何故かフェストゥムになったけど今日も元気です 作:zelga
祝、お気に入り400突破!!
ありがたい限りです。これからもマイペースながらも書いていこうと思います。
そんなこんなで33話。久々過ぎて彼女の口調が変わりまくってる気がしますが、もしそう思ったら月日が経ったから口調も変わってるということにしといてください(白目)
では、どうぞ。
「……よし、こんなものかしら」
そう言いながら紫はスキマから顔を出す。それを俺は確認し、念のため店の中を回っていく。
今までだったらこの場所にはたくさんの商品が並び、奥の今への入り口のそばには俺の定位置である椅子があっただろう。
だが、それらは今や跡形もない。そのすべてが紫のスキマの中に入っているからだ。
「ああ、こちらも確認した。忘れ物はなさそうだ」
「なら大丈夫ね。……でも、まさかここを去るのが今日になるなんて」
「意外だったか?」
俺がそう問うと、紫はいいえ、と首を横に振る。
「あなたがここにいた理由がいなくなるんだもの。近いうちに去るとは思っていたわ」
「ということは去るのが今日というのが意外だったのか」
「ええ。まさかお姫様が月に帰るその日に出るとは思わなかったわ」
「……そうか」
俺は紫にそう返し、空を見る。
太陽はすっかり落ち、真円の形を描いた月は俺の真上で輝いている。なんだかいつもより明るく感じるが、それが月のせいなのか、はたまた視界の端に映る多くの火の灯りのせいなのかはわからない。
そう、今夜は満月。突然の輝夜との邂逅から5日が経った今宵、彼女は月に帰るはずだ。
「良い月だな。もし今日でないのなら月見でもやりたいものだ」
「だったらいい場所に連れていきましょうか? そこからは良い夜景が見えるのだけれど」
「惹かれるものがあるが今日は結構だ。面倒事は先に済ませておきたい性質でね」
「あら、振られちゃった」
「また今度ということだっての……さて」
行くか、と紫を見て言おうとした瞬間、俺は違和感を感じ取った。
同じものを感じたのだろうか、紫の気配が急激に薄くなる。妖力を抑えることで自身の存在を薄くしたのだ。紫は基本的に自身を隠さない。それをする時の理由は単純、見つかりたくない存在が近くにいる時だ。
それを見た俺は、準備をしつつ紫に問いかけた。
「来たのか?」
「……ええ、今彼女の屋敷に現れたわ。」
「そうか、状況はわかるか?」
「無茶言わないで、ばれない範囲の限界距離にスキマを開くのが精一杯よ。見た感じ特に危険な連中はいないけど、注意するに越したことはないわ。……というか、どうせあなたものぞき見する手段があるでしょうに」
「生憎と俺も紫と同じ状況だ。護衛の一人に紛れ込ませたのは良かったがまさか全員を一度に機能停止にする術があるとは思わなかった」
術の対象を人間だけにしたのか、俺が紛れ込ませたヤツには影響はない。とはいえ人間に擬態させたのが今回は失策だったみたいだ。今俺が動けば俺が人間ではないことがバレてしまう。それは紫との約束を破ってしまうことになってしまうので動くわけにはいかないのだ。
それでも視界をばれないよう広げて状況を確認することはできる。そして向こうの俺の視界の端には、たくさんの人間が倒れていた。その中で一際豪華な衣装を着ている男性が一人、おそらく彼が帝なのだろう。
すると彼に輝夜が近づいていき、ナニカが入っている小さな容器をそっと帝のそばに置く。そしてまた視界から離れていった。おそらくあれが竹取物語に出てくる不死の秘薬、蓬莱の薬だろう。
さて、視界から離れてしまった以上俺はこれ以上の情報を得られない。ここから先は紫次第だな。
「!、動いた」
「何があった?」
「……推測だけど、裏切りみたいね。一番最初に出てきた女性が、お姫様と一緒に逃げ出したわ。後から出てきた月人と月兎がそれを追ってる」
「その女性の特徴は?」
「戦闘員には見えないわね、でも弓矢を持ってる。最初の対応から見て、彼女はかなり上の立場の存在みたい」
「……なるほど、ね」
それを聞いた俺は静かに笑う。どうやら、原作通り彼女が輝夜を連れて逃げ出したみたいだ。
「逃げきれそうか?」
「……五分五分といった所かしら。どうやら月の連中も予測していたみたいよ、増援が来てる」
「そうか、じゃあ行ってくる」
「わかったわ…………て、え?」
紫にそう言い、俺はすばやく跳びあがり移動する。後方で紫が何か言ってた気がするが今回は気にしない。
さて、今からでも間に合うか? そう思った俺は感知範囲を最大限に広げ、連中の居場所を探す。
……いた、この速度だと後5分ほどで追いつけるな。
居場所を特定し、俺はそこに向かって高速で飛翔する。今の俺は雲の中を移動しているので、ばれることはないだろう。
さて、ここまでは計画通りだが、ひとつ解決しなければならないことがある。それは俺の姿についてだ。
この間輝夜と話をして分かったのだが、防衛隊隊長だったころの俺の情報はしっかり残っているらしい。なんでも史上最強とのことで、当時生きていた者たちのあこがれの存在になっているとか。そのせいで、おれはあの時の姿で助太刀に出ることができない。防衛隊隊長はあの時死んだことにしておいた方が色々と都合がよいからだ。かと言って永琳の現状を知らない以上、永琳が一目で俺だと気づけなければただのバトルロワイヤルになってしまい意味がない。都で過ごしていた時の姿だと紫との約束があるので問題外だ。
つまるところ俺は、永琳だけが分かるような姿で手助けをする必要がある。
それに該当する奴なんざ
「と言っても、それしか手段がないんだがな……頼むぞ」
願わくば、奴らがあまり抵抗しないことを祈って。
そう思いながら俺は、屋敷から飛び出し同じように追跡していたヤツに指示を送った。
走る、走る、ただひたすらに走る。
木々の枝が引っかかり服や肌に傷を付けるが無視する。そんなことに気をかけていてはあいつらにすぐ追いつかれてしまうだろう。
そのままの速度を維持しつつ、横目で隣を走る彼女の様子を見る。今はまだ大丈夫そうだが、あまり長丁場にはできなさそうだ。
あまり時間はかけられない。そう判断した私は周りの気配を探る。
……速い、それに数が多い。彼女を迎えに来たときは月兎が4人だけだったが、気配は2倍に増えている。
「……ごめんなさい、どうやら私の裏切りは予測されていたみたい」
「気にしないで、そもそもこうなったのは私が月に帰るのを拒んだせいなんだから」
それよりも早く離れないと、と彼女は前を見て走り続ける。確かに謝るのならもっと落ち着いた場所に着いてからでもいいだろう。
そう判断し、この状況を脱する手段を探る。どうやら彼女たちは私たちの居場所を大まかにしか判断できていないようだ。全体に満遍なく監視の目があるが、いくつか抜け穴はある。罠の可能性はあるが、そこを抜けるしかないだろう。
「姫様、今から支持する場所に動きます。時間はわずかしかありません、全力で走ってください」
「わかったわ」
彼女からも承諾を得、私は一番安全そうな場所を探し始める。あらゆる可能性を考慮し、最適解を導き出す。
ーーー月兎の数は8、10秒後に生まれる抜け道の数5、内罠の可能性が高いのが3、残った2つのうち見つかる可能性が低い方は……。
「こちらです!」
彼女の手を引き、今まで以上の速度で走り抜ける。ここさえ抜ければ、少なくとも時間が稼げる……!
「そこまでです、八意様」
突然、目の前が開けた。木々は最初からなかったかのように消滅し、平原だけが残る。
そしてそれを行った人物は私たちの目の前に立ち、武器をこちらに向けていた。
「いくらここしか道がないとはいえ、あの刹那の抜け穴を見つけ出すとは……」
「さすがは月の頭脳。しかし、今回はそれが仇となりましたな」
正面の男の言葉に続くように、後ろから別の声が聞こえる。
しまった、月兎の数が増えている時点で気づくべきだった……!
「いえいえ、気づかなくて当然ですよ。私たちは貴方が決して気づかないよう、後から来た彼女たちとはまた別に行動していたのですから」
内心後悔しつつ周りの様子を探る私に対し、後ろの男は答える。そしてこの状況にすぐ気づいたのか、周囲を月兎が囲んだ。これで逃げるという選択肢はなくなってしまった。
「ねえ、一つ聞いて言いかしら? いつから永琳が裏切ると思っていたの?」
この状況をどうするか思案していると、隣に立つ彼女ーーー輝夜が月人に聞く。
それに対し、正面の男が油断を解かないまま答える。
「
「あの時点で私たちは裏切りを警戒し、この計画を練りました」
「……フ」
思わず声が出る。まさか最初からとは。あの時から彼らは私に気づかれないように行動をしていたというのか。その時の私は裏切りなど考えていなかったというのに。
「あなたは天才だ。だが、戦略と戦術に関してだけは私たちに経験の分がある」
「そこに長い思慮の時間が加われば、一回こっきりの初見殺しくらいはできますよ」
そこまで言い、正面の男が引き金に手をかける。それに合わせ、他の者たちも構えをとった。
「さて、無駄話はここまでです。八意様、蓬莱山様をお渡しください。今ならあなたはまだ何もしていないことにできる」
「あら、情けのつもりかしら?」
「あなたの立場を考えれば当然のことです。それに、綿月様の指示ですので」
そう返答し、彼らは私の答えを待つ。私はそれを見つつ、輝夜の方を見る。
彼女の眼は、私を信頼している目だった。私の判断を尊重する目だ。もしここで私は彼女を渡しても、彼女は何も言わないし決して私を憎まないだろう。
「……ええ、では答えましょう」
そう言って私は周りを見渡す。そして彼女たち一人一人を見、最後に正面の男を見た。
そしてーーー
「私、八意××は蓬莱山輝夜様に仕え、彼女の自由を勝ち取ります」
全員に向け、矢を撃ち放った。
計10本の矢は狙い通り、吸い込まれるように全員の急所に迫る。しかし月人2人は回避し、月兎8人は体をねじることで当たる場所をそらした。2,3人は減ると思っていたのだが、どうやらここにいる全員はしっかりと訓練が重ねられているみたいだ。
諦める? 無駄? 手段が思いつかない?
ーーーそんな道理、今は捨ててしまえ。
彼女は願ったのだ、もっとこの星を見たいと。もっと様々な命を見たいと。
自由になりたいと、そう願ったのだ。
ならば私はそれをかなえよう、私の教え子を守るために。自分だけ無罪になってしまった罪を償うために。
自分の不始末で、終わりのない命となってしまった彼女を見届けるために。
「……やはり、交渉は無駄でしたか」
「全員、彼女たちを殺す気で狙いなさい。死ぬことはありませんので、遠慮はないように」
そうこぼし、彼らは再び私たちに狙いを定める。確かに私たちは死ぬ事がない。しかし、傷が修復するには時間がかかるのだ。つまりはそこをついてくるつもりなのだろう。
「永琳……」
「私のそばから離れないでください」
私を犠牲にするだけではだめだ。この状況を脱し、二人で生き残る必要がある。そのための覚悟は決まっている。
「全員……撃てぇ!!」
そして後方の男の号令と共に、全員が引き金を引きーーー
「見ぃつけた」
ーーー放たれた弾丸を、突然現れたソレがすべて受け止めた。
「……オレの名は土蜘蛛」
その存在はただひたすらに、強大であった。
「強ぇ奴とやりに来た次第」
なぜ今まで気づかなかったのだろうか?
その巨体から放たれる目に見えるほど膨大な妖力。灼熱のような赤い髪を垂らす、般若のような顔。
「こんだけいりゃー、1人くらい骨のある奴がいるんじゃねぇか?…………お前か?」
「な、なんなんだこいつは……!?」
そう言ってソレーーー土蜘蛛は月人を指さす。さされた月人はヤツから放たれる力に驚愕し、思わず後ずさる。
「それとも……お前か?」
「……っ!」
今度は別の腕でもう一人の月人を指さす。月人は恐怖のあまり声も出ないようだった。
「それとも……テメェらか?」
最後に周りを見渡し、月兎全員を視界にとらえる。
そして彼女たちの持つ武器を確認すると、ヤツはニィッ……と口角を上げた。
「女でもいいぜ。戦える奴ァ全員……」
そしてヤツは4つある腕を一つ残らず引き絞りーーーーーー
「オレの、敵だ」
その暴力を解き放った。
通りすがりさん、感想ありがとうございました。
誤字報告いつもありがとうございます。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
そんなわけで輝夜編も終盤になりました。時間かかってんなぁ……(´・ω・`)
ではまた、次話でお会いしましょうノシ