真剣繚乱   作:あろろ

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今回はにじファンの時と改稿しております故……。


オープニング3. 烈

 

オープニング3. 無所属“烈”(れつ)

 

―――――

 

 夢を見た。

 ソレはいつの日かの事だ。

 少年の足元にはまだ温もりの残る屍が転がっている。

 血反吐を大地に零し、その顔を絶望の色に染め上げて地面に転がっている。

 死にたくない、こんなところで死にたくない、と……今にも再び喋り出しそうなぐらいだ。

 そんな亡骸を一瞥した後、彼は天を仰ぐ。天は真っ暗な夜空、その中に輝くのは星々と青いと表して良い程に白く丸い月。

 満月を仰ぎながら心に浮かぶは一つの疑念。渦巻き始めた疑念は気づけば衝動的にその身体を動かし、その場から走り去っていた。

 背後よりかかる声は無視し、ただただひたすらに走り続けている、そんなところで意識は醒めて行く……。

 

―――

 

「――、……おい、もうすぐ着くってよ!」

「……ん」

 

 ゆさゆさ、と身体を揺すられ声を掛けられ意識がはっきりとしてくる。目を開けば身体を揺する手と差し込む赤い日の光が見え、道路を走っている音も聞こえる。

 匂いを嗅げばバナナの甘い香りが鼻につく。

 

「……寝起きには辛いな」

「そうか? 俺はどんだけ食えるか考えるけどな!」

 

 バンダナの少年はそう言ってバナナに手を伸ばす。乗る前に少しぐらいは食べて良い、と運転手の男に言われているので問題はない。

 ソレを見て起こされた少年もバナナに手を伸ばす。

 

「ん、いただきます」

「おっちゃんも食え食えって言ってたし、ありがたくいただこうぜ!」

 

 と言ってバンダナの少年はバナナを更に差し出す。少年、烈は一本目のバナナをものの三口程で食べ終えると差し出されたバナナを受け取り早速皮を剥き、二本目を食べ始める。

 

「美味いね、バナナ」

「うんうん、おっちゃんも人気あるから川神で叩き売りするって言ってたしな! クマちゃんに教えておかねぇとな!」

 

 そうだね、と返しながらバナナの皮をビニール袋に放り込む烈。それに倣ってバンダナの少年も袋に食べ終えたバナナの皮を入れていく。

 烈はじっと新たにバナナを剥いて食べ始めるバンダナの少年を見て小さく息を吐く。その様子を感心したかのように。

 

「……良く食べるよな」

「おう! 5本ぐらい余裕だぜ!」

「俺小食だから2本で十分だからな……少し、羨ましいかな」

「そうか? 好きなものならいくらでも食べれるとか、ないか?」

 

 バンダナの少年の言葉に烈は少し間を置いてから言葉を返す。表情は何処か憂いを孕んでいる様にも見えて。

 

「好きなもの、か……ちょっと、思い浮かばないな」

「そっか。 んー、俺好きなモノならいくらでも食える気がするけどな」

「好きなもの、ってそういうものなのか?」

 

 腕を組んで考えこむバンダナの少年に烈は素直に問いかける。その問にバンダナの少年は満面の笑みを浮かべて答えた。

 

「あぁ! 好きなものでも好きな事でも、俺はいくらでもやってみせるぜ!」

 

 サムズアップで返すバンダナの少年に烈は素直に感嘆する。同時に自身にはない物を持つこの少年に対し好感と敬意を胸の中に抱いて。

 そんな折であった。車が徐々に速度を緩め、最後には停止したのは。

 

「お? 着いたか?」

「みたいだね」

 

 言うより早く荷台の幌が開き、中年男性が覗き込む。

 

「おぅ、坊主共! 川神に着いたぜ!」

「悪いなおっちゃん! バナナ売る時は教えてくれよな!、友達連れてくからさ!」

「おう、あんがとよ! そっちの坊主もそろそろ降りてくんなよ!」

「やぁ、悪いね。 無理言ってさ」

 

 そう言いながら烈とバンダナの少年は荷台から降りる。バンダナの少年は学生服、烈は所謂唐装と呼ばれる格好をしており、非常にちぐはぐな組み合わせだ。

 

「なぁに、良いって事よ。 それに、暴走族の連中から助けてくれた礼もしたかったしな」

「つってもちょっと小突いて追っ払っただけさ。 そっちの兄さんも助けてくれたしさ」

「だってよー、あいつ等俺がご当地小豆ソフト食ってたらぶつかりそうになって落としちまったしよー」

 

 ぶーたれながら更にバナナを食べるバンダナの少年、翔一。そんな様子に呵々大笑する男性、実に愉快そうに翔一を見る。

 

「ったく、兄ちゃんきっと将来大物になるぜ。 ははは!」

「だな。 まぁ、おっちゃん、なんにしてもあんがとね。 んで、気をつけてな」

「おう、坊主もな! そいじゃ、俺は場所取りに行かなきゃいかんから、この辺で行くぞ」

 

 と、男性は再び車に乗り込んで二人に手を振る。二人も男性に手を振って見送れば顔を見合わせて。

 

「さて、そんじゃ俺は目的地に向かうか……兄さんは?」

「んー、俺は寮に帰るかな。 クッキーにもお土産渡したいし」

「OK。 んじゃ、また機会と天命があれば会おう」

 

 右手を差し出す烈。ソレに対し翔一は首を横に振れば、烈に指を突きつけこう言った。

 

「ハッ、堅苦しい事言わずにそういう時はこう言えば良いんだよ。 また会おうぜ、ってな!」

「……そっか。 じゃあ、また会おう」

「おう!」

 

 烈の右手を翔一は手に取れば二人は握手を交わす。赤い夕陽の照らす中、その光景は中々絵になるものがある。

 

「おう! じゃあな!」

「あぁ、じゃあな」

 

 挨拶もそぞろに翔一は疾風の如くその場を走り去って行った。そんな後ろ姿を見て一つ息を吐く烈。その表情の何処かに心惹かれる様子が見れて。

 

「……良い人だったな」

 

 等とひとりごちながら手荷物の入るずた袋から地図を取り出す。地図を見ながら経路を検索しつつ、良し、と言って地図をしまってからずた袋を長い棒に結んで肩に担ぐ。

 しかし、その棒は見るものが見れば一目で気づくであろう。棒は普通の棒にあらず、棍と呼ばれる武術に用いられる武器なのだ。

 更に烈の身のこなしは軽く、歩く時も足音一つ立てない……熟練した武技の持ち主である。そんな彼が川神に来て行く所など、一つしかない。

 

「川神院、か……行ってみるか」

 

そう言って歩を進める……目的地は関東三山の一つにして武道家のメッカ、川神院であった。

 

 

 

―――――

簡易プロフィール

 

名前:“烈”

性別:男性

所属:無所属

得物:中華棍

 

・家出少年、ほぼ着の身着のままの姿で旅をしている。

・背丈は小柄で160cmぐらいである。

・武術の覚えあり、川神院へ向かっている。

 

 




と言っても些細な所がメインですがねー。
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