ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う   作:ウリクス

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青の薬舗

オラリオ西メインストリート外れに建てられているミアハ・ファミリアのホーム兼店である。
薬も取り扱っているが、メインは回復系のポーションである。


第24話 冒険者始めました(おつかいという名の救命編part2)

「あった、『青の薬舗』……ココだ、間違いない」

 

オラリオに来て最初に商人のオッサンに連れられた店だ。

ユージュアル村のお得意先のファミリアとか、でも正直言って場所が場所だけに客はあんまり来ないと思う。

だって西部メインストリートから結構離れていて裏路地の隅っこに建てて客は来るモノなのか?

 

「……お邪魔します……」

 

中は質素な木製の箪笥と机、そして棚が店の大半を占めていた。

この店に始めて来た時も思ったが、狭い店だ。

まだ村で一番狭いと定評のあった雑貨屋の方が広く感じるよ。

 

「……誰かいませんか?」

 

ガラス越しに見える立てられた長細い容器の中に入っている色とりどりの液体を見ながら店員を探す。

 

「……おや?そなたは」

 

店の奥で腰掛けている青髪長身の男性を発見した。

あの人は確か

 

「……久しぶりですミアハ様……」

 

人じゃない、神だったな。

 

「おお、やっぱり。あの時のユージュアル村から来た冒険者ではないか」

 

淡々とした口調で話しかけてくる。

 

「今日はどういったご入り用で?」

「はい、実は一週間病と呼ばれている病の特効薬があると聞いて探しに来たんですけど……」

「……一週間病、コレはまた随分と懐かしい病だな」

 

そう言ってミアハ様は店のさらに奥に入り、箪笥の戸が何度か引かれる音が聞こえる。

 

「少しだけ待って欲しい。確かこの辺に……あったぞ」

 

店の奥から出て来て俺の前に粉薬と思われる小さな紙で包まれた袋が出てくる。

 

「その……コレが一週間病の特効薬ですか」

「うむ、その通りだ」

 

……本当にこんなので治るのか不安だったが薬学の知識がない俺にはミアハ様の言葉を信じるしかなかった。

 

「……その、それで……値段は?」

「……うむ」

 

椅子に腰かけて何やら悩んでいる様子を1、2分俺に見せた後。

 

「受け取ると良い。勿論タダだ」

「……え?」

 

っと笑顔で小さな紙に包まれた何かを差し出してくる。

 

「どうした、要らぬのか?」

「……い、いや……勿論欲しい、そのために来たんだから。でもタダと言う訳には……」

「ふははっ、そんなことを気にしていたのか。なに、大切なお得意先の関係者に対して胡麻をすっているだけだ。そなたが気にすることではない」

 

全く気にしていないと笑い飛ばし俺に紙袋を手渡してくる。

手に取るとどこかサラサラとした感触が手に伝わってくる、恐らくは粉薬が入っているだろう。

 

「あ、そうだ……折角来たついでだ。これも渡しておこう」

 

今度は立て掛けた柑橘色と水色のポーション(マジックポーションとポーション)を2つ取り出して手渡してくる。

 

「まだまだ初心者の身なのだ、色々と足りない物があるだろう?遠慮せず受け取ると良い」

「……ありがとう……ございます」

「なに、先行投資だと思えば安いモノだ。さぁ、急いだ方が良いぞ。ああ、そうそう栄養のあるものを食べさせると更に良いぞ」

 

……商人のオッサンが何でこの人、いやこの神様に対して贔屓しているのか分かった気がする。

ミアハ様に促されるままに俺は店のドアに手をかける。去り際に「うむ、今後ともご贔屓にな」と言う声と共に俺はまたダイダロス通りへと駆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ、活躍してるみたいで結構。彼に良い土産話が出来そうだ」

 

満足した様子で店の椅子に座っていると店の奥から「ミアハ様……」と如何にも不満がある少女の声が聞こえてくる。

 

「見てましたよミアハ様。またタダでポーションを上げたんですか?」

「おお、帰っていたなら一言ぐらい声をかけてくれても良いではないかナァーザ?」

「たった今帰って来たばかりです」

 

彼の唯一の眷属(ファミリア)である少女が青年が店を出ていくと同時に裏口から入って来た。

 

「それよりもまたですか?またタダでポーションを渡したんですか?私達のファミリアはタダでさえ」

「まぁ落ち着けナァーザ、あの者の出身の村には色々世話になっているのだ、無下にする訳にはい」

「ソレはソレ、コレはコレです。大体ミアハ様は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、この食材をいくつか……あ、後コレも……」

 

ミアハ様に言われた通り、東部のメインストリートの市場で食材を適当に買い漁っている。

 

「お会計、1800ヴァリスになります」

「……はい」

 

食材って結構高いな畜生。しかもメッチャ重いし、今日のダンジョンで少しでも魔石を拾っておけば良かったかな。いやでもミアハ様から薬とポーションをタダで貰った訳だし。

 

「……はぁ」

 

今更グチグチと考えていても仕方が無いことだと分かっていても、頭の中でどうしても考えてしまう。

もう直ぐ日が沈む、早くダイダロス通りに行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……良し!」

 

ダイダロス通り2度目の潜伏、何故かこの通りに入るとダンジョンに足を踏み入れた時と同じ感覚になるのは俺の気のせいだろうか?

 

「……もう少しで夕方か」

 

懐中時計と空を見上げる。

あともう1~2時間後に日没と言った感じだ空も薄らとオレンジ色になりかけている、急がないと。

 

 

 

 

 

 

「……クソッ!全然分からん」

 

懐中時計の長い針が半回転し、建物と建物の隙間から入ってくる僅かな日の光の色が一層とオレンジ色に濃く染まったところで俺は気づく。

そう、また迷ってしまったんだと。

ってか孤児院が全く見つからん!

さっき辿りつけたのも偶然だったし、どうしたモノか。

このままじゃチビ達が帰って来てしまう。

 

「……?」

 

微かにテンッテンっと何かが跳ねる音が聞こえる。

その音を頼りに進んで行く。

 

階段を上り、向こうに繋がっている橋を渡って、真っ直ぐ進みながら手前の階段を更に上って下を見下ろせば

 

「……あった!」

 

間違いない、マリア孤児院だ!

良かった、何とか見つけることが出来た。

昼とは入る場所が違うけど傍に孤児院へと繋がっている下り階段があるから問題ない。

階段を下りボールで遊んでいる子供達に目を向け話しかける。

 

「そこの少年達……ああ、昼に来た者なんだが……」

 

すると子共達も「あ、昼間のにーちゃんだ!」っと言いながらこちらに近づいて来る。

 

「どうしたの?忘れ物?」

「ああ、忘れ物……じゃなくって忘れ事……かな?」

 

忘れ事ってなんだよ!っと自分の発言に疑問を抱く。

子供達も首をかしげて考えているところ、俺は「マリアさん、いるかな?」と言うと一斉に「「「うん!!!いるよーっ!!!」」」っと元気な声が返ってくる。

 

「じゃあ、またお邪魔してもいいかな?」

 

一言告げ子供達の前を通り、孤児院の扉の前に立ちコンコンっとノックをする。

少し待っているとマリアさんが扉を開けて出てくる。

 

「……一日に二度も訪問してすみません」

「いえ……それは構いませんが、何か忘れ物でも……?」

「ああ、はい。ノエルって女の子に会わせて欲しいんですが」

 

この発言で彼女の顔が少しだけ険しくなったように見える。

 

「……何故、ですか?」

 

ああ、気のせいじゃないわコレ、完全に警戒しているよ。

 

「……えっと、そのですね……」

 

どうしよう、素直に言うべきか。

いや、特に隠している訳じゃないし言った方がいいかな。

 

「ああ、実はですね……」

 

マリアさんにこれまでの経緯を全部話した。

 

ダンジョンでマリアさんの孤児院で暮らしているチビ三人に出会ったこと

 

冒険者になってダンジョンに潜ったのは同じ孤児院で暮らしている友人が重たい病を患って薬代を稼ぎたいと言っていたこと

 

走り回って、薬をタダで譲ってもらったこと

 

「……それで、俺の知り合い(チビ三人組)の知り合いに薬を飲ませようとして、色々回った訳なんですよ」

 

うん、嘘は言っていない。

 

「……」

 

マリアさんが何も言わず、俯いている。

周りにいる子供達も何かを察したのか、何も言わずにただジーっと俺の方を見て来る。

 

「本当にすみませんでしたッ!!!」

「ッ!!?」

 

マリアさんが突然席を立ち俺に向かって頭を机に打ち付ける勢いで頭を何度も下げてくる。

 

「私の子供達が冒険者様にとんだ迷惑を……」

「いや、別に迷惑とは思っていなんですけど……」

 

これよりも厄介なのは、デメテル様の依頼(ファミリア団員の教育)の方がよっぽど厄介だから何とも思っていないんだけどね。

 

「それで、彼女には……」

「ハッ!……重ね重ねすみません」

「いや、別に良いですよ」

 

マリアさんが再び椅子に座り直して話に戻す。

 

「……そうですね。アークさん、彼女は二階にいてベッドで寝たきりなんです。失礼だと思いますが……」

「大丈夫ですよ、直ぐに行きましょう」

 

席を立ちバックパックの中身に入っている食材全部を机の上に置き、彼女に案内されるまま孤児院の二階へと向かった。

 

 

 

 

 

「……アークさん、この部屋の先にノエルがいます」

 

階段を上り右に曲がって真っ直ぐ進んだ先にある一番奥の部屋に止まり、マリアさんが俺に声をかけ一息ついた後に扉を開ける。

 

「……!」

 

ソコにいたのは窓の外を眺めているツインテールの女の子がベッドに横たわっていた。

こちらに気が付いたのか、彼女はこちらに振り向き小さな弱々しい声で「……コンニチハ……」と挨拶して来る。

 

「……こんにちは、君がノエルちゃんだね。初めまして……俺はアーク、駆け出しの冒険者をやっている」

 

なるべく『俺なり』に優しく柔らかい声で話しかける。

子供というのは、とにかく優しく接してあげて警戒心を解いてやらないといけないって、村にいた時に学んだ。

だから『いちいちキャラが違うんだよお前』とか言わないで欲しい。

 

「……ア、アノ…ッ!」

「……!」

 

彼女が何か言いかけた時、彼女は急いで口を手で覆い咳込み始めた。

 

「ああ、ノエルっ……!」

 

マリアさんも慌てて駆け寄り背中をさする。

コレが一週間病の症状の一つか?

 

 

 

 

 

 

 

「……ゴメンナサイ……」

「いやいや、大丈夫だよ」

 

暫くして咳が止まり再び会話が出来るようになったが多分またさっきみたいな咳が止まらなくなるんだろうな。

後は……血だな、彼女の掌に少量だが血がついている。

マリアさんも心配そうな顔で彼女の手についた血を拭っている。

 

「……アノ、ソレデ、ワタシニ……ナニカゴヨウ……デスカ?」

「……ん?ああ、そうだったな」

 

紙袋から更に小さい、子供の掌くらいの紙袋を取り出す。

 

「君の友人がこの薬を飲ませてやってくれって言われてやって来たんだ。君で良ければ、この薬を飲んでみないかい?勿論強制はしない。」

 

一応、一応だけど確認はとっておく。

だっていきなり部屋にあがりこんでこの薬飲まない?とか怪し過ぎるし。

でもだからと言ってマジで拒否したらどうしようか。

 

「……ワカリマシタ、ソノクスリヲ……クダサイ」

「分かりました!マリアさん……後は頼みます」

「はい、任せてくださいっ!」

 

特に何も考えずに意外とすんなり了承してくれたな。

もう少し考えても……いや、別に良いんだけどね。

マリアさんに薬を渡して暫く様子を見ることにした。

 

 

 

 

 

 

「……おお!凄い……手慣れてますね」

 

思った通り、手慣れた淡々とした手つきで薬を飲ませる。

 

「子供達と向き合っていると自然と身に着けてしまうんです」

 

マリアさんが謙遜した態度をこちらに向けてくる。

そして彼女……いや、ノエルが何か言いたそうな顔をしてこちらを見て来る。

 

「……ノエル、どうしたの?」

 

マリアさんも何かを察知するかのようにノエルが口を開く前に駆け寄る。

 

「……スコシ、ネムタクナッタノ……」

「え?マジで!?」

 

まさかもう薬の効果が出て来たの!?いくらなんでも早すぎない?

 

「……ええ、ゆっくりお休みなさい……」

「……ウン、オヤスナサイ……」

 

まるで夜になると母親が幼い娘を寝かしつけるかのような優しい声でノエルに話しかける。

 

「……」

 

俺、完全に蚊帳の外だよ絶対。

まぁいいや、俺はマリアさんに気付かれないようにそっと部屋から出て行くことにした。

 

孤児院から出る際、子供達に一言だけ、「そこに置いた食料は全部あげるからマリアさんにおいしい物を作って貰いなさい」とだけ言って孤児院から出て行く。

 

 

 

 

 

 

「……まぁ、一件落着って言ったところかな……」

 

しかし今日もドタバタだったな。

オラリオに来てから何かしらが俺の周りで引き起こっているのは気のせいだろうか?

俺が村にいた頃は本当に何もないまま23年があっと言う間に過ぎて行ったからその差がどうしても慣れなくってだな。

 

「……いやしかしだな……う~ん……」

 

そんな独り言を頭の中で呟きながらダイダロス通りを通り抜けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ただいま……」

 

すっかり日没だ、ダイダロス通りからここまでって結構時間がかかる。

 

「あ、お帰りリーダー!」

「……おかえりなさい……」

「……お帰り、す・ご・く……遅かったわね」

 

扉を開け中に入ると、まるで迎えるかのようにいつもの三人組が立っていた。

 

「まぁそう言うなよセリア……チビ達は?」

 

その質問をエミリアが返してくれる。

 

「あの子達ならリーダーが帰ってくる30分くらい前にここを出たよ?」

「ああ……そうかすれ違ったか……」

 

もう少し早く帰るべきだったな。

 

「ああ、そうだコレ(ジャガ丸くん小豆クリーム味)お土産」

 

本当はチビ達に食べさせる為に買ったんだけどまぁいいや。

 

「……凄く、冷めてるわね……」

「大丈夫、ジャガ丸くんは冷めてもおいしい!ってヘスティア様が言ってたから」

 

多分この子達はヘスティア様って言っても分からないだろうな。

今度紹介してあげよう。

 

「それで、何でここに立っていたんだ?」

「あ、そうそうリーダー!大変なんだよ!!」

「……何が?」

「良いから応接間に来なさいッ!兎に角大変なんだから!!」

「……?……ッ!?分かった、付いて行くから引っ張んなってッ!!!」

 

ジャガ丸くんを頬張りながら歩く彼女達に連れられて応接間へと向かう。

 

 

 

 

 

「……で?」

 

応接間の前まで来た、耳を澄ませるても何も聞こえない。

至って静かじゃないか。

 

「……お前達、何も無」

「なんでッ!!!!!?」

 

恐らくは応接間からだろう、机思いっきり叩き付ける音が壁越しに俺の耳に響き渡って来る。

 

「……どうして……どうして昨日今日結成した『デメテル様と愉快な仲間達の冒険団』を解散しなきゃならないのッ!!!!?」

 

 

 

 

……え、団名ダサッ……




良かった、何とかギリギリ年内更新間に合いました。
来年も無理をせずちょこちょこ更新していこうと思いますのでよろしくお願いいたします。
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