ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う   作:ウリクス

29 / 56
アテナ・ファミリア
団員数1名
アークボルト・ルティエンス

ヘファイストス・ファミリアのホームの中を拠点としている零細ファミリア。
主神アテナが度々勧誘活動を行っているが、成果はアーク以外全くない。

エンブレムは『両足で槍を掴んだ梟』


第28話 冒険者始めました(豊穣の祝い編)

「……はぁ」

 

懐中時計を取り出しチラリと現在の時刻を確認する。

時刻は現在11時20分、ダンジョンの入口で確認した時刻は丁度10時、つまりダンジョンに潜り始めて丁度1時間20分が経過した。

時計をバックパックに収め、今度は先頭を歩いている彼女達(・・・)を見ながら3度目のため息を吐く。

 

「ふふん!アタシがいっちばーん!!」

「いいや、私が一番乗りだった!」

「「いいや!私達よ!」」

 

呑気なことに、モニクとヘンリッタとアンナとメアリーの4人が誰が一番最初に5階層に続く階段に辿り着いたかで喧嘩を始める。

 

「コラコラ、目的地に到達する時は全員でって言ったのモニクでしょ!」

「そうですよ。今回は(わたくし)達全員が力を合わせたからこその結果じゃないですか」

 

喧嘩をする4人に対してミレイとララが諭す。

俺の前を歩いている彼女達10人がご機嫌で歩いている様を見ながら4度目の溜息を漏らす。

 

「まぁまぁリーダー、そんなに落ち込まないでよ!」

「……そうだよ、フローラ達は全員リーダーに良いところを見せたかっただけみたいですし……」

「諦めなさい。悔しいけれど今回はフローラ達の方が一枚上手だったわ」

「……いや、分かってる。分かっているけど―――」

 

こんな結果になるなんて数時間前の俺は想像していなかったんだろうな―――

 

 

 

 

 

 

 

「……テストってワケじゃないけど、今日は予定通り君達10人でダンジョンに潜って貰う」

「はーい!!!!!!!!!!」

 

早朝、デメテル・ファミリアのホームの前で点呼を取っていた。

そして彼女達から良い返事が返って来たところで今日行われるテストの内容を説明を始めた。

 

1 俺とクラリスとセリアとエミリアの4人で先にダンジョンに潜り、いつもの5階層に続く階段の前で待っているから全員揃って来ること。

2 制限時間は午後13時まで

3 危険だと感じたり怪我をした場合は遠慮なく引き返して良い

4 今回のテストで失敗しても咎めたり、ペナルティを課すことは一切ない

5 頼むから無茶と怪我だけはしないでくれ

 

「……じゃ、俺達はもう先に行くから、君達は30分後に出発してくれ。それまでは準備するなり休憩するなり好きにしてくれ」

「はーい!!!!!!!!!!」

 

またもや彼女達から良い返事を貰ったところで、俺達はダンジョンへと向かって行った。

 

何で先に俺達がダンジョンに潜らないといけないんだ。普通は逆だろ?

この試験内容を見たらそう言う人もいるかもしれないが一つ待って欲しい。

彼女達、ダンジョンに潜るのが楽しいのか知らないけど、俺が行くなと言っているのに『5階層に行きたい』って言い始めたんだよ。

5階層以降は俺にだって未知の領域だっていうのにコイツ等は……。

フローラとミレイとララがいるからその点は心配はしていないんだけど、それでも万が一と言うこともあって5階層に進む前に俺達が彼女達を止める為に先にダンジョンに潜るというワケだ。

 

「……」

 

俺の頭の中では制限時間ギリギリって所で来るのかと思いきや―――

 

「あっ!リーダー来たよ!!」

「「リーダーおっそーい!」」

 

……何で俺達よりも早く来てんだ?

 

「ふふん!ソレはアタシ達のすっごい才能で「リーダー様、実はこの日の為に私達は作戦を立てました。その作戦の内容は―――」」

 

モニクが自慢しようとしたところをフローラが遮り、作戦を説明してくれた。

 

「先ず、リーダーがダンジョンに連れて行ってくれた1日目~4日目までの間に1階層から4階層までの地図を作製しました」

 

フローラはバックパックから4枚の紙を取り出し俺に手渡す。

紙には行き止まりやT字路十字路までこと細かく描かれていた。

 

「……まさかコレ、フローラが描いたのか?」

「はい、3日目で描き終えました」

 

マジかよ、俺の見てない所でそんなことをしていたなんて。

 

「その地図を使って、最短距離の割り出して私の魔法で身体能力を上げてそのまま目的地まで全力疾走…と言う訳なんです。私達がダンジョンに潜る前に何人か冒険者がいてその人達が殆どモンスターを倒してしまったらしくて、その…お恥ずかしい限りなんですが、私達殆ど戦闘をせずに此処まで来ました。……その、横着して申し訳ありません」

 

そう言って申し訳なさそうな顔をして頭を下げて来る。

つまり、俺達が行き止まりやらでちんたらしている所を彼女達は俺達を追い抜いてしまったってことだな。

 

「……いやいや、別に怒っている訳じゃないんだ。消耗を抑えてダンジョンを探索するのも冒険者には必要だ、むしろ良くやったよ。上出来だよ」

 

元はと言えば、彼女達にダンジョンに潜って貰って少しでも経験を積んで貰うのが今回の目標だったしな。

考えてダンジョンに潜る前に色々考えてから行動するのも、立派な経験の一つだ。

う~ん、でも『上出来だよ』は少し上から目線な発言かな?やっちまったか…。

 

「あ、ありがとうございます!大変恐縮です!!」

 

そう言ってフローラ目を輝かせてもう一度頭を下げる。

 

「……まぁ、取り敢えずテストはこれにて終了だ。直ぐにダンジョンから脱出するぞ」

「はーい!!!!!!!!!!!!!」

 

俺達は少し早い―――いや、大分早い時間にダンジョンから脱出することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「外だーーーー!!!」」」

「……お前達、周りの迷惑になるから止めなさい」

 

バベルの前の広場で両手を広げてエミリアとモニクとヘンリッタが大きく叫ぶ。

時刻は丁度12時、あんまりお腹空いてないな。

 

「リーダー様、これからどうします?」

「……ああ、解散で良いだろう。各自オラリオを歩き回るなりホームに帰るなり好きにしてくれ」

 

俺も久々…ってワケじゃないけどアテナ様の所に行こうと思う。

ステイタス更新して貰わないとな。

ステイタスが少しでも伸びてくれると嬉しんだけど、もう新しいスキルはいらないからな!ステイタスを寄越せステイタスを!!

 

「リーダー!リーダーは何処に行くの?」

「……ああ、アテナ様の所に行ってステイタス更新でもしに行こうと思うんだ。ついでにヘファイストス様にも一声かけていこう」

 

そう言うとエミリアは「じゃあ、じゃあ!僕もリーダーと一緒にアテナ様とヘファイストス様の所へ行って良い?」と聞いて来る。

 

「……リーダー、私も一緒に行って良いでしょうか?……」

「ちょっと!私も連れて行きなさいよ!!」

 

クラリスとセリアもエミリアに便乗する。

いや、別にお前達はヘファイストス様から俺がステイタス更新する間ならいつでも来て良いよって言ってたじゃないか。

 

「リーダー様、アテナ様って言うのは」

「ああ、俺の主神だ。俺はアテナ・ファミリアの唯一の団員だよ」

 

カッコよく言ってるけど、要は団員が俺一人の零細ファミリアってことだからな。

 

「…あ、あの…リーダー様、私も御一緒に行っても良いでしょうか!?」

「……別に構わないとは思うけど」

 

フローラなら特に問題とか起こしそうにないしな。

…ん、待てよ?

ヤバい、イヤな予感がする。

 

「リーダー君の主神!?アタシも行きたい!」

「ハイハーイ!アタシも会いたい!」

「「私達も連れて行ってよ!!」」

(わたくし)も是非とも…」

「ま、まぁヘンリッタが行くなら私も…」

「……うふふ……ワタシも……行きたいです……」

「ま、まぁ色々と興味あるわね」

「リーダーさんの主神さんかぁ、すっごく楽しみ!」

 

……嗚呼、やっぱりこうなるか。

 

「……はぁ、別に良いよ。今からヘファイストス様のホームに行くから行きたい奴は付いて来てくれ」

「はーい!!!!!!!!!!!!!」

 

しかしまぁ、ガラス越しに飾られてある商品を眺めるだけなのに一体何が楽しいのか理解が出来ない。

ましてや男にそんな奴が―――

 

「……!」

 

―――いた。

彼女達を引き連れてヘファイストス・ファミリアのホームの前に来た時、店のガラス越しに並べられている武器を物欲しそうな表情で顔をベッタリと張り付けている少年がいた。

しかもあの白い髪と後姿、確証は無いけど前にダンジョンでゴブリンと戦っていた少年じゃないか?

 

「……」

 

声をかけようかと少し悩んだが、結局俺は少年に声をかけずにヘファイストス様のホームへと帰還した。

 

 

 

 

 

 

「……ただいま、ヘファイストス様」

「あら、アーク君。おかえりなさい」

 

受付嬢に通されてホームの奥へと進むとヘファイストス様に遭遇した。

 

「話に聞いてた通り、大人数で行動しているのわね…」

「……まぁ、色々と任されている訳なんですよ―――ん?ヘファイストス様、話に聞いていた通りって?」

「ええ、この前デメテルに会ってね。貴方の話を少し聞いたのよ」

 

ああ、デメテル様に会ったのか。

それなら納得だ。

 

「……ヘファイストス様、今から俺はアテナ様の所に行ってステイタス更新をする予定なんですが、その間この前みたいに彼女達に色々見せてあげて欲しいんです」

「ええ、勿論良いわよ。色々と新作が揃って来たから、子供達(眷属)の作品を見て貰うのも良い経験かもね」

「……ありがとうございます」

 

おお!流石ヘファイストス様。

世界有数の鍛冶屋の主神だけあって懐が深い!

 

「ただちょっと問題があってね」

「……問題、とは?」

 

ヘファイストス様は少し表情を曇らせた後「な、何でも無いの!アーク君には全く関係の無い話だから気にしないで!」と言ってフローラ達に手招きする。

 

「さ、行きましょう。貴方達はデメテルのファミリアにいるけど、冒険者志望よね。だったら今の内に色々見て良くと良いわ」

「……あ、ちょっと待って下さい。その前に彼女達、一応俺の主神(アテナ様)に会いに来たのが目的なので」

「あら、それなら何の問題(・・・・)もないわよ」

「……?は、はぁそうですか。ま、まぁお前達…ヘファイストス様とファミリアの職人達に迷惑かけるなよ?」

 

するとは思わないけど一応彼女達に注意する。

 

「それじゃ行きましょう。先ずは向こうの陳列窓(ショーウインドウ)に飾られてある―――」

 

そう言って彼女達を引き連れて廊下の奥の曲がり角で消えて行った。

 

「……取りあえず、アテナ様の所に行こう」

 

多分、いつもの部屋でだらしなく過ごしていると思うけど。

 

 

 

 

 

「……アテナ様」

「う、うわあああッ!!ヘファイストス!今から準備しようと思っていたのよっ、今から!!…って何だ、アークじゃない」

 

俺の予想通り、今日もソファーに寝転がってダラダラゴロゴロしていますねアテナ様(駄女神)

 

「……ただいま」

「おかえりなさい」

「……ステイタス更新お願いします」

「ああ、ハイハイ。ちょっと待ってなさい…よいしょ!さっさとそこのベッドに背中向けて寝転がりなさい!」

「……ソレをうつ伏せと言うんですよ、アテナ様」

「う、うっさいわね!!」

 

鎧を脱ぎ、小剣と投げ斧とツルハシ(相棒達)を部屋の隅に置いてからベッドに寝転がる。

彼女が神血(イコル)を垂らし、俺の背中の神聖文字(ヒエログリフ)を弄っている間に段々と、段々と睡魔が襲って来て―――

 

「アーク、そう言えば貴方、まだニケに会ったことがなかったわね」

「……ああ、そう言えばそうでしたね。彼女は今どこに?」

「買い出し中よ」

「……そうですか」

「すっごく可愛いんだから!苛めたら承知しないわよ!!」

「……しませんよ」

「それから、それからニケってば凄く小さくて泣き虫でこの前なんか―――」

 

 

 

 

「……」

「―――それでね!それで…って、アーク?どうしたのよ?」

「……」

 

先ほどから全く返事が返ってこないアークにアテナは怪訝な顔をする。

 

「……アーク、一体どうしたのよ?そんな映画や漫画の終盤で主人公が相棒と話していたらいつの間にか死んでいたって展開とかベタすぎて笑えないわよ!!」

「……Zzz」

「寝てるだけかい!」

 

 

 

 

 

 

ステイタス更新

アークボルト・ルティエンス

Lv1

アテナ・ファミリア

 

[力] :I56 →I62

[耐久]:I34 →I40

[器用]:I61 →I67

[敏捷]:I46 →I52

[魔力]:I18 →I18

[運] :H142 →H192

 

「相変わらず運だけは伸びるわねコイツ。あ!またスキルが発現してる。それも3つも」

 

追加スキル

 

鉱霊交信[ノッカーズ・サポート]

・一定の範囲内に鉱脈を発見した場合に発動。レアリティの高い鉱石が埋まっている可能性のある(・・・・・・)鉱脈に対して、ノック音でスキル保持者に知らせる。

任意発動(アクティブトリガー)

 

 

「また変なスキルが身に付いちゃってこの子は。それで、後の2つは……ん?」

 

 

 

 

武器装庫[ランダム・ウェポン]

・世界に存在している武器(魔剣込みで)をどれか一つランダムで選択し復元して発現する。そしてあらゆる装備条件を無視してスキル保持者に装備する。

・魔力は消費しないがクールタイム(待ち時間)

任意発動(アクティブトリガー)

 

 

 

武装拒絶[サクリファイス・ウェポン]

・スキル[武器装庫]を所持している場合同時に発現する。

・また、スキル[武器装庫]が消失した場合、このスキルも自動的に消失する。

・このスキルを所持している限り、スキル保持者は永久的に[武器倉庫]で発現した武器以外を装備することが出来ない(装備した場合、強制的に解除される)。

 

 

 

 

「可笑しいわね、この[武器装庫]ってスキルと[武装拒絶]ってスキル、何で赤文字で書かれているのかしら?」

 

アテナは少しアークの背中に赤文字で書かれている2つのスキルを見つめていたが、

 

「まぁ良いわ、そんなことよりも今はこっちの方が大切よ。ドレスは何処に行ったかしら?確か向こうの部屋に―――」

 

眠っているアークを尻目に、アテナはそそくさと部屋から出て行ってしまった。

 

「……Zzzz」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――コレが始まりだった。

このスキル、[武器装庫]は後々オラリオでレアスキルと呼ばれるようになった。

それと同時に、俺はこのスキルの所為で普通の冒険者としていられなくなった。

今となっては発現した以上どうしようも無いのだが、俺はこのスキルが―――いや、この呪い(・・)が心の底から憎い――――




アークボルト・ルティエンス
Lv1
アテナ・ファミリア

[力] :I62
[耐久]:I40
[器用]:I67
[敏捷]:I52
[魔力]:I18
[運] :H192

運命体現 [ラック・アルファ]
・基本アビリティに[運]を追加する。
・[魔力][運]以外の基本アビリティの熟練度が上がりにくくなる

強欲者印[ザ・グリード]
・敵を討伐した際のドロップアイテムを落とす確率が上昇する
[運]の値とモンスターの種類によって確率が一定まで変動する
・モンスターを討伐した際入手できる魔石のランク(純度)が一段階上昇する
・ダンジョン内で採掘・採取を試みた際、レアリティが高い素材を入手できる確率が上昇する
[運]により確率が一定まで変動する

救済包囲[ムービング・セーフティ]
・このスキルの保持者含め近くにいる人物は、精神力が回復し傷を癒す
スキル保持者の[魔力]依存
・ただし、スキル保持者の[魔力]がどれだけ高くても回復速度と量には上限が存在する

四肢斬奪[エネミー・ライフアブソーブ]
・モンスターの一部を切断した際に発動。切断した一部が一定の確率でドロップアイテムとして残る
・[運]の値によって変動する。



鉱霊交信[ノッカーズ・サポート]
・一定の範囲内に鉱脈を発見した場合に発動。レアリティの高い鉱石が埋まっている可能性のある(・・・・・・)鉱脈に対して、ノック音でスキル保持者に知らせる。
任意発動(アクティブトリガー)


武器装庫[ランダム・ウェポン]
・世界に存在している武器(魔剣込みで)をどれか一つランダムで選択し復元して発現する。そしてあらゆる装備条件を無視してスキル保持者に装備する。
・魔力は消費しないがクールタイム(待ち時間)
任意発動(アクティブトリガー)


武装拒絶[サクリファイス・ウェポン]
・スキル[武器装庫]を所持している場合同時に発現する。
・また、スキル[武器装庫]が消失した場合、このスキルも自動的に消失する。
・このスキル所持している限り、スキル保持者は永久的に[武器倉庫]で発現した武器以外を装備することが出来ない(装備した場合、強制的に解除される)。



最後に投稿したの二か月前かぁ。
もう二か月経ったのか……早いモノだなぁ。
本当スイマセン。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。