ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う 作:ウリクス
剣の形をした魔法発射装置。
高レベルの鍛冶アビリティを持つ鍛冶師にのみ生成することができる。
数に限りがあり一定の回数使えば粉々に砕け散ってしまう。
非常に高額で物によっては一本の魔剣で広い庭付きの豪邸を買っても有り余るほど。
「魔剣って、ただ剣の前に『魔』が付いているだけじゃないか。魔が付くとそんなに差が出るのか?偉くなるのかよ?」
~アーク~
第30話 冒険者始めました 「一階層で魔剣を使う男」
「……つまり、この
アテナ様の部屋に備え付けられている椅子に俺はドカッと座り、自分のステイタスをジッと見る。
「ま、そういうことになるわね。あと
昨日のステイタス更新の写しに目を通した俺は2つの意味で溜息を漏らす。
1つ目は原因が分かって安堵したことで、2つ目は俺のステイタスが変なスキルで埋まっていくことに対して呆れていることだ。
今から5分ほど前―――――
自室で少しの間唖然としていた俺は何かの間違いだと思い、もう一度武器を握ってみた。
でも結果は同じだった。
しかし、ツルハシだけは何故か握ることが出来た。
何でツルハシは握れて他はダメなんだ?――――そう思った俺は原因を探るべく、特に物騒なことは考えてないがツルハシをギュッと握りしめたまま部屋を出て、10秒くらい歩いた先にあるアテナ様の部屋へと向かい今に至る訳だ。
「いや~、昨日のパーティの時に渡そうかと思って持って行ったんだけど…お酒に夢中でついつい……てへっ」
彼女はベッドの中から顔と右手を出し自分の頭を軽くコツンと突く仕草を見せる。
その姿に苛立ちしか湧かないのは俺の気のせいだろうか?
「……まぁ、原因は分かりました。それで…俺は一体どうすれば良いんでしょうか?」
「どうすればって、武器のことかしら?」
「……ああ、そうですよ」
それ以外何があるのだろうか?
こんなぽっと出のスキルの所為で剣と斧が使えなくなったことに動揺を隠せないって言うのに。
「じゃあ、試しに一つ此処で発現してみたら?もしかしたら魔剣とか出ちゃうかもしれないわよ」
「……発現、ですか」
武器装庫[ランダム・ウェポン]
・世界に存在している武器(魔剣込みで)をどれか一つランダムで選択し復元して発現する。そしてあらゆる装備条件を無視してスキル保持者に装備する。
・魔力は消費しないが
・
今からこのスキルを発動するワケなのだが、どうにも信用が出来なかった。
「……どうすれば良いんでしょうか?」
「取り敢えず『来い』って思えば出るんじゃない?」
何ともいい加減な助言だ。
それに、何でさっきから顔だけ出してベッドに潜っているんだ?
「……」
「何よ」
「……いや、何でベッドから出ないのかなって思いましてですね」
あえて聞いてみたけど、大体想像がつく。
昨日のパーティで馬鹿みたいに酒を飲んでいたんだ、絶対に二日酔いだろうな。
「そ、その…頭が少し痛いって言うか…け、決して二日酔いじゃないわよッ!!この誇り高い知神が二日酔いなんて……」
「……はぁ」
何でベッドから出ないのかなって聞いただけなのに。
どうしてこうもペラペラと余計なことを喋るのだろうか?
「……ま、まぁやりますよ。出来なきゃ今日から素手かツルハシで戦わないといけませんし」
アテナ様のいい加減なアドバイスを頼りに俺は目を瞑り意識を集中させる。
そして俺の手に武器を持っている姿を頭の中で浮かべながら何度も『来い』と呼びかける。
―――い……
―――――こい……
――――――来いッ!!!
「―――――来いッ!!!」
そう叫びカッと目を開くと、俺の手には一振りの剣が握られていた。
「……で、出来たッ!見ましたかアテナ様ッ!!」
「見れば分かるわよ。あと煩い、頭に響く」
いつの間にか握られた剣を見て年甲斐にも無くはしゃいでいる俺に機嫌悪そうな顔で彼女は答える。
「どうせ大した物じゃな――――貴方、コレって……!」
そう言いながらアテナ様はジト…とした目で俺の右手の得物を暫く見るが、次第にパァと明るくなり、ベッドから這い出て来て勢い良く俺の手を掴みながら剣を見つめる。
蒼水晶を連想するかのような両刃の刀身、青い柄は魚の鱗だと思われる素材でびっしりと覆われ、鍔は無い。
全体的に見ると水と魚を連想する剣だ。
俺はこの剣を『お魚ソード』と名付けよう。
見た目が肥えた魚みたいに横に広く、そして短い形をしている剣だからな。
「まさか、本当に魔剣を引き当てるなんてね。冗談で言ったのに」
「……えッ!コレが!?こんな太った魚みたいな剣が!?」
俺は驚きながら改めて剣を見る。
確かにこの剣から何か力みたいなモノは手から力が伝わって来るのは分かるけど、何か不安になって来る。
それに、鞘は無いのか鞘は。
気の利かないスキルだ。
「ああ、やったわ!!魔剣!魔剣!!魔剣!!!富も名声も思うが儘に出来るッ!!!!何て素晴らしいの!!!!」
「……魔剣、かぁ」
魔剣を目の前にして我を忘れている神のことは放っておいて、少しだけ魔剣について知っていることを思い出すことにした。
・魔法が撃てる
・一定数使えば粉々に砕ける
・モノによるが、換金すれば一生遊んで暮らせるだけの金が手に入る
・魔剣から放たれる魔法は冒険者が扱う魔法よりも劣る
コレくらいかな、俺が知っている魔剣に関しての知識は。
と言うか、俺には一生縁の無いモノだと思っていたからこうやって手に持っても何とも思わないのが正直な話だ。
仮に魔剣じゃない普通の剣が来ても俺はさっきみたいにやったーッ!!って年甲斐も無くはしゃいでいたと思う。
「……じゃあ、気は進みませんが俺はコレを持ってダンジョンに潜ッ!!?」
魔剣の威力がどんなモノか試すためにダンジョンに潜ってくる、そう言おうとしたその瞬間―――――あの
「そんな勿体無いことしなくても、私がしっかりとお金に換えてきてあげるわよ」
二日酔いなんて最初から無かった――――そう言いたげに彼女は物凄い勢いで部屋の外に出て行ってしまう。
先程まで誇り高い知神と自称していたのに。
どうだろうか?彼女が誇り高い神に見えるだろうか?
俺には誇りじゃなくって埃しか感じないけど。
「コレで大金持ちよ~アハハハハハハハハッ!!!」
そう叫びながら彼女は廊下の奥へと走り去った。
「……う~ん、しかし伸びないな~俺のステイタス。でも運だけは本当に良く伸びるな。魔力があるってことは魔法を覚えるかもしれないな、でもまだ早いよな……」
俺はツルハシを腰の金具に嵌め、椅子に座りながら自分のステイタスの写しを眺めていた。
あ、そうだコップを一つ用意しなきゃ――――
「……あ、お帰りなさい。駄女神様」
「…………タダイマ」
彼女が部屋を飛び出してから数十秒後に肩を落として部屋に帰って来た。
そして覇気のない顔をしながらノソノソと再度ベッドに潜り込む。
「……マケン、キエチャッタ……」
「でしょうね」
確証は無いけど何となくそんな気がした、発現者の勘ってヤツだよ。
「砂みたいにね、消えたのよ。こう、サァァ…って」
青ざめた顔で言って来る彼女に対して俺は「……そうですか」と一言言い放ち席を立つ。
「……じゃあ、俺はダンジョンに潜って来ますから、そこで大人しくしていて下さいね。テーブルに水を用意したから気が向いたら飲んで下さいね」
はぁ、やっと解放される。
水の入ったコップを一杯テーブルに置き自室にあるバックパックを取りに行こうと後ろを振り向いた時、後ろから「ねぇ、アーク」とアテナ様が話しかけて来る。
「……今度は何ですか?」
「――――――私のこと、嫌いになった?」
――――――――――は?
この
「……え、えっと……何でそう思うんですか?」
「だっで、ざっぎがら゛凄ぐ冷だい゛目でわ゛だじを゛見でるじゃないッ!!!わ゛だじがアーグのま゛げん盗っだから……?」
今度は目に涙を溜めて訴えて来る、泣いたり叫んだり忙しい
「……いや、そんな目で見てませんって。魔剣のことだって別に気にしてませ」
「嘘ッ!!見でだ!絶対に見でだ~~~~やっばり
遂には顔を伏せてワンワンと泣き始めるアテナ様の前に、俺はどうして良いか分からずその場で再度呆然と立ち尽くしてしまう。
「アテナ様~ただいま戻りました。二日酔いに良く効くお薬を……え!?」
「……お帰りなさい、ニケ様……丁度良いタイミングで帰られましたね……」
この空間を打ち破るかのように誰かがこの部屋に入ってくる。
その正体は神様であり、天界ではアテナ様の従者をしていたと言われているニケ様だった。
「アークさん、コレは一体」
「……俺にも分かりません、助けて下さい……」
それから彼女は「だって……だって……」と言いながら右手で握り拳を作ってベッドをボフボフと叩く。
「私だってホームが欲しいんだもん!庭にオリーブの木とか植えたいもん……オリーブ畑とか作りたいもん……」
何故オリーブの木?
いや、オリーブの木は俺も好きだけどさ。
「……あ~」
「……ニケ様?」
ニケ様はアテナ様の何かを察したらしく、「あ~」と何処か呆れた様子で頷く。
「アークさん。此処は私が何とかしますから、ダンジョンに行って下さい」
「……え?良いんですか?」
「はい、アテナ様の扱いには慣れてますので」
「……は、はぁ……」
俺もアテナ様が泣き止むまで此処にいようと思ったけど、俺がいても多分意味ないだろうな。
そう思った俺はニケ様の厚意に甘えることにした。
「……そ、それじゃ行って来ます」
「はい!行ってらっしゃい、です!」
――――漸く、漸くダンジョンへと向かえる!
これ以上事態がややこしくなる前に、ニケ様のニパッとした笑顔に見送られながら、俺はこの部屋から退室した。
「お願いだがらわ゛だじを゛ずでな゛い゛で~~~~~~ッ!!!!」
部屋の外から聞こえるアテナ様の叫びを聴きながら、俺はダンジョンへと向かう。
「……はぁ」
――――余り、こんなこと言っちゃいけないと思う。
でも言いたい、一回限りで良いから、声に出さなくても良いから、心の中でも良いから言いたい。
今から言うぞ!一回だけ言うぞ!!心の中で言うぞ!!!
―――――あの駄女神相手するの面倒臭ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!!
良し!言った!!
……まぁ、正直な話、仕方のない神様だけど、俺は彼女を一生嫌いにはならないと思う。多分。
「……ハァ」
冒険者になってまだ1ヶ月経っていないと言うのに、一人でダンジョンに潜るのが久々に感じるのは何故だろうか?
一階層の端の端にある行き止まりに辿り着く、此処なら誰にも見られないし誰にも迷惑をかけない筈だ。
ダンジョンに入る前に一度発現させようかと思ったが、他の冒険者に見られてビックリさせてしまうかもしれないから止めた。
自意識過剰かな?いや、そんなことは無いと思う。多分。
「……」
今度はさっきみたいに叫ばず、心の中で軽く呟く様に呼ぶことにした。
―――あ、来た。
確かな重みと確かな金属の感触が俺の右手から伝わって来る。
「……ッ!!」
でも少し重たい、かなり重たい。
それになんだかコレは―――ガラクタ?
いや、もし俺がゴミ捨て場から武器を漁るのだったらもう少しマシな物を選ぶ、それくらい酷いモノだった。
見てくれだけで言えば剣先が尖っていない鉈の様に見えるが、柄の先から剣身の先まで錆びだらけで正直触りたくない。
さらに付け加えて言うならば、無駄に大きく重い上に刃はガタガタ、兎に角酷い代物だ。
「……」
当然ながら俺はこの錆びの塊を投げ捨て、両腕を組みながら地面に転がっていく錆びの塊を観察することにした。
こんなモノじゃゴブリン一体仕留められないよ。
まだバックパックに石詰め込んで投げつけた方がよっぽど有効だと思う。
いや、一応錆びても鉄の塊だから投げても良かったか―――馬鹿な真似は止そう。
地面に投げ捨てられた錆びの塊は見た目通り重たい金属音をダンジョンに響かせながら少し転がり、そのまま静止する。
そして静止してから数秒が経過した後、アテナ様が証言通り砂の様にサァァ…と跡形も無く消えて行った。
―――コレは、俺の手から離れてから数秒経過したら消えると考えていいのかな?まだ分からないな、だから時間をかけて色々試してみよう。
組んだ両手を解き、もう一度武器の発現を試みることにした――――
「――――ハァァァ!」
コボルトの攻撃を大きく一歩下がり、両手に持っている得物を脳天目掛けて振り下ろす。
コレで全員か――――辺りにモンスターがいないことを確認してからコボルトとゴブリンの魔石をチマチマ拾った後、一息つく。
「……良い調子だ」
錆びの塊を投げ捨ててから一時間が経過しただろうか?
その間に
・先ず、『武器は一つしか発現できない』。
新しい武器を発現させるには手に持っている武器を手放して消さなければいけないみたいだ。
気に入らない武器が出て替えたいと思ったら、その武器を捨て消えるまでの数秒間丸腰と言うワケだ。
それから、『発現する武器は本当に何が出るか分からない』。
気合を入れて馬鹿みたいに叫びながら呼んでも、気合を入れずに心の中で小さく呼んでも結果は同じ、完全な運だ。
今俺が持っている武器も偶々発現した物で、『斧槍』と呼ばれる、鉄の槍に三日月のような形をした斧が取り付けられているのが特徴の得物だ。
槍特有のリーチの長さに加え、斧を取り付けることによって突く以外の攻撃も出来る画期的な武器だと俺は思う。
でも少し…いや、かなり重たいから片手で扱うとか俺には絶対に無理な話だけど。
「……帰ろう」
魔石の数は少し足りない気がするが、今日の目的はスキルの確認とソロの感覚を取り戻すことだ、収穫としては上々だと思う。
立ち上がり、ダンジョンの出口に向かって歩き始める。
―――しかし今日は疲れた。主に
疲れと眠気の所為か、足取りは鉛の足枷を付けられたかのように重い。
帰ったら一眠りしよう――――そう思いながら俺はダンジョンの出口へと向かって行く。
眠い目を擦りながら覚束ない足取りで歩いて行く。
アークのアミュレットがモンスターの接近を警告するが青年は全く気が付かない――――
――――ッ!!!?
「ガッ!!!」
しまった!完全に油断していた!!まさか接近されていたとは――――ッ!!!
走り寄ってくる音に反応してハッとした俺は、後方に振り向き得物を横に持ち、長い柄の部分で防ごうとするが、アークの防御の動作よりもコボルトの飛び蹴りの方が速く、背中ではなく腹部に直撃してしまった。
コボルトの不意の一撃によりアークは地面へ倒され、両手に持っていた得物は後方に放り投げられ、何度も地面を跳ねながら転がり進み、やがて完全に止まってしまう。
「……ッ!!!」
――――不味いッ!!!
腹部の鈍い痛みを耐えながら直ぐ拾おうと立ち上がり、槍斧の傍まで近寄り手を伸ばすが触れる直前と言う所で消えてしまった。
「……だったら、だったら
武器を出すよりもこっちの方が速い―――――そう判断したアークはいつも腰に吊る下げてある採掘用のツルハシの柄を握り、金具から外したその瞬間―――――拒絶されてしまった、小剣や投げ斧と全く同じ様に。
「……あ、ああ……」
ウソだろッ!!?さっきまで俺が持っても何の問題なかったじゃないかッ!!?
どうして!!?どうしてだ!!!!!?
度重なる予期せぬ出来事にアークの頭の中はパニック状態になっていた。
第三者からこの状況を見れば、丸腰の冒険者が目の前に立っているモンスターを相手に身構えもせず呆然と立ち尽くしている状況にしか見えないと――――と答えるだろう。
「……ァッ!!!」
そして頭の中がグチャグチャなっている青年に、コボルトは容赦のない追撃が入る。
アークの右頬に鋭く、そして細い熱が走る。
右頬から生暖かい一滴の液体が顎を伝い、鎧の上にポタリと落ちる。
「……ああ……あ゛あ゛……!!」
尻餅をついたアークは情けない声を上げながらズルズルと後ろに下がりながらコボルトに再度目を向ける。
コボルトは引っ掻いた手の爪を舐めながら、口元をニタァ……と吊り上げながらアークにジリジリと近づいて来る。
――――痛い、コボルトに引っ掻かれたのか?
頬の痛みによって頭に昇っていた血がスー…と退いて行く。
それと同時にアークの頭の中で“死“の一文字が頭に過る。
――――ああ、ダメだ。死にたくない。と言うか一階層で、しかもコボルト一体相手に何やっているんだ俺はッ!!
「……ハァ……ハァ……」
―――いつも通りにやればいい、コボルトなんて初めて潜った時からいただろう?複数相手に
何度も、何度も言い聞かせてから俺はゆっくりと立ち上がり深呼吸を一つしてから再びコボルトと対峙する。
「……大丈夫……大丈夫……大丈夫……。良し、来いッ!!!」
俺は武器の発現を試みると同時に、目の前でジリジリと近づいて来るコボルトに対して二重の意味で呼びかける。
眠気を吹き飛ばし、闘志を滾らせ、いま目の前のモンスターを倒すことだけを考えて右手に意識を集中させる。
そして俺の手に確かな重みと金属の感触
――――もうこの際何が出ても関係無い。絶対コイツだけはぶっ殺してやる……!
最悪、発現した武器によっては直ぐにその場で捨てて、素手で殴り殺す覚悟を胸に抱きながらコボルトとの距離を縮めていく。
「ハアアアァァァァァァァァァッ!!!!」
コボルトの前に踏み込み、右手に持っている武器で大きく横に薙ぐ。
アークの気迫に圧されたのか、コボルトは慌てて後方に大きく飛んで距離を取られる。
寸での所で避けられてしまった。
アークの大振りの攻撃は見事に外れ、体制を大きく崩してしまうが――――この瞬間、アークが発現した武器がタダの武器じゃないことが証明される瞬間でもあった。
「……?」
アークの目の前に横一線の
まるで先ほどのアークの大振りをそのまま残したかの様な形の白い線だ。
またもや予期せぬ出来事に呆気に取られたアーク、コボルトもコレが何のか分からず警戒している様子。
―――しかし次の瞬間、俺の視界は『前』、ではなく背中を床にくっ付けて『天井』を見上げていた。
「……ッ!!?」
白い線から突然爆風がアークとコボルトの間で発生して吹き飛ばされた。
――――いや、爆風に似た突風と言った方がこの場合正しいだろう。
背中に背負っているバックパック越しから伝わるガリガリと擦れる衝撃を感じた直後、アークは上半身を起こす。
「……な、何だよコレは……!」
剣―――いや、鎌にも似た白い
そう、文字通り徹底的に。
コボルトと言う個体が認識できなくなる程に四方八方から何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、コボルトから噴き出る血も、胸部に埋め込まれている魔石すら粉々に切り刻んでいた。
コボルトを切り刻んだ何かは、『まだまだ物足りない』と言いたげに今度は通路そのものを傷つけながらダンジョンの奥へとゆっくり進む。
何かの進行先は先ほどアークが突っ立ていた行き止まりだ。
白い何かは切り刻む相手がいないと察知したのか、まるで嵐が立ち去った直後の様な静けさを残して行き止まりまで進むとスウ…と消えてしまった。
「……」
今日はもう帰ろう――――そう決心した俺は早速ダンジョンから脱出する準備に取り掛かった。
先ずは咄嗟に発現した右手の獲物を、魔剣だと思われる代物をジッと見る。
手首全体を守る籠のような形をしたエメラルドグリーンの鍔、先から先までフワフワした鳥の羽毛で覆われた柄、鳥の翼を連想させる刀身、長さで言ったら
そして何と言ってもあの魔法――――この魔剣の魔法だ。
コレが
「……コレが、魔剣の力か」
――――確かに高額になる筈だ、確かにみんな欲しがる筈だ。
そう思いながら俺は少しの間、この魔剣を見つめる。
「……さようなら、助かったよ。……また逢えたらいいな」
そして俺は魔剣に別れを告げてから、抉られ、削られ、傷だらけになった通路のど真ん中に魔剣を放り投げる。
魔剣が完全に消えるのを確認してから、今度は地面に転がっている愛用のツルハシに目を向ける。
恐る恐るツルハシを拾い上げるが、さっきみたいに拒絶することは無いみたいだ。
「……帰ろう」
俺はツルハシを腰の金具に収めると、早々に地上に繋がる階段へと向けて駆けて行った。
《オーシャン・ギャングズ》
価格 4000万ヴァリス
蒼い刀身を持つ魔剣でアークが初めて発現した武器。
アーク命名『お魚ソード』
魔法は水で形成された魚の大群が発生し、床、天井、左右に散開しながら対象者に近づき、一斉に襲い掛かる。
発生した魚は大きさ、形は様々で魔剣を振るう度に発生する魚の種類が異なる。
《グレイト・フルウイング》
価格 2500万ヴァリス
エメラルドグリーンの鍔と鳥の翼を連想させる刀身が特徴の魔剣。
魔法は突風と対象を中心とした四方八方の風の刃の二重攻撃。
アークは「持つのが面倒臭いのと、コレを持ったまま外に出たら絶対トラブルに巻き込まれるよな?」と言う理由でコボルトを一体討伐して直ぐに破棄した。