ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う 作:ウリクス
主に野菜と果物栽培して販売している大手の商業ファミリア
彼女達の主神、デメテル・ファミリアは大らかな性格で有名で、女性限定と言うワケではないが、入団する団員は女性が殆どである。
女性目当てに近づく男性と男神がいるとかいないとか。
エンブレムは「稲の束と質素な杖」
「……では、よろしくお願いします」
「は、はい!分かりました」
夜が明け、陽が差し込むまで起きていたのは俺一人だった。
ソファーで横たわる彼女達に毛布を一枚かけて、空になった皿とジョッキを食堂に持って行き、こんな朝早くから食堂で朝食の準備をしている彼女達に一言頼んでから俺は個室へと向かった。
後ろから「……結局、彼は食堂で一度も食事をしてくれなかったわ」と残念そうな声で話しているのが聞こえた。
俺は心の中で、なんかゴメン―――と申し訳ない気持ちを抱きながら食堂から出て行った。
「……上手く入らないな畜生ッ!!」
そして早朝、会議室から戻った俺は思った以上に多い自分の荷物をまとめる作業に取り掛かっていた。
思った以上に荷物が鞄に入らず、最終的には荷物を体重をかけて全力で鞄に押し込むと言う力技で決着がついた。
荷物をまとめた後、机の上に置かれていた最後の1枚の報告書とペンを手に取り、大きな文字で『お世話になりました』と書いてから鞄を背負う。
「……良し、行こう」
眠たいと言えば眠たいけど、そうじゃないと言えばそうじゃない。
そんな曖昧な状態でこの部屋を出て、階段を降りて行った。
「……」
窓から差すオレンジ色の心地良い朝陽を浴びながら、誰もいない廊下を一人歩き続ける。
期待している訳じゃないけど、結局知り合いに誰一人会うことなく、デメテル・ファミリアのホームの外へと出た。
「おう、兄ちゃん。今日は一人かい?いつもみたいにカワイ子ちゃん達を連れてダンジョンに潜らないのかい?」
「……いや、まぁ……そうですね。
朝からテンションの高い門番の挨拶を適当に回避しながら横をすり抜け、門の横についている小さな扉からオラリオに入る。
オラリオに入るとチラホラ人が歩いているのが見える。
でも、あと一時間もすればこの通りも何時もの様に活気に満ちるだろう。
「……」
今更、と言うか凄くどうでも良い話だけど俺はオラリオの活気が好きだ。
でもこんな静かなオラリオも割と悪くないな―――と、どうでも良い感想を並べながら俺は軽い足取りでヘファイストス・ファミリアへと向かった。
「……ふぅ、ただいま」
ヘファイストス・ファミリアのホームの前に戻って来た。
「あら、おかえりなさいアーク君」
ホームの前には普段通りの格好をしたヘファイストス様がこんな朝っぱらから店の前の陳列窓に両腕を組みながら眺めていた。
窓の内側には如何にも強そうな見た目の武器が壁に立てかけられており、その中でも窓の一番前に置かれている
しかし、そんな上等な武器の前にも関わらず、彼女の表情はどこか浮かない様子だ。
「……ただいま、ヘファイストス様。随分と朝が早いんですね」
「えっ!?え、ええ。貴方が来るのを待っていたのよ」
――――明らかに誤魔化したな。
何かあったんですか?と聞こうと思ったが、誤魔化すってことはあまり知られたく無いモノなんだなと思い、喉から出かけた言葉を引っ込めることにした。
「待たせてしまってごめんなさいね。直ぐに案内するわ」
ヘファイストス様の後に付いて行く途中、彼女から色々聞かれた。
「アーク君、随分と来るのが早かったけど、結構早起き?」
「……いえいえ、俺寝てないんです。みんなグッスリと寝てましたけど。ですので荷物まとめてさっさと一人で勝手に出て行きました」
「えっ!?じゃあ見送りとかはしてないの」
「……しませんよそんな事、俺のガラじゃないですよ。こう…何て言うか、図々しい感じがしません?『俺がホームから出て行くぞ!見送りしろー』って感じがしてですね……何も言わずに立ち去る方が良いと思いまして……」
そんな感じの会話を歩きながら続けた。
途中ファミリアの団員と思わしき人達にチラチラ見られたのが少し気になったけど、どうやら着いたみたいだ。
「此処が今日からアーク君が使う部屋よ。好きなように使って頂戴ね」
「……あ、ありがとうございます。今日からお世話になります」
それから彼女は「それじゃ、私は他の用事があるから」と言って何処か急いだ様子で廊下の奥へと消えて行った。
「―――おお、豪華!!」
言っちゃ悪いけど、聖鳥の泊まり木よりもデメテル・ファミリアの部屋よりも広く、そして新品同然の家具まで!
埃一つ無いし、言うことなしだよ!
「……ん?ああ、なんだ。此処に持って来てくれてたのか」
部屋の隅を見ると、俺のバックパックと小剣と投げ斧とツルハシが丁寧に置かれていた。
でも何故だろうか?
いや、よく見るとバックパックの底の部分が少しだけ擦れているように見えるのは俺の気のせいだろうか?
「……ま、いっか。準備してダンジョンに向かおう」
少しだけダンジョンに潜ってソロの感覚を取り戻そう。
それから程よく眠たくなったら帰ってひと眠りすれば良い。
そうと決まったら俺は私服から鎧に着替え、小剣の柄を握―――ッ!?
「―――ッ!!!?」
突然だけど、一つ質問がしたい。
秋や冬みたいな寒い日に何気なくドアノブに触ろうとしたら指先がバチッ!!ってなって咄嗟に手を引っ込めたことは無いだろうか?
感覚はソレに近かった、ソレを何倍も痛くした感じに近かった。
「……」
痛いって言うのもあったけど、何となく―――何となくだけど、この剣自体が俺を
「――――え?」
少しの間、床に倒れた小剣を眺めながら呆然としていた――――――
はい、OP&チュートリアル終了です。
もうちょっと早く終わらせるつもりだったのにな。
余計なことし過ぎた……