東方地霊殿 〜Terrene Animism.【完結】   作:LOORUME

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11話目

 

珈琲を一口飲み、思い出話を終えた。

 

「そんな事があったんだな」

 

勇儀は少し納得したように頷いた。

 

「ええ。夜霧さんはその後も、こいしに好かれようと頑張っていたみたいだけど、諦めたらしいわ」

「へえ、それはまた何で?」

「幻想入りしてみて、妖怪と人間との差を知ってしまったんですって。力と、なにより寿命の壁は越えられない、と」

 

苦笑しながら私は言った。それには彼女も苦笑で返してきた。

 

「世知辛いな」

「そんなものですよ」

 

その答えは、彼なりに努力して出したものなのだ。

こいしに近づこうと能力の特訓を申し出てきたり、私を弾幕の練習台にしたり。まあ、なんだかんだで私も楽しんでましたけどね。

 

「そういえば、夜霧ってどうやってこいしを治したんだ?いや、どんな程度の能力の持ち主なんだ?」

「あなたは、何をお持ちだと思いますか?」

 

本来私が質問をする必要など無いが、ときに口は思考よりモノを言うことがあるのだ。

 

「いや、思いつく限りでは『相手の能力を無効化する程度の能力』かとも思ったんだが…」

「夜霧さんの性格に合ってない上に、何よりこいしを治した説明がつかない、と」

「そうだ」

 

勇儀は心を読まれた事も気にせず、

深く頷く。

 

「…彼の能力は、『心を保護する程度の能力』です」

「……あぁ」

「私も宴会の時に彼に聞くまでは『精神干渉系能力を無効にする程度の能力』だとかそういうものだと思っていました」

 

だがやはり、元々あったものを無効化するような消極的な性格を彼は持ち合わせていない。彼は、むしろ妖怪と恋仲になりたいなどと積極的とも言える行動をしていたのだ。角度を変えて見ればやましいとも言えるが。

 

「…じゃあ、さっきの話は地霊異変のあたりだよな?なんで最近になるまで私は夜霧と知り合わなかったんだ」

 

少し首を傾け、たずねてきた。

いかにも、勇儀の立場なら誰でも思いつきそうな問題だ、と言いたかったが。

 

「簡単でしょう、そんなもの」

「え?」

 

勇儀は傾いた顎をさらに傾ける。

 

「五年前、あの時は外との出入りは禁止はされずとも、すれば多少白い目で見られることを覚悟しなければならなかったんですよ。覚えてますか?

 まあ、彼ほどこいしに真っ直ぐな方は見たことが無かったので渋々彼を迎え入れてましたが他の妖怪に見つかれば私の立場は危うかったでしょう。

 そのため、彼にはいち早く隠匿の術を教え、以後はこれを使いながら出入りするように言いました。

 隠れるのをやめたのは2年ほど前でしょうか。その時は丁度鏡の世界との行き来が可能になり、旧都の妖怪も外に興味を持ったのです。同じく、幻想郷と鏡源郷の妖怪もここに興味を持ったようでした。

 タイミングを得た両者は憚りながらも、通行が容易になりました。あなたと彼が出会ったのもその時期ではないですか?」

 

長い科白(せりふ)を終え、またも珈琲を一口飲む。

 

「…なるほどなぁ」

 

しばし沈黙し、今度はうんうんと頷く。漸く全てに納得した様子だった。

 

「───では、」

「そうだな、教える。心が読めなくてもさとりが教えて欲しいと思ってる事はわかるぞ」

 

食い気味だけど図星な言葉に、私はため息を含んだ返事をした。

 

「はあ」

 

幻想郷には居ない。しかし、彼はそこに長く居すぎたため、外の世界に帰れるとは考えにくい。よって残るは恐らく───

 

「生まれ育ちは外界の外来人、(ほか)の人が寄り付かぬ旧都に居ついた変わり者、尾反夜霧。

───あいつが向かった先は、鏡源郷だ」

 




まあ、予想通りの方もいらっしゃると思いますが。
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