ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う   作:ウリクス

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神の恩恵 その2
個人の才能の差はあれど、団員1000人を従えている主神だろうと、団員たった一人の零細ファミリアだろうと、授かる恩恵に優劣は無い。


第26始めました(アークボルトの報告書編)

「……えっと……えっと…」

 

デメテル・ファミリアにある顔なじみの個室、その部屋に備え付けられている椅子に座り、羽ペンの先にインクを浸し軽く握る。

 

 

 

1日目の報告書

この5日間の方針が決まった、五日という限られた時間では出来ることは殆どありません。だから俺は彼女達には『出来る限りダンジョンに慣れて貰う』ことにしました。1日から4日目まではメンバー全員でダンジョンに潜ってモンスターと戦って貰うことに、最終日、つまり5日目には俺とエミリアとクラリスとセリアを除いてダンジョンに潜って貰うことにしました。

そして今日のダンジョンは――――

 

 

 

「右の壁からコボルトが一体、迎撃しろッ!」

「「はい、リーダーッ!!」」

 

アミュレットが俺の首元でモンスターの接近を告げる様に振動する。

俺の言葉に一番に反応したのは双子の小人族(パゥウム)の姉妹だ。

 

「「やああああああああああああああッ!!」」

 

槍を前に構え、壁から出てくるコボルトに目掛けて突進し槍を突き立てる。

一本は頭部に、もう一本は腹部に深々と刺さりコボルトは魔石を残して消えた。

 

「「やったあああああ!!昨日に引き続き絶好調ッ!!」」

 

互いに手を合わし討伐した喜びを姉妹で分かち合っている。

そして俺の所へ来て「見てた!ねぇリーダーさん、見てた!?」と目を輝かせて俺を見て来る。

その姿は正に小さな子供そのものだった。

 

「……あ、ああ。双子の姉妹だけあって今のは良い動きだったよ」

「「うんうん!やっぱり私達冒険者としてもイケてるッ!!」」

 

ダンジョン二階層の半ばでモンスターと遭遇したが特にコレと言った問題も起きていない。

昨日の大群のモンスター襲来に反省したのか、一人で突っ走らずに俺の言うことを素直に聞くようになった。

 

「後ろは俺とエミリアとセリアとクラリスが守るッ!だからお前達は前方から来るモンスターだけに集中しとけッ!」

 

俺の声に「はーいッ!!!」と威勢の良い返事が返ってくる。

 

「……」

「……」

 

ただし、一部のメンバーを除く。

 

「……はぁ、どうしよう」

 

俺はその一部、モニクとヘンリッタの元気の無い後姿を見ながら溜息を漏らす。

昨日の一件を気にしているのか、昨日はこれでもかと喋り続けていたが今日は一言も喋らずただ俯いたまま皆の後に付いて行っているだけだった。

 

「何々?モニクとヘンリッタのこと?」

 

何かを察したのか、エミリアが俺の顔を覗き込みながら話しかけてくる。

 

「……ああ、そうだ。すっかり塞ぎ込んでしまっているな」

 

ココでリーダーらしく、何か気の利いたことを一言でも言えれば良いんだけど、情けないことに何も思いつかない。

 

「うーん、確かに落ち込んでるね。でも大丈夫だよ!多分デメテル様は全く気にしてないと思うからっ!だってデメテル様ってそんな細かいこと一々気にする()じゃないし、それに―――」

 

そう言って俺の前に出て来て振り向きいつもの明るい笑顔を向けて来る。

 

「ボク達、デメテル様のことが大好きだからっ!直ぐにいつものモニクとヘンリッタに戻ると思うよっ!!」

 

そう言うとエミリアは「ちょっと、前に出過ぎ!もう少し速度を落として!」と仲間に呼びかけながら前線へと駆けて行く。

 

「ま、コレばっかりはあの娘達で何とかするしかないわね。ホラ、また昨日みたいに置いて行かれるわよ!」

「……あ、ああ。分かったよ…」

 

そんな様子をボーっと見ているとセリアが俺の手をダンジョンの奥へと引っ張って行く。

 

 

その後は特に何事も無く第五階層に続く階段の前まで到着し引き返すことにした。

ダンジョンから脱出する際、モンスターに何回か襲われたが全部返り討ちにして誰も怪我をしなかった。

モニクとヘンリッタのことが少し気がかりですが、この調子でダンジョン攻略をしていきたいと思います。

 

 

 

―――以上が今日の報告です。

 

 

「……コレで良いのかな?」

 

ペンを置き、魔石灯の明かりを消してベッドへと飛び込む。

そして自分の書いた報告書に不安を抱きながら俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

2日目の報告書

前衛ばかりに目を向けてしまいがちだけど、このメンバーの弓兵はセリアを除いて確か三人いた筈です。

今日は弓兵に目を向けることにしました。

 

 

 

「―――撃てッ!!」

 

フローラの合図で弓兵のドロシー、エマ、ミレイの三人の手から一斉に木の矢を放ち、ゴブリンに目掛けて飛んでいく。

三本中二本がゴブリンの頭部、胴体の二か所に突き刺さり魔石を残して消えていった。

 

「…う~ん、またミレイか…」

 

このパーティの弓兵はエマ、ドロシー、ミレイの三人だ。

エマとドロシーは安定してるけど、ミレイの成果があまり良くない。

ハッキリ言って殆ど当たっていないんだ。

 

「……ミレイ、上手くいかないのか?」

 

何かアドバイスを―――と思い後ろで待機していた俺はミレイに近付き声をかける。

俺の言葉に彼女は「ひゃッ!?」と、両肩を瞬時に上下させて驚く仕草を見せる。

 

「ご、ごめんなさい…」

 

そう言って俺から距離を取る様に後ずさりする。どうやら避けられているみたいだ。

エミリア曰く「ミレイは今まで父親以外の男の人と接したことが無い、つまり免疫が無いだけだよ!」って言っていたけど。

 

「ちゃんと狙っているけど……私、弓向いていないのかな……?」

 

ある程度距離を取った所から俺に悩みを言い、手に持っていた弓を見つめる。

……!あ、そうだ。

 

「……じゃあ、こうしよう。俺の剣を貸すよ、剣を使ってから弓のことはもう少し考えてみないか?」

 

俺は腰に装着してある剣帯と鞘を外し、ミレイに差し出す。

剣を差し出す俺の姿にミレイは「えっ!?」と驚いた様子で見て来る。

 

「でも、その間リーダーはどうやって戦―――」

 

ミレイが言いかけた時、俺の後ろで何かが割れる音が聞こえる。

それと同時にアミュレットも警告を発している、言ってしまえばモンスター発生だな。

 

「大丈夫、コボルト一体くらいならコレで何とかなる」

 

剣をミレイに渡し、俺は腰に吊る下げていたツルハシの柄を握り駆け出す。

そして今にも壁から出そうなコボルト一体の脳天目掛けて何の躊躇いも無く先の尖った所で全力で突き刺す。

壁から生まれてくる前に討伐するのは少し卑怯だと思うのは俺だけだろうか?

 

「結構いけるな……コレ(ツルハシ)。さ、ミレイも試してみなよ?」

「…は、はいッ!!」

 

威勢の良い返事をしてミレイは弓を背負い剣帯を取り付け仲間の元へと駆けて行った。

剣帯を付けたミレイの姿に仲間達は少し驚いた様子を見せる。

 

「ミレイ、どうしたのその剣?」

「あ、えっと……リーダーから借りたのよ。私、弓向いてないかもしれないって言ったら剣を使って考えてみろってリーダーが……」

 

そう言って困った様子目で俺を見て来る。いや、俺に振るなって。

 

「……まぁ、色々やってみろ。考えるのはそれからでも遅くはッ!」

 

そう言っているとアミュレットが警告を発する。

前方の奥からゴブリンが一体、ニヤけた顔でこちらに駆け足で接近して来る。

 

「ゴブリン一体、前方から接近。……ミレイ、一人で戦ってみろ。危なくなったらいつでも助ける体制には入っておくからさ」

「えっ!?えっと…あ、は…はいッ!!」

 

心の準備が出来ていなかったのか、少し覚束ない足取りでゴブリンの前に立ち、鞘から剣を引き構える。

 

 

 

 

「―――ハァ…ハァ…ハァ……」

 

ミレイがゴブリンと対峙して5分くらい経っただろうか、すれ違いざまにミレイがゴブリンの首に横薙ぎが入ったことが決め手となり無事勝利を掴むことに成功した。

 

「ミレイ、お疲れ様ッ!」

 

仲間達が疲労困憊で地面に座り込んでいる彼女に集まり労いの言葉をかける。

 

「……ハァ…少し……ハァ、手間、どっちゃったけど……私、勝ったよ……ハァ……」

 

良く言えば堅実、悪く言えば慎重になり過ぎる―――と駆け出しの素人冒険者の俺が頭の中で感想を述べる。

近づき過ぎず相手の動きをよく見て端に追い込まれないように動く、のは良いんだけど周りのことばかりに気を取られて肝心の目の前のゴブリンから時々視界が外れている時がある。

 

「……ミレイの体力が回復したらダンジョン探索を続けよう、今は一秒でも長くダンジョンに潜り、一体でも多くモンスターと戦う必要がある。だけど無茶は絶対にしない、冒険者は冒険をしてはいけない。コレが大切だ」

 

俺の言葉に彼女達は「はーい!」と素直で元気な返事が返ってくる。

―――正直不安になりながら彼女達を率いて来たけど、これなら何とか後4日間何とかなりそうだ、と俺は心の中で安堵する。

 

 

 

 

 

―――その後、ダンジョンの奥へと進み第5階層へと続く階段の前まで到達して少し早めだと思いましたが彼女達の安全を最優先したいと思い、正午過ぎくらいにダンジョンを引き上げることにしました。

ミレイに関してですが、弓よりも剣を使いたいと言って来たので近々暇が出来たら彼女の武器探しを手伝うつもりです。

以上が2日目の報告です。

 

「―――良し出来た!さぁ提出しに行こう」

 

報告書を手に俺は個室から出て事務所に向かうことにした。

 

 

 

 

「……ん?」

 

ペラペラと一枚の紙を両手の人差し指と親指で摘み、前後に揺らしながら歩いて行く。

ファミリア内の事務所に向かう途中、応接室を通り過ぎようとしたら話し声が聞こえた。

多分デメテル・ファミリアに訪ねてきたお客さんだろう、そう思ってそのまま通り過ぎようとしたら、

 

「はい、コレで貴女達も立派なレディー(ファミリア)よ」

 

と、どこかで聞いたことのある()の声と

 

「ありがとうございます!デメテル様ッ!!」

「コレが……神の恩恵(ファルナ)

「やっとお兄さんに恩返しが出来るですぅ!」

 

どこかで聞いたことのあるチビ達の声が聞こえた。

 

「……」

 

あのチビ達、デメテル様と仲良くなったんだな。

挨拶をしようと思ったけど、今入っても邪魔になるだけだと思いこの場から立ち去―――

 

「あら、アーク君。入って来ても良いのよ?」

 

―――バレたッ!?何で俺が部屋の外にいるのが分かったんだ?……まぁいいや、入れって言われたんだ。特に何か悪いことをする訳じゃないし素直に言うことを聞こう。

 

「……お、お邪魔します……」

「あら、おかえりなさい。やっぱりアーク君だったわね」

 

何で分かったんだ?やっぱり神様っていうのは特別な力を持っているんだな。

 

「……デメテル様、何で部屋の外に俺がいるって分かったんですか?」

「あら、凄く簡単な理由よ。だって貴方―――」 

「冒険者様、走った時の足音が凄く大きい(・・・・・・・・・・・・・・)から直ぐに分かるよ」

 

デメテル様の代わりに説明したい!と言わんばかりにチビの一人が俺の前に出る。

ってか俺の足音ってそんなに大きいのか!?……な、直さないとだな。

 

「冒険者さん、こんにちは!あの……」

 

桃色の髪の小さい少女が俺に話しかけてくる。えっと、こっちの茶髪の犬人(シアンスロープ)がルゥって名前なのは分かるけど、この子とその隣にいる黒髪のショートカットの子の名前が全く分からない。

 

「えっ……うん……どうしたんだい?」

 

ヤバい、全然名前が出て来ない。

 

「その前に、この子達は今日から私の眷属(ファミリア)になった子達よ。ちゃんと自己紹介をしなきゃね」

 

デメテル様が俺に助け舟を出してくれたのか、チビ達に向かって自己紹介をするように促す。

 

「そ、そうでした!僕達、自己紹介もせずに話を進めていました。……ごめんなさい」

 

そう言って黒髪の少女が俺の前に立って頭を下げてくる。

 

「僕の名前はリア、リア(Lia)レトリー(Letley)。孤児院の年長組で10歳です」

「今度は私!パティ、パティ(Paty)ミノーグ(Minogue)。年長者組でリアと同じく10歳です!」

「ルゥ!ルゥ(Lou)マーチ(March)!!9歳ですぅ!」

 

リアと名乗った少女を筆頭に次々と名乗り出てくる。

待ってくれって、俺あんまり人の名前を覚えるのが得意じゃないんだ。

この前だってセリアに対してエミリアって呼んで怒られて、エミリアに対してセリアって呼んで笑われたんだよ……。

 

「お兄さん、あの……」

 

ルゥが改まった表情で俺を見て来る。

 

「……ん?」

「あの子を……ノエルを助けてくれて本当にありがとうございましたっ!!」

 

そう言うとチビ三人が俺に向かって頭を下げる。

 

「マリアさんは何も言いませんでしたが…孤児院の子達が言っていました。『黒い鎧を着て茶色いバンダナを巻いた冒険者の男の人がノエルを助けてくれた』って」

「それを聞いた時、あの冒険者のお兄さんだって、ルゥ確信したんですぅ!」

「だから私達、是非冒険者さんに恩を返したくて、デメテル様にお願いしてこうやって冒険者さんと同じファミリアに入ったんですよ!!」

 

……えっ?

 

「その……確かに今はココ(デメテル・ファミリア)に居候しているけど俺はこのファミリアの団員じゃないよ……」

 

そう言うとチビ達の表情は固まり「……えっ?」と小さく呟き、そして次の瞬間―――

 

「えええええええええええええええええええええええッ!!!」

 

チビ達の叫び声がファミリア全体に広がっていった。




やっと大きな行事が終わって少しだけ休みが貰えました。
このままどんどん更新していきたい……
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