ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う   作:ウリクス

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気が付いたら お気に入り数200を超えていた……本当に感謝で言葉が見つから無いです

アーク君のコミュ障が少し治るかも




第8話 冒険者始めました(駆け出しが初心者達に教える図編)

~オラリオ生活 4日目~

 

「主人、行ってくるよ」

 

さぁ、二度目のダンジョン探索だ。気合い入れるか。

 

「行ってらっしゃい。でも良かったのかい?朝食は採らないで……」

 

「いいよ、何か今日は朝から物と食べる気にはなれないんだ……」

 

まぁ、腹が減ったらそこら辺の屋台で何か食べるさ。

 

 

~摩天楼施設バベル~

 

今日は結構居るな……昨日は周りを見ても誰もいなかったのに。偶然だったの?昨日一人でダンジョン潜って一人でバカみたいな死闘を繰り広げたのは。

 

「……良し……」

 

サポータ良し、冒険必需品セット良し、小剣良し、回復薬良し、鎧に不備なし。昨日と同じ様にすれば大丈夫だ。デプスアミュレット、今日も働いてもらうぞ。新入りのケルベロス、お前の力…見せて貰う。

 

「良し!……行こッ!?」

 

いざ、ダンジョンの地下に進むための階段に足を踏み入れようとした時、後ろから誰かに引っ張られた。

 

「……!?」

 

「やっと……捕まえた…!」

 

……昨日の女の子達だ。あの子は確か……セリアって名前だ。後ろを振り返ると真剣な眼差しでマントを握っていた。それから彼女に続く様に後ろの二人もマントを掴む。

 

「……離ッ……!!!」

 

彼女達から振り解こうと彼女達の手を掴む……が、全く動かなかった。一歩も前に進めなかった。……情けない話である。

 

「……せ」

 

彼女達を怒鳴ろうと正面に向いた時。急に口が……と言うか体全体が固まった様に動かなくなった。

 

「……」

 

彼女達から絶対に守ってやると言わんばかりの強い意志と、もう貴方にしか頼れないと悲痛な訴えと、絶対に這い上がってやると言う執念が入り交ざった様な物が、否が応でも俺に伝わって来て……動く事が出来なくなった。

 

「………」

 

「ごめんなさい……私たちが強引なのは分かっています!それでも…お願いです!!……話だけでも聞いて下さい……お願いします……お願いします……お願い……します……ウゥ…」

 

昨日クラリスと名乗った少女が碧色の瞳で俺を見た後、必死に頭を下げてくる。それと同時に彼女の影にポタポタと水滴が落ちているのが分かる。

 

「お願いだよぉ!助げでよぉ……!!」

エミリアと名乗った少女はマントから手を放し栗色の瞳から零れる大粒の涙を両手で拭いながら懇願してくる。

 

「……ッ!」

セリアと名乗った少女は決してマントを手放さないまま、俺を睨んでくる。でも手は震え、両目には涙を一杯に溜め今にも彼女の蒼い瞳から零れ落ちそうだ。

 

……初めてだった。俺はオラリオに来て初めて他人の目を見た。それまではヘファイストス様もアテナ様もエイナさんもミィシャちゃんも宿屋の主人もその他の人も……目を見て話した事が無かったのに。

 

彼女たちの訴えに圧倒されて何もせず黙って見ているしかなかった。

 

「……。あ、ああ……!?」

 

ハッ!っと気が付いて周りを見渡す。他の冒険者が異様な目で俺を見てくる。そう……彼女たちに対して何もしていない俺がだ。……この状況は非常にマズい。

 

「……分かった、俺の負けだ。取り敢えず話は聞く。だからこの場は離れよう……」

 

俺は泣きじゃくる彼女達を別の場所へと連れて行った。……本当、情けない話である。

 

 

 

 

 

~バベル付近の離れのベンチ~

 

「……落ち着いたか?」

 

えっと……取り敢えず自己紹介でもするか。

 

「初めまして……って訳じゃないと思うけど。俺の名前はアーク、アークボルト=ルティエンス。ヘファイストス・ファミリア傘下のアテナ・ファミリア所属だ。」

 

先ずは一番最初に落ち着きを取り戻したクラリスから話を聞いてみる。

 

「……はい、私たちはデメテル・ファミリアの団員で主に野菜と果物を作って、それを売って生活しています」

 

デメテル・ファミリア

 

オラリア有数の商業系の派閥のファミリア。オラリオの多くの野菜や果物はデメテル・ファミリアが扱っている。そんな安定したファミリアで団員を路頭に迷わせるなんて事は有り得ない筈なんだが。

 

「……今年は長雨と近くの川が氾濫して作物が腐ったり……流されたりして凶作でした……」

 

クラリスがポツリポツリと話しているとエミリアも落ち着いてきたのか、話に入って来る。

 

「ボク達が必死に育てた野菜も果物も……皆無駄になったんだよ……」

 

それからセリアが震える声で続いて喋りだす。

 

「その長雨にも耐えて……川の氾濫にも流されず残った果物や野菜を……賊が現れて殆ど盗られたのよ……」

 

セリアが怒りで歪んだ顔を俺に見せながら語ってくる。……せっかくの可愛い顔が台無しだよ。

 

「私達のファミリアも作物を守るために必死で抵抗しましたが、全て無駄でした……」

 

クラリスも唇を噛み締めて必死に耐えている……余程悔しかったのが分かる。

 

「それから、作物が収穫した後はお給金が貰えるんだけど、こんな事態にボク達みたいな入団してから一年も経っていない新入りには、お金なんて少しも貰えなかった。」

 

エミリアが続けて話す。

 

「それでも生活費を稼ぐために、バイトをしようって思ったんだけど……誰もボク達を雇ってくれる所も無かったよ……」

 

そして最終手段である冒険者になりモンスターを倒して魔石を手に入れ、金を稼ごうと……

 

「君たちの事情は分かった……成程な……」

 

貧乏で冒険者になるのは男の最終手段だ。女の考えは人それぞれだが、俺の価値観から言わせて貰えば、女としての冒険者は最終手段一歩手前だ。本当の最終手段は…………オラリオ南東部にある歓楽街行きだ。

 

「……」

 

彼女達を見る、確かに彼女たちは可愛い、俺の中じゃ間違いなく美少女に入る。エミリアは小さくて元気がいっぱい。その手の趣味の客なら喜んで買うだろう、セリアはあのトゲがある言動と態度、コレも一種の趣向を持つ客になら十分に商品になる。そしてクラリスは断トツの指名を貰えると思う。あの胸、アテナ様程じゃないけど、ヘファイストス様といい勝負がで

 

「ひゃああああああああああ!!」

 

「……!!?」

 

クラリスが叫びながら、俺から庇う様に腕で胸を隠す。

 

「このクズッ!何クラリスの胸ばっか見てんのよ!!」

 

セリアが立ち上がって俺のを睨みつけながら怒鳴りつけてきた。

 

「……まぁ、確かにあの胸はボクとセリアには無いけどさ……」

 

しまった……ついついヘファイストス様とアテナ様の感覚で見てしまった。あの神様達、胸見ても何も言わねぇんだもん。揉むとか言ったら流石に怒りそうだけど、実際アテナ様は怒った。ヘファイストス様には口が裂けても言えねぇけど。

 

「…………」

 

や、やってしまった。

 

「……ご、ごめんなさい……」

 

「……」

 

クラリスが謝り、セリアが黙りながら席に座り直す。そして訪れる気まずい空気。……完全に俺のせいだなこれ。

 

「えっと……だ」

 

俺の発言を遮るようにエミリアの腹からグゥゥって腹の虫がなる。

 

「…お腹……空いたな……」

 

腹に手を当てシュンとするエミリア。

 

「……」

 

他の二人も見る。……どうやらエミリアと同じ意見の様だ。

 

「さっきは悪かったよ……今から朝食にするのだが一緒に来ないか?何かご馳走するよ。で、だから……その……クラリス、セリア。……俺と仲直りをしてくれないか?」

 

「い、いや……その……」

 

「べ、別に気にしてないわよ!」

 

「やったぁ!ご飯だご飯!!二日ぶりの朝ごはん!!!」

 

……泣けてきた。

   

 

 

 

 

 

 

~聖鳥の泊まり木~

 

「主人、ただいま。」

 

「おや、お帰り。早かったじゃないか。アレ…その子達は?」

 

「その、やっぱり朝食を頼む。あと、金は払うからこの子たちの分も頼めないか?」

 

「……ハハハ、分かったよ。すぐに取り掛かるから。」

 

主人がキッチンに向かう。俺はその間にまだまだ聞きたい事があるので、彼女達に話しかける。

 

「さぁ、遠慮せずに座って。」

 

彼女達をテーブルに座らせる。そして少し間をおいてから本題を聞き出すことにした。

 

「その……だな、今更なんだが……何で俺とパーティを組む気になったんだ。何でそこまでして俺なんだ?それを聞かせて欲しい……」

 

三人が顔を見合わせ、クラリスが口を開いた。

 

「昨日、冒険者になる為になけなしのお金を使って装備を買ったんですよ。それで、色んな人に声をかけたのですが……相手にすらされなくて……」

 

「今の時期、初心者冒険者はボク達だけだったし。それにこんな見た目じゃ……」

 

今更ながら彼女達の装備をを見る……ハッキリと言うが酷い物だ。罠以外の何でも無かったからだ。

 

セリア=ハーベスト

両手:ショートボウ(ギルドの支給)

  ウッドアロー20本

体:青色のスカート(私服)

  黄色い花の髪飾り

  髪留め

  鎧の下に着るインナー

  革の胸当て

  革の手袋

  青い靴

 

エミリア=ハーベスト

両手:ダガー二本(ギルドの支給品)

体:ライトレザーアーマー(胸部と腰当のみ)

  鎧の下に着るインナ―(胸部のみ)

  デニムのホットパンツ(私服)

  皮の手袋

  皮のブーツ

 

クラリス=ハーベスト

両手:初級用の木の杖(ギルド支給品)

体:黒いローブ

  白いシンプルシックなワンピース(私服)

  緑のロングスカート(私服)

  黒い靴

  赤いリボン

 

 

 

 

買ったのは主に部分的な防具だな……でも、しかしコレは、何と言うか……

 

あのインナー…鎧で隠れるから良いけど、腰のくびれから胸の大きさまでスレンダー体質なセリアのボディーラインが丸見えなんだよな。

 

クラリスはローブの下完全に私服じゃねぇか!……ローブ羽織ったら分からなくなるけど。

 

一番問題なのはエミリア!今までスルーしてたが何だあれ?軽装備ってレベルじゃないよ。レザーアーマーを胸部と腰に部分的に付けて申し訳程度の皮の手袋とブーツだよ。腹とへそと腰と腋が丸見えだよ!

 

 

「分かった、それで?」

 

「はい……私達、何となくバベルの中を歩いていたら、何だか騒がしくなって……覗いてみたら、アークボルトさんが店長と交渉をしていた所を偶々見かけたんですよ。二万ヴァリスと言う大金を一万ヴァリスに値下げをして貰う交渉ですよ」

 

……昨日のアレか……見られてたのか。

 

「その時私達は思ったんです。アークボルトさんが言った事が本当なら……私達とパーティになってくれるかもしれないって……」

 

【新入り冒険者】ながら、『明日またダンジョンに潜るので、装備は万全にしてきたいんです』……明日アンタの防具付けてダンジョン潜って来るから宣言した時だな。

 

「まさかお前達……俺が言った『新入り冒険者』って単語から、初心者同士でパーティを組む事が出来るかもしれないって事で近づいて来たのか?」

 

 

「……はい……その通りです……」

 

クラリスが席を立つとセリア、エミリアと席を立ち俺の方へ向く。

 

 

「……迷惑かもしれません。足を引っ張ってしまかもしれません。それでも貴方が最後の希望なんです……絶対に貴方の役に立って見せます!だから……私達を貴方のパーティに入れて下さい……お願いします……」

 

三人同時に頭を下げられる。

 

「……」

 

さて、コレは重要な選択だ。

 

「アーク君。パーティを組んでみたらどうだい?」

 

エルフの主人が俺に横槍を入れる様に提案してきた。

 

「僕は冒険者にはなった事は無いけど、彼女達は絶対に君の想像を超える存在になると思うよ。」

 

「主人、何でそう言い切れるんです?」

 

「根拠は無いよ、ただのエルフとしての直感さ。」

 

「……」

 

静寂で辺りが包まれる。耳を澄ませば彼女達の鼓動が聞こえるような気さえした。

 

 

「……………………………………一つだけ…………条件がある。……俺も昨日始めてダンジョンに潜った初心者だ。……分からない方の事が多い。惨めな様だって晒す……でも……俺もパーティの一員として必死でやるから」

 

……っく、口が動かない……ここでか!?此処でまさかのコミュ障か!?

 

「……その……えっと……」

 

言えって……彼女達だって言っただろうが。嘘偽り無い本当の気持ちを……だったら俺も言わないとダメだ。

 

「……その……えっと……こ、こ……これから俺とパーティを組んでダンジョンに行かないか?」

 

そう言って彼女達に手を差し伸べる……それを見た彼女達の驚きの色に染まっていき。

 

「「「…ッ!はい!!勿論です!!!」」」

 

俺の手を取り歓喜の顔と声をあげる。

 

……結果的に言えば、彼女達のあの真剣な目で見られながら貴方が最後の希望なんですって……言われたら断れないわな。

 

「……どうやら決まったようだね。朝ごはんが出来たよ……あ、そうそうアーク君。彼女達の朝食代、パーティ結成祝いって事でいらないから。」

 

「……所で主人、さっきの話。エルフの直感って当たるんですか?」

 

「勿論!そのおかげで同じエルフの妻と結婚したのだからさ。」

 

「だったらその奥さんは……」

 

「ああ、バベルの四階のヘファイストス・ファミリアの所で店員として働いているよ。夜遅くに帰って来るからいつも心配でさ……」

 

……一時楽しい食事と談笑を終え、今度こそダンジョンへと向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

~摩天楼施設バベル ダンジョン入り口~

 

「……誰も居ないな……」

 

アレから1時間半位……って所か……まぁ所々冒険者が歩いているな……さっきよりは少ないけど。

 

「……よし……」

 

後ろを見る、彼女達が戦々恐々とした目で俺を見ている。

 

「覚悟は……できたか?」

 

「「「…はいッ!!!」」」

 

「……行こう……」

 

突然の仲間が出来たと言う大きな喜びと、それ以上に大きな不安を抱き……俺達はダンジョンに潜る事にした。




アーク君の今回の成果……
人の目を見て話せるようになった(ただしセリア、クラリス、エミリアに限る)





次はまたダンジョンに潜ると言ったな……あれは嘘だ

……次こそダンジョンに潜ります……
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