「お兄ちゃん、朝だよー。ご飯だよー。卵だよー」
「じゃあ、卵かけご飯でお願いします」
「えー、もう焼いちゃったよ~。ていうか起きてるんなら出てきてよ」
妹は俺の部屋で地団駄踏んでいた。
「それにしてもお前はいつだって元気だな、俺なんてほらまだ布団の中だ」
俺はもぞもぞと再び布団の中に潜り込んでいく。
まだまだ寒いのだ。
「もう、いいから早く起きてご飯食べて、学校行ってよ」
「わかった。だが断る!」
「むっかー」
怒り方が幼稚である。
妹は小さな手で俺の布団を剥ぎ取ろうとしてきたのだった。俺は布団を体に巻きつけるようにして応戦する。
正直、華奢な妹の力では俺から布団を剥ぎ取るなんて不可能だ。
「お兄ちゃんのばかー、ばーかー」
あんまり大人気ないと妹は顔を真っ赤にして大概こうなる。
「ばかー、ばぁーかぁぁー」
「・・・・・・」
「・・・・・・ばか・・・・・・あぁ」
「・・・・・・」
「・・・・・・ぐすっ」
結局、泣き出すのだ。
「おいで」
俺は布団から手を伸ばし妹の手を取った。
「う、うん」
なんどとなくしたやり取り。妹もすぐに理解し、すんなり受け入れる。
もぞもぞとなんの抵抗もなく妹は俺の布団の中に入ってきたのだった。
「あったかーい」
「そうだろ? だからお兄ちゃんはいつまでもこうしていたいんだよ」
「でも駄目だよ。学校、行かなきゃ」
「そうだな。行かなきゃ駄目なんだろうな、学校」
「・・・・・・うん」
妹が俺に身を寄せてくる。俺はそれを抱き包むように受け入れた。
俺はこうやって妹を抱いている瞬間が好きだ。頼られているって気持ちになる。
世の中の誰からも必要とされていない俺を、ただ無性に欲してくれる妹が好きだ。
「もう学校なんてなくなっちゃえばいいのにね」
妹がぽつりとそんなこを囁いた。
それはきっと肯定してはいけないこと。
妹が俺を甲斐甲斐しくするのも、俺がそれに甘えるのもただの傷の舐めあいだ。
だから許されるなら。
せめて俺の妹だけでも幸せにしてやって欲しい。
俺は肯定も否定もせず、ぎゅっと。いつもより強く妹を抱きしめた。
「そうそう、朝ご飯はオムライスだったよ」