何故かフェストゥムになったけど今日も元気です 作:zelga
バレテナイバレテナイ(;'∀')
あれから特にいうべきこともなく、俺は家に帰った。
と言っても翁の屋敷までに距離がある事、並んで待つのにも時間がかかったことから、家から出た時昇っていた太陽も今では山の向こうに消えそうになっている。
そして店の入り口を通り、荷物を居間に置こうとしたところ、いつも俺が座っている定位置の椅子に彼女が座っていた。
「……何でここにいるんだ、紫」
「あら、前にも言ったはずよ? ここは私の店でもあるのだから」
「お前がここにいてもおかしくはない、か」
当たり前のように座りお菓子を頬張っている紫に対し、俺は軽くため息をつく。
まあ紫はこう言うやつだし別に思うことはない。それより気になるのは、なぜこのタイミングで彼女がここに来たのかだ。
「で、用件はなんだ?」
それを確かめるため、俺は紫に問いかける。
……まぁ、そう言っても何かあるとすれば彼女のことしかないのだが。
「……その様子だと、やはり彼女の正体は知っているみたいね」
「彼女が純粋な人間ではないことか?」
「ええ、かと言って妖怪や神でもない」
「それどころか、この地球の存在でもない」
確認し合うようにお互いに言葉をつなぐ。そして同時に結論を口にした。
「「この星の周りにある惑星、月から来た存在」」
「……相変わらずどんな情報網しているのよ、あなたが知らないことなんてないんじゃないかしら?」
「積み重ねてきた年月が違うんだよ。それに、俺だって知らないことくらいたくさんある」
だからこそ、新たな未知を得るためにこうして俺はここにいるわけだしな。
「……まあいい、それよりも言いたいことはそれではないのだろう?」
「ええそうよ、私が聞きたいのはこれからのこと」
「これから? 店をたたむと言うわけではなさそうだが」
「それはもう少し情報を集めてから。それよりももっと重要なことがあるでしょう?」
「となるとやはり、輝夜のことか」
「ええ。その様子だと彼女の状況も知っているのでしょう?」
「そうだな」
紫からの問いに肯定する。彼女、蓬莱山輝夜は月から来た不死の蓬莱人で、地球にいる理由は蓬莱の秘薬を飲んでしまった罰だから。しかし彼女は地球を楽しんでおり、原作では迎えの連中をすべて消して師匠の永琳と逃げ出した。
このくらいの原作知識はまだ頭の中に残っている。と言っても大分おぼろげなので正確性に欠ける可能性はあるが。
「ではそう遠くないうちに月から彼女の迎えが来ることは?」
「迎えが来ることは知っていた。ただし、時期はわからなかったがな」
「あら、そうなの」
俺がそう答えると紫は意外そうに言う。いくら俺でも、さすがに時期まではわからんよ。
「とにかく、そう遠くないうちに月から使者が来るの。そこの連中の技術力はこことは違い過ぎる」
「その通りだ。今だとそうだな…………恐らく、一人一人が中級妖怪となら互角以上に闘えるだろう」
「まあそうでしょうね。まぁ何が言いたいのかというと、今はあいつらとかかわりを持ちたくないのよ」
「今は、な……つまりなにか? 輝夜とは関わらない方がいいと?」
「理想を言うならそうね。けど、あなたとしてはそう言いうわけにもいかないでしょう?」
「よくわかっているじゃないか」
そう言ってくれた紫は俺という存在の性質をわかっているみたいだ。そう思いつつニヤリと口角を上げながら答える。
俺がこの都市にいる理由、その中にすでに彼女の存在は入っている。その存在と関わるなと言うのは少々厳しいというより、多分無理だ。
「だから私からの要求というより提案は一つ。雑貨屋の竜宮凌平はこの都市で終わらせてほしいの」
「なるほど、そうきたか」
「ええ、このままあの少女と関わっても構わない。ただし、彼女または私たちがここから離れたら……」
「それ以降は別人として輝夜に接しろ、と」
「その通りよ」
「なら構わん、その提案に乗ろう」
「そうよね、そんな簡単に……え?」
俺からの答えに対し、紫は少し驚いているみたいだった。まぁ確かに一度とはいえつながった絆だ。そこから離れたらすべてなかったことにするのは意外に思うだろう。
が、そんなこと言われてもなぁ……。
「あのな、俺が今まで何回出会いと別れを繰り返していると思う?」
「それもそうだけど……えらくあっさり答えるのね」
「まあな、正直慣れたというのが本音だ。それに、別れがあるからこそ出会いがあるんだ。俺はそれを悲しむことはすれど、後悔したり否定したりすることはせんよ。
それに、と改めて紫の方を見る。紫が意外そうな表情と感情をしていることが少し気になったが、言葉を続けた。
「お前もその方が都合がいいのだろう?」
「……えぇ、確かにその通りよ」
「じゃあ決まりだ。まぁなんにせよ、例の日まではいつも通り過ごさせてもらうぞ」
そう言って俺は紫の横を通って家の中に入っていく。大分暗くなってきたし、簡単なものでも晩飯は必要だろう。どうせ紫も食べていくのだろうし。
そして家の中に入った後、後ろの紫が何か言っていたが、それを聞きとることはできなかった。
「……たとえ興味を持った存在であっても、その理からは離れないのね」
その後、輝夜または翁から何か接触してくるかと思ったがそんなことはなかった。かと言って自分から会いに行くのは違和感を抱かれかねないので、俺は変わらない日々をのんびりと過ごしていた。
そしてそれから半月後。
いつも通り椅子に座って本を読んでいた時、その来訪者は現れた。
「はいよ、いらっしゃい…………て、ほ?」
「こんにちは、ここがあなたの店なの? 思っていたよりもこぢんまりとしているのね」
「……なぜこんなところにいるんじゃ」
「なぜって、今日の面会は終わったからよ」
というよりこれからは来なさそうね、と目の前の彼女は言う。確かにそうなのかもしれんが、なぜ彼女はこんなところに来ているのだろうか?
変装などせず、付き人も連れずにたった一人で。
「とりあえず上がりなさい、茶くらいは出すぞ」
「あら、どうも。それじゃお邪魔するわね」
そう言うと彼女、輝夜は俺に続いて家の中に入っていく。俺は入り口の扉に【本日は休業】という看板を立てかけてから急いで家の中に入る。
なあ紫よ、爆弾が向こうから来た場合は俺のせいじゃないよな?
「ん、美味しい」
「爺なんじゃし茶は結構こだわっとるぞ」
俺が出した茶を飲み、そうこぼした輝夜を尻目に俺は輝夜の向かいに座る。
「……聞かないのかしら?」
「ここに来た理由か? 教えてくれるのならぜひとも教えてほしいものじゃが」
まさか向こうから話を振ってくれるとは思わなかった。
そのことに内心少し驚きつつ、続きを促すよう言葉を返す。そうすると輝夜はお茶を一口飲み、ふぅと一息ついてから口を開いた。
「私、もうすぐ都から離れることになったわ。今日はお別れのあいさつに来たの」
「そうか、ということはあの噂は本当のことだったのじゃな」
「反応薄いわね……て、噂?」
俺の反応に対し輝夜は詰まらないとでも言いたそうな表情をしつつ菓子をかじる。その途中で俺が言った噂と言う単語に気づいて眉を顰める。
「む、知らんのか?」
「えぇ、その噂って何かしら?」
「お主がついに帝から求婚を受けたということじゃよ。この都の片隅の爺にもその噂が届いとる」
つまるところ、都中に広まっていることじゃよ。そう言うと輝夜はあきれたようにため息をはく。
「受けたの昨日のことよ……いくら何でも噂広がるの早すぎじゃない?」
「それほどまでに注目されとるということじゃよ。有名税とでも思っておけばいい」
「そりゃそうだけど……ゆうめいぜいって何?」
「名を知られれば知られるほどその者に関する出来事は伝わりやすいということじゃよ。わしがいたところではそんな言葉があったんじゃ」
そういやこの時代はまだ年貢だったっけか。そう思いつつ俺も茶を飲む。
「へー、外にはそんな言葉があるのね……ねぇ、ちなみに噂ってそれだけ?」
「有名なのはな。あと一つ、嘘か真かわからんのが一部で囁かれておる」
「……ちなみにそれは?」
彼女の感情を読み取る限り、俺がそのことを知っていると思っているようだ。
正直誤魔化すこともできるが……紫との約束を破るわけでもないし、まぁいいか。
「それはの、なんと今話題のお姫様は月から来た、というものなんじゃ」
「そっか、知られちゃったのね」
「……否定せんのか」
「何となくだけど、してもお爺さんにはばれる気がしてね」
そう言いつつ彼女は空になった湯呑をちゃぶ台に置く。
「じゃあこの話は知ってるかしら? そのお姫様は5日後に月から迎えが来るのよ。彼はそれを止めようとしているみたいだけど、恐らく無理でしょうね」
「……それは初耳じゃな。まさかこの星以外にも人がいるとは思わなんだ」
「さすがにこれは知らなかったようね」
それでも思ってた反応と違うわ、と輝夜はこちらをジト目で見る。それを適当に受け流しつつ、俺は話を進めることにした。
「それで、ここを出るのは5日後じゃったか?」
「……え? うん、そうよ」
「ふむ……ちと待っておれ。たいしたものはないが、餞別の品くらいやらんとな」
そう言って立ち上がって部屋を出て、店の商品棚に近づく。
えーと、確かここら辺に……お、あったあった。
目的のものを無事見つけ、部屋に戻った俺は輝夜にちょいちょいと手招きをする。いまだに目を真ん丸にしていた輝夜だが、俺の手招きに気づいて近づいてくる。
そして俺は輝夜の手のひらを開けさせ、それを渡した。
「これは……櫛?」
「うむ。こんなものしかなくて済まんが、お主はきれいな髪をしとるんじゃ。しっかり手入れをせねばもったいなかろう」
ぶっちゃけ蓬莱人相手に必要なのかはわからんがな。
内心そう思いつつそれを渡す。それ受け取った輝夜は、なんとも言えないような表情をしていた。
「……もしかして余計なお世話だったかの?」
「いえ、大切に使わせてもらうわ。それよりも……何も言わないのね」
そう言って輝夜は櫛をしっかりと握りしめつつ、俯いて呟く。
「まぁいきなり帰ることを聞かされるのは驚いたがの。あれ以降も結局会いに行けなかったわけじゃし」
「それもそうね。あの後しばらくの間来てくれるのを期待していたのよ?」
「すまんの。職業柄店から離れるわけにはいかんし、翁の家に行くのも一苦労な距離なんじゃ」
紫との会話を話すわけにはいかないし、少し本音を混ぜた嘘の言い訳をする。そして俺は再びちゃぶ台に座り、輝夜にも座るよう促す。
「まあ聞きたいこともあるし、話したいこともある。ここはどうか時間の許す限り、爺の暇つぶしに付き合ってくれんかの?」
「……えぇ、いいわよ。家に帰っても帝のお付きがうるさいし」
「おい待て、お主まさか……」
「さてお爺さん、何から話しましょうか?」
なんだかいやな想像をしてしまったが、まあ気のせいということにでもしておこう。いくら帝といえど、こんな見た目爺相手にムキになるわけもなかろうし。
そう思い、俺たちは結局夕方になるまで様々な話をした。なんてことない話に加えて月はどのようなところなのか、兎がいるのは本当なのかなど聞いてみたが、なかなか有意義な内容だった。
……おいちょっと待て、永琳はともかくとして若菜が研究機関のトップ? 何があったし月の都。
「そもそも翁と何年お付き合いだと思っとる。いきなり赤子片手に店に入って『凌平さん、竹から赤子が生まれました!』と言われたときは何事かと思ったぞ」
「て、いう事はもしかして蔵にしまってあった育児道具って……」
こんな会話があったとかなかったとか。
稀神 翔平さん、感想ありがとうございました。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
大変申し訳ない。いろいろありまして……言い訳は活動報告にて。
ではまた、次話でお会いしましょうノシ