ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う   作:ウリクス

8 / 56
買った物

14000ヴァリスの投げ斧


第7話 冒険者始めました(装備の見直し 防具編)

「……お、ハマった」

 

店長が俺にこの投げ斧専用の鞘をくれた。と言っても斧専用の鞘を三つ縫い合わせただけの物だけど……以外にもスッポリと刃が鞘を納まってくれた。

 

俺の新たな武器、三刃の投げ斧ケルベロスを右腰の金具にカチッと固定し防具コーナーへと向かった。

 

~摩天楼施設バベル 八階防具コーナー~

 

「ここは結構人が居るもんだな」

 

さっきの場所は違いここは賑やかな場所だ。

 

「……」

 

さてと、今回俺が探しに来たのは『サポータ』と呼ばれる防具だ。腕につけるプロテクターの様な物で用途は盾と同じだ。

 

そして当然ながら防御面は盾に劣る。だが携帯性と機動力はこちらのほうが勝っているし、何より盾のように片手が塞がることが無いのが、最大の利点だと思う。

 

携帯性が高いと言うのはサポータの中に短剣や短刀を一本収納する事が出来るんだよ。俺の場合によっては投げるんですけどね。

 

「……おっと……」

 

掘り出し物とは言わないが、何か良い物は見つからないかな。

 

「……ヴ……」

 

人が多くて、商品が見えない……もうちょっと奥に…ッうお!!

 

「……痛いって……」

 

押されて転んでしまった……もう少しで壁と頭ギリギリでもう少し前に出てたら頭を打つ所だった。

 

「お客さん!大丈夫ですか!?」

 

奥から女性の店員が出てくる……なんて恥ずかしいんだ俺は。

 

「……いや、大丈夫で……ん?」

 

不意に横を見る。其処は商品と棚に空いた隙間があった。その中に一つ何かがあった。

 

「……」

 

その何かを確かめるために手を伸ばした。……酷い埃だ。

 

「……うぇ……」

 

俺の篭手が埃塗れになりながらでもその何かを取る事が出来た。コレ……サポータだ。

 

「……お客様?」

 

「ああ、スイマセン。……それより、コレも商品なんですか?」

 

「……ッ直ぐに洗ってきます!!」

 

店員が俺が持っていたサポータを受け取ると布に包み店の奥に引っ込む。漸く起きることの出来た俺はその場で埃を払い立ち上がる。

 

「……」

 

俺と店員のやり取りに何事かと周りの人が集まってきた。……見世物じゃねぇんだぞこの野郎……どちらかと言えば今日は女の子の方が多いな。

 

「……あ、来た……」

 

洗ってピカピカになった銀のサポータを手に店員が現れた。

 

「さっきまで埃を被っていた時とはまるで違うじゃないか」

 

「あ、あはは……」

 

店員が笑顔で誤魔化そうとする。でも駄目。

 

「無くなったと思えば、まさか棚の後ろに落ちていたとは……」

 

奥から店長と思わしき人物が出てくる。周りの新米鍛冶師よりかは経験が多いけど、それでもまだまだ新米と言う感じの男性が出てくる。

 

「見つけてくれてありがとう。アレはハード・アーマードの甲羅を使ったプロテクターでその上に銀のメッキを塗装した物なんだが……」

 

ハード・アーマード

11階層に出てくるアルマジロ型のモンスターで腹は柔らかいが、背中の甲羅の硬さは上層階層で一番とも言われている。

 

「それで……そのサポータいくら何ですか?値札が無いように見えますが……」

 

そう言うと店長は顔を曇らせて……。

 

「そうだなぁ、もう無い物だと思ってたし。埃塗れになった物を2万ヴァリスで売るのはなぁ……」

 

今だと言わんばかりに俺は店長に交渉を持ち掛ける。

 

「だったら、その半額の一万ヴァリスならこの場で買います」

 

と持ち掛け一万ヴァリスが入った袋を用意する。駆け出しの冒険者と思われる『おお~』と言う感嘆の声が聞こえる。……喧しいよ。

 

「うーん、一万かぁ……」

 

悩み始める店長……やはり半額はキツイかぁ……あともう一押し。何か無いか

…考えろ俺……。

 

「……」

 

後ろをチラッと見る。俺と店長のやり取りを見守る周りの野次馬で囲っていた……だから見世物じゃねぇって言ってんだろうが……ん?野次馬……そうだ!

 

「だったら、一万で売ってくれるなら、お金に余裕が出ます。その浮いた金で他の商品をこの店でもう一つ買います」

 

つまり俺は、遠回しにこう言っている。

 

『あなたの店の防具を装備して、ダンジョンに向かいます』と。新米鍛冶屋にとって最もプラスになる事は防具が売れて売り上げが入る事よりも、大事なのはその先だ。……実際に使われて他人に評価を貰う事だ。

 

此処でケチって売るのをやめるか、此処で売って別の商品も買って貰って自分の店の評価をして貰うのか……中途半端に経験を積んでいる店長なら分かるはずだ。

 

「新入り冒険者ながら、『明日またダンジョンに潜るので、装備は万全にしてきたいんです』」

 

俺は明日ダンジョンに潜るぞ宣言をし、相手の動きを見る。……まぁ実際問題売ってくれなくても他の所へ当たれば良いだけの話だけどね。乗っても乗らなくても結局のところ、俺は損をしないしね。

 

「……分かった。半額で売ろう……でもその代わり……」

 

「分かってますよ……ちゃんと買いますし、使いますよ…いや、あなたの作品に俺の命を預けます」

 

俺から言わしてみれば、コボルトとゴブリンとダンジョン・リザードしか戦った事の無い奴が大口叩いてんじゃねぇよと……まぁ確かにそうだ。

 

こうして俺は2万ヴァリスの物を半額の一万ヴァリス購入することが出来た。……処分寸前の半額投げ斧と言い、棚と壁の間に挟まって埃塗れになった半額プロテクター。……何とも言えない気分だわ。

 

「……」

 

さて、約束は約束だ最後に何を買いましょうかね……とは言えあんまりもう金が無いんだよな。ちょっと、野次馬ども…俺を囲うな囲うな。

 

「……通れないって……」

 

頭の防具にしよう……でも兜は嫌だ……村に居た頃鍛冶屋で一度だけ被ってみたけど、重いし違和感あるし、すぐズリ落ちるし……最悪だよ。

 

「……ん?」

 

掌がペタペタする……何かくっ付いた?……何だコレ……バンダナ?

 

「……店員さん……コレなんですか……?」

 

「ソレはダンジョン・リザードの皮を使ったバンダナです。激しく動いても引き剥がさない限り絶対に落ちないバンダナなんです。その……防御面は……付けないよりはマシ程度ですが……」

 

「……はぁ、じゃぁもうそれにします……」

 

「はい!毎度ありがとうございます!!」

 

店長との約束を果たし、無事店から出る俺。

 

「……」

 

 

~摩天楼施設バベル~

 

「……やっと夕方か……」

 

近くのベンチに座り、自分が買った装備を見て取り合えず順番につけてみることにした。

 

「先ずはこのサポータから」

 

ハード・アーマードのサポータを取り付けてみる。サポータにあるこの紐みたいなのを篭手に絡ませるように結んでいき固定する。

 

「……うん……」

 

中々良い感じじゃないか……次はバンダナはどうなんだ?

 

「……」

 

この額と後頭部がペタペタする感覚。嫌いじゃないよ、新感覚なのにこんなにも良く馴染むのは何故だろうか。

 

「……」

 

お金の計算タイム

 

29690-(14000(ケルベロス)+10000(サポータ)+2000(バンダナ))=3690

 

つまり現在の所持金は3690(残金)+5550(今日の稼ぎ)=9240

 

9240ヴァリス……随分と減った……稼がないとだな。

 

「……あ……」

 

そして思い出す。俺、サポータに収納する短剣ともう一本投げ斧買うの忘れてたよ。ケルベロスとハード・アーマードのサポータの値段に目が行き過ぎてしまった結果がこれだよ。ケルベロスと言う1万4000ヴァリスの高額武器を買っていしまったせいで頭の中で『武器はもういい、次は防具だ』って頭の中でだな……え?言い訳すんなって?

 

「……」

 

結論としては金が溜まり次第、もう一度バベル支店へ行こうと心に決めた。

 

「……宿屋に帰ろう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

~そして帰り道の途中、絡まれました~

 

「……」

 

夕日色に染まるオラリアを眺めながらゆっくりと宿屋に帰る。この焼けるようなオレンジ色が素晴らしいんだよ。夕焼けと言うのは短い時間での間に『ああ、今日も一日が終わるんだな。』って最も実感できる時間帯なんだよ。

 

「……」

 

帰ってさっさと寝て、明日に備えましょうかねぇ……明日の冒険はどうするか、今度こそ第四階層の最後まで行けるのか。

 

 

「あのー!すみませーーーん!!!」

 

ケルベロスの力、試してみたいし。……あのじゃじゃ馬斧…いや、じゃじゃ斧?……まぁどっちでもいいよ。

 

「む、……無視しないでほしいです……」

 

儲けるならドロップアイテムに期待するか……う~ん、だがしかしだな。

 

「無視すんなって行ってるでしょう!!!!」

 

「ッ!!?」

 

後ろから急に大声を出された。誰だよ人が疲れているって言うと時に。

 

「……?」

 

……女の子が三人いた。一番前の子は気の強そうな銀髪のポニーテールの女の子だ。得物は背中にある弓……かな?

 

「アタシの名前はセリア!セリア(celia)ハーベスト(harvest)!!

単刀直入に言うわ、あたし達とパーティーを組んで頂戴。」

 

一つ後ろにいた女の子は……まぁ虫も殺せそうにも無いほど気の弱そうな黒髪のセミロングの女の子だった。得物は手に持っている杖……魔法が使えるのか?

 

「は、初めまして……。クラリス、クラリス(clarice)ハーベスト(harvest)……デス」

 

そして最後は元気いっぱいの茶髪のショートヘアの女の子、得物は……腰に刺している二本のナイフ?

 

「初めまして!ボクの名前はエミリア、エミリア(emilia)ハーベスト(harvest)!!よろしくね!!!」

 

デプスアミュレットが感知していないってことは、敵じゃないのは分かるけど……こう言うのは大抵碌な事にならない!逃げます!!

 

「うん……じゃぁな!」

 

さぁ、宿に帰ろう。

 

「「「あ!待(ちなさい!!)(ってよ!!!)(って下さい!…………助けて)」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

~聖鳥の泊まり木~

 

 

 

「……って事があったんだよ。全く、ビックリだよ……」

 

向こうで料理をしている主人にダメ元で今日の事を話してみる。

 

「話だけ聞くと、向こうも相当な訳ありって感じだね……」

 

エルフの主人も難しい顔をして考え出した。

 

「僕は冒険者じゃ無いから良くは分からないけど、パーティを組んでトラブルになったて言う例は珍しくないみたいだしね。」

 

でも最後にクラリスって女の子が悲痛な声で助けてって言われたのはかなり心に来た……うん、それは認めよう。

 

「だけど主人さん、ハッキリ言うよ。俺はまだパーティを組むつもりは無いよ…。こんな昨日今日なったばかりの冒険者に何ができる……?」

 

「他人事みたいに言うけど、冒険者って本当に複雑だね……さぁ、できたぞ」

 

この話をアテナ様(ポンコツ女神)やヘファイストス様に知られたらドン引きするかな。

 

~個室~

 

「……」

 

明日もダンジョンに潜る。そして金と経験値を少しでも貯めないと。

 

「……頼むぞお前達……」

 

2万6000ヴァリスもかけたんだ。役に立ってくれないと困る。

 

「……寝よう……」

 

彼女たちに対する少しの罪悪感と、新しい武器への少しの期待と大きな不安を抱きつつ……眠りについた。




ハード・アーマードのプロテクター

アルマジロ型のモンスター、ハード・アーマードの頑強な甲羅を使ったプロテクターで銀のメッキがかかっている
いつの間にか棚の裏に落ちて放置されてた為割引き価格になった。アークが埃塗れの状態で発見した

短剣及び短刀を収納可能

お値段
(割引価格で)10000ヴァリス

ダンジョン・リザードのバンダナ

申し訳程度の防御力
効果は特に無し。強いて言えば肌に馴染むようにくっつく
お値段
2000ヴァリス

次はまたダンジョンに潜ります。でも戦闘描写は少ないと思う
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。