東方地霊殿 〜Terrene Animism.【完結】 作:LOORUME
あと、併行して投稿している『東方化緑伝』もよろしくお願いします。
1話目
俺は徒歩で旧地獄の旧街道へ歩いて行っている所だった。そこに前方に現れてきたのは木々に囲まれ木漏れ陽で淡く緑に光る赤い橋だった。
「あら、また来たのね。そんなに自由に動き回れるあなたが、羨ましいわ」
屈託のなどない爽やかな笑顔で彼女は笑う。
「はは、そんなに言うんだったらパルスィこそ自由じゃないか」
「失礼ね。あたしにだって仕事くらいあるわよ。この橋を守るっていうね」
「はあ。まあ頑張ってください」
「簡単に納得できる貴方が羨ましいわ、夜霧さん」
俺の名前は、
今話しているのは水橋パルスィ。
『羨望心を操る程度の能力』の持ち主だ。その能力は結果的に決してマイナスに働かない。
口癖は『羨ましい』で、会話してるだけでこちらが気恥ずかしくなるほどだ。悪い時には15回連続で言われた事もあった。正直あの時は穴があれば入りたかった。
こほん。
パルスィのあだ名は通称『褒め殺しの妖怪』 俺も被害者の一人なので良くわかる。
「そう何度も羨ましいと言うな。恥ずか死ぬ」
「遠慮をするほど余裕があるなんて羨ましい」
「ああもう、埒が明かない。
じゃあ俺はこれで行くよ」
「はいはい。またいらっしゃい」
ひらひらと手を振る彼女に見送られる。一応振り返しておく。
『また来たのね』とか言っておきながら『またいらっしゃい』ってどういう意味だよ。
○○○
俺が向かっていた先は旧街道。そこにいる鬼の連中は夜空の下だろうと晴天のもとだろうとずっと元気に酒をかっ喰らっているはずだ。
『かっ喰らっている』。その表現が似合うくらい彼らは豪快に酒を飲む。呑むというように酒を愉しむというより、喰らって飲むこと自体を楽しんでいるようだった。
ほら、今日も真昼間から酔っている者がちらほらと見えてきた。もう少し道を進めばさらにいる、見るまでもない。
「おお、夜霧。どうかしたのか?良かったら一緒に飲まないか?」
愉快な鬼の一人で、何度か面識がある赤鬼だ。
「ああ、今日は勇儀に呼ばれてるんだ。だからまた今度な」
今日は、
言うと彼はさして気にした様子も無く、
「そうか!勇儀姐さんの用でだったら引きとめられないな」
「ごめんな、また今度誘ってくれよ」
「わかったぜぇ。さあ行って来い!」
赤鬼と別れ、俺は勇儀との待ち合わせ場所に行った。だんだんと家屋が増え、様々な店が目につくようになった。その道中は言わずもがな、酔っ払い連中が・・・言わなきゃダメ?
待ち合わせ場所付近では居酒屋が乱立と言っていいほどひしめきあっていた。ここらで有名な「
意味は飲酒運転ではなく、酒呑童子とかけているようだ。
「夜霧、来たな」
「来たぞ、勇儀」
「飲むぞ」
「呑むか」
本当に短い挨拶かもわからない言葉を交わし、俺らはそこらの居酒屋へと入って行った。
○○○
1件目に入ってから約3時間が経過した。今は5件目だ。
酒は酔い潰れるか全て飲み潰すまで、という勇儀の謎のポリシーに付き合わされていた。
俺も、人並み以上には飲める自信はあるが、あくまで人基準だ。鬼には勝てない。
ちびちびと飲みながら誤魔化していたが、もう2升分くらいは飲んだはずだ。さすがに酔いが回ってきた。
「おお?どうした夜霧、そんなもんかい?」
「うるせぇ。鬼と比べんな」
相手の勇儀は、まだ頬がほんのり紅くなってるだけだ。どこにそんな量の酒が入る胃袋があるんだろう。ああ、店主の顔が青ざめてきているから、酒がもうじき無くなると思う。つまり約5店分で頬が染まる程度だ。可笑しいだろ。笑っちゃうぜ、ほんと。
「うひひ……」
「酔いが酷いな。もうそろそろ倒れる頃かね…」
その言葉通り、俺は勇儀の顔を恨めしそうに見ながら視界がぼやけるのを感じた。
○○○
起き上がった。どうやら我が家のようだ。いつも通りの布団に、天井、壁。
一人暮らしの俺には分不相応なほど大きい家だ。まあ、宴会を開けるためそこまで嫌うわけじゃないし、寧ろ好きなんだが。
とりあえず明日は恐らく運んでくれた勇儀に礼を言わねば、とまた酒転道路に呑みに行く理由を作った。
俺は、外来人。良く酒転道路で飲みびたっている。
はい、今作が初登場のオリキャラ、尾反夜霧さんでした。
まあ主人公じゃないんですがね。この作品の主旨というか、設定をわかりやすくするために出しました。
次回からは、パルスィや勇儀など、勿論ヤマメやさとりなどにも一人称になってもらう予定です。
ではでは稚拙な文章でしたがお読み頂きありがとうございました。他の作品をお読みになって頂ければこれ幸いに。
不定期更新ですがこれからもよろしくお願いします。