運命的な出逢い
栗武家の長男坊は甘いものが大好きである。
名前は修。読みはおさむ。ちなみに名字の読みはくりたけ。大好きな姉とおやつを食べるのが楽しみな五歳児だった。
わりと裕福な家庭に生まれ、妙なアザがあることを除いてとくに大きな問題もなく、すこし厳しいがやさしい両親と、面倒見のいい姉とともに、やはりすくすくと育っていった。
しかし、四月のある日、事件は起きた。
「うぇーん、おねぇちゃんがいなくなったぁ」
「よしよし。夕方には帰ってくるからねぇ」
1つ年上の姉は今年から小学校へ通うこととなったのだった。
母・和子はすこし困っていた。娘に息子がベッタリなのは知っていたものの、ここまで泣かれるとは思っていなかったからだ。そこで彼女が考えた手は、わりと簡単なものだった。
「ほら、泣いてたら後で買いもの帰りに甘いもの食べれなくなるよ」
「……あまいもの?」
彼はまだ即物的なものに釣られるお年頃なのであった。
と言うわけでその日の午後、栗武親子は近くの商店街での買い物したあと、帰りがけにとある喫茶店へと向かっていた。その喫茶店はなんでもシュークリームが美味しいことで有名なお店らしく、息子も満足するであろう。と思いつつ、修と同じ年頃の子供がいらしいので、友達になって姉離れに近づくかな、なんて打算も浮かべつつ、和子は甘いものが楽しみでたまらない修を連れてその喫茶店「翠屋」に入るのであった。
「いらっしゃいませ」
「あまいものください!」
「コラッ!」
どうやら楽しみにし過ぎたようだったが。
ピークを過ぎた頃らしく、すぐに空いていたカウンター席に案内される。テーブル席じゃないのは修の希望だ。
最初に受け答えしてくれた店員がこの家の長男で、注文したシュークリームとコーヒーとジュースを持ってきてくれた若い女性が母親だというのは驚いた和子だったが、幼い子供を持つ親同士(噂の同じ年頃の子供は彼女の娘らしい)気があったのかすぐに打ち解ける。だがひとつ問題があった。簡単に言えば、母親同士の会話とは長いものなのである。
「おかあさん、たべていい?」
「あぁ、ごめんね待たせちゃったね。いただきます」
「いただきます」
しびれを切らした修が母親に尋ね、己の失敗に気づいた和子は修と共に手を合わせ挨拶をする。そして修がシュークリームに手を伸ばしたときに、その悲劇とも言える出来事は起きた。
「……え?」
「え?」
「…………」
彼の目の前で起きた謎の現象に驚いた二人の母親。だが一番驚いたのは少年であり、言葉もでなかった。そして……
「うぇーーん!!!」
本日二度目の大べそをかいたのであった。
このとき、前世の希望を能力に開花させた少年は、この日を境に好きなもののトップが「甘いもの」から「シュークリーム」にかわり、喫茶翠屋によく通うようになるのであった。
この日の夜、うってかわって姉に喜んでシュークリームを見せる少年がいたそうな。
更新はモチベが向いたときになると思います。