にのせる。そしてお茶の間に戻り、妹紅の正面に座って、間にあるちゃぶ台にそれらを置いた。
「いただきます……ふぅ」
茶を一口飲み、妹紅も落ち着いたようだ。その様子を見つつ、俺も一口茶を飲む。うん、茶はやはり熱すぎないくらいがちょうどいい。
「うむ、やはりこの茶葉は良いの。よい買い物をした」
「ですねー。竜宮のお爺さんがお茶淹れるのが上手なのもありますが、これほどのものはなかなか手に入りませんよ。どうやって手に入れたんでしたっけ?」
「娘の旦那からの贈り物じゃ。なんでも困っていたたび商人の手助けをしたところ、お礼にもらったとか」
「不思議なものですね……あ、これ美味しい」
「まっこと、不思議じゃな。……不思議と言えば、少し前に話題に上がっていたことなんじゃが、なんでもーーー」
茶を啜り、お茶菓子を食べ、なんてことのない世間話をする。やはりこの時間は心地よく、この都に住み着いてからも、こうした時間はとても気に入っていた。そういう意味では、偶然とはいえ知り合うことができ、こうして常連客兼話し相手になってくれた妹紅には感謝しなければならんな。
人間の文化の中心地があると紫に聞き、あの時と同じように旅人としてこの都に入って約15年。最初の1年ぐらいでここの人間を観察し、10年くらいはここを拠点として相も変わらず旅を続けていた。
単にここに印をつけておくことで、どんな場所からでもここにワープできるようにしているだけのことだ。そして朝起きたらその逆を行う。寝床がここに固定されただけの話だ。
ちなみになぜそうしたのかは簡単で、夜な夜な襲撃してくる妖怪や獣共が面倒になって来たからだ。獣はまだいいのだが、妖怪が如何せん面倒くさい。低級妖怪は何も考えず、己に渦巻いた欲に従って襲ってくる。まあつまりは、もう何も学ぶ必要がないからってことだな。
ま、そうやって旅をし続けて10年。そこら辺で定期連絡がてら紫と話をしていた時に、彼女から一つ提案があった。それは『都で雑貨屋をやってみない?』と言った内容だ。
なんでも理想郷をつくる際、どうあっても貨幣制度は必要と思っているらしく、その一環として実際の貨幣や物流を見ておきたいとのことだ。そこで俺が都で雑貨屋を営み、紫が商品を調達してくることで、その二つを解消しようということになった。
「……い、おーい」
とまぁそんわけで今から5年前にこの雑貨屋を開業し、今に至ると言うわけだな。
いやー、いろんな意味で大変だった。軽くやるだけのはずが妙な出来事に出会ったのがきっかけでこんなことになろうとは……「お爺さん!」……ん?
「む、どうした?」
「今の話、聞いてました?」
「おお、聞いとるぞ。驚きじゃな、まさか船が空を飛ぶなんて」
「……やっぱり聞いてなかったんですね」
「ホッホッホ」
「笑ってごまかさないでください……」
「いやぁ、すまんすまん……と、もうこんな時間か」
気づけば時間は過ぎ、すでに1時間はたっていた。夕方にはまだ遠いが、彼女をここにい続けるのはいささかまずいだろう。それに、俺もあまり店を開け続けるのもまずい。
「さて、そろそろ戻るかの」
「はい」
湯呑とお盆を片付け、二人で店に戻る。そこにはすでに2人程客が来ていて、どうやら俺を探していたようだ。
「あ、いたいた。凌平さん、ちょっといいかい? ……あら、きれいな子。お孫さんかい?」
「近所の子じゃよ。ほれ、挨拶」
「こ、こんにちは……」
そのうちの一人のお婆さんが話しかけてくるが、妹紅は挨拶だけをして、俺の後ろに隠れてしまう。
「あらら……すまんの、この子は恥ずかしがり屋でな。で、今日はどうしたんじゃ?」
「えぇ、今日は娘が嫁に行くことになったので、一つ家具を作ってもらおうと思って」
「ほぉ、そりゃめでたい。で、どんなのがいいかの?」
「そうねぇ……」
そう言って俺は作る家具についてどんなのがいいか、その娘さんの好みはどんなものか、といったことをお婆さんから聞いていく。これは俺の自身の趣味半分仕事半分と言ったもので、この雑貨屋では売買の他に製作依頼も請け負っているのだ。ま、製作には結構時間がかかるが、出来は結構いいからそこそこの頻度で頼まれることから、割と人気はあると思っている。
そうやって話を聞き終え値段の交渉も終わったころ、後ろでずっと隠れていた妹紅が俺の裾を引っ張る。それに気づいた俺は妹紅の方を見る。
「ねえ竜宮のお爺さん、私もう行くね」
「む、わかった。またなにかあればおいで」
「うん、今日はありがとう」
「こちらこそ、いつも話し相手になってくれてありがとうよ」
バイバイ、と手を振ると妹紅は同じように手を振って店を出ていく。先ほども言ったが妹紅は恥ずかしがり屋のようで、身内以外だと俺ぐらいしか気兼ねなく話すことのできる存在がいないらしい。まあその事情を知っているからこそ、時間外の来店を許可しているわけなのだが。
「かわいらしい子だったわね。守矢の神といいあの子といい、もしかしてそう言う趣味なの?」
「寝言は寝て言え」
店に残っていたもう一人の客からのあまりの言い分に対し、俺はすぐさまそう言い返す。そして椅子に座り、疲れたようにため息を履いた。
「あら、ため息だなんて。あなたでも疲れることがあるのね」
「さらっと俺の店の中にお前がいたんだ。表情一つ変えなかった俺をほめてほしいくらいだよ」
「私が商品を仕入れているのだから、そこは俺たちの店じゃない?」
「それはそれ、これはこれ」
「そういうものなの?」
「そういうものなの」
そう、先ほど言った客二人のうちの一人。それは紫だった。服装は違和感ないものを着ているし、目立つ金髪は黒髪となっていたおかげでギリギリだが違和感はなかった。それでも婆さんは気にしていないし、妹紅は目の前の婆さんで頭がいっぱいだったからこそ何とかなっていたわけだが。
「で、どうしたんだ急に? 報告書の提出はまだ先のはずだが」
「今日はもう暇になったから来ちゃった」
「……はぁ、せめて店が終わった時間帯に来い。今相手をするわけにもいかんからな」
語尾に♪でもつきそうな声色で言う紫に対し、ため息をはきつつ俺はそう返す。紫と会話をするのは楽しいのだが少々疲れるのだ。営業時間内でやるにはここで話すしかないのだが、それでは色々とまずいので却下しておく。
「じゃあ茶の間で待っているわね。あ、あのお茶菓子食べていいかしら?」
「全部は食うなよ。後お前、まさか会話の内容も聞いていたのか? そうなんだな?」
そう聞くが紫は扇子で口元を覆い、にっこりと笑いながらスキマに消えていく。その様子を見る限り、どうやら俺の予想は的中しているようだ。
この程度ならわざわざアクションを起こす必要もないな、そう判断して俺は店番を再開する。そして椅子に座り、頼まれた家具の部品の設計図を描きながら、遠い記憶を思い出す。
あれからもう数千年たった。あの仮死状態も加味した場合、下手すれば数万年以上たっているのかもしれない。
この時期、この場所、そして妹紅という存在。
いやはや、結局俺からあそこに行くことはなかったが、もしかしたら会うことができるのかもしれんな。
稀神翔平さん、くーださん、感想ありがとうございました。
誤字報告いつもありがとうございます。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
そんなこんなで1か月以上空いてしまったこの投稿、本当に申し訳ない<m(__)m>
本文では言及されていませんが、現在の凌平はお爺さんとなっております。白髪の似合うお爺さんって感じです。アニメキャラの引用は今回は無し。
そしてようやく始まった輝夜編。話数だけで見れば5話しかないんですが、実際は5ヶ月以上空いているんですよねこれ……ペース上げたいけど、モチベの維持と大学の忙しさから中々叶わず(´・ω・`)
まあ、エタることだけは避けたいのでこれからも頑張っていきます。
ではまた、次話でお会いしましょうノシ