ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う   作:ウリクス

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神の恩恵とステイタス更新

ファミリアによってはアークの所属している『アテナ・ファミリア』みたいに何時でもステイタス更新ができる訳じゃない。
各ファミリアによるがそれぞれ条件が設けられている。
例えばソーマ・ファミリアでは資金集めノルマがあり、一定のヴァリスを献上していなければステイタス更新をすることが出来ない。



第25話 冒険者始めました(リーダーとして話し合う編)

「……ッ?」

 

いやいや、団名がダサい云々は置いといて一体何の騒ぎだ?

それにさっきから喚いているこの声は、モニクか?

 

「何でッ!!?折角冒険者になれてリーダー君と……みんなと一緒にダンジョンに潜ったのに……これからだっていうのにッ!!」

「……モニク……落ち着いて……」

 

この声はリリアンで。

 

「そうですよモニク、コレばっかりは仕方が無いことだと思います」

 

この声はララだな。

 

「分かってるよッ!!……でも、でも……」

「……そうだよッ!!折角冒険者になったっていうのに……あんまりだよ……」

 

モニクに賛同している声を上げているのはヘンリッタで、後は。

 

「リーダー、いつまで盗み聞きしているの?」

「ボク達みんなリーダーが帰ってくるのを待ってたんだよ、早く行こうよ」

「……お、おいまさかこの気まずい中入れと……?」

 

クラリスが扉を開け、セリアが有無を言わさずに俺の後ろに回り背中を押し、エミリアが大きな声で「みんなッ!リーダーが帰って来たよッ!!」と叫ぶ。

 

「……お、おう……ただい」

「リーダーッ!」

「おかえり!リーダー君!!」

「……ずっと……待ってました……うふふ……」

「あ、あの……お帰りなさい」

「「リーダー!!戻って来てくれると信じてたよッ!!」」

 

他のメンバーも待っていましたと言わんばかりに俺に駆け寄ってくる。

いや、でもせめてただいまくらい言わせてくれって。

 

「リーダー様、お帰りなさいませ。みんな首を長くして待っていました」

「ああ、ただいま。それで、この状況は一体……?」

「はい、実は―――」

 

昨日、俺達が冒険者になるんだって盛り上がっていたのを他の今年新しく入ったファミリアの団員、つまり他の班のメンバーがそれを目て『楽しそう、私達も冒険者になりたい!』って便乗し始めたらしく、彼女達がホームに帰って来た頃には志望者は100人を超えたらしい。

 

それで、このままじゃこれからの農業の方に人が回らないと言う理由でこの話を『一旦に白紙にしてから』後に正式に冒険者に志願する人をファミリア内で募集するらしい。

 

「……つまり、冒険者の募集をしたら思った以上の人数が来てしまったせいで今度は農業の方が人数が足りなくなってきたから、冒険者云々は一旦無かったことにしてファミリアの経営が軌道に乗るまでの間農業に集中する……ってことだな」

「……はい、その通りです……」

 

フローラが頷くと一息つき席を立つ、そして奥に積まれていた書類の束を俺の目の前に置いてくる。

 

「コレが今回の件で冒険者に志願した書類です」

「……フローラ、全員で何人志望したか分かるか?」

 

100を超えているってことは、100人以上いるってことだよな?

 

「はい……私達含め今年入団した団員が56名、去年入団した団員が35名、一昨年入団した団員から18名……全員で109名います」

 

目の前に置かれた書類の束を手に取りパラパラと目を通す。

 

「……はぁ」

 

お前等、農業をしたくてこのファミリアに来たんじゃないのかよ全く。

マジで何でこのファミリアに入団したんだよ、って言いたいけどコレばっかりは向こうの都合だ、俺が口出すところじゃない。

 

「……あの、リーダー様。それで」

「あら、帰って来たのねアーク君」

 

フローラが何か助けを求めている顔を向けて来るがそれを遮る様に扉が開く音と共にデメテル様が応接間に入ってくる。

 

「あら、フローラ達もいるのね。まぁいいわ……貴女達、入って来なさい」

 

デメテル様の合図で開けっ放しのドアから数人の女性が入ってくる。

見た目は二十代後半だと思われ、年相応の落ち着いた雰囲気が彼女達から感じられる。

 

「ああ、紹介するわ。彼女達がこのファミリアの幹部、言ってしまえば年長組よ。」

 

幹部の女性達が俺に頭を下げて来たので俺も彼女達に倣い、頭を下げる。

ファミリアの幹部って言う割には皆随分と若い人ばっかりだな、幹部って言ったらもう少し年配の人が出てくると思っていたのに。

と言うか今思ったけどこの部屋(応接室)って結構広いんだな。

 

等々どうでも良いことばかり考える。

 

「その、デメテル様…ウソ…ですよね?折角結成したファミリアが解散なんてウソだよね…ッ!?」

「そうだよデメテル様……幹部さん……」

 

モニクとヘンリッタが彼女達に今にも泣きそうな声でデメテル様に話しかける。

突撃娘、デメテル・ファミリアの元気印がこの世の終わりみたいな顔をしていて俺としても精神的にかなりキツイ。

 

「モニク、ヘンリッタ、残念だけどデメテル・ファミリアの冒険団は一時的に解散よ。勿論、貴女達もよ。クラリス、セリア、エミリア」

 

非常な一言を言い放ち、3人組をジッと見る。

3人は俯いてただ黙って「…はい…」と小さい声で答える。

 

「……っら……」

「……モニク?」

 

モニクが俯いてブツブツと何かを呟いている。

ララが心配そうに覗いたその時

 

「こんなことになるんだったらッ!!!最初っからアタシ達に変な期待させないでよッ!!!!!」

「大っ嫌い……大っ嫌いッ!!!このファミリアなんて大っ嫌い!!!!!!」

 

モニクとヘンリッタが大声で叫ぶとそのまま部屋を飛び出してしまう。

 

「…えっと、えっと……お前達、どうしよう……」

 

情けないことに俺自身どうしていいか分からなくなった。

助けを求める様に他の仲間に視線を向ける。

するとララが俺の前に出ていつも通りに微笑んで来る。

 

「リーダーさん、ココは(わたくし)達に任せて下さい、フローラ達はココに残ってて」

 

そう言って第8班全員が俺の助け舟に買って出てくる。

 

「……あ、いや、えっと……その……スマン……任せた」

「はい!皆さん、行きましょう!!」

 

ララの言葉を合図に第8班が応接室から出て行く。

俺一人が行くよりもモニクとヘンリッタのことをよく知っている彼女達(第8班)の方がよっぽど効果的だと思う。

決してモニクとヘンリッタに対して気の利いた言葉が思いつかなかったワケじゃ……スイマセン、全く思いつきませんでした。

 

「……デメテル様、俺はココにいて良いのか?もし邪魔だったら出てくよ」

「アーク君、貴方は良いのよ。むしろ貴方がいてくれないと困るわ」

 

デメテル様がフローラ達を見る。

 

「フローラ達、悪いけどこれから私の部屋に来てくれるかしら?」

「……え……でも……」

 

フローラが少し躊躇う仕草を見せて「……はい」と答える。

 

「それじゃ貴女達、後はお願いね」

「はい、デメテル様」

 

そう言い残し、デメテル様はフローラ達と一緒に応接室を出て行く。

そしてこの応接室に俺とデメテル・ファミリア幹部を名乗る数人の女性達が残された。

正直に言ってしまえば早くこの部屋から出たい、その気持ちだけで一杯だ。

 

「さて、アークさんには色々言わなきゃいけないことが沢山あります」

「……は、はぁ」

 

素っ気ない返事を彼女達に返す。

 

「先ずは、昨日結成した冒険団が一旦解散します」

「……ああはい、知っています」

 

また素っ気ない返事をする。

こんなところを彼女達に見られたら怒られるだろうなぁ。

 

「理由はフローラ達から聞いていますか?」

「……ああ、はい。志望者が多すぎて農場の働き手が少なくなってしまったからですよね?」

 

そう言うと幹部の一人が困った顔をする。

 

「はい、まさか志望者が100人を超えるとは夢にも思っていませんでした……」

 

俺は一息ついて目の前にある冒険者志望の書類の束を手に取る。

 

「まぁ言いたいことは良く分かった。でもこんな急に解散宣言するってことは、ファミリア内で近々大きなイベント……と言うか出来事があるんですか?いや、詮索している訳じゃないから別に言いたくなかったら別に言わなくても良いけど……」

 

大体予想は出来るけど何か聞いてしまったらまた前みたいに手伝わされそうだから詮索するつもりはないけどね。

後ろに立っている幹部の一人が口を開く。

 

「確かに大きな出来事……があるにはありますね。まぁそんな大層な物ではないと思いますが……」

「……でも、ファミリアの復興にとって大切なものですよね?」

 

俺の問いかけに幹部の人は少し安心した様に見える笑みを浮かべながら言う。

 

「はい、凄く大切なことです」

「……そうですか、なら良いことじゃないですか」

 

そう言うと幹部の人達が不思議そうな顔をして俺に質問をしてくる。

 

「アークさん、私達が言うのも変だと思いますけど、あの3人に装備品を買うために色々金をかけたみたいですよね?『あんなに金をかけたのに何勝手にパーティから抜けさせようとしてんだ!アイツらは俺の女だ!!』って怒ったり反対しないんですか?」

「……ええ」

 

まぁ、確かに鎧とか指輪とか色々買ったけど。

 

「ああ、まぁ確かにあの子達の為に駆け出しの俺としては安くない買い物をしました。でも俺は貴女達にも、あの子達にも怒ったりもしませんし、反対するつもりもありませんよ…」

「……?」

 

いや、その『何で?』って顔をされても困る。

 

「……うーん、理由は?って聞かれても回答に困ります。あの時はただ、この子達を助けたいって気持ちだけで動いていた……様な気がします……」

 

ヤバい、2週間くらい前の出来事なのに全く覚えていない。

いや、何か言って下さいよ!

 

「随分と曖昧ですね……」

「……こう見えて俺、田舎者ですからね。細かいことなんてイチイチ覚えていませんよ……」

 

応接室全体から暗い雰囲気というか、申し訳ない気持ちみたいな空気が漂い始める。

 

「……そ、それより話を戻しましょう、冒険団が解散するってことは、俺の役割も終わりってコトですかね?」

 

俺の質問に幹部が言わんばかりに答える。

 

「いいえ、明日も引き続き彼女達の指導をお願いします」

「……えっ?」

 

余りにも予想外なことを言われて少し混乱する。

そんな俺の気持ちも知らずに幹部の人たちは口々に開く。

 

「確かに解散する、とは言いました。しかし本日をもって解散、なんて誰も言ってません。折角私達が話し合って決めたことなんですから、こちらとしても何らかの成果がないと困ります。なので昨日の内に冒険者登録を済ませた冒険者志望の方達だけは特別にアークさんがデメテル・ファミリアを離れる日までダンジョンに潜ることを許可します」

「……は、はぁ」

 

つまり今日はもう遅いから除いて後5日間か。

 

「それまでは昨日志望した……今日アーク君が連れて行ったあの子達を冒険者として鍛えて下さい」

 

何かいろいろゴチャゴチャして来たけどつまりこういうことだろ?

 

 

「要は冒険団は一旦解散するけど俺がこのホームに滞在する間、彼女達(7班と8班)の『特別講師』を続けろってことですよね?」

 

「「「はい、その通りです!!!」」」

 

幹部達はにこやかに答える。そして「お願いしますね、特別講師さん」っと付け足して言われる。

 

「分かりました、では失礼し」

「ちょっと待って下さい!」

「……今度は一体何ですか?」

 

何か話が終わりそうな感じがしたので席を立つと幹部の人が俺に白紙の記入欄が入った書類の束を渡してくる。

 

「……コレは?」

「所謂報告書、ってヤツです」

「……はぁ」

 

一応文字の読み書きは出来る。じゃないと冒険者登録なんて出来ないからな。

でもまさか報告書を作れなんて言われる日が来るとは思わなかった。

 

「……えっと……」

「難しく書けとは言いません、あくまで参考程度ですから。彼女達について冒険者としてどう思うのかをアークさんなりで良いので書いて下さい。提出は私達の誰でも良いですよ」

「……はぁ、思ったこと……ですか……」

 

彼女から「こういうのは苦手なんだけど…」っとブツブツ文句を言いながら書類の束を受け取り、パックパックに綺麗に入れる。

そして今度こそ応接室から退出する。

 

 

 

「あ、リーダー様」

「リーダーさん、お疲れ様です」

「ああ、ララとフローラか……」

 

俺が寝泊まりしている部屋の前でララとフローラが待っていた。

 

「……フローラ、デメテル様からの用事はすんだのか?」

「はい、リーダーさんがファミリアにいる期間はダンジョンに潜っていいって話だけでしたから直ぐに済みました」

「……そうか。ララ、あの二人は?」

 

俺の問いかけにララは少し黙り、そして笑顔で口を開く。

 

「はい、何の問題ありませんよ。いつも通りの元気になりました!」

「……な、なら良いんだけど……」

 

何か不安になりそうな間があったんだけどまぁいいや、用件を伝えないとだな。

 

「デメテル様から聞いたんだったら分かっていると思うけど、もう少しだけ俺に付き合って欲しい」

「…はい、短い間ですがリーダーさんに付いて行きます…」

「…最後まで…最後までリーダー様のお供させて頂きます…」

 

いや、そんな大袈裟に言わなくても。

 

「…ま、まぁ明日も今日と同じ時間と場所に集合だって、皆に伝えておいてくれないか?」

「「はい!」」

「……良し、それだけ伝えたら今日はもう寝ろ」

 

「リーダー様(さん)、お休みなさいませ…」っとララとフローラが一言告げて階段を降りて行く。

俺も2人の姿見えなくなるのを確認してから自室に入ることにした。

 

 

 

 

「……はぁ……」

 

 

 

「…単独(ソロ)……か……」

 

ポツリと呟く。デメテル様のことが本当だったら、あの3人とも冒険者として少しの間お別れだ。

冗談抜きであの子達には色々と助けられたからな。

 

「……ソロか……ソロか……うーむ」

 

パーティが当たり前になった今の俺に、ソロに戻れるだろうか?

そんな不安を抱えながら俺は魔石灯を消しベッドの上で横になる。

 

「……はぁ、ソロのことよりも今は彼女達のことに集中しないと……後5日間……頑張ろう……」




大まかに考えたシナリオ通りとはいえ、少し急展開過ぎるような気がしてきました。
もう少し早く更新するつもりだったのにどうしてこうなった……
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