修少年の朝ははやい。6時半にはテレビをつけてお気に入りの番組を見始めるからだ。その少し前には姉・あいこを起こし、テレビを見ながら母親達の目覚めを待つ。起こすのを忘れると姉は拗ねる。お姉ちゃんっ子がある程度収まったといえそれは非常に困る。
お姉ちゃんとともに番組を見ていたら、録画コーナーから生放送コーナーに移行する頃に母親が起きてくる。二人でテレビを見ながら(それでボーッとしてると怒られてテレビを消されてしまう)朝御飯の準備を手伝う。
「いただきます」
「「いただきます」」
いただきますとごちそうさまは笑顔を膨らませる合言葉、と教育を徹底された栗武家は食事の挨拶を欠かさない。出勤が遅い家主はまだ眠っているため、3人で朝食をとる。
「早いわね、あんなにちっちゃかったあなたたちがもう小学校でお姉ちゃんお兄ちゃんするなんて」
「お姉ちゃんはずっとお姉ちゃんだよ?」
「私はずっと私だけど、そうゆうことじゃなくって、1年生の面倒を見なきゃ行けないってことだよ。今日から1年生入ってくるから、修もお兄ちゃんしなきゃいけないんだよ」
「……そっか、今日入学式だ!」
あいこの言葉で今日のイベントを思いだす。自分は直接は関係ないが去年の自分も体験したはずだ。特になにかやる訳じゃないが、なぜか緊張してくる。
「……入学式から帰ってきたら異様に弟が興奮してたこともあったなぁ」
「あぁ、あれからも2年か……はやいなぁ」
あの日から不思議な能力を使えるようになった修。あの時は目の前で起きた現象にショックを受けてしまい、その上、生まれつきのアザが酷くなっていることに和子が気づいて慌ててしまったのもあって親子二人してパニック状態になってしまった。その場にいた店員・桃子が機転を効かせて修をなだめ、和子を落ち着かせて、ようやくその場は収まったのだった。
その後、翠屋に通いながらその能力を検証していった。和子は子育ての先輩にアドバイスをもらうようになり、修は翠屋協力のもと、修行兼手伝いで能力を磨きつつ、お駄賃がわりにシュークリームを貰っていた。
『 次はあの三人にバトンタッチだ! 』
「あ、ダンスの時間だ! ごちそうさま!」
「ぼくも、ごちそうさま!」
「あとでちゃんと顔洗いなさいよ」
気がついたらテレビはお気に入りの番組も終わっており、次の子供向け番組に入っていた。これまた姉弟の好きなダンスコーナーになり、食べ終わった皿を下げてテレビ前に移動する。そしてテレビに合わせて踊る二人を見守りながら和子は食器を片付けるのであった。
二人は小学校へはバスで通学している。大学付属の小学校のため用意された、スクールバスに近いバスのため、同じ小学校に通う子供達で賑う。
姉弟が学校に向かうため家を出てバスに乗ると、奥の座席に見知った見知った三人組の女の子がいた。修が手を降ると、そのうちの一人が手を振り返してくれた。
「ほら、そこの桂くんの横、空いてるよ」
「ありがと、お姉ちゃん。一騎、おはよー」
「あぁ、おはよ」
そこそこ混んでしまっているバスでは二人一緒に座るのは困難である。あいこは近くの空いている席の中で、修の友人である桂一騎の隣の席を勧めると、先ほど手を振り返して来てくれた彼女の隣へと向かった。
「こっちの席、まだ空けられたのに」
「詰めると狭いでしょ」
先ほど手を振り返した少女の隣に愛子が座ると、反対の隣にいた大人しそうな少女が気を使って席を詰めようとしてくれた。彼女は月村すずか。あいこのクラスメイトである。
「ふーん、そうなんだぁ。私はてっきり、なのはに修をとられちゃうのが嫌だったからだとおもったけど」
「なな!? そ、そんなわけないでしょ!」
『後ろの席の子、静かにしてくださーい』
「あ、すみません」
ニヤつきながらあいこをからかった少女はアリサ・バニングスといい、彼女もクラスメイトだ。思わず大声で反応した愛子は放送でバスの運転士に怒られてしまった。
「別にそんなんじゃないし。あれよあれ、えっと、その、な、なのはの家には修がお世話になってるから。それにほら、迷惑かけちゃってるし」
「にゃははは。大丈夫だよ。お父さんとか修くんのお陰でうちも売上アップだ! っていってたし」
「笑わないの! 甘やかさないの!」
図星を指されて慌ててしまったあいこをほほえましく見る三人。手を降っていた少女は高町なのはといい、翠屋の桃子の娘である。修が通うようになってからその関係もあってあいこと仲良くなっていたが、修がもう一人の姉のように慕っているのもあって、あいこは気が気がないのであった。
「お前のお姉ちゃん、おもしろいよな」
「お姉ちゃん……」
前まで届いた声であいこが二度目の放送で注意されたのはその直後のことだった。
午前の授業も終わり、昼休みの時間になると、修はお弁当を持ち、一騎をつれて屋上へと向かう。
「いつも思うんだけど、俺もいていいのかな?」
「いいんじゃないかな? 僕もいるんだし」
「いや、微妙に違うだろそれは」
「そかな? ……ってあれ?」
屋上で姉とそのクラスメイト3人と、計6人でお弁当を食べるのが日課になっていた。一人だけ関係が微妙な自分がいくのはどうなんだと毎度のように思っているが、のらりくらりと強引にという微妙な表現が的確に感じる勢いで修に毎度つれていかれたりしていた。
そんな話をしていると、修はその道中で見慣れない泣いている少女を発見したのであった。制服を来ているがずっと泣きっぱなしで、近くにいる先生も困りっぱなしのようだ。
「もしかして、新入生の迷子か?」
「なるほど……先生、ちょっといいですか?」
「まぁ、先生がいるから大丈夫……ってお前行動すんの速ぇよ!」
先生に任せて屋上へと向かおうと一騎が提案する前に、修は行動を始めてしまっていた。
「栗武くん? ごめんね、今この子見てるから」
「任せてください」
「うん任せるから……え?」
ちょうど知っている先生だったため、修は先生に一言声をかけると、少女の前にいき、一度右手を降る。少女がその右手に気付いたのを確認すると、今度はハンカチを取り出して、ハンカチで右手を隠す。すぐにそのハンカチを取り外すと、そこには包みに入ったシュークリームがあった。
「え?」
「すごい……」
「はい、あげる。」
「いいの? ありがとう、お兄ちゃん」
急に現れたシュークリームに先生は驚き、少女も泣き止む。修がそのシュークリームを手渡すと、少女は笑顔になった。
「え、なに今の?」
「先生、あとはよろしくお願いします。一騎、いくよー」
「え、うん。ありがとね、栗武くん」
「お前なあ……まあいいや」
混乱する先生をよそに、修は泣き止ませた少女を先生に任せて、一騎を連れて屋上へと向かうのであった。
「なんだったんだろ、今の?」
「美味しいー」
「そうだ、お名前は?」
その後、無事少女は母親の元にたどり着くことができたそうな。
その後、二年生は早めに授業が終わり、放課後となった。帰りもバスを使い、自宅へと向かうのであった。
「今日も翠屋に拠るのか?」
「家に帰ったらね。一騎はサッカーの練習?」
「おう。兄ちゃんが授業中の今こそ練習のチャンスだからな。」
「がんばってねー」
「お前もな。コーチによろしくー」
一騎は兄とともに地元のサッカーチームに所属しており、そのチームのコーチは翠屋の店主である高町士郎である。二人が最初に知り合ったのもその関係であった。
話してるころにちょうど修が降りるバス停に止まったため、そのままふたりは別れた。
あと1話やったら本編入ると思います。
Asまでがんばってヒントを小出しできたらと思います