東方地霊殿 〜Terrene Animism.【完結】   作:LOORUME

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これでひとまず、一段落です。


12話目

○ ○ ○ ○

 

 

夜霧の行方が分かった私は、とりあえず彼に会いに行くことにした。引っ越し祝いと、勝手に居なくなったことへの説教も兼ねてだ。

彼が鏡源郷へ行った理由は脅されたとか、連れ去られたからでは無い。

ただ、本当の理由もわからないから、それを聞くのも今回の目的だ。

 

そしてその目的は、ご主人様に命じられたものだった。ペットの私に頼みをするのも気が引けたらしいが、私は主人のためなら、と喜んで承諾した。

本当は、地霊殿で退屈な時間を過ごすよりはマシだ、なんて思ってたり。あれ?それじゃ読まれてたのか。

でも、本心だから仕方が無い。来客を延々と待ち続けるよりはずっと楽しいのだ、この旅は。

 

さて、そんなわけでこの度は、エリーという鏡の番人に声をかけ、鏡源郷へと旅立つのであった。

 

 

○ ♢ ○ ♢

 

 

空気は、そこまで変わらない。

それは鏡源郷の雰囲気のことである。人の活気や、妖怪の禍々しさ、神への信仰は幻想郷とさほど変わらないような気がした。

 

さて、ここからは急がなければなるまい。ここでぐうたらしているうちに幻想郷では24倍の時間が流れている。こちらでの一時間があっちの一日なのだ。できることなら数時間で帰りたいが……。だが、夜霧さんはどこに住んでいるのだ?

 

そんな考え事をしながらあたりを見回していると、後ろでブォンと音が鳴った。

 

「あれ、お燐じゃないか。先に行ったやつってお前だったんだな」

 

魔理沙だった。そういえばこの前の宴会以来だ。

大方、八岐鏡映とやらと呑みに来たのであろう。鏡の主と仲良くしてるというのは、結構広く知られているのだ。烏天狗の手によって。

 

「うん」

「お前はまたどうしてここなんかに?」

「尾反を探し。に来たの」

「なんだよその五文字以内縛り。聞き取りづらいぜ。…まあ、夜霧さんがどこに住んでるかなら私も知ってるからな。夜まで時間あるし、私が案内してやろうか?」

 

トントン拍子に上手く行った。この調子ならばすぐ帰れるかもしれない。早く終わったら地霊殿には帰らずぶらぶらしてよう。あーだこーだ言い訳できるし。あ、それじゃ読まれるじゃん。

それよりも、まずは彼女について行こう。

 

「ありがとう」

 

♢ ♢ ♢

 

結果として、無事見つけることができた。そして結構分かりやすいところに住んでいた。いや、これは住んでいたと言ってもいいのか?とりあえず、見つけることができたのは確かだ。

 

「おお、お燐と魔理沙じゃないか。どうした?」

 

彼の家は鏡源郷の人里にあった。そして、建設途中だった。着工開始は今日の朝で、建てているのは夜霧さんと鬼の萃香だけだった。

 

「ちょっと聞きたいことがあるんだってよ」

「ふむ?まあいいぞ、そこらへんにある木材に適当に座ってくれ」

 

なんという客のもてなし方だ。いや、怒っているわけではないが余りにもワイルドすぎるのでは…。妖怪だしどうでもいいか。

 

「じゃあ、私はこれで行くよ」

「お、おい待てよ魔理沙。お燐と二人にしないでくれ」

 

それじゃまるで私が危険人物みたいじゃないか。いや、そうじゃなくて聞き取りづらいだけなんだろうけどさ。それがレディに対する対応かね。

 

「夜霧さん、あんたはもっとレディを敬うべきだぜ。じゃあな」

「そのとおり」

「あっおい待て…。まあいいか。……で、聞きたいことってなんだ?」

「まずはこれ」

 

そう言いながら、私は懐からある物を取り出した。それは、よく旧都で売られている温泉のもと一箱。引っ越し祝いだが、珍しくとも何でもない。

 

「ああ、ありがとう。風呂がなけりゃ意味が無いが、家ができたら大事に使わせてもらうよ」

「あとこれも」

 

次に取り出したのは、手紙だ。さとり様からの手紙。

おそらくだが内容は──。

 

「ん、手紙? さとりからか。えーと内容は…うわ」

 

おそらく愚痴もといお説教が長々と書かれているから、大事にしないと祟られるだろう。

 

「ま、まあ、ありがとう?肝に銘じておく、と伝えてくれ」

「わかった。さて本題を」

「おう」

 

夜霧さんの微妙そうな顔つきが、一気に真剣になった。大事なのはここからだと、ちゃんと分かっているらしい。

 

「どうして、鏡源郷(ここ)に来たの?」

 

 

心を読み終え、呆れた目線をお燐に送る。

 

「なるほど、よくわかりました。ですが、貴女がいない間お空が大変だったことも理解してください」

 

お燐は、鏡源郷で用事を終えたあと約1ヶ月の間帰りの鏡を見つけられず迷い続けた。なんたる事だ、幻想郷ではそれが約2年間なので、その間にもお空が暴れ出したりして制御が大変だったのだ。

でも、心を読む限りきちんと反省しているので許す。さすがに二年も自分の居場所を放置したら焦っただろう。というか焦っていた。

 

「分かりました。今日はゆっくり休んで、明日からまた仕事についてください」

 

そうして、お燐は一礼をして部屋から出て行った。

 

ふぅ、と息を吐く。

二年間心につかえていた氷が漸く溶けて、心地よい水に浸される感覚だ。

 

───俺は、なにも地霊殿に入り浸るために幻想郷に来たわけじゃないんだ。俺の目的の、その限界を知ってしまったのなら新たに目的を探さなければいけない。そうだろ?

 だから俺は、旅に出た。自分探しなんて小洒落たもんじゃないが、新たに目的を探すためだ。いわば目的が目的だ。

 まあ、そのくせ家を造って身を固めるのかと聞かれるかもしれんが、それは違う。

 お燐は知らないかもしれんが、実は俺、幻想郷の色んな所を回ってたんだぜ?たまに地霊殿に来ない日があっただろ、ちょくちょくそういう日に行ってたんだよ。

 だけど、見つからなかった。こいしにフられた俺は、新たに目的を見つけられなかった。だから俺は、旅に出た。

 …ふむ、口に出して整理してみれば、俺の目的は嫁を探すことなのかもしれないな。ははは。

 こんな下卑た答えでいいなら、主人に伝えてくれ。───

 

全くもって、彼らしい。やましくて下卑たところを隠そうともせず、ストイックで、なんのための心を保護する能力だ、と言いたくなるほどだ。

 

椅子に浅く座ってもたれかかり、天井を見上げた。

色々な事を、思い出す。

ある日いきなり見知らぬ男子がやってきたり。鏡源郷への鏡が開いてまだ間もないころ、地霊殿の前で催し物があったり。妹が異変を起こしたり、夜霧さんが居なくなったり。

 

…こいしが異変を起こした時、知ってしまったのだ。物が、どれだけ純粋な想いを秘めているかということを。そしてそれがどれだけ尊いかということも。

 

 

だから私はこの思いを、この別れを悲しむ思いを大切にしよう。

 

 





最後シリアスにまとめられたかな?よろしければ質問・感想お願いします。
さて、これで地霊殿は終わりじゃありません。13話目からはお空が起こす異変です!(多分)
まあぶっちゃけ、1、2章には出番があまり無かったのでもっと活躍させたかっただけですけどね。勿論、多視点になるのは変わりません。是非、お楽しみに!

(畢竟訖が書き進められない!)
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