ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う 作:ウリクス
4,000,000ヴァリス
・とある国の王直属暗殺部隊隊長が愛用していたと言われる黄金の刀身を持つ曲剣
・第二級武装
「……どうでもいい戦いに限って強い武器ばかり出るんだよ。……え?お前はいつもゴブリンかコボルトか時々ダンジョン・リザードとしか相手にしないのに重要な戦いが昨日のミノタウロスしかないだろって?……ゴメン……」
~アーク~
とある村、とある正午、とある教会の鐘が鳴る。
そして、教会の木製の扉が開かれると同時に湧き上がる歓声と拍手。
「おめでとう!」
「お幸せに!!」
観衆から祝福の声を受けながら、ふくよかなで温厚な印象を与える大柄の青年と、お淑やかで物腰柔らかな女性が赤い絨毯の一本道をゆっくりと歩き、用意された馬車の中へと乗り込み何処かへと去っていく。
「……よかった、間に合って。……本当、良かった」
そんな幸せに包まれた観衆の少し後ろに離れた所に一人の青年と一人の中年が立っていた。
「……ああ、本当に……良かった」
一人の青年は眠気でフラフラと左右に揺れ、今にも倒れそうにも関わらず、中年の男性は「ああ!本当にギリギリだったな!!ガハハハッ!!!」と豪快に笑い飛ばす。
「……何でそんなに元気なんだよ?」
アークは「……昨日はオッサンの所為であんな目に遭ったのに……しかも誰も来なかったんだぞ……」と苛立った様子でブツブツ文句を言う。
「当たり前だッ!商人は元気じゃあないとやっていけないからな!!」
折角の祝いの席なのに、何故こんなに眠くてムカつくのだろうか?
その原因は昨日の出来事に当たる。
ソレを出来るだけザックリと簡単に思い出しながら説明していきたいと思う。
「……う~ん、この作家のノンフィクション作品、文章が拙い上に何か当時の人に話を聞きながら書きましてって感じが滲み出てて、リアリティに欠ける作品だな」
オラリオを出て5時間が経過しようとしていた。
アークは暇つぶしに読んでいた本を閉じ、馬車の外套をめくり空を見る。
スッカリと日が傾き、空が暗くなり、月が彼方に薄らと出始めていた。
「……オッサン。隣の村まで後どれくらいだ?」
「この調子だと大体2時間って所だ」
商人の推測にアークは「……ふ~ん」と退屈そうにゴロンと寝っ転がり、馬車の中を照らす魔石灯を見つめながら、少しだけ眠ろう――――と目を閉じるが。
「……ッ!!!」
床下からバキッ!!!と何か不吉な音が聞こえた。
その異常な音にアークも急いで身を起こそうとするが、既に遅かった。
ガクンッ!!と馬車の後方が大きく傾き、アークの身が、馬車に積まれていた荷物が、重力に逆らえず殺到する。
「痛ッ!!?」
最初に馬車から草原の上に身を投げ出されたアークは左腕を庇いながらゴロゴロと草を体で潰しながら転げ回る。
身体が止まり、暫く痛みで悶えたものの、体を起こし前を向く。
アークの眼前には、馬車から落ちた荷物が点々と等間隔で落ちていた。
「ッ!どうッ!!どう!!!どう!!!!」
商人も予想外のことに驚いたのか、急いで馬に停止する様に手綱を強引に引っ張る。
「あ、アーク!大丈夫か!!?」
慌てて駆け寄って来る商人にアークは「……大丈夫だよ、ちょっと背中が痛いだけで済んだ」と言いながら停止した馬車に近づく。
「……しかし、派手に壊れたな」
「ああ、此処で修理は無理だな……」
後輪が両方とも破損していた。
後方に取り付けられていた2つの車輪は向こうで暫くの間コロコロと転がり、力なく横に倒れに倒れた。
「……どうするんだコレ?」
「…う~む」
商人は少し悩んだ末に、「アーク!頼みたいことがあるんだ!!」と大声で叫び馬に跨る。
「俺はこのまま隣村まで走って替えの馬車を貸して貰えるように頼んで来る!アークは荷物を頼むッ!!」
「……っちょ、ちょっと待って!俺はまだ何も――――行ってしまった」
アークの意思をそっちのけでドンドン離れて行ってしまう。
この場に残されたのはアークと転々とした荷物と後輪の取れた馬車だけだった。
「……しかし、荷物が少ないな」
必要最低限の物だけを持ってオラリオに来た上、必要最低限の物だけを持ってさっさと村に帰ろうとする様子が窺える。
それでも、馬車の中が狭く感じるのはこの馬車が小さくて狭いからだな。
「……はぁ、いつもは馬二頭で移動する大きな馬車を利用する癖に、今日に限って馬一頭にしてケチるから……」
外へ投げ出された時に包帯に付着した砂埃を払い、転々とした荷物を足で蹴りながら馬車に寄せ、「村に帰ったら商人からポーションの一本や二本、せびらないと割に合わないな」―――等々ブツブツ文句言いながら丁度良い大きさの木箱に座る。
一時間が経過しただろうか?
遂に、太陽が完全に沈み何も見えない暗闇の時間が訪れる。
外套から漏れる魔石灯の光だけがこの場の唯一の光源と言っても良い。
念のため、松明に火でもつけようか?
このまま商人が来るまで何もトラブルが無ければ―――――
「……ッ!!」
―――良かったのに。
アークは辺りを見渡し、暗闇の向こうにある真っ暗な草原に目を向ける。
ザワザワと少し冷たい風に揺れる草の中、確かに感じた。
アミュレットが敵の接近を知らせる振動を。
「……来い」
アークは武器の発現を試み、草原を睨みつける。
何かがいる、確実に。
右手に現れたのは波状に歪んだ、いや、あえて曲げた様に見える剣だ。
外套から漏れる僅かな魔石灯の光に照らされ輝いている刀身はアークにとって何処か心強かった。
―――良かった、剣は当たりを引いたみたいだ。でも……不味い、この状況は絶対に不味い。
そう判断したアークの額から一滴の汗が地面に落ちる。
この真っ暗な状況の中、敵意を向けて来た正体が分からないからだ。
しかし、こっちは魔石灯の光で姿を一方的に晒している。
だからアークはこの状況に焦っていた。
草がガサガサと揺らしながら、何かがゆっくりとこちらに近づいて来ている。
襲ってくるのはモンスターか、はたまた夜盗か。
モンスターならまだ良い、オラリオで戦ってきたモンスターに比べて劣ると思っているからだ。現れたとしても精々ゴブリンだろう。
だが、夜盗はどうだ?戦うのはモンスターじゃない、人だ。
「……ッ」
アークの頭の中に『人殺し』と『己の死』と言う二つの言葉が過る。
見知らぬ人の死骸の前に立っている俺の姿、それとも、血を滴らせ地面に伏せるのは俺で、下卑た声と顔で馬車の荷物を漁っている奴らの姿が。
草が揺れる音が止まり、ペタペタと裸足で歩く様な音が聞こえ、魔石灯の光にその姿が映し出される。
『……ギャッギャ!!』
魔石灯の光にゆっくりと入って来たのは2、3体のゴブリンだった。
「……」
アークは心の底からホッとした様子で発現した得物を構える。
良かった!夜盗―――いや、人と戦わなくって本当に良かった、と。
いや、良くない!兎に角コイツ等を片付けないと!!
「……ハアアアアアアアアアッ!!」
アークと対峙している複数のゴブリンはハッキリ言って雑魚だった。
オラリオのゴブリンに比べて緩慢で非力で隙だらけで、左腕を負傷している今のアークでも負ける要素が微塵もない程に雑魚だった。
右手に持った得物、黄金の光を放つ波状の剣を振るう。
得物は黄金の軌跡を描き、ゴブリンの首を、胴を、頭を過ぎり、軌跡はゴブリンの灰と共に暗闇に溶けていった。
「……ハァ」
他に敵はいないか辺りを、アミュレットに目を向けてから再度木箱に腰を掛ける。
この調子で暫く待っていれば、商人が迎えに来るだろう。
それから、数時間が経過した。
「……アアアアアアアアッ!!!」
アークが得物を振るい、定期的に襲って来るゴブリン達を屠る、屠る、屠る。
真っ暗な闇夜の中、まるで光に誘われる蛾の様にゴブリン達はアークが守っている馬車を執拗に狙ってくる。
腕がもう一本あれば松明でも握れただろうに――――と包帯で固められたもう一本腕をチラッと見る。
「……ああ……!」
時間が経つほどにゴブリンの次に今度は眠気がアークの頭の中に乱入してくる。
眠気と戦い、孤独と暗闇の恐怖と戦い、ゴブリンと戦いながら商人が来るのをまだかまだかと待ち望んでいた。
そして、新しい朝が訪れた。
「……アーク!大丈夫か!!?」
ああ、何体倒したか覚えていない、もう倒れて楽になりたい――――そう心の中で思ったその時、聞き覚えのある声と荷馬車を引く音が聞こえる。
それと同時に新しい朝を報せる朝陽が、一晩中闘い続けたアークを讃えるかの様に降り注いだ。
それからアークは急いで替えの馬車に荷物を積み込み村まで直行する。
「……オッサン、もう少しゆっくりできないの?眠れない」
「我慢してくれ!もう時間が無いんだ!!急げッ!!!」
その間に少しでも寝ようかと思ったが、激しく揺れて寝るどころじゃなかった。
結局、結婚式が始まるまで後30分に迫った所で村に辿り着き、今に至る。
運んでいた荷物の中身を商人と神父様が空けるのをチラッと見た。
商人が個人で取り扱う雑貨もチラホラあったけど、一番目についたのは―――一番大きな木箱に入っていた大きな黒いタキシードと真っ白なウェディングドレスだった。
「……ねぇ、何でこんなに遅くなったの?」
「いやあ~~~~!馬車と取り扱っている主人が寝ていて、どれだけ戸を叩いても、うんともすんとも言わなくてな!!それで、結局ユージュアル村まで戻って、替えの馬車を取りに来たって訳よ!!!」
アークは友人が馬車に乗って退場する姿を見届けた後踵を返す。
商人は「何処へ行くんだ?」と訊く。
その問いにアークは「……寝る」とだけ答える。
「じゃあ、後で俺の店に来い!報酬を用意してやる!!」
「……報酬?」
アークは「……貰っていいの?」と首を傾げる。
「勿論だ!一晩中荷物を守って貰ったんだ!!それくらいしないとな!!!」
ガハハハハッ!!!と笑う商人対してアークはそんなことよりも寝たい、と言いたげにため息を一つして「……分かった」と答えてその場を去る。
「……どうも、クリフトンさん」
アークは村の西部にあるとある建物に訪れる。
在り来たりな木製のカウンター、在り来たりな丸テーブル、何の珍しくも無い良くある酒場だ。
「おかえりアーク。エディの晴れ姿を見る為にわざわざオラリオから戻って来てご苦労様」
「……ただいま」
カウンターの席でグラスを磨いているこの金髪のオールバックの長身の男性がこの酒場兼宿屋の主人、クリフトンさんだ。
さっきまで教会にいたのだが、見るもの見てさっさと店の営業を再開したらしい。
「……」
「あ、いや。決して皮肉を言っている訳じゃないんだ」
彼の言動は人によっては気に障るかもしてないが、決して悪気がある訳じゃない。
勿論、アークは知っている。
「……ただ眠いだけだ、宿を一部屋借りるよ」
「ああ、二階に上がって一番奥の右の部屋だ」
チャリン……と目の前に置かれる鍵を受け取り、鉛の様に重たい足取りで階段を上る。
「ところで、家には帰らないのか?」
「……良いよ別に、どうせ母さんも父さんも
「ああ、今回は
主人の回答にアークは「……あっそ、だったら空いた時間にでも行くよ」と実家に興味など微塵も無いと言いたげに素っ気ない返事を一つして部屋の中へと消える。
―――――ドンッ!―――――ドドンッ!!――――
外から力強い音が聞こえる。
その音でアークは目が覚めてしまう。
「……?」
この音は極東の楽器、太鼓の音か。
アークは窓の外を見ると、空は完全に日が落ちていた。
しかし、村の中央がやけに明るく、賑やかだった。
結婚祝いの祭りでもしているのだろうか?
まぁいいや、丁度お腹も減っているし、少し顔でも出そうか。
アークは寝る前に床に脱ぎ散らかした服を拾い上げ、祭りの会場へと向かう。
「おお、アーク!起きたか!!良く眠れたか!!!?」
一番最初に会ったのは商人のオッサンと短く切った髪に立派な白髭を蓄え、そして年配には到底見えない丸太の様な太い腕と巨体を持つ中年の男性が、なみなみと
「……ああ、起きた時にはもう真っ暗だよ。腹が減ったのと、向こうで演奏している太鼓の音で目が覚めたんだ。報酬の話はまた今度で良い?」
まだ寝たりない、と言った様子で頭をガリガリ掻く。
「よう、アーク!エゴンから聞いたぜ!!オラリオに行ってから何やら活躍してるじゃねーか!!!」
村一番のベテラン大工のダッドさんが足をフラフラしながら話しかけて来る。
エゴンは商人のオッサンの名前だ。どうでも良い話だけど。
「どうだ?お前も酒でも飲んで行けよ!!」
「……遠慮しとく」
オッサン二人の横を通り過ぎ、何か食べようと村の奥へと進んで行く。
「しっかしまぁ!エゴンも随分と禿たモンだ!!毛一本すら残ってねェじゃねーか!!」
「お前こそ!ガキの頃は猫一匹にすら泣かされる貧弱野郎だったのに!!どうやってこんな丸太みたいな腕になったんだか!!!」
その直後、後ろから絵に描いた様な豪快な笑い声が聞こえる。
まぁ、いつものことか。
「ア~ク~!来てくれてありがと~」
「……よう、エディ。結婚おめでとう」
村の中心には今日の主役、エディが大きな椅子に座っていた。
身体がデカいから直ぐに分かった。エディが座っているあの椅子、壊れないか少し心配だった。
周りには村長と隣村の村長、そして花嫁の父親らしき人物が談笑をしていた。
「……いや、その……折角の結婚だっていうのに何も用意出来なかった。……ゴメン」
「いやいや~、ア~クが来てくれるだけで嬉しいよ~」
それから、アークとエディはここ最近の近況を話し合った。
アークはオラリオのことを、エディは農場のことを。
俺とエディが会話に弾んでいるとエディの嫁さんが何処かそわそわした様子で、エディを見ている。
「……あ~、その……俺はもう行くよ。嫁さんと仲良くな」
アークはその場の空気を察し、話を切り上げその場から立ち去ろうとする。
「え~っ!?折角なんだからもうちょっとくらい話そうよ~」
おいおいエディ、隣を見ろよ隣を。
ってか腹が減った。
何で飯がもうないんだよ!!酒しか並んでないじゃないかッ!!!
昨日馬車に乗ってから今まで何も食べてないのにッ!!
ヤバい、腹が減って気持ち悪くなってきた。
「あらあら、話には聞いてたけど本当に帰って来てたのね!」
空気の読めないエディと腹が減ってどうしようかと考えている時に、村人達がわらわらと集まってくる。
「わーい!アーク兄ちゃんが帰って来た~!!」
「暫く見ない内にちょっと痩せた?」
「アークお兄ちゃん!冒険者の話聞かせてよ!!」
「……オラリオの話……聞きたい……」
「……えっと、その……」
エディに続き、馴染みのある村人の人達に畳み掛ける様に話しかけられ、困惑するアークの元に「アーク
「……ヴッ!?……久しぶりって、まだ一ヶ月も経っていないだろうに……セラ」
アークはその声の主に聞き覚えがあった。
アークの胸にも及ばない小さな背丈、背中まで届く亜麻色の長髪をポニーテールにして一ヵ所にまとめたスッキリした髪型に動きやすい農場用のつなぎの作業服を着ている少女が背中を抱きしめていた。
「……で、どうしたんだよいきなり」
「アーク兄を迎えに来たんだよ!!」
「……は?」
「だから、アーク兄を迎えに来たんだよ!!皆がどうしても会いたいって言うから」
アークは「……皆?」と首を傾げる。
「良いから!私の家行くよ!!家!!!」とアークは腕を掴まれ、引っ張られながら村人達の中を掻き分けながら離れる。
「セラ~僕も行っちゃ~「ダメっ!!エディお兄ちゃんはマルセラさんがいるでしょ」」
妹にピシャリと言われ、シュンするエディの横目に村の中央から立ち去る。
村の中央から離れ、少し鬱蒼とした林の道を進む。
アークは少女の手を引かれ、されるがままに連れて行かれる道中、
「アーク兄って相変わらず誰かに引っ張って貰わないとダメなんだから」
アークがセラと呼んだ少女はニヒヒッと意地悪を含んだ笑う。
「……そ、そんな事はないぞ」
「そんなことは……」と再度繰り返しアークは少し記憶を辿ろうとする――――が、
「……ゴメン、お腹空いてそれどころじゃない」
「アーク兄、農場急ごっか?」
「……うん」
そんな事を話しながら、全然懐かしくない友人の農場へと向かった。
林を抜けた先に、全然懐かしくない農場が見えてきた。
奥からは香ばしい匂いと音を聞くだけで涎が出てしまう、あの鉄板か網で焼くジューッと言う音が聞こえる。
「ようアーク!久しぶりだな!!」
「ひ、ひひひ久し振りだなぁアーク!!ま、ままままさか本当に帰って来てるとはお、おお思わなかったなぁ!!!」
「……オーウェン、スコット」
全然懐かしくない友人達に対してアークは「……何だ、お前らか」と白けた顔で明後日の方を向く。
「お、おおおおいアーク!何だよその面はぁ!?」
スコットが指を差すがそんなモノお構いなしに調理している友人の元へと向かう。
「……ヒューゴ、お腹すいた、まだ?」
「まだ」
短く、ハッキリと答える友人の言葉にアークは少し黙る。
「……まだ?」
「もう少し待て」
「……じゃあ、リンゴ1つ」
「ダメ」
「……ダメ?」
「ダメ」
「……」
「……」
依然と全く変わらないヒューゴとアークの会話に周りの友人はドッと吹き出す。
「ガハハハハハハハハッツ!!!!」
「ヒャハハハハハハハハハッ!!!」
オーウェンの相変わらずの豪快な笑い声とスコットの相変わらずの下衆い笑い声にアークは「……何?」と首を傾げる。
「いや、、何でもねぇよ!お前は全く変わっていねぇよ!!」
「……?」
(オッサンはお前は変わったって言ってたのに……)と心の中でブツブツ呟いている内にヒューゴが「出来た。はよ食え」と何とも不愛想にテーブルに置く。
「それじゃ!エディの結婚とアークの生還を祝って―――――」
「「「「「乾杯ッ!!!!!」」」」」
「……乾杯」
片手ジョッキを打ち付けもう片方の手にはバーベキューと呼ばれる肉と野菜を鉄串で刺して炭を網焼きの下に入れてじっくりと焼いたシンプル、だが味わい深い料理だ。
アークは「……ああ、もう片方の手が治っていれば遠慮なく齧り付けたのに……」と何度もぼやく。
アークは一つ、あることに気付く。
アレ?去年も同じ場所で同じことをした気がする――――と。
オラリオに来て、冒険者になって、ダンジョンに潜って、モンスターと戦って、少しづつ強くなろうと覚悟を決めたのに。
昨日みたいに傷つくことがあるかもしてない、最悪ダンジョンの誰もいない場所で生涯を閉じるかもしてない。
そう思っていたのに、何でだろうな。
皆が楽しんでいる間、アークの中で一つの決断が出る。
まぁ、どうでも良いか―――と。
皆が元気そうで何よりだ、アークが彼らに対する感情はそれ以外何もなかった。
そして、オラリオに戻るこの少しの間ゆっくりと休もう。それから、ダンジョン探索頑張ろう、アークはそう心に決めるかのように、串に刺さった新鮮な肉に齧り付いた。
もう登場する予定が無い登場人物紹介
アークの同い年の友人その1、父と母の営んでいる農業を手伝をしており、温厚で気の抜けた喋り方をする巨漢。
この度既婚者となった。
「……昔から空気読めないんだよな、アイツ。後重い。でも、まぁ……結婚おめでとう、親友」
エディの妹だが、全く似ていない
愛称はセラ、年齢は今年で17歳。
快活で考えるよりまず行動を第一に考える性格。
昔馴染みのあるアークのことをアーク兄と呼び慕っている。
「……セラ、頼むからエディのこと支えてやって欲しい。お前がいれば農場は大丈夫な筈だから」
アークの同い年の友人その2、商人見習いの人間。
赤髪長身、暑苦しい言動と行動が特徴で嘘がアーク以上に吐けない。
二十歳の時思いを寄せていた隣村の仕立て屋の娘であるエルフの少女に恋をして、想いを伝えるべくアーク達を引き連れてアルブ山脈まで向かい、氷水を汲んで帰った来たことがある。
その後色々騒ぎがあったが、無事にエルフの少女とは結婚を前提に交際しているとのこと。
「……コイツが俺の家の扉を叩く時は大抵碌なことが起きないんだよな。でも、退屈はしなかったけど、やっぱり碌なことが起きなかった!」
アークの同い年の友人その3、男性の
幼少の頃、極東の路地裏で暮らし、盗人として生きながらえていたが、貴族の物に手を出して怒りを買い、逃走と密航、逃走の果てにこの村に辿り着く。
そして目ぼしい物を盗もうとしたところ失敗して捕まり、大工の見習いとして働くことに。
針金のようにほっっっっっそい四肢と狡賢い顔つきと今にも凍死しそうな喋り方が特徴。
この五人の中で一番最初の既婚者にして、1児の父である。
「……スコットが役に立っているかって?それは知らん。多分頭脳の方で役に立っていると思うよ。だってコイツ、本当に色んな面で狡賢いんだ」
アークの最後の同い年の友人、人間。
クリフトンさんが営む酒場兼宿屋の料理長として働いている。
無表情、基本物動じない性格で誰が客だろうと臆することなく平等に対応する。
料理の腕は若いながらも一流と讃えられ、商人から商人に伝わりこの店の料理食べる為にこの村に来たと言う人もいるとかいないとか。
客として通っていた3つ年上のアマゾネスと仲良くなり、そのまま既婚者となる。
「……ヒューゴが厨房に立つなら当たりだ。遠慮なく注文するよ。だけど、偶にクリフトンさんが厨房に立つ日があるんだ。その日は……いや、何でも無い」
ポンポンと登場人物を出しましたが、この先アークと商人のオッサン以外は登場する機会は一切ありません。